
収益物件の収支シミュレーションは、必ずどこかで「前提」を置きます。空室率は5%、金利は2.8%、出口利回りは7.5%、家賃下落は年0.5%。どれも根拠のある数字ですが、どれも将来の実績ではありません。
ここで問題になるのは、どの前提が外れたときに一番痛いのかです。一般的な記事は「金利上昇に注意」「空室リスクに注意」と個別に警告しますが、金利と空室率と出口利回りを同じ尺度で並べて順位をつけたものはほとんど見かけません。単位が違うため、そのままでは比較できないからです。
この記事では、ひとつの基準ケースに対して9つの前提を1つずつ動かし、10年IRRへの影響を同一尺度で並べました。そのうえで、公開データから「その変数が現実にどれくらい動くか」を当てはめ、感応度 × 現実のブレ幅=リスク寄与度という形で順位を付け直しています。
結論を先に書くと、1単位あたりの感応度で1位だった変数は、リスク寄与度では4位に落ちました。順位は入れ替わります。そして目標IRR5.0%までの余裕は、主要6変数のうち5つで現実的なブレ幅の0.30〜0.45倍しかありませんでした。
本記事の数値は性質が異なるため、先に区分を明示します。
区分 | 内容 | 本記事での用途 |
|---|---|---|
公開データ | 日本銀行の政策金利、総務省の消費者物価指数・住宅土地統計調査、国土交通省の建設工事費デフレーター、日本不動産研究所の不動産投資家調査 | 各変数の「現実的なブレ幅」を設定する根拠 |
架空ケース | 後述する基準ケースの物件条件・融資条件 | 感応度を測るための土台 |
シミュレーション | IRR・DSCR・CF・売却手残りの計算結果 | 本記事の分析結果すべて |
実データ | — | 本記事では使用していません |
つまり本記事の結果は実際の物件統計ではなく、条件を固定したシミュレーションです。情報確認日は2026年10月9日です。
感応度を測るには土台が必要ですが、物件価格そのものを主役にする分析ではありません。そこで、読者層と分析目的から条件を逆算しました。
項目 | 基準値 | 算出 |
|---|---|---|
物件価格 | 6,400万円 | 1戸800万円×8戸 |
満室想定年間家賃(GPI) | 576.0万円 | 月6.0万円×8戸×12ヶ月 |
表面利回り | 9.00% | 576.0÷6,400 |
空室・滞納損 | 5.0% | GPI×5%=28.8万円 |
年間運営費 | 115.2万円 | GPI×20%(管理料・固都税・保険・共用光熱・原状回復・小修繕) |
初年度NOI | 432.0万円 | 576.0×0.95−115.2 |
NOI率(価格比) | 6.75% | 432.0÷6,400 |
借入額(LTV80%) | 5,120万円 | 6,400×80% |
金利/融資期間 | 2.80%/20年 | 元利均等・月払い |
年間返済額 | 334.63万円 | 月27.886万円×12 |
初年度DSCR | 1.291倍 | 432.0÷334.63 |
初年度CF(税引前) | 97.4万円 | 432.0−334.63 |
購入諸費用 | 448万円 | 価格×7% |
初期自己資金 | 1,728万円 | 1,280+448 |
CCR | 5.64% | 97.4÷1,728 |
家賃下落率/運営費上昇率 | 年0.5%/年1.5% | — |
保有期間/出口利回り | 10年/7.50% | 11年目NOIを7.50%で還元 |
売却諸費用 | 4.0% | 仲介手数料・登記等 |
この条件での10年末の姿は、売却価格5,156.7万円、残債2,915.7万円、売却手残り2,034.8万円、10年累計CF771.3万円、10年IRR(税引前・自己資金ベース)5.938%です。初年度DSCR1.291倍は融資が付く水準で、極端に良くも悪くもない現実的なスタート地点です。
表面利回り・実質利回り・NOI・DSCR・IRRの定義そのものは収益物件の収支計算完全ガイドに整理しています。IRRとNPVの使い分けは不動産投資のNPV(正味現在価値)とは?、DSCRの目安は不動産投資のDSCRとは?をご覧ください。
固定:物件価格・戸数・満室想定家賃・購入諸費用率・保有期間10年・売却諸費用率・返済方式(ただし各試行では検証対象の1変数のみ変更)
変更(検証対象):金利、出口利回り、空室・滞納率、家賃下落率、運営費上昇率、運営費率(初期水準)、融資期間、LTV、取得価格の9変数
変数 | 設定したブレ幅 | 根拠となる公開データ |
|---|---|---|
金利 | +1.00pt | 無担保コールレート誘導目標は2024年3月のマイナス金利解除以降に引き上げが続き、2026年9月18日の決定で1.25%程度。2年半で1pt超の上昇実績 |
