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収益性・収支

区分6戸と木造一棟、同じ予算ならどちらが残るか|修繕費を同じ基準で計上すると10年IRRの差は3.38ptから0.45ptに縮んだ

区分6戸と木造一棟、同じ予算ならどちらが残るか|修繕費を同じ基準で計上すると10年IRRの差は3.38ptから0.45ptに縮んだ

同じ予算で収益物件を買うとき、「中古区分マンションを複数戸」と「木造一棟アパートを1棟」は、最後まで並んで比較されることが多い選択肢です。ところが収支シートを並べると、ほとんどの場合で一棟側が有利に見えます。表面利回りが高く、NOI率も高いからです。

ただ、その比較には一つ見落としがあります。区分マンションの修繕積立金は毎月の管理組合費として必ず費用に計上されるのに対し、一棟アパートの大規模修繕費は自分で積まない限り収支シートに現れないという点です。片方だけ修繕費を引いた表を比べていることになります。

この記事では、同じ予算・同じLTVで「中古区分6戸」と「木造一棟8戸」を組み、修繕費の計上基準を揃えたときに結論がどこまで動くかを計算しました。結果として、10年IRRの差は3.38ptから0.45ptまで縮みました。残った差は、表面利回りではなく融資期間で説明できる水準でした。

指標の定義や計算の基礎は収益物件の収支計算完全ガイド、区分マンション単体の価格の見方は区分マンション投資、その価格は妥当かで扱っています。以下はすべて、条件を固定したシミュレーションです。実際の物件統計ではありません。修繕費の水準には国土交通省の公開データを使っています。

この記事で検証する疑問

  • 区分と一棟で修繕費の計上基準を揃えると、収支の差はどこまで縮むのか
  • 区分の年間キャッシュフロー優位は、どこから来ているのか
  • 区分の修繕積立金が何円/㎡・月まで上がると、その優位は消えるのか
  • 融資期間を揃えたとき、区分に必要な表面利回りプレミアムは何ptか

前提条件(架空ケース)

どちらのプランも総取得価格6,000万円・LTV70%で揃えました。この価格帯にしたのは、地方中核都市の中古区分(1戸1,000万円前後)を複数戸束ねたときと、同じエリアの木造一棟(築15年・8戸)がちょうど射程に入る規模で、どちらも同じ買い手が現実に比較しうる水準だからです。価格そのものを検証対象にしていないため、以下の結論は価格帯を変えても方向は変わりません(金額の大小に比例する部分を除きます)。

項目

プランA:中古区分6戸

プランB:木造一棟1棟

構造・築年

RC造 築15年

木造 築15年

戸数・専有面積

6戸 × 40㎡(計240㎡)

8戸 × 25㎡(計200㎡)

取得価格

1,000万円 × 6戸 = 6,000万円

6,000万円

満室想定賃料

月6.7万円/戸 → 年482.4万円

月5.2万円/戸 → 年499.2万円

表面利回り

8.04%

8.32%

賃料単価

1,675円/㎡・月

2,080円/㎡・月

空室・滞納率

8%

10%

購入諸費用

525.6万円(8.76%)

459.6万円(7.66%)

借入額 / LTV

4,200万円 / 70%

4,200万円 / 70%

金利・融資期間

2.2% / 30年

2.3% / 20年

年間元利返済額

191.4万円

262.2万円

投下自己資金

2,325.6万円

2,259.6万円

諸費用は実計算しました

区分の諸費用率が0.6pt高いのは、小口に分けたことで仲介手数料と登記費用が割高になるためです。仲介手数料は「(価格×3%+6万円)×1.1」で計算するため、6万円の定額部分が6回かかります。1,000万円×6戸で224.4万円に対し、6,000万円1件なら204.6万円。登記・司法書士報酬も6件分(8万円×6)と1件分(15万円)で33万円の差が出ます。残りの不動産取得税・登録免許税・印紙税・火災保険・融資事務手数料は、両プランとも価格の4.0%で固定しました。

