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収益性・収支

購入後の手元資金は家賃の何ヶ月分必要か|戸数×LTV×大規模修繕の有無36通りで資金ショート確率5%に抑える額を逆算

購入後の手元資金は家賃の何ヶ月分必要か|戸数×LTV×大規模修繕の有無36通りで資金ショート確率5%に抑える額を逆算

収益物件を買ったあと、口座にいくら残しておけばよいのでしょうか。よく見かけるのは「家賃の6ヶ月分」「100〜200万円」といった目安です。しかし、この目安がどんな条件で成り立つのかを計算で確かめた記事はほとんどありません。

そこで今回は、築15年前後の木造1Kアパートを想定し、戸数(6戸・10戸・20戸)×LTV(借入比率90%・80%・70%)×「金利上昇」と「屋根・外壁の修繕が未実施」の有無という36通りの条件で、入居者の退去・空室期間・給湯器やエアコンの故障・大規模修繕を月単位で乱数発生させ、10年間の資金の動きを各4万回シミュレーションしました。そのうえで、資金ショートの確率を5%以下に抑えるには手元資金がいくら必要かを逆算しています。

結論を先に書くと、屋根・外壁の修繕が済んでいて金利も横ばいなら、必要な手元資金は家賃の0.6〜4.9ヶ月分で、「6ヶ月分」の目安は全条件で足りていました。一方、修繕が未実施で金利が1pt上がる条件では5.8〜15.5ヶ月分が必要になり、6戸・10戸の物件ではLTVを50%まで下げても6ヶ月分では足りませんでした。手元資金は「家賃の何ヶ月分」ではなく、「未実施の修繕見積額+借入の重さに応じた上乗せ」で考える方が実態に合う、というのが今回の結果です。

1.この記事で検証する疑問

  • 「家賃の6ヶ月分」という手元資金の目安は、どんな条件なら足りて、どんな条件なら足りないのか
  • 戸数・借入比率・金利上昇・大規模修繕のうち、必要な手元資金を最も大きく動かすのはどれか
  • 頭金を増やすことと、手元に現金を残すことは、資金ショート対策として同じ効果があるのか
  • 資金ショート確率を5%以下にするには、条件ごとにいくら残せばよいのか(逆算)

DSCRや年間キャッシュフローの基本的な計算は収益物件の収支計算完全ガイドで、戸数によって空室のブレがどれだけ変わるかは「空室率5%」は平均値でしかない|戸数別のDSCR1.2割れ確率で検証しています。本記事はそれらを「1年ごとの収支」ではなく「10年間の現金残高の推移」に拡張した分析です。

2.使用データの区分

区分

本記事での内容

公開データ

平均入居期間(日本賃貸住宅管理協会「日管協短観」の単身世帯3年3ヶ月)、設備・屋根・外壁の修繕周期(国土交通省「賃貸住宅管理業者向け 計画修繕ガイドブック」の周期目安)、政策金利の状況(日本銀行)

シミュレーション

必要手元資金・資金ショート確率・年間CFなど、本記事の計算結果すべて

架空ケース

家賃・利回り・設備単価・大規模修繕費など物件条件

実データ

本記事では使用していません(RE-AIの診断データに基づく数値ではありません)

3.前提条件|何を固定し、何を変えたか

想定物件と、この条件にした理由

手元資金が問題になりやすいのは、購入直後に設備更新や屋根・外壁の塗装時期が重なる築15年前後の中古木造アパートです。国交省の計画修繕ガイドブックでは、給湯器・エアコンの交換は11〜15年目、屋根塗装は11〜15年目、外壁塗装は11〜18年目が周期の目安とされています。そこで今回は「購入時点でこれらの周期に差し掛かっている1K物件」を想定しました。

物件価格は分析の主役ではないため固定していません。1戸あたり家賃と表面利回りを固定し、戸数から価格が決まる形にしています。結果は万円に加えて「満室家賃の何ヶ月分」でも表示するので、家賃水準の違う物件でも比較の目安になります。

固定した条件

項目

設定

考え方

1戸あたり家賃

月5.5万円

地方都市〜郊外の築15年木造1Kを想定(架空)

表面利回り

8.5%

物件価格=満室年間家賃÷8.5%

融資

金利2.5%・25年・元利均等

2026年6月に政策金利が1.0%へ引き上げられ、9月会合を控えて追加利上げも意識されている局面。変動型アパートローンの中位を想定

平均入居期間

3年3ヶ月(各戸・毎月独立に退去が発生)

