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収益性・収支

収益物件は1棟集中か2棟分散か|同じエリアに分けると分散効果はゼロ、割に合う追加コストの上限は年24.3万円だった

収益物件は1棟集中か2棟分散か|同じエリアに分けると分散効果はゼロ、割に合う追加コストの上限は年24.3万円だった

「1棟にまとめるより、複数棟に分けたほうがリスクが減る」——収益物件の規模を検討するときに、ほぼ必ず出てくる説明です。片方が空いても、もう片方が支えてくれる。直感的には正しく聞こえます。

ただ、この説明には数字がありません。分散によって下振れがいくら改善するのか、その改善幅は棟を分けることで増えるコストを上回るのか。そこまで計算した記事は、ほとんど見かけません。

そこでこの記事では、価格・戸数・賃料・融資条件をすべて同じにそろえた「1棟16戸」と「2棟×8戸」を用意し、空室の出方を40万回シミュレーションしました。さらに2棟の空室が連動する度合い(相関係数)を0から1まで動かし、分散が割に合うために許される追加コストの上限を逆算しています。

結論を先に書くと、分散が改善するのは下振れだけで、平均キャッシュフローは1円も変わりません。そして改善幅の上限は年24.3万円。2棟を同じエリアに置いた場合は、ほぼゼロでした。

この記事で検証する疑問

  • 同じ価格・同じ戸数なら、1棟にまとめるのと2棟に分けるのとで、年間キャッシュフローの分布はどう変わるのか
  • 2棟の空室がどれだけ連動しないか(相関係数)によって、分散効果はどこまで変わるのか
  • 分散のために許される「棟が増えることで増える年間コスト」の上限はいくらか
  • 棟を分けると、建物の外皮面積や修繕費は実際にどれだけ増えるのか
  • DSCRが基準を下回る確率は、分散すると必ず下がるのか

分析の設計:なぜ「許される追加コストの上限」を逆算するのか

1棟と2棟のどちらが有利かは、物件ごとの条件で変わります。ですからこの記事では「どちらが正解か」を決めにいきません。代わりに、分散によって得られる金額を先に求め、それを追加コストの予算として提示するという逆算の形を取りました。

読者が自分のケースで判断するには、「棟を分けたらコストが年いくら増えるか」だけ見積もればよくなります。それが逆算した上限を超えていれば、分散は割に合いません。

なお、この記事は収益物件の収支計算完全ガイドで扱っているNOI・DSCR・キャッシュフローの考え方を前提にしています。戸数そのものが空室リスクに与える影響は「空室率5%」は平均値でしかないで検証済みで、この記事は「同じ戸数を、1棟に置くか2棟に割るか」という別の軸を扱います。

前提条件:総額を先に決めず、1戸あたりの条件から積み上げる

比較を公平にするため、総投資額・戸数・賃料・融資条件をすべて同一にそろえました。物件価格は「1戸あたり価格×戸数」で決めており、先に総額を決めてはいません。

戸数を16戸としたのは、2にも4にも割り切れて、棟数を変えた比較ができるためです。構造を軽量鉄骨造(法定耐用年数27年)の築7年としたのは、残存耐用年数が20年となり、融資期間20年の妥当性を議論の対象から外せるためです。

項目

設定

設定の理由

構造・築年

軽量鉄骨造2階建て・築7年

残存耐用年数20年=融資期間20年に一致

戸数・専有面積

16戸・各25㎡(1K)

2棟・4棟に分割可能

1戸あたり価格

650万円

地方中核市郊外の単身向けを想定

物件価格

10,400万円

650万円×16戸(総額は結果として決まる)

月額賃料

1戸5.0万円

表面利回り9.23%と整合

満室年収

960万円

5.0万円×12ヶ月×16戸

借入額・LTV

7,800万円・75%

頭金2,600万円

金利・期間・返済方式

2.40%・20年・元利均等

年間返済額491.4万円(月40.9万円)

諸費用

884万円(価格の8.5%)

自己資金合計3,484万円

管理委託料

実効収入の5%

収入連動

その他運営費

年223万円

固都税85・損害保険14・共用部水光熱/法定点検/清掃38・修繕積立86

NOIは「実効総収入 −(実効総収入×5%)− 223万円」で計算しています。この条件で稼働率を動かすと次のようになります。

稼働率

実効総収入

NOI

DSCR

年間CF(税引前)