賃料単価は面積に合わせて整合させています

区分(40㎡)が1,675円/㎡、一棟(25㎡)が2,080円/㎡です。住戸が小さいほど㎡単価が高くなる関係を崩さないよう設定しました。表面利回りの差を0.28ptに抑えたのは、この記事が検証したいのが「利回り差」ではなく「構造の違いによる費用と融資の差」だからです。

修繕費はいくら計上すべきか

ここが分析の中心です。区分と一棟で、同じ基準の修繕費を求めます。

区分:実際の徴収額と、国の目安は2倍近く違う

国土交通省「令和5年度マンション総合調査」(令和6年6月公表)では、月・戸当たり修繕積立金の平均は13,054円です。一方、国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)が示す目安は、地上20階未満・延床5,000㎡未満で平均335円/㎡・月(事例の3分の2が包含される幅は235〜430円/㎡・月)です。

総合調査は戸当たり、ガイドラインは㎡当たりで単位が違うため、ガイドラインのモデルケースと同じ戸当たり70㎡で割って概算すると、実際の徴収水準は約186円/㎡・月になります。目安平均335円の56%です(戸当たり平均専有面積は総合調査では公表されていないため、この70㎡は本稿の仮定です)。

水準

単価

40㎡1戸あたり月額

出所

現行の徴収水準(概算)

約186円/㎡・月

約7,459円

総合調査13,054円/戸 ÷ 70㎡仮定

ガイドライン下限

235円/㎡・月

9,400円

修繕積立金ガイドライン

ガイドライン平均

335円/㎡・月

13,400円

修繕積立金ガイドライン

ガイドライン上限

430円/㎡・月

17,200円

修繕積立金ガイドライン

本記事のBASEでは、現に支払う額である186円/㎡・月を採用しました。40㎡1戸で管理費8,000円+積立金7,459円=月15,459円、賃料67,000円の23.1%が共益費として出ていく設定です。

一棟:ガイドラインの項目別構成比で木造に按分する

木造アパートには国の修繕積立金目安がありません。そこで、同じガイドラインが公表している修繕工事費の19項目別構成比(366事例の平均)を使って、木造2階建で発生しない・または小さい項目を落として按分しました。

  • 全額除外:昇降機設備 4.3%、立体駐車場設備 5.2%
  • 半減:給水設備 8.1%、排水設備 5.8%、情報・通信設備 4.1%、消防用設備 3.5%(合計21.5% → 10.75%)

残存係数は 1 − 0.095 − 0.1075 = 0.7975。ガイドライン平均335円/㎡・月に掛けると267.2円/㎡・月になります。専有200㎡で年64.1万円。これを一棟プランの修繕積立相当額として毎年計上します。

結果として、区分(240㎡×186円=年53.7万円)と一棟(200㎡×267円=年64.1万円)はほぼ同じ金額規模になりました。建物を維持する費用そのものは、区分と一棟でそれほど違わないということです。違うのは「誰がいつ払うか」と「収支シートに現れるか」です。

この按分は、RC造マンションの事例から木造アパートの水準を推計したものです。木造は外壁・屋根の修繕周期が短い一方で単価は低く、どちらに振れるかは物件によります。精度には限界があります(修繕費「家賃の5%」で足りるのかでは、国交省の長期修繕計画事例4件から別の角度で検証しています)。

年間収支の内訳(1年目)

項目

区分6戸

木造一棟

満室想定賃料

482.4万円

499.2万円

空室・滞納損失

▲38.6万円(8%)

▲49.9万円(10%)

実効総収入(EGI)

443.8万円

449.3万円

管理組合管理費 / 共用部費用

▲57.6万円

▲18.0万円

賃貸管理委託料(賃料の5%)

▲24.1万円

▲25.0万円

固定資産税・都市計画税(価格の0.70%)

▲42.0万円

▲42.0万円

日常修繕・原状回復

▲14.5万円(賃料の3%)

▲25.0万円(賃料の5%)

