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イールドギャップは「利回り−金利」では測れない|ローン定数Kで測り直すと、実質利回り−金利2.11ptでも負のレバレッジだった

イールドギャップは「利回り−金利」では測れない|ローン定数Kで測り直すと、実質利回り−金利2.11ptでも負のレバレッジだった

不動産投資で「イールドギャップ」を確認するとき、多くの解説記事は「表面利回り − 借入金利」、あるいは「実質利回り − 借入金利」で計算し、「2%以上あれば安全圏」という目安を示しています。

ただ、この計算式には返済額の一部しか入っていません。毎月支払っているのは利息だけではなく、元本の返済分も含まれているためです。元本返済分は金利ではなく融資期間で決まります。

そこで今回は、返済額全体を借入額で割ったローン定数K(Loan Constant)を使ってイールドギャップを計算し直し、「利回り − 金利」で測った場合と何がどれだけズレるのかを、融資期間20〜35年・金利1.5〜4.0%・LTV0〜90%の組み合わせで実際に計算しました。

結果として、「実質利回り − 金利」で+2.11ポイントあり、一般的な目安を満たしているように見える条件でも、ローン定数Kで測ると−1.35ポイントの「負のレバレッジ」になっているケースが確認できました。さらに、融資期間を延ばしてイールドギャップを改善させても、自己資金に対する総合的なリターンはほとんど変わらないことも分かりました。

本記事の数値は、条件を固定したシミュレーションです。実在する物件の統計や、RE-AIの診断実績データではありません。使用した前提条件はすべて本文に明記しています。

この記事で検証する疑問

  • 「表面利回り − 金利」「実質利回り − 金利」で測ったイールドギャップは、返済額を反映した正しい値とどれだけズレるのか
  • 一般的に言われる「2%以上」という目安を満たしていても、借入が不利に働く条件は存在するのか
  • 存在するなら、その境界となる金利は融資期間ごとに何%なのか
  • イールドギャップがマイナスのとき、自己資金を減らして借入を増やすと、自己資金に対する利回り(CCR)はどう動くのか
  • 融資期間を延ばしてイールドギャップを改善させることは、リターンを増やしていることになるのか

なぜ「利回り − 金利」では足りないのか

イールドギャップは本来、「物件が生む収益率」と「借入にかかるコスト率」の差を見る指標です。問題は、後者を「金利」で代表させてよいのかという点にあります。

元利均等返済では、毎年支払う金額は「利息」+「元本返済」です。このうち元本返済分は、金利がゼロでも発生します。したがって、借入100に対する年間の資金流出は、金利より必ず大きくなります。

この「年間返済額が借入額の何%にあたるか」を示したものがローン定数Kです。

ローン定数K(%) = 年間元利返済額 ÷ 借入額 × 100

そして収益側は、購入諸費用まで含めた総投下資本に対するNOIの比率、FCR(総収益率)で測ります。これは一般に「実質利回り」と呼ばれているものと同じ計算です。

FCR(%) = NOI ÷ (物件価格+購入諸費用) × 100

正しいイールドギャップは、この2つの差です。

イールドギャップ(YG) = FCR − K

「利回り − 金利」は、Kのうち利息部分だけを引いた値であり、元本返済分をコストとして数えていません。この差がどれくらいの大きさなのかを、次に計算します。

前提条件(固定するものと変えるもの)

今回は特定の物件価格を設定していません。ローン定数KもFCRもCCRも比率で表される指標であり、物件価格を2倍にしても家賃・借入額・自己資金が同じ比率で動く限り、結論は変わらないためです。そこで物件価格を100とした比率ですべてを計算しています。ご自身の検討物件の金額に読み替えてご利用ください。

固定する条件

項目

設定

設定の理由

物件価格

100(比率表示)

比率指標のため金額に依存しない

購入諸費用

物件価格の7%

仲介手数料・登記費用・不動産取得税等の概算。自己資金から支出

空室・滞納損失

満室想定賃料の5%

比較の基準を揃えるための固定値

運営費(OPEX)

満室想定賃料の20%

管理費・修繕費・公租公課・保険料等の合計を想定

返済方式

元利均等・毎月返済

金融機関の返済シミュレーションで一般的な方式

この前提では、表面利回り8%の物件のNOIは物件価格の6.00%、FCR(実質利回り)は5.61%になります。計算は次のとおりです。

NOI = 8.00 ×(1−0.05)− 8.00 × 0.20 = 6.00
FCR = 6.00 ÷ 107 × 100 = 5.61%

変える条件

  • 借入金利:1.5%/2.0%/2.5%/3.0%/3.5%/4.0%
  • 融資期間:20年/25年/30年/35年
  • LTV(借入 ÷ 物件価格):0%/50%/60%/70%/80%/90%
  • 表面利回り:6%/7%/8%/9%/10%/12%(境界金利の逆算のみ)