日管協短観の単身世帯の平均居住期間

退去後の空室期間

1ヶ月20%・2ヶ月30%・3ヶ月25%・4ヶ月15%・6ヶ月7%・9ヶ月3%(平均2.84ヶ月)

長期空室の裾を含めた設定。期待空室率は約6.8%

退去1回あたり費用

15.5万円(原状回復10万円+広告料1ヶ月分)

架空設定

管理委託料

実収家賃の5%

固定資産税・保険・共用部・小修繕

満室家賃の13%(毎月均等)

給湯器交換

1台20万円。各戸の故障時期は購入後0〜8年でランダム

周期11〜15年目を踏まえ、築15年時点で残り寿命がばらつく想定

エアコン交換

1台13万円。故障時期は給湯器と独立に0〜8年でランダム

同上

家賃下落・滞納・税金

考慮しない(税引前)

分析の限界で後述

変更した条件

変数

水準

戸数

6戸・10戸・20戸

LTV(物件価格に対する借入比率)

90%・80%・70%(補足で50〜90%を5pt刻み)

金利

横ばい / 3年目から+1.0pt(残期間で返済額を再計算)

屋根・外壁の塗装修繕

購入前に実施済み / 未実施(購入後6〜60ヶ月のどこかで発生、費用=120万円+25万円×戸数)

金利と修繕を組み合わせた4つのシナリオを次のように呼びます。

シナリオ

金利

屋根・外壁修繕

BASE

横ばい

実施済み

RATE

3年目から+1pt

実施済み

REPAIR

横ばい

未実施

COMBO

3年目から+1pt

未実施

物件規模・借入条件ごとの基本数値

戸数

満室年間家賃

物件価格

LTV

借入額

年間返済額

1年目の期待CF

期待DSCR

6戸

396万円

4,659万円

90%

4,193万円

226万円

23万円

1.10

6戸

396万円

4,659万円

80%

3,727万円

201万円

49万円

1.24

6戸

396万円

4,659万円

70%

3,261万円

176万円

73万円

1.42

10戸

660万円

7,765万円

90%

6,988万円

376万円

39万円

1.10

10戸

660万円

7,765万円

80%

6,212万円

334万円

81万円

1.24

10戸

660万円

7,765万円

70%

5,435万円

293万円

122万円

1.42

20戸

1,320万円

15,529万円

90%

13,976万円

752万円

78万円

1.10

20戸

1,320万円

15,529万円

80%

12,424万円

669万円

162万円

1.24

20戸

1,320万円

15,529万円

70%

10,871万円

585万円

245万円

1.42

期待CF・期待DSCRは、空室・退去費用・設備交換を平均的に織り込んだ値です(屋根・外壁修繕は含まず)。どの条件も期待値ではキャッシュフローは黒字です。それでも手元資金が必要になるのは、支出が平均的にではなく「まとまって」やって来るからです。

4.計算方法|「必要な手元資金」をどう定義したか

各試行で、120ヶ月分について毎月「家賃収入−運営費−退去費用−設備交換費−修繕費−ローン返済」を計算し、現金残高を追いかけました。オーナーの資金の使い方によって必要額が変わるため、2つの方針で計算しています。

  • 引き出し方針(本記事の基準):年末に手元資金が当初額を上回っていれば、上回った分は生活費や次の投資に回す。手元資金は減ることはあっても当初額以上には積み上がらない
  • 全額積立方針:黒字はすべて口座に残し、将来の支出に充てる

「必要な手元資金(95%)」は、10年間で現金残高が最も落ち込んだ額(最大ドローダウン)の95パーセンタイルです。つまりその額を最初に残しておけば、4万回の試行のうち95%で10年間一度も残高がマイナスにならない金額です。乱数シードを変えた再計算でも差は1万円程度でした。

5.結果1|シナリオ別の必要手元資金(資金ショート確率5%以下)

引き出し方針での必要額です。括弧内は満室月額家賃の何ヶ月分かを示します。

戸数

LTV

BASE

RATE

REPAIR

COMBO

6戸

90%

160万円(4.9ヶ月)

255万円(7.7ヶ月)

408万円(12.4ヶ月)

513万円(15.5ヶ月)

6戸

80%

104万円(3.1ヶ月)

142万円(4.3ヶ月)

339万円(10.3ヶ月)

382万円(11.6ヶ月)

6戸

70%

75万円(2.3ヶ月)

91万円(2.8ヶ月)

305万円(9.2ヶ月)

322万円(9.8ヶ月)

10戸

90%

177万円(3.2ヶ月)

325万円(5.9ヶ月)