長期修繕積立相当

▲53.7万円

▲64.1万円

運営費合計

▲191.9万円

▲174.0万円

NOI

251.9万円

275.2万円

NOI率(NOI ÷ EGI)

56.8%

61.3%

年間元利返済額

▲191.4万円

▲262.2万円

年間税引前CF

+60.5万円

+13.1万円

DSCR

1.316倍

1.050倍

CCR

2.60%

0.58%

日常修繕を区分3%・一棟5%に分けたのは、区分の共用部修繕は積立金に含まれており、オーナーが直接負担するのは専有部の設備更新と原状回復に限られるためです。固定資産税率は両プラン0.70%で固定しました(RC造と木造では建物評価額が異なりますが、本分析ではこの差を見ていません)。

結果①:修繕費の計上基準を揃えると、差は3.38ptから0.45ptに縮んだ

固定した条件:価格、賃料、空室率、金利、融資期間、固定資産税、管理委託料、保有期間(10年)、家賃下落率(年0.5%)、運営費上昇率(年1.0%)、売却費用率(3.5%)。
変更した条件:修繕費の計上基準だけ。

計上の仕方

区分 DSCR

区分 年CF

区分 10年IRR

一棟 DSCR

一棟 年CF

一棟 10年IRR

IRR差

A どちらも計上しない

1.597

+114.2万円

2.69%

1.294

+77.2万円

3.41%

0.72pt

B 区分だけ積立金を計上

1.316

+60.5万円

0.03%

1.294

+77.2万円

3.41%

3.38pt

C 同じ基準で計上(BASE)

1.316

+60.5万円

0.03%

1.050

+13.1万円

0.48%

0.45pt

D 区分が目安平均335円まで値上げ

1.093

+17.8万円

▲2.12%

1.050

+13.1万円

0.48%

2.60pt

パターンBが、実務でもっともよく作られる比較です。区分側は管理組合から請求される積立金をそのまま費用に入れ、一棟側は「修繕は出たときに払う」として収支シートに入れない。このとき10年IRRの差は3.38ptになり、一棟が圧勝に見えます。

パターンCで一棟にも同じ基準の修繕費を計上すると、差は0.45pt。つまり3.38ptの差のうち2.93ptは、投資対象の性質ではなく計上基準の違いが作っていたことになります。

もう一つ読み取れるのは、修繕費を正直に計上すると、表面利回り8%台の物件でも10年IRRは区分0.03%・一棟0.48%まで落ちるという点です(パターンAでは2.69%・3.41%)。修繕費の計上は、物件間の優劣よりも投資全体の水準を大きく動かします。

結果②:10年保有の内訳

出口価格は、市場が値付けに使う「長期修繕積立前のNOI」を出口利回りで割って求めました。出口利回りは取得時の同基準NOI利回りに、区分+0.3pt、一棟+0.8ptのスプレッドを乗せています。木造のスプレッドを厚くしたのは、買い手が組める融資期間が構造と築年で短くなり、価格の天井が下がるためです(売却価格の天井は「買い手が何年借りられるか」で決まる)。

項目

区分6戸

木造一棟

取得時 市場NOI利回り

5.09%

5.66%

出口利回り(10年後)

5.39%

6.46%

10年目 市場NOI

278.4万円

316.1万円

売却価格

5,162万円

4,897万円

10年後残債

3,094万円

2,340万円

売却時手残り(売却費用3.5%控除後)

1,887万円

2,385万円

10年累計CF(税引前)

+444.6万円

▲15.5万円

10年IRR(税引前)

0.03%

0.48%

ここで方向が分かれます。年間CFでは区分が一棟より47.4万円多いのに、10年IRRでは一棟が0.45pt上です。

理由は返済の中身です。区分は30年融資で年間返済額が70.8万円軽く、手残りは厚くなりますが、10年後の残債は3,094万円残ります。一棟は20年融資で毎年の手残りは薄いかわりに、同じ10年で残債が2,340万円まで減り、売却時の手残りが498万円多くなります。手元に残る現金が多いことと、投下資本に対する効率が高いことは、同じではありません。