出口利回り | +1.00pt | 第54回不動産投資家調査(2026年4月現在)では半年で0.1pt前後の動き。局面が変われば累積で1pt規模になる |
空室・滞納率 | +5.0pt | 令和5年住宅・土地統計調査では賃貸用の空き家443.6万戸・借家1,946.2万戸で、賃貸ストックに対する空室率は18.6% |
家賃下落率 | +0.5pt/年 | 東京都区部の民営家賃は2026年9月に前年同月比+2.2%(中旬速報値)。全国の築古物件では下落も併存し、上下双方に0.5pt/年規模の幅がある |
運営費上昇率 | +1.5pt/年 | 建設工事費デフレーター(木造住宅、2020年度基準)は2026年6月に126.7で前年同月比+4.5% |
運営費率 | +3.0pt | 原状回復・広告料・共用部費用など計上漏れが起きやすい科目で3pt程度は動く |
融資期間 | −5年 | 同じ物件でも金融機関により期間設定が大きく異なる |
LTV | −10pt | 担保評価の出方で融資額は1割前後変動する |
取得価格 | +5% | 指値が通らず売出価格に近づくケース |
まず各変数を1単位だけ悪化させた結果です。単位が異なるため、この表だけで順位を決めてはいけません。
変数 | 1単位 | 1単位あたりΔIRR |
|---|---|---|
運営費率(初期水準) | +1.0pt | −0.713pt |
空室・滞納率 | +1.0pt | −0.617pt |
取得価格 | +1.0% | −0.438pt |
家賃下落率 | +0.1pt/年 | −0.406pt |
出口利回り | +0.1pt | −0.278pt |
金利 | +0.1pt | −0.223pt |
運営費上昇率 | +0.1pt/年 | −0.100pt |
LTV | −1.0pt | −0.092pt |
融資期間 | −1年 | −0.087pt |
この表を素直に読むと「運営費率がいちばん怖い」「金利は6番目」という結論になります。しかしこれは、1ptという刻みが変数ごとにまったく違う重さを持っているために生じる錯覚です。
各変数に公開データ由来のブレ幅を当てはめ直したものが次の表です。これが本記事の中心です。
順位 | 変数 | 現実的なブレ幅 | ΔIRR | 単位感応度での順位 |
|---|---|---|---|---|
1 | 空室・滞納率 | 5%→10% | −3.274pt | 2位 |
2 | 出口利回り | 7.50%→8.50% | −2.790pt | 5位 |
3 | 金利 | 2.80%→3.80% | −2.311pt | 6位 |
4 | 運営費率 | 20%→23% | −2.217pt | 1位 |
5 | 取得価格 | 6,400→6,720万円 | −2.187pt | 3位 |
6 | 家賃下落率 | 年0.5%→1.0% | −2.133pt | 4位 |
7 | 運営費上昇率 | 年1.5%→3.0% | −1.678pt | 7位 |
8 | LTV | 80%→70% | −0.731pt | 8位 |
9 | 融資期間 | 20年→15年 | −0.479pt | 9位 |
単位感応度で1位だった運営費率は4位へ下がり、6位だった金利は3位へ上がりました。感応度が大きい変数が危険なのではなく、「感応度 × 動く幅」が大きい変数が危険ということです。運営費率は1pt動けばよく効きますが、実務で3pt以上ずれることは多くありません。金利は1ptあたりの効きは小さいものの、政策金利が2年半で1pt超動いた実績があり、投資家側でコントロールできません。
そして上位3変数のΔIRRが−2.3〜−3.3ptに収まっている点も重要です。「ここだけ見ておけば大丈夫」という変数は存在しません。上位6変数が−2pt台で並んでいるため、どれか1つを厳しく見るのではなく、全体で何ptまで許せるかという発想が必要になります。
基準ケースのIRRは5.938%です。目標を5.0%に置くと、使える余裕は0.938ptしかありません。この余裕を各変数で使い切る点を逆算しました。
変数 | 許容ブレ幅 | 到達する絶対水準 | 現実的ブレ幅に対する比率 |
|---|---|---|---|
空室・滞納率 | +1.51pt | 空室率6.51% | 0.30倍 |
出口利回り | +0.34pt | 出口CR 7.84% | 0.34倍 |
金利 | +0.42pt | 金利3.22% | 0.42倍 |
取得価格 | +2.14% | 価格6,537万円 | 0.43倍 |