517万円(9.4ヶ月)

677万円(12.3ヶ月)

10戸

80%

105万円(1.9ヶ月)

153万円(2.8ヶ月)

430万円(7.8ヶ月)

482万円(8.8ヶ月)

10戸

70%

71万円(1.3ヶ月)

91万円(1.6ヶ月)

391万円(7.1ヶ月)

409万円(7.4ヶ月)

20戸

90%

195万円(1.8ヶ月)

454万円(4.1ヶ月)

767万円(7.0ヶ月)

1,051万円(9.6ヶ月)

20戸

80%

101万円(0.9ヶ月)

164万円(1.5ヶ月)

654万円(5.9ヶ月)

718万円(6.5ヶ月)

20戸

70%

62万円(0.6ヶ月)

84万円(0.8ヶ月)

617万円(5.6ヶ月)

636万円(5.8ヶ月)

この表から読み取れることは3つあります。

  1. BASEでは「6ヶ月分」は全条件で足りる。最も厳しい6戸・LTV90%でも4.9ヶ月分でした。
  2. 必要額を最も大きく動かすのは、金利ではなく未実施の大規模修繕。10戸・LTV80%では、金利+1ptで105万円→153万円(+48万円)ですが、修繕未実施では430万円(+325万円)に跳ね上がります。
  3. 戸数が少ないほど「月数」では多く必要。LTV90%のBASEで6戸は4.9ヶ月分、20戸は1.8ヶ月分でした。退去や設備故障が数戸で重なったときの影響が、小規模物件ほど家賃総額に対して大きくなるためです。

6.結果2|「家賃6ヶ月分」を残した場合の資金ショート確率

手元資金を満室月額家賃の6ヶ月分(6戸:198万円、10戸:330万円、20戸:660万円)とした場合に、10年間で一度でも残高がマイナスになる確率です。左が引き出し方針、右が全額積立方針です。

戸数

LTV

BASE

RATE

REPAIR

COMBO

6戸

90%

1.7% / 0.6%

14.4% / 6.1%

99.2% / 70.9%

99.8% / 90.2%

6戸

80%

0.1% / 0.0%

0.9% / 0.1%

93.4% / 34.3%

96.9% / 46.0%

6戸

70%

0.0% / 0.0%

0.0% / 0.0%

82.6% / 16.0%

88.2% / 17.9%

10戸

90%

0.1% / 0.0%

4.6% / 1.6%

85.1% / 40.2%

96.5% / 74.3%

10戸

80%

0.0% / 0.0%

0.0% / 0.0%

59.6% / 9.9%

74.5% / 14.8%

10戸

70%

0.0% / 0.0%

0.0% / 0.0%

38.4% / 2.7%

49.3% / 2.9%

20戸

90%

0.0% / 0.0%

0.3% / 0.1%

27.1% / 8.0%

78.7% / 44.1%

20戸

80%

0.0% / 0.0%

0.0% / 0.0%

4.0% / 0.3%

15.2% / 0.5%

20戸

70%

0.0% / 0.0%

0.0% / 0.0%

0.8% / 0.0%

2.1% / 0.0%

BASE・RATEでは、6戸・LTV90%に金利上昇が重なった場合(引き出し方針14.4%)を除き、ショート確率はほぼ5%以下に収まります。一方でREPAIR・COMBOでは、6戸・10戸の多くの条件でショート確率が50%を超えました。6戸・LTV90%のCOMBOでは引き出し方針で99.8%、黒字をすべて積み立てても90.2%です。

黒字を積み立てるかどうかでも結果は大きく変わります。10戸・LTV80%のREPAIRでは、引き出し方針59.6%に対し全額積立方針9.9%でした。「毎年のCFを使ってしまうか、修繕が終わるまで残すか」は、手元資金の初期額と同じくらい効くということです。

7.結果3|必要額は「修繕見積額+上乗せ」で考える

REPAIR・COMBOの必要額から、屋根・外壁修繕の費用そのものを差し引いた「上乗せ額」を計算しました。

戸数

修繕費用

LTV

REPAIRの上乗せ

COMBOの上乗せ

6戸

270万円

90%

138万円

243万円

6戸

270万円

80%

69万円

112万円

6戸

270万円

70%

35万円

52万円

10戸

370万円

90%

147万円

307万円

10戸

370万円

80%

60万円

112万円

10戸

370万円

70%

21万円

39万円

20戸

620万円

90%

147万円

431万円

20戸

620万円

80%

34万円

98万円

20戸

620万円

70%

-3万円

16万円

LTV70%では上乗せはおおむね50万円以下で、「修繕見積額をそのまま残す」だけでほぼ足ります。ところがLTV90%になると、金利上昇が重なるCOMBOで上乗せが243〜431万円に広がります。20戸・LTV70%のREPAIRで上乗せがマイナスになっているのは、修繕が発生する前の黒字で費用の一部を賄えるためです。逆に借入が重いと毎年のCFの余力が小さく、修繕で減った手元資金を回復できないまま退去や設備故障が続くためです。