100%(満室)

960.0万円

689.0万円

1.402

197.6万円

95%

912.0万円

643.4万円

1.309

152.0万円

92%

883.2万円

616.0万円

1.254

124.6万円

90%

864.0万円

597.8万円

1.216

106.4万円

85%

816.0万円

552.2万円

1.124

60.8万円

満室でDSCR1.40、稼働90%でちょうど1.22という水準です。金融機関が目安にすることの多い1.2前後に対して、余裕が大きいとは言えない設計になっています(DSCRの基本的な見方は不動産投資のDSCRとはを参照してください)。

空室の出方をどうモデル化したか

「空室率8%」という1つの数字で計算すると、1棟と2棟の差は絶対に出ません。差が出るのは、空室率が年によって振れるからです。そこで空室を2つの層に分けてモデル化しました。

  • エリア層:その棟が立つエリアの年間空室率を、平均8.0%・標準偏差5.0ポイントの正規分布から引きます(0〜40%で切り捨て)。周辺の新規供給、競合の家賃改定、地域の転入超過といった、棟全体に効くショックを表します。
  • 戸別層:各戸の年間空室月数を、二項分布(12ヶ月、上で引いたエリア空室率)から引きます。退去の発生タイミングという、戸ごとにばらつく部分です。

1棟16戸では、エリア層を1回だけ引きます。2棟×8戸では2回引き、2つの引き方がどれだけ似ているかを相関係数ρで調整します。ρ=1.0なら2棟は完全に同じ動きをし、ρ=0なら完全に独立です。試行回数は40万回です。

ρ=1.0の2棟は、計算上1棟16戸とまったく同じ結果になるはずです。実際、後の表でその一致が確認でき、モデルの検算になっています。

結果①:分散しても平均は1円も増えない

まず押さえるべき事実があります。2棟に分けても、年間キャッシュフローの平均値は123.5万円のままで変わりません。ρをどう動かしても同じです。

当然といえば当然で、分散は期待値を動かす操作ではなく、ばらつきを縮める操作だからです。「分散したほうが儲かる」という説明は、この時点で成立しません。変わるのは分布の形だけです。

ケース

CF平均

CF標準偏差

下位5%平均CF

下位1%平均CF

1棟16戸

123.5万円

46.9万円

19.9万円

▲14.1万円

2棟×8戸(ρ=0)

123.5万円

35.4万円

44.2万円

18.6万円

標準偏差は46.9万円から35.4万円へ縮み、悪い年の深さ(下位5%の平均)は19.9万円から44.2万円へ浅くなりました。分散が買っているのは利益ではなく、下振れの浅さです。

結果②:同じエリアに2棟並べても、分散効果はほぼゼロだった

ここが今回の分析でもっとも実務的な結果です。相関係数を動かすと、下振れの改善幅は次のように変わります。

2棟の空室相関ρ

CF標準偏差

下位5%平均CF

1棟との差

下位1%平均CF

DSCR1.2割れ確率

1棟16戸(基準)

46.9万円

19.9万円

▲14.1万円

30.1%

ρ=0.0(完全に独立)

35.4万円

44.2万円

+24.3万円

18.6万円

24.8%

ρ=0.2

38.0万円

38.3万円

+18.5万円

12.7万円

26.2%

ρ=0.4

40.4万円

32.6万円

+12.7万円

7.1万円

27.4%

ρ=0.6

42.6万円

30.9万円

+11.0万円

▲3.2万円

28.4%

ρ=0.8

44.8万円

25.5万円

+5.6万円

▲8.3万円

29.3%

ρ=1.0(完全に連動)

46.9万円

20.0万円

+0.1万円

▲14.1万円

30.0%

ρ=1.0の行が1棟16戸とほぼ一致していることが、計算の検算になります。そして重要なのは、棟を2つに分けること自体には、分散効果が1円もないという点です。効果はすべて「2棟の空室が連動しない度合い」から来ています。

同じ市内、同じ最寄駅圏、同じ間取り、同じ入居者層で2棟を買えば、周辺に大型物件が竣工したときも、地域の転出が増えたときも、2棟は同時に空きます。それはρが1に近い状態であり、表の最下行、つまり分散効果ゼロに近づきます。