運営費率 | +1.31pt | 運営費率21.31% | 0.44倍 |
家賃下落率 | +0.227pt/年 | 年0.727% | 0.45倍 |
運営費上昇率 | +0.884pt/年 | 年2.384% | 0.59倍 |
LTV | −14.02pt | LTV 65.98% | 1.40倍 |
融資期間 | −8.50年 | 期間11.50年 | 1.70倍 |
比率が1を下回る変数は、現実に起こりうる範囲を使い切る前に目標IRRを割ることを意味します。空室率は想定した5ptのブレのうち3割、出口利回りは1ptのうち3分の1、金利は1ptのうち4割強で5.0%に到達します。
逆に、LTVと融資期間は比率が1を超えました。LTVが10pt下がって自己資金が増えても、融資期間が5年短くなっても、IRR5.0%は維持できます。融資条件の交渉より、空室・出口・金利の見積りのほうがIRRを決めているという結果です。融資期間やLTVがIRRではなくDSCRと手元資金に効くことは融資期間25年・30年・35年で何が変わるか、「頭金を薄くして大きく買う」と手残りは増えるのかで個別に検証しています。
出口利回りについては、単独でも−2.790ptという大きさでした。保有期間ごとの効き方の違いは出口利回りが1%上がるとIRRはどこまで落ちるかに、金利上昇のうち何割が売却価格経由で効くのかは金利1%上昇でIRRは6.15pt低下、うち74%は返済額ではなく売却価格が原因だったにまとめています。
なお、この逆算は基準ケースのNOI・融資条件・出口条件を固定した結果です。保有年数や出口利回りを自分の条件で動かして目標IRRに必要な売却価格を確認したい場合は、売却・出口戦略シミュレーターで出口条件を変えながら試算すると、Exit Cap Rateの感応度表と目標IRRから逆算した必要売却価格を同時に確認できます。
感応度表の使い方で最も多い誤りは、単独の数値を足し算することです。実際に3変数を同時に悪化させて確かめました。
シナリオ | 10年IRR | ΔIRR | 初年度DSCR | 初年度CF | 10年累計CF | 売却手残り |
|---|---|---|---|---|---|---|
BASE(基準) | 5.938% | — | 1.291倍 | 97.4万円 | 771万円 | 2,035万円 |
①金利3.80% | 3.627% | −2.311pt | 1.181倍 | 66.1万円 | 459万円 | 1,911万円 |
②空室率10% | 2.664% | −3.274pt | 1.205倍 | 68.6万円 | 490万円 | 1,684万円 |
③出口CR 8.50% | 3.148% | −2.790pt | 1.291倍 | 97.4万円 | 771万円 | 1,452万円 |
STRESS(①②③同時) | −3.945% | −9.883pt | 1.102倍 | 37.3万円 | 177万円 | 1,019万円 |
SEVERE(①②③+家賃下落年1.0%+運営費上昇年3.0%) | −12.852% | −18.790pt | 1.102倍 | 37.3万円 | −23万円 | 507万円 |
①②③を単独で足すと−8.375ptですが、同時に起こしたときの実測は−9.883ptでした。差は1.508pt、単純合計は実際の悪化を15.3%過小評価します。理由は、空室率の上昇がNOIを下げ、そのNOIを出口利回りで割って売却価格を出すため、収入面の悪化と出口面の悪化が掛け算になるからです。金利上昇は残債の減りも遅らせるため、売却手残りをさらに削ります。
STRESSケースでは初年度DSCRは1.102倍で、融資返済そのものは回っています。初年度CFも37.3万円の黒字です。毎年の収支は黒字のまま、IRRだけがマイナスになるという形です。これは収支表の年次CFだけを見ていると気づけない悪化の仕方で、出口を含めて評価する必要がある理由でもあります。
SEVEREケースでは10年累計CFが−23万円となり、保有期間中の手残りが消えます。ただし売却手残り507万円は残るため、投資元本1,728万円のうち約3割が戻る計算です。金利と空室率を同時に動かした場合のCFへの影響だけを詳しく見たい場合は金利上昇×空室率、同時に悪化したらキャッシュフローはどこまで減る?で20パターンを試算しています。
ここまでの結果は6,400万円という特定の価格で計算しています。では価格が違う読者には使えないのか、を確かめました。
物件価格 | 初期自己資金 | 初年度CF | 初年度DSCR | 10年IRR |
|---|---|---|---|---|
3,200万円 | 864万円 | 48.7万円 | 1.291倍 | 5.938% |