購入前の実務としては、「家賃の何ヶ月分」と考えるより、①屋根・外壁・設備の修繕履歴を確認し、未実施分の見積額を出す→②その額を手元資金の下限にする→③LTVが高いほど上乗せを厚くするという順で考える方が、今回の条件では実態に合っていました。修繕費の水準自体の妥当性は修繕費「家賃の5%」で足りるのか|国交省の長期修繕計画事例から逆算で検証しています。

今回の試算は特定の家賃・経費率・修繕費を置いた結果です。自分の物件で、大規模修繕の年と金額、金利上昇を入れたときに年間収支がどこでマイナスになるかを確かめたい場合は、キャッシュフロー計算ツールで大規模修繕と金利上昇を入れて年次収支を試算することができます(無料・税引前)。赤字になる年の赤字額を合計すると、手元資金の下限の目安になります。

8.逆算|COMBOで「6ヶ月分」に収まるLTVはどこか

最も厳しいCOMBOについて、LTVを50〜90%で動かし、必要手元資金(95%・引き出し方針)を月数で計算しました(各2万回試行。第5章の表とは試行回数が異なるため0.1ヶ月程度の差があります)。

戸数

LTV50%

LTV60%

LTV65%

LTV70%

LTV75%

LTV80%

LTV85%

LTV90%

6戸(修繕費8.2ヶ月分)

8.4ヶ月

8.9ヶ月

9.2ヶ月

9.7ヶ月

10.5ヶ月

11.6ヶ月

13.3ヶ月

15.6ヶ月

10戸(修繕費6.7ヶ月分)

6.6ヶ月

6.9ヶ月

7.1ヶ月

7.5ヶ月

7.9ヶ月

8.7ヶ月

10.2ヶ月

12.3ヶ月

20戸(修繕費5.6ヶ月分)

5.4ヶ月

5.5ヶ月

5.6ヶ月

5.8ヶ月

6.0ヶ月

6.5ヶ月

7.6ヶ月

9.5ヶ月

6ヶ月分に収まったのは20戸でLTV75%以下(75%でちょうど6.0ヶ月)の場合だけでした。6戸・10戸では、修繕費そのものが家賃の8.2ヶ月分・6.7ヶ月分あるため、LTVを50%まで下げても6ヶ月分を下回りません。

もう1つの転換点はLTV80%です。10戸では、LTV50%→80%の30pt分で必要額は2.1ヶ月分しか増えないのに、80%→90%の10pt分で3.6ヶ月分増えます。LTVが80%を超えるあたりから、手元資金の必要額が加速度的に増える構造です。

なお修繕実施済みで金利だけが上がるRATEでは、「6ヶ月分」を超えるのは6戸でLTV90%以上(7.7ヶ月)、10戸でLTV95%前後(8.6ヶ月)、20戸でLTV95%前後(6.8ヶ月)からでした。

9.結果4|頭金を増やしても、必要な手元資金はあまり減らない

「手元資金が不安なら頭金を増やせばよい」と考えがちです。そこで、LTVを10pt下げる(=頭金を物件価格の10%増やす)と必要手元資金がいくら減るかを計算しました。

戸数

シナリオ

頭金の増加額(10pt分)

LTV90→80%で減る必要額

LTV80→70%で減る必要額

6戸

BASE

466万円

56万円(12%)

29万円(6%)

6戸

COMBO

466万円

131万円(28%)

60万円(13%)

10戸

BASE

776万円

71万円(9%)

34万円(4%)

10戸

COMBO

776万円

195万円(25%)

73万円(9%)

20戸

BASE

1,553万円

93万円(6%)

39万円(3%)

20戸

COMBO

1,553万円

333万円(21%)

82万円(5%)

頭金を増やして減る必要手元資金は、頭金増加額の3〜28%にとどまりました。たとえば10戸のCOMBOでは、頭金を776万円増やしても必要手元資金は195万円しか減りません。頭金は返済額を下げてDSCRや融資審査を改善しますが、一度物件に入れた現金は修繕や空室の支払いに使えないためです。