結果③:区分の年CF優位は、融資期間だけで説明できる

融資期間を同じにして比べ直すと、結果は反転します。

融資期間

区分 DSCR

区分 年CF

区分 10年IRR

一棟 DSCR

一棟 年CF

一棟 10年IRR

年CF差(一棟−区分)

15年

0.766

▲77.1万円

0.60%

0.831

▲56.1万円

0.74%

+21.0万円

20年

0.970

▲7.9万円

0.35%

1.050

+13.1万円

0.48%

+20.9万円

25年

1.153

+33.3万円

0.17%

1.245

+54.2万円

0.28%

+20.8万円

30年

1.316

+60.5万円

0.03%

1.419

+81.3万円

0.13%

+20.8万円

35年

1.463

+79.7万円

▲0.08%

1.574

+100.4万円

0.01%

+20.7万円

期間を揃えると、一棟がどの期間でも年CFで約21万円上回ります(NOIの差23.3万円がほぼそのまま出ています)。区分が一棟20年の年CF(+13.1万円)に並ぶのに必要な融資期間は22.3年。つまり期間差2.3年で追いつきます。

実務で区分が30年、一棟が20年になりやすいのは、RC造の法定耐用年数47年に対し木造は22年で、築15年時点の残存年数が32年と7年に分かれるためです。この10年の期間差が、年47.4万円のCF差を作っていました。言い換えると、区分の手残り優位は物件の収益力ではなく融資条件に由来しており、融資期間が想定より短く出た瞬間に消えます。

もう一点、表の右端に注目してください。期間を延ばすと年CFは増えるのに10年IRRは下がります。10年という保有期間では、元金返済の遅れが売却時の手残りを削る方が大きいためです。融資期間25年・30年・35年で何が変わるかでも同じ向きの結果が出ています。

逆算①:区分の修繕積立金が351円/㎡・月を超えると、年CF優位は消える

区分の最大の不確実性は、修繕積立金がいくらまで上がるかです。他の条件を固定し、区分の積立金単価だけを動かして、一棟(20年融資)の年CF+13.1万円に並ぶ水準を逆算しました。

区分の積立金単価

40㎡1戸あたり月額

区分 年CF

区分 DSCR

一棟との年CF差

186円/㎡・月(現行水準・BASE)

約7,459円

+60.5万円

1.316

+47.4万円

235円/㎡・月(目安下限)

9,400円

+46.6万円

1.243

+33.5万円

264円/㎡・月(DSCR1.20の上限)

約10,560円

+38.2万円

1.200

+25.2万円

335円/㎡・月(目安平均)

13,400円

+17.8万円

1.093

+4.7万円

351円/㎡・月(転換点)

約14,040円

+13.1万円

1.069

0万円

430円/㎡・月(目安上限)

17,200円

▲9.6万円

0.950

▲22.7万円

転換点は351円/㎡・月、ガイドライン平均335円のすぐ上です。つまり区分が購入時に持っていた年CF優位は、管理組合が積立金をガイドライン目安の水準まで引き上げた時点でほぼ使い切られます。目安上限430円まで上がれば、年CFはマイナスに転じます。

これは仮定の話ではありません。令和5年度の平均13,054円は平成30年度の11,243円から16.1%上がっています。工事費の上昇が続けば、現行水準と目安の44%のギャップは埋まる方向に動きます。修繕積立金がガイドライン水準まで上がっても成立する表面利回りは何%かでは、この引上げを利回り側から逆算しています。

DSCR側の上限は264円/㎡・月(40㎡で月10,560円)でした。ガイドライン下限235円は通るが、平均335円は通らない水準です。購入前に長期修繕計画と積立方式(均等積立か段階増額か)を確認する実務上の意味は、この数字に表れています。