逆に、需要構造の異なる地域に分けられればρは下がります。賃貸の需給が地域によって実際に分かれていることは、貸家着工・滅失・世帯増から47都道府県の純供給圧を計算した記事で確認しています。全国一律に緩んでいるわけではないため、地域を分ければρは1より小さくなります。ただし、それがどこまで下がるかは事前には分かりません。

結果③:分散が割に合う追加コストの上限は、年24.3万円だった

下位5%平均CFの改善幅は、そのまま「棟が増えることで年間コストが何万円まで増えても、悪い年の手残りが1棟より悪くならないか」の上限になります。

2棟の空室相関ρ

許される年間追加コストの上限

満室年収960万円に対する比率

ρ=0.0

24.3万円

2.53%

ρ=0.2

18.5万円

1.93%

ρ=0.4

12.7万円

1.32%

ρ=0.6

11.0万円

1.15%

ρ=0.8

5.6万円

0.58%

ρ=1.0

0.1万円

0.01%

もっとも有利なρ=0でも、予算は年24.3万円しかありません。満室年収の2.5%です。現実的にありうるρ=0.4〜0.6であれば、年11〜13万円まで縮みます。

結果④:DSCR1.3割れ確率は、分散すると「上がる」

分散は下振れを浅くしますが、同時に上振れも削ります。この非対称でない性質が、判断基準の置き場所によって結論を逆転させます。

ケース

DSCR平均

DSCR1.2割れ確率

DSCR1.3割れ確率

CFが赤字になる確率

1棟16戸

1.251

30.1%

67.0%

0.86%

2棟×8戸(ρ=0)

1.251

24.8%

73.5%

0.10%

DSCR1.2割れ確率は30.1%から24.8%へ下がりましたが、1.3割れ確率は67.0%から73.5%へ上がっています

理由は単純です。この物件のDSCRの平均は1.251で、判断基準の1.3は平均より上にあります。分散は分布を平均のまわりに集める操作なので、平均より上の基準を超える確率は減る=下回る確率は増えます。一方、平均より下にある1.2は、下振れが浅くなった分だけ割れにくくなります。

分散が効くのは、基準値が分布の平均より下にあるときだけです。「返済が回らない水準を避けたい」なら分散は効きますが、「毎年1.3を確保したい」なら分散はむしろ逆効果になります。自分がどちらの心配をしているのかで、結論が変わります。

結果⑤:4棟に割ると改善は年42.2万円まで伸びる

棟数をさらに増やすとどうなるかも計算しました(すべてρ=0、つまり最大限に有利な条件です)。

構成

CF標準偏差

下位5%平均CF

1棟との差

DSCR1.2割れ確率

1棟×16戸

46.9万円

19.9万円

30.0%

2棟×8戸

35.5万円

44.2万円

+24.4万円

24.8%

4棟×4戸

28.0万円

62.0万円

+42.2万円

19.9%

1棟→2棟で+24.4万円、2棟→4棟でさらに+17.8万円。棟を割るほど効果は伸びますが、伸び方は鈍ります。一方で、後述するコストは棟数に比例して増えます。棟数を増やし続ければどこかで逆転します。

加えて、4棟×4戸のように1棟あたりの戸数が小さくなると、1戸あたりの運営費が上がる方向に働きます。国土交通省の令和5年度マンション総合調査は、駐車場使用料等からの充当額を含む月/戸当たり管理費の平均を17,103円とし、「総戸数規模が大きくなるほど低くなる傾向にある」と明記しています。分譲マンションの管理組合会計であり、賃貸アパートの運営費とそのまま同じではありませんが、小さい建物ほど1戸あたりのコストが重くなるという方向性は共通します。収益物件側での検証は同じ表面利回り8%でも実質利回りは1.68pt割れるで行っています。

分散のコストはどこに出るか:外壁面積は21.1%増える

棟を分けたときに確実に増えるコストのうち、推定ではなく幾何学的に計算できるのが建物の外皮面積です。延床面積が同じでも、小さい建物を2つ作れば外周が長くなります。

専有25㎡に共用部20%を加えて1戸あたり30㎡、2階建て、奥行8mの長方形として計算しました。

項目

1棟16戸

2棟×8戸(合計)

延床面積

480㎡

480㎡

同じ

1棟あたり間口×奥行

30m×8m

15m×8m

外壁面積

456㎡

552㎡

+96㎡(+21.1%)