したがって、自己資金の総額が限られているなら「頭金を厚くして手元を薄くする」より、まず必要な手元資金を確保し、残りを頭金に回す順番で考える方が、資金ショート対策としては効率的でした。ただし頭金を減らすとDSCRが下がり、金利上昇やLTV超過による融資条件の悪化という別のリスクが増えます。頭金とDSCRの関係は頭金10%・20%・30%でDSCRと月々の返済を比較、余剰資金の使い道は余剰資金500万円は繰上返済すべきかで比較しています。

10.感応度|前提を動かすとどれだけ変わるか

10戸・LTV80%・COMBO(基準482万円)について、主な前提を1つずつ変えました。

変更した前提

必要手元資金(95%・引き出し方針)

基準との差

基準

482万円

退去の頻度1.3倍(平均入居期間 約2年6ヶ月)

594万円

+112万円

屋根・外壁の修繕費1.3倍(481万円)

592万円

+110万円

屋根・外壁の修繕費0.7倍(259万円)

370万円

▲112万円

当初金利2.0%(その後+1pt)

442万円

▲40万円

99%基準(ショート確率1%以下)

552万円

+70万円

全額積立方針(95%)

387万円

▲95万円

修繕費の見積りが3割ずれると必要額は約110万円動き、当初金利の0.5ptの差(40万円)より大きく効きます。手元資金の議論では、金利の見通しより修繕見積りの精度の方が重要という結果です。

11.投資判断への使い方

  1. 修繕履歴を「手元資金の額」に変換する。屋根・外壁・給湯器・エアコンの交換時期と金額を売主・管理会社に確認し、未実施分の見積額を手元資金の下限にします。
  2. LTV80%超なら上乗せを厚くする。今回の条件ではLTV90%で修繕見積額に加えて約140〜430万円が必要でした。
  3. 小規模物件は「月数」を多めに見る。6戸では修繕実施済みでも最大4.9ヶ月分が必要でした。
  4. 修繕が終わるまでCFを引き出さない。引き出し方針と積立方針の差は、10戸・LTV80%のCOMBOで95万円ありました。
  5. 頭金と手元資金を同じ「自己資金」として扱わない。頭金10pt分の増額で減る必要手元資金は、その3〜28%でした。

金利上昇が返済額に及ぼす影響の詳細は金利上昇×空室率を20パターン試算した記事変動金利の返済額据置ルールの検証、退去1回あたりのコストは入替コストを平均入居年数別に試算した記事で扱っています。

12.この分析の限界

  • 架空の物件条件による試算です。家賃・利回り・設備単価・修繕費は説明用の設定で、実際の物件統計ではありません。
  • 税金を含みません。税引前の計算です。黒字の年に所得税・住民税の支払いが生じると、実際の手元資金はこれより早く減ります。
  • 家賃下落・滞納・災害・雨漏りなどの突発事故は含みません。いずれも必要額を増やす方向に働きます。
  • 退去は各戸独立に発生すると仮定しています。近隣の新築供給や大口の企業退去などで退去が連鎖する場合、小規模物件以外でもブレは大きくなります。
  • 融資条件は固定です。金融機関によっては修繕資金の追加融資を受けられる場合があり、その場合は必要額が減ります。
  • 10年目以降は見ていません。設備の2回目の交換や屋根防水(21〜25年目目安)など、長期保有では別の支出が発生します。

まとめ

  • 屋根・外壁修繕が実施済みで金利が横ばいなら、今回の条件で必要な手元資金は家賃の0.6〜4.9ヶ月分で、「6ヶ月分」の目安は足りていた
  • 修繕未実施+金利+1ptでは5.8〜15.5ヶ月分が必要で、6戸・10戸ではLTV50%でも6ヶ月分を超えた
  • 必要額を最も動かすのは未実施の大規模修繕で、次にLTV。LTV80%を超えると必要額が加速度的に増えた
  • 頭金を10pt増やしても、減る必要手元資金は増額分の3〜28%だった
  • 手元資金は「家賃の何ヶ月分」より「未実施の修繕見積額+LTVに応じた上乗せ」で考える方が、今回の条件では実態に近い

ただしこれは条件付きシミュレーションの結果であり、個別物件の建物状態・融資条件・税務によって必要額は変わります。数値は判断を置き換えるものではなく、確認すべき項目を洗い出すための材料としてご利用ください。

参考資料・出典

情報確認日:2026年9月16日

シミュレーションはPython(NumPy)で、各条件4万回(LTV感応度表は2万回)の乱数試行により計算しました。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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