4,800万円 | 1,296万円 | 73.0万円 | 1.291倍 | 5.938% |
6,400万円 | 1,728万円 | 97.4万円 | 1.291倍 | 5.938% |
9,600万円 | 2,592万円 | 146.1万円 | 1.291倍 | 5.938% |
1億6,000万円 | 4,320万円 | 243.4万円 | 1.291倍 | 5.938% |
表面利回り・LTV・金利・期間・運営費率・出口利回りという比率を固定したまま価格だけを変えると、IRRもDSCRも完全に一致します。金利+1ptのΔIRRも空室+5ptのΔIRRも、どの価格でも−2.311pt/−3.274ptで変わりません。IRRと感応度を決めているのは物件価格ではなく、比率の組み合わせです。したがって本記事の順位表は、価格帯が違っても同じ比率なら読み替えずに使えます。
では何が感応度を変えるのか。LTVです。
LTV | 初期自己資金 | 基準IRR | 初年度DSCR | 金利+1ptのΔIRR | 空室+5ptのΔIRR | 出口CR+1ptのΔIRR |
|---|---|---|---|---|---|---|
60% | 3,008万円 | 4.749% | 1.721倍 | −1.088pt | −2.058pt | −1.767pt |
70% | 2,368万円 | 5.207% | 1.475倍 | −1.559pt | −2.526pt | −2.162pt |
80% | 1,728万円 | 5.938% | 1.291倍 | −2.311pt | −3.274pt | −2.790pt |
90% | 1,088万円 | 7.303% | 1.148倍 | −3.715pt | −4.671pt | −3.946pt |
LTVを60%から90%へ引き上げると、金利+1ptのΔIRRは−1.088ptから−3.715ptへ3.41倍に拡大します。空室+5ptは2.27倍、出口CR+1ptは2.23倍で、金利感応度のLTV弾性が最も大きいという結果でした。借入比率を上げることは、金利リスクを他のリスクより選択的に増やす行為だということです。
リスク寄与度の順位もLTVで変わります。LTV60%・70%では金利は6位でしたが、LTV80%・90%では3位に上がります。自己資金を厚く入れる投資家にとって金利は6番目の論点、フルローンに近い投資家にとっては3番目の論点になります。同じ物件でも、融資の組み方によって注意すべき前提の順番が変わるわけです。
さらに踏み込んで、金利ごとにLTVを変えたIRRを並べました。
金利\LTV | 60% | 70% | 80% | 90% |
|---|---|---|---|---|
2.00% | 5.57% | 6.38% | 7.65% | 10.03% |
2.50% | 5.06% | 5.65% | 6.59% | 8.35% |
2.80%(基準) | 4.75% | 5.21% | 5.94% | 7.30% |
3.00% | 4.54% | 4.90% | 5.49% | 6.59% |
3.50% | 3.99% | 4.13% | 4.34% | 4.74% |
4.00% | 3.44% | 3.32% | 3.14% | 2.80% |
金利2.00%ではLTV60%とLTV90%のIRR差は4.46ptあります。基準の2.80%では2.55pt。3.50%では0.75ptまで縮み、4.00%では符号が反転して−0.64pt、つまり借入を増やすほどIRRが下がります。
LTV60%とLTV90%のIRRが一致する金利を逆算すると3.773%でした。この条件では、金利3.773%を超えるとレバレッジはIRRを下げる方向に働きます。
興味深いのは、よく使われる「ローンコンスタントがNOI率を上回ったらレバレッジはマイナス」という目安との差です。本ケースのNOI率は6.75%で、期間20年のローンコンスタントが6.75%になる金利は3.157%です。IRRベースの中立金利3.773%とは0.616ptのギャップがあります。元本返済による資産形成と売却時の手残りがIRRには含まれるため、年次CFだけで見る目安よりも後ろに中立点がずれるのです。イールドギャップの考え方そのものはイールドギャップは「利回り−金利」では測れないで扱っています。
基準ケースで他の条件を固定したまま1変数だけを動かしたときの境界値です。
見たい境界 | 転換点 |
|---|---|
初年度DSCRが1.20倍を割る金利 | 3.616% |
初年度DSCRが1.20倍を割る空室率 | 10.29% |