金利の設定範囲について:日本銀行が公表する短期プライムレート(主要行・最頻値)は2024年9月まで1.475%でしたが、2026年8月3日実施分では2.375%となっています。長期プライムレートも2026年8月12日実施分で3.25%です(情報確認日:2026年8月23日)。上記の金利水準は、この環境で条件を振って違いを見るための比較用の値であり、特定の金融機関の提示金利を示すものではありません。

結果1:ローン定数Kは金利より2〜4ポイント大きい

まず、金利と融資期間の組み合わせごとにKを計算しました。カッコ内は「K − 金利」、つまり元本返済に相当する部分です。

金利

20年

25年

30年

35年

1.5%

5.79%(+4.29)

4.80%(+3.30)

4.14%(+2.64)

3.67%(+2.17)

2.0%

6.07%(+4.07)

5.09%(+3.09)

4.44%(+2.44)

3.98%(+1.98)

2.5%

6.36%(+3.86)

5.38%(+2.88)

4.74%(+2.24)

4.29%(+1.79)

3.0%

6.66%(+3.66)

5.69%(+2.69)

5.06%(+2.06)

4.62%(+1.62)

3.5%

6.96%(+3.46)

6.01%(+2.51)

5.39%(+1.89)

4.96%(+1.46)

4.0%

7.27%(+3.27)

6.33%(+2.33)

5.73%(+1.73)

5.31%(+1.31)

読み取れることが2つあります。

1つ目は、Kは金利より1.3〜4.3ポイント大きいということです。「利回り − 金利」でイールドギャップを測ると、この分だけコストを少なく見積もることになります。融資期間20年・金利1.5%なら、実際のコスト率は5.79%であって1.5%ではありません。

2つ目は、期間が短いほど金利の影響が相対的に小さくなることです。融資期間20年では、金利が1.5%から4.0%へ2.5ポイント上がってもKは5.79%→7.27%と1.48ポイントしか動きません。一方35年では3.67%→5.31%で1.64ポイント動きます。返済額に占める元本部分の比重が大きい短期融資ほど、金利変動に対する返済額の感応度は小さくなります。

ここから、Kには下限があることも分かります。金利が0%でも、元本は期間内に返し切る必要があるためです。

融資期間

金利0%の場合のK(下限)

20年

5.00%

25年

4.00%

30年

3.33%

35年

2.86%

つまりFCR(実質利回り)が5.00%に満たない物件を20年融資で買う場合、金利がゼロでもイールドギャップはマイナスになります。金利交渉で解決できる問題ではありません。

今回の表は空室5%・運営費20%・諸費用7%を固定した比較値です。ご自身の借入額・金利・融資期間でのローン定数Kは、不動産投資ローンシミュレーション(無料)に条件を入力すると「Loan Constant」として表示されます。年間返済額・DSCR・Debt Yieldと並べて確認できます。

結果2:「実質利回り − 金利=+2.11pt」でも、実際は−1.35ptだった

表面利回り8%(FCR 5.61%)・LTV80%の条件で、3つの測り方を並べます。

融資期間

金利

表面 − 金利

実質 − 金利

FCR − K(正しいYG)

年間CF

DSCR

20年

1.5%

+6.50pt

+4.11pt

−0.18pt

+1.37

1.30

20年

2.0%

+6.00pt

+3.61pt

−0.46pt

+1.14

1.24

20年

3.0%

+5.00pt

+2.61pt

−1.05pt

+0.68

1.13

20年

3.5%

+4.50pt

+2.11pt

−1.35pt

+0.43

1.08

25年

2.0%

+6.00pt

+3.61pt

+0.52pt

+1.93

1.47

25年

3.0%

+5.00pt

+2.61pt

−0.08pt

+1.45

1.32

30年

2.0%

+6.00pt

+3.61pt

+1.17pt

+2.45

1.69

30年

4.0%

+4.00pt

+1.61pt

−0.12pt

+1.42

1.31

35年

2.0%

+6.00pt

+3.61pt

+1.63pt

+2.82

1.89

35年

4.0%

+4.00pt

+1.61pt

+0.29pt

+1.75

1.41

※年間CFは物件価格を100としたときの税引前キャッシュフロー。物件価格8,000万円なら+1.14は年間約91万円にあたります。

融資期間20年・金利3.5%の行を見てください。「実質利回り − 金利」は+2.11ptで、多くの解説記事が示す「2%以上」という目安を満たしています。しかし正しいイールドギャップは−1.35ptです。3.46ポイントのズレがあり、符号まで逆転しています。