屋根面積

240㎡

240㎡

同じ

塗替え1回の費用

358万円

446万円

+88万円

12年周期の年換算

+7.3万円/年

費用は外壁塗装+足場5,500円/㎡、屋根3,000円/㎡、現場諸経費35万円/現場(2棟なら2現場)で計算しています。単価は工事内容・地域・時期で変わるため、金額そのものより外壁面積が21.1%増えるという構造のほうが重要です。修繕費の水準そのものは修繕費「家賃の5%」で足りるのかで検証しています。

この年7.3万円を、さきほどの予算表と突き合わせます。

  • ρ=0.8以上:予算5.6万円。外壁面積の差だけで予算を使い切り、分散は割に合いません。
  • ρ=0.6:予算11.0万円。外壁差を引いた残りは年3.7万円。
  • ρ=0.4:予算12.7万円。残りは年5.4万円。
  • ρ=0.0:予算24.3万円。残りは年17.0万円。

外壁以外にも、損害保険が2契約になること、法定点検・清掃巡回に棟単位の最低料金があること、遠隔地なら管理会社が2社になること、融資を2本組めば事務手数料と抵当権設定費用が2回発生すること(諸費用の内訳は不動産投資の諸費用は本当に7%なのかを参照)が積み上がります。残り年3〜5万円の枠で、これらをすべて収めるのは現実的ではありません。

価格で取り返す場合も計算しておきます。年7.3万円のNOI差を還元利回り8.0%で価格に換算すると91万円。総額10,400万円の0.88%、1戸あたり約5.7万円です。2棟に分けるなら、1戸あたり価格がそれ以上安くなければ、外壁面積の差すら取り返せません。

感応度:エリアのブレが大きいほど、分散の価値は上がる

ここまでの結果はエリア空室率の標準偏差を5.0ポイントと置いた上でのものです。この前提を変えると、分散の価値も変わります。

エリア空室率の標準偏差

1棟の下位5%平均CF

2棟(ρ=0)の下位5%平均CF

改善幅

3.0ポイント

55.4万円

67.8万円

+12.3万円

5.0ポイント(基準)

20.0万円

44.3万円

+24.3万円

7.0ポイント

▲15.7万円

20.0万円

+35.7万円

賃貸需要が安定していてエリア空室率のブレが小さい場所ほど、分散の価値は小さくなります(σ=3ポイントなら年12.3万円しかありません)。逆に、需給が読みにくい地域ほど分散の価値は上がります。

ここには一見すると矛盾があります。分散の価値が高いのは需給が不安定な地域であり、そういう地域こそ1物件あたりの判断を慎重にすべき場所でもある、ということです。分散はエリア選定の失敗を埋め合わせる手段ではありません。

数字にしていないが、分散側に効く要素

今回のシミュレーションは年間キャッシュフローとDSCRだけを見ています。定量化していないものの、分散側に有利に働く要素を挙げておきます。

  • 部分売却ができる:2棟なら片方だけを売って残債を圧縮できます。1棟1.04億円より5,200万円のほうが買い手の融資は付きやすく、売却価格の天井は買い手がどこまで借りられるかで決まります(売却価格の天井は「買い手が何年借りられるか」で決まる)。これは出口の柔軟性として実質的な価値があります。
  • 大規模修繕の時期をずらせる:2棟の築年が違えば、外壁塗替えの資金需要が同じ年に集中しません。
  • 災害の同時被災を避けられる:地域を分ければ、同一の地震・水害で両方が同時に損害を受ける確率は下がります。

一方、分散側に不利で定量化していない要素もあります。管理の手間が2倍になること、遠隔地では自分で現地を確認しにくいこと、そして入退去に伴う原状回復・募集費用(退去1回30.7万円の入替コスト)は今回のモデルに含めていません。

投資判断への使い方

この分析から取り出せる判断材料は3つです。

  • 「複数棟だからリスクが低い」は成立しない。効いているのは棟数ではなく、棟どうしの空室が連動しない度合いです。同一エリアに2棟なら、今回の計算では改善は年0.1万円でした。
  • 分散の価値には上限がある。もっとも有利な条件でも年24.3万円、満室年収の2.5%です。棟が増えて年間コストがそれ以上増えるなら、分散は下振れ対策としても機能しません。
  • 判断基準が平均より上にあるときは、分散が逆効果になる。DSCR1.2割れは減りましたが、1.3割れは増えました。自分が避けたい水準がどこにあるかを先に決める必要があります。