初年度CFがゼロになる金利 | 5.768% |
初年度CFがゼロになる空室率 | 21.91% |
10年IRRが5.0%を割る金利 | 3.22% |
10年IRRが5.0%を割る出口利回り | 7.84% |
売却手残りが初期自己資金1,728万円を割る出口利回り | 7.995% |
10年IRRが0%になる出口利回り | 9.588% |
注目したいのは、IRR5.0%を割る金利3.22%のほうが、DSCR1.20倍を割る金利3.616%より先に来ることです。融資審査の基準を満たしていても、投資としての目標利回りは先に割れます。CFがゼロになる金利5.768%まではまだ距離がありますが、その手前に判断ラインが2本あるということです。これらの数値は本分析の条件限定の結果で、NOI率や融資期間が違えば位置は変わります。
悪化方向だけを並べると不安だけが残るので、良い方向も同じ尺度で測りました。
シナリオ | 10年IRR | ΔIRR | 初年度DSCR |
|---|---|---|---|
BASE | 5.938% | — | 1.291倍 |
指値5%成功(6,080万円) | 8.144% | +2.206pt | 1.359倍 |
出口CR 7.00% | 7.337% | +1.399pt | 1.291倍 |
空室率3%で運営 | 7.126% | +1.188pt | 1.325倍 |
金利2.50% | 6.595% | +0.657pt | 1.327倍 |
IMPROVE(上記4つを同時) | 11.079% | +5.141pt | 1.434倍 |
単独の改善幅が最も大きいのは指値の成功で+2.206ptでした。購入時に一度だけ確定できる価格交渉が、10年にわたる運営努力や金利交渉より大きくIRRを動かすという結果です。空室率を5%から3%に下げ続ける運営は+1.188pt、金利を0.3pt下げる交渉は+0.657ptでした。価格の上限を逆算する考え方は売出8,000万円の物件、自分はいくらまで払えるのか、必要表面利回りの逆算はDSCR1.3に必要な表面利回りは7.5%か9.4%かで扱っています。
ここまでの前提はすべて基準ケースのものです。自分の物件価格・満室家賃・借入条件・空室率・家賃下落率で同じ構造を確認したい場合は、キャッシュフローシミュレーターで自分の条件のDSCRと損益分岐点を試算すると、CF損益分岐空室率・CF損益分岐金利と金利×空室率のストレス表を自分の数値で確認できます。
なお本記事は税引前・自己資金ベースのIRRに絞って9変数を比較しています。減価償却や所有形態、売却時の譲渡税まで含めた総合的な判断が必要な段階では、RE-AIの診断で収益性・価格査定・融資・リスク・出口戦略を横断して確認する使い方もできます。ただしどちらも投資判断そのものを保証するものではありません。
収支シミュレーションの前提は、どれも同じ重さではありません。そして「1pt動かしたときの効き方」で順位をつけると、実務の判断を誤ります。重要なのは効き方と動く幅の積です。
この基準ケースでは、リスク寄与度の上位は空室・滞納率(−3.274pt)、出口利回り(−2.790pt)、金利(−2.311pt)でした。目標IRR5.0%までの余裕は、空室率で現実的ブレ幅の0.30倍、出口利回りで0.34倍、金利で0.42倍しかありません。一方で融資期間とLTVには1.4〜1.7倍の余裕があり、IRRという軸では融資条件の交渉より需給と出口の見積りが効いていました。
そして感応度の大きさを決めているのは物件価格ではなくLTVでした。比率を固定すれば3,200万円でも1.6億円でもIRRは同じ5.938%ですが、LTVを60%から90%へ上げると金利感応度は3.41倍に拡大し、金利3.773%を超えるとレバレッジ自体がIRRを下げる側に回ります。
どの前提を慎重に見るべきかは、物件の価格帯ではなく、自分がどれだけ借りるかで決まります。その順番を先に決めてから、レントロールと融資提案を読むほうが順序として正しいはずです。
情報確認日:2026年10月9日
本記事の計算結果は、記載した条件を固定したシミュレーションです。実際の物件統計・取引実績ではありません。投資判断は物件個別の調査と、金融機関・税理士等の専門家への確認を併せて行ってください。
この記事を書いた人

鈴木基公
RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者
1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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