この条件がどの程度あるのかを網羅的に調べたところ、表面利回り6〜10%・融資期間20〜35年・金利0.5〜6.0%(0.1%刻み)の範囲で、「実質利回り − 金利が2.0pt以上」を満たしながらイールドギャップがマイナスになる組み合わせが154通り存在しました。代表例は次のとおりです。

表面利回り

FCR(実質)

融資期間

金利

実質 − 金利

FCR − K

6%

4.21%

25年

2.0%

+2.21pt

−0.88pt

6%

4.21%

30年

2.0%

+2.21pt

−0.23pt

7%

4.91%

25年

2.5%

+2.41pt

−0.48pt

8%

5.61%

20年

3.5%

+2.11pt

−1.35pt

9%

6.31%

20年

4.0%

+2.31pt

−0.96pt

10%

7.01%

20年

5.0%

+2.01pt

−0.91pt

注意していただきたいのは、これらの条件でもキャッシュフローは黒字でDSCRも1.0を超えていることです。イールドギャップがマイナスであることは「赤字になる」という意味ではありません。次に、では何を意味するのかを確認します。

結果3:イールドギャップがマイナスだと、借入を増やすほどCCRが下がる

イールドギャップの符号が実務上何を意味するのかは、LTVを動かすと分かります。表面利回り8%の物件について、LTVを0%から90%まで変えたときのCCR(自己資金に対する税引前キャッシュフローの利回り)を計算しました。

融資期間20年・金利2.0%(K=6.07%、YG=−0.46pt)

LTV

借入

自己資金

年間CF

CCR

0%(現金)

0

107.0

+6.00

5.61%

50%

50

57.0

+2.96

5.20%

70%

70

37.0

+1.75

4.73%

80%

80

27.0

+1.14

4.24%

90%

90

17.0

+0.54

3.16%

融資期間30年・金利2.0%(K=4.44%、YG=+1.17pt)

LTV

借入

自己資金

年間CF

CCR

0%(現金)

0

107.0

+6.00

5.61%

50%

50

57.0

+3.78

6.64%

70%

70

37.0

+2.90

7.82%

80%

80

27.0

+2.45

9.08%

90%

90

17.0

+2.01

11.81%

同じ物件・同じ金利で、融資期間が違うだけでレバレッジの向きが逆転しています。30年ならLTVを90%まで上げるとCCRは5.61%→11.81%へ2.1倍になりますが、20年では5.61%→3.16%へ下がります。後者が「負のレバレッジ」と呼ばれる状態です。

金利が3.5%・20年(YG=−1.35pt)まで悪化すると、LTV90%でCCRは−1.55%となり、年間CFがマイナスに転じます。ここまで来ると自己資金を追加投入しながら保有することになります。

つまりイールドギャップの符号は、「借入を増やす方向に動いてよいかどうか」を判定する指標です。プラスなら借入を増やすほど自己資金効率が上がり、マイナスなら下がります。「何%以上あれば安全」という安全性の指標として使うと、意味を取り違えます。

結果4:融資期間を延ばしても、総合リターンは16.4%のまま変わらなかった

ここまでの結果を見ると「では融資期間を最大限延ばせばよい」と考えたくなりますが、そう単純ではありません。

金利2.0%・LTV80%で、融資期間だけを変えた場合を見ます。CCRに加えて、初年度に返済した元本(残債の減少額=将来の売却時に手元へ戻る部分)も並べました。

融資期間

K

YG

年間CF

CCR

初年度元本返済

CCR+元本返済

DSCR

20年

6.07%

−0.46pt

+1.14

4.24%

3.29

16.41%

1.24

25年

5.09%

+0.52pt

+1.93

7.15%

2.49

16.38%

1.47

30年

4.44%

+1.17pt

+2.45

9.08%

1.97

16.36%

1.69

35年

3.98%

+1.63pt

+2.82

10.44%

1.59

16.35%

1.89

CCRは4.24%から10.44%へ2.5倍近く変わっています。イールドギャップも−0.46ptから+1.63ptへ改善しています。ところが、キャッシュフローと元本返済を合計した自己資金に対する総合リターンは、16.41%から16.35%へ0.06ポイントしか動いていません