今回の試算は表面利回り9.23%・LTV75%・金利2.40%・期間20年という1つの条件セットの上に成り立っています。借入額や融資期間が変われば、同じ空室のブレでもDSCRの反応は変わります。自分の物件のNOIと融資条件でDSCRと返済後キャッシュフローを確認したい場合は、RE-AIの無料DSCRシミュレーターで返済余力を計算することができます。金利を0.5ポイントずつ上げたときの変化と、DSCRが基準を下回る金利水準も同じ画面で確認できます。

なお、今回のように空室・修繕・融資条件・出口を同時に動かすと、表計算では確認項目が増えていきます。RE-AIは複数条件をまとめて試算できるよう設計していますが、棟の分け方そのものを最適化する機能ではありません。

この分析で分からないこと

  • 空室相関ρは観測できません。この記事はρを0〜1で動かして感度を示しただけで、実際の2棟のρがいくつになるかは事前には分かりません。地域・物件タイプ・入居者層が近いほど1に近づく、という方向性が言えるだけです。
  • エリア空室率の分布は仮定です。平均8.0%・標準偏差5.0ポイントの正規分布という設定は、実測データではありません。σを変えると結論が動くことは感応度の章で示したとおりです。
  • 相関と因果は別です。地域を分けた投資家の成績が良かったとしても、それが分散のおかげとは限りません。地域を分けられる投資家は資金力や情報量でも有利である可能性があります。
  • 1年だけの分析です。IRRや出口価格、家賃の経年下落、デッドクロスは織り込んでいません。長期の影響は含まれていません。
  • 融資条件を同一としています。実際には、1.04億円の1棟と5,200万円の2棟で、金利・期間・取り扱う金融機関が変わることがあります。ここが変われば結論も変わります。
  • 入替コスト・滞納・修繕の突発性は含めていません。空室の発生だけをモデル化しており、退去に伴う原状回復費や募集費用は計算に入っていません。

まとめ

  • 同じ価格・同じ戸数・同じ融資条件で1棟16戸と2棟×8戸を40万回試算したところ、年間CFの平均は123.5万円で両者とも変わりませんでした。分散が変えるのは分布の形だけです。
  • 下位5%平均CFの改善幅は、2棟の空室相関がゼロで+24.3万円、相関1.0(=同一エリア)で+0.1万円。効いているのは棟数ではなく、連動しない度合いです。
  • この改善幅は、そのまま許される年間追加コストの上限になります。現実的なρ=0.4〜0.6なら年11〜13万円です。
  • 棟を2つに割ると外壁面積が21.1%増え、塗替えの年換算だけで7.3万円。ρ=0.8以上ではこれだけで予算を使い切ります。
  • DSCR1.2割れ確率は30.1%→24.8%に下がる一方、1.3割れ確率は67.0%→73.5%に上がりました。分散は上振れも削るため、基準が平均より上にあると逆効果になります。

「1棟か複数棟か」は、収益性そのものではなく下振れの深さを調整する選択です。そして調整できる幅は、満室年収の1〜2.5%程度に収まります。それより先に決めるべきなのは、どのエリアで、どの融資条件で買うかのほうです。

情報確認日:2026年9月19日

参考資料・出典

  • 国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」(概要編)——駐車場使用料等からの充当額を含む月/戸当たり管理費の平均17,103円、総戸数規模が大きくなるほど低くなる傾向:https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000143.html
  • 年間元利返済額・DSCR・返済後キャッシュフローの計算方法:RE-AI DSCRシミュレーター(本記事の年間返済額491.4万円は、借入7,800万円・金利2.40%・期間20年・元利均等の条件による)
  • シミュレーションの実施日:2026年9月19日。モンテカルロ試行回数40万回、乱数シード固定。エリア空室率は平均8.0%・標準偏差5.0ポイントの正規分布(0〜40%で切り捨て)、各戸の年間空室月数は二項分布(12ヶ月、エリア空室率)。物件価格・賃料・融資条件はすべて本記事で設定した架空ケースであり、実在の物件データではありません。

本記事の数値は設定した条件下でのシミュレーション結果であり、特定の物件の収益・融資審査の結果を示すものでも、投資判断を保証するものでもありません。最終的な判断はご自身の責任で、金融機関・税理士・不動産鑑定士等の専門家への確認とあわせて行ってください。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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