この記事の試算は、区分6戸・木造一棟という特定の組み方に条件を固定したものです。戸数・賃料・空室率・金利・融資期間が変われば転換点も動きます。自分の検討中の物件で運営費を項目別に入れて確かめたい場合は、RE-AIのキャッシュフローシミュレーター(登録不要)で、管理費・修繕積立金を含めた運営費と融資条件を入力し、年間CF・DSCR・損益分岐空室率まで確認できます。

逆算②:期間を揃えると、区分に必要な表面利回りプレミアムは+0.41pt

融資期間を両プラン25年に揃えたうえで、区分が一棟の年CF(+54.2万円)に並ぶには賃料がどれだけ必要かを逆算しました。

項目

現状

一棟に並ぶ水準

必要な上昇

満室想定賃料

482.4万円

507.2万円

+24.8万円(+5.1%)

1戸あたり月額賃料

6.70万円

7.04万円

+3,400円

表面利回り

8.04%

8.45%

+0.41pt

必要プレミアムは0.41ptです。区分と一棟のNOI率の差(56.8% 対 61.3%、4.5pt)に比べると小さく見えますが、これは区分の方が空室率を低く(8% 対 10%)置いているためで、実効総収入の差がNOI率の差を一部打ち消しています。

実務的な意味はこうです。同じ予算・同じ融資期間なら、区分の表面利回りが一棟より0.4pt以上高くないと年間手残りでは追いつきません。逆に、その0.4ptを払ってでも区分を選ぶ理由があるとすれば、それは利回りではなく融資期間・流動性・売却単位の分割可能性です。

結果④:1戸空いたときの振れ方は、思ったほど違わない

区分6戸は1戸空くと稼働率が16.7pt落ち、一棟8戸は12.5pt落ちます。区分の方が1戸の重みが大きいのは確かです。

項目

区分6戸

木造一棟8戸

1戸空室の稼働率インパクト

▲16.7pt

▲12.5pt

1戸の年間賃料

80.4万円

62.4万円

BASE 年CF

+60.5万円

+13.1万円

1戸が通年空いた場合の年CF

▲13.4万円

▲43.1万円

CFの下振れ幅

▲73.9万円

▲56.2万円

ただし出発点のCFが厚いため、1戸空室でマイナスに落ちる深さは区分の方が浅くなりました(▲13.4万円 対 ▲43.1万円)。「戸数が少ないほど危ない」は、変動幅については正しく、絶対水準については条件次第です。区分1戸単位での「空室=収入ゼロ」の効き方は区分マンション投資のキャッシュフローとDSCRで確認できます。平均空室率ではなく分布で見る方法は「空室率5%」は平均値でしかない|4戸・8戸・12戸・20戸・30戸でDSCR1.2割れ確率を20万回試算で扱っています。

結果から分かること

  1. 修繕費の計上基準を揃えないと、10年IRRの差は3.38ptまで膨らむ。揃えると0.45pt。差の86%は計上基準が作っていた。
  2. 建物維持費の総額は、区分と一棟でほぼ同じだった。区分240㎡で年53.7万円、一棟200㎡で年64.1万円。違うのは金額ではなく、強制的に徴収されるか自分で積むか。
  3. 区分の年CF優位(+47.4万円)は融資期間差10年から来ている。期間を揃えると一棟が年21万円上回る。期間差2.3年で逆転する。
  4. 年CFと10年IRRが逆を向く。区分は手残りが厚く、一棟は残債の減りが速い。どちらを重視するかで結論が変わる。
  5. 区分の積立金が351円/㎡・月を超えると年CF優位は消える。ガイドライン平均335円のすぐ上という位置にある。
  6. 修繕費を正直に計上すると、表面利回り8%台でも10年IRRは0%台になった。これは区分・一棟のどちらにも当てはまる。