理由は計算式を分解すると分かります。

CF + 元本返済 =(NOI − 年間返済額)+(年間返済額 − 利息)= NOI − 利息

初年度に支払う利息は、借入残高と金利だけでほぼ決まります。融資期間を変えても初年度の残高は同じですから、利息はほとんど変わりません(今回の条件では借入80に対し1.570〜1.585と、0.015しか差がありません)。

したがって融資期間を延ばして得られる「イールドギャップの改善」は、リターンを生み出しているのではなく、元本返済という形で積み上がるはずだった分をキャッシュフローに付け替えているだけということになります。手元資金の余裕は確実に増えますが、その分だけ残債の減りは遅くなり、売却時の手残りは減ります。

この点は、融資期間25年・30年・35年で何が変わるかを自己資金4パターン×12通りで検証した記事でも、出口の手残りとして同じトレードオフが確認できます。あわせてご覧ください。

結果5:負のレバレッジになる境界金利を逆算する

「自分の検討している物件は、何%の金利までなら借入がプラスに働くのか」を逆算しました。FCR=Kとなる金利、つまりイールドギャップがちょうどゼロになる金利です。

表面利回り

FCR(実質利回り)

20年

25年

30年

35年

6%

4.21%

成立せず

0.40%

1.61%

2.37%

7%

4.91%

成立せず

1.69%

2.76%

3.42%

8%

5.61%

1.16%

2.87%

3.82%

4.40%

9%

6.31%

2.41%

3.96%

4.82%

5.33%

10%

7.01%

3.58%

4.99%

5.76%

6.21%

12%

8.41%

5.73%

6.91%

7.53%

7.87%

「成立せず」は、金利0%でもKがFCRを上回るため、どの金利水準でもイールドギャップがプラスにならないことを示します。

この表からは、融資期間が境界金利をどれだけ動かすかが読み取れます。表面利回り8%の物件では、20年融資なら金利1.16%を超えた時点で負のレバレッジに入りますが、35年融資なら4.40%まで許容されます。同じ物件でも、期間の違いだけで許容金利が3.24ポイント違います。

逆に、金利交渉より期間交渉のほうが効きやすい場面があることも意味します。表面利回り7%の物件を20年融資で検討している場合、金利を0.3%下げてもらってもイールドギャップはプラスになりません。期間を25年に延ばせれば境界は1.69%まで動きます。

ただし融資期間は自由に選べるものではありません。建物の構造や法定耐用年数の残り、借主の年齢、金融機関の商品設計によって上限が決まります。特に築古の木造物件では期間が伸びず、この表の20年列に近い状態になりやすい点は、旧耐震木造アパートを融資期間4年・DSCR0.5倍から検証した記事で扱っています。

結果から分かること

  1. 「利回り − 金利」は、コストを1.3〜4.3ポイント過小に見積もる。元本返済分がコスト側に入っていないためで、融資期間が短いほどズレは大きくなる。
  2. 「実質利回り − 金利で2%以上」という目安は、単独では安全性を担保しない。今回の検証範囲だけで、この目安を満たしながらイールドギャップがマイナスになる組み合わせが154通り確認できた。
  3. イールドギャップの符号は「安全かどうか」ではなく「借入を増やす方向に動いてよいか」を示す。マイナスでもキャッシュフローが黒字でDSCRが1.0を超えることはある。逆にプラスでも、家賃下落や空室でNOIが落ちれば返済は苦しくなる。
  4. 融資期間を延ばして得たイールドギャップの改善は、リターンの増加ではない。キャッシュフローと元本返済の合計は、期間を20年から35年に変えても16.41%→16.35%とほぼ一定だった。増えているのは手元資金の余裕であり、その対価として残債の減りが遅くなる。
  5. 低利回り物件は、短期融資では構造的に負のレバレッジになる。FCRが5.00%未満の物件を20年融資で買う場合、金利がゼロでもイールドギャップはマイナスになる。

投資判断への使い方

今回の結果は、次のような順序で使えます。

1. まず自分の物件のFCRとKを実際に計算する。表面利回りと金利を引き算するのではなく、NOIを取得総額で割った値と、年間返済額を借入額で割った値を出します。この2つが揃って初めてイールドギャップが分かります。

2. 符号を見て、自己資金の入れ方を決める。プラスなら自己資金を抑えて借入を厚くするほど自己資金効率は上がります。マイナスなら逆で、借入を増やすほどCCRは下がります。ただし自己資金を厚くすれば手元資金が減り、次の物件に回せる資金も減ります。どちらが正しいかは、投資規模を拡大したいのか、1件の手残りを最大化したいのかによって変わります。

3. 期間交渉と金利交渉のどちらが効くかを、境界金利表で確認する。結果5の表で、検討中の利回り帯と期間の交点を見れば、金利にどれだけの余地があるかが分かります。

4. イールドギャップだけで結論を出さない。今回の分析はすべて初年度時点の静的な計算です。家賃が下がればFCRは下がり、Kは変わりません。つまり保有期間中にイールドギャップは自然に縮小していきます。この推移まで含めて判断する必要があります。

保有期間中にNOIが変化した場合の手残りの推移や、空室率と金利が同時に悪化した場合の年次キャッシュフローは、キャッシュフロー計算機(無料)でご自身の条件を入力して確認できます。今回の記事が扱ったのは初年度の1時点のみで、35年分の推移は含んでいません。

この分析で分からないこと

  1. 初年度時点の静的な計算である。家賃下落、空室率の変動、修繕費の増加、大規模修繕の実施を反映していません。2年目以降はFCRが変化し、イールドギャップも変わります。
  2. 税引前の数値である。減価償却費、所得税・住民税、法人税を反映していません。税引後で見た場合、CCRの水準も順位も変わる可能性があります。減価償却が終わった年の影響は別記事で試算しています。
  3. 出口(売却)を含んでいない。元本返済分を「戻ってくる部分」として扱いましたが、実際に現金化できるのは売却できたときであり、売却価格が残債を下回れば戻りません。IRRのような期間全体のリターン指標とは別物です。
  4. 空室5%・運営費20%・諸費用7%という仮定に依存している。運営費率が25%なら同じ表面利回り8%でもFCRは5.61%から5.23%に下がり、境界金利はすべて下方向にずれます(20年融資の境界金利は1.16%から0.46%へ)。
  5. 元利均等・毎月返済を前提としている。元金均等返済、据置期間、変動金利の見直しルール(5年ルール・125%ルール等)、繰上返済は反映していません。
  6. 融資期間の選択可能性を考慮していない。表は「その期間で借りられる」ことを示すものではありません。実際の期間は建物構造、残存耐用年数、借主の属性、金融機関の方針で決まります。
  7. 個別物件の競争力を含まない。同じ表面利回りでも、周辺の新規供給、駅距離、間取りの需要適合度によって将来のNOIは変わります。

まとめ

イールドギャップを「利回り − 金利」で計算すると、元本返済分がコストから抜け落ちます。今回の検証では、そのズレは1.3〜4.3ポイントに達し、「実質利回り − 金利で+2.11pt」という一般的な目安を満たす条件でも、正しく測ると−1.35ptの負のレバレッジになっていました。

一方で、負のレバレッジは「赤字」でも「買ってはいけない物件」でもありません。本記事の表に示した負のイールドギャップの条件では、いずれもキャッシュフローは黒字で、DSCRは1.08〜1.32を確保していました。示しているのは「借入を厚くする方向に動くと自己資金効率が下がる」という一点です。

また、融資期間を延ばしてイールドギャップを改善させても、キャッシュフローと元本返済を合わせた自己資金あたりの総合リターンは16.4%前後でほとんど動きませんでした。期間を延ばすことで得られるのは、リターンの増加ではなく手元資金の余裕と、その対価としての残債の減りの遅さです。どちらを優先すべきかは、金利上昇や空室に対する耐性をどこまで確保したいか、いつ売却するつもりかによって変わります。

単一の指標では、この判断はできません。イールドギャップは借入の方向性を、DSCRは返済余力を、IRRは期間全体の効率を、残債推移は出口の可能性を、それぞれ別の角度から示しています。

RE-AIでは、こうした指標を個別に確認するのではなく、収益性・価格査定・融資・リスク・出口戦略を同時に計算したうえで、どこに弱さがあるかを提示する設計にしています。ただし本記事と同様、将来のNOIや売却価格を保証するものではなく、投資判断そのものを代行するものでもありません。

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参考資料・出典

計算方法:ローン定数K、キャッシュフロー、CCR、境界金利はすべて元利均等・毎月返済(月利=年利÷12、返済回数=年数×12)で算出しています。境界金利は金利0〜20%の範囲を二分法で200回反復して求めました。本記事の数値は前提条件に基づくシミュレーションであり、実在物件の統計値でも、RE-AIの診断実績データでもありません。情報確認日:2026年8月23日。

本記事は投資助言ではありません。掲載した計算結果は特定の条件下での試算であり、投資成果や融資条件を保証するものではありません。最終的な判断はご自身の責任で行い、金融機関・税理士・不動産鑑定士等の専門家への確認を推奨します。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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