投資判断への使い方

この結果は「区分が買い」「一棟が買い」という結論にはなりません。確認すべき順番が変わります。

  • 比較する前に、修繕費の計上基準を揃える。一棟側の収支シートに長期修繕積立相当が入っていない場合、その比較は使えません。木造一棟なら専有面積×250〜270円/㎡・月程度を目安に、長期修繕計画があればその金額を使います。
  • 区分では長期修繕計画と積立方式を先に読む。現在の積立金が目安の下限を下回っている物件は、値上げか修繕先送りのどちらかが待っています。本ケースでは264円/㎡・月がDSCR1.20の上限でした。
  • 一棟では融資期間の確定を待って判断する。区分との優劣は期間差2〜3年で入れ替わります。打診前の想定期間で結論を出すと、その後ほぼ確実に動きます。
  • 年CFとIRRを分けて見る。手元の現金を優先するのか、10年後の純資産を優先するのかで、同じ数字から違う結論が出ます。
  • 区分は売却単位を分けられる。本記事では一括売却で計算しましたが、6戸を年次分散して売れる点は一棟にない選択肢です(本分析では評価していません)。

金利・空室率・修繕費・融資期間・出口利回りを同時に動かすと、確認項目はこの記事で扱った範囲を超えて増えていきます。RE-AIでは、こうした複数条件を収益性・価格査定・融資・リスク・出口の各視点からまとめて確認できるように設計しています。ただし将来の工事費や融資条件を当てるものではありません。

この分析では分からないこと

  1. 税引後の収支を見ていません。RC造(47年)と木造(22年)では減価償却費が大きく異なり、税引後CFとデッドクロスの時期は別の結果になります(同じ物件でも木造とRCで年間減価償却費はどれだけ違うか)。
  2. 木造の修繕費はRC造の事例からの按分推計です。ガイドラインの項目別構成比を使って19項目から落としましたが、木造固有の修繕周期・単価は反映していません。
  3. 区分の戸当たり平均専有面積(70㎡)は本稿の仮定です。総合調査では公表されていないため、186円/㎡・月という換算値には不確実性があります。
  4. 実際の融資条件は金融機関と借り手の属性で決まります。区分30年・一棟20年という設定は一般的な傾向にもとづく仮定で、実際には逆になることもあります。
  5. 固定資産税を両プラン同率(0.70%)にしています。RC造の建物評価額は木造より高く残るため、現実には区分側が重くなる可能性があります。
  6. 管理組合の運営品質、滞納状況、修繕積立金残高を見ていません。区分投資ではこれが実質的なリスクの中心です(区分マンションの管理組合、財政は健全か)。
  7. 個別物件の競争力、周辺の新規供給、売却時の市場環境は織り込んでいません。出口利回りスプレッドは仮定値です。
  8. 区分6戸を同一マンション内で買うか複数マンションに分けるかの差を見ていません。同一エリアでは分散効果が出にくいことは収益物件は1棟集中か2棟分散かで検証しています。

まとめ

同じ6,000万円を中古区分6戸と木造一棟に振り分け、修繕費の計上基準を揃えて比較しました。区分だけ修繕積立金を計上する一般的な比較では10年IRRの差が3.38ptになりますが、一棟にも同じ基準の修繕費を入れると差は0.45ptまで縮みました。建物維持費の総額は両者でほぼ同じ(年53.7万円 対 64.1万円)で、違いは強制徴収されるか自分で積むかという点にありました。

残った差のほとんどは融資期間です。区分の年CF優位47.4万円は30年融資と20年融資の差から生まれており、期間を揃えると一棟が年21万円上回ります。一方、区分の積立金が351円/㎡・月(国のガイドライン平均335円のすぐ上)まで上がれば、その優位は消えます。

「区分と一棟のどちらが有利か」は、表面利回りではなく、修繕費を同じ基準で計上したかと融資期間が何年で出たかの二つで決まっていました。

参考資料・出典

情報確認日:2026年10月8日

本記事の数値は、上記の公開データと、記事内に明示した条件を用いたシミュレーションです。実在する物件の統計や、RE-AIの診断実績データではありません。投資判断は必ずご自身で、個別物件の資料と金融機関の条件にもとづいて行ってください。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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