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修繕費で落とせないと手残りはいくら減るのか|資本的支出との差は「未償却残高×23.4pt」、築22年超の木造ならほぼゼロだった

修繕費で落とせないと手残りはいくら減るのか|資本的支出との差は「未償却残高×23.4pt」、築22年超の木造ならほぼゼロだった

外壁塗装に300万円。見積書を受け取ったオーナーが税理士に確認して、「これは修繕費ではなく資本的支出になります」と言われる。一般的な解説記事はここで「資本的支出になると、その年に全額を経費にできないので節税効果が落ちます」と説明して終わります。

ただ、投資判断に必要なのは「落ちます」ではなく「いくら落ちるのか」です。そして、その金額は物件によって10倍近く違います。

この記事では、同じ300万円の工事が修繕費になった場合と資本的支出になった場合で、手残りがいくら変わるのかを実際に計算しました。変更したのは建物の償却年数(4年・10年・14年・22年)工事後の保有年数(5年・10年・15年)課税所得(限界税率30.42%・33.48%・43.69%・50.84%)の3つです。

結論を先に書くと、生涯で見た差額は「売却時点の未償却残高 ×(保有中の限界税率 − 譲渡税率20.315%)」という1本の式にまとまりました。そして築22年超の木造アパート(償却4年)では、この差額はほぼゼロになります。「資本的支出になると損」が当てはまるのは、実は物件と投資家がかなり限定されています。

(情報確認日:2026年9月20日。税制は令和8年4月1日現在の法令等に基づきます。個別の判定は必ず税理士にご確認ください。)

この記事で検証する疑問

検証したのは次の3つです。

  1. 同じ工事費が資本的支出と判定されると、工事を行った年の手元資金はいくら違うのか
  2. 売却までを通算した生涯の手残りは、結局いくら違うのか
  3. その差が大きくなるのは、どういう物件・どういう投資家なのか

1と2は別の問題です。よくある説明は1(単年の資金繰り)と2(生涯の損得)を区別していませんが、計算してみると両者の金額はまったく違いました。

前提:判定ルールと償却年数の決まり方

修繕費か資本的支出かの判定

国税庁タックスアンサーNo.1379によれば、資産の使用可能期間を延長させる部分、または価値を高める部分の支出は資本的支出とされ、修繕費とは区別されます。判定は「修繕」「改良」という名目ではなく実質で行われます。

そのうえで、次に該当すれば修繕費として支出した年の必要経費に算入できます。

  • おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良であるとき、または一つの修理・改良の金額が20万円未満のとき
  • 資本的支出か修繕費か明らかでない金額について、その金額が60万円未満のとき、またはその資産の前年末の取得価額のおおむね10%相当額以下のとき

この10%基準は「取得価額」が基準であって、減価償却後の簿価ではありません。つまり築年数が進んでも枠は縮みません。建物の取得価額別に上限額を計算すると、次のようになります。

建物の前年末取得価額

10%基準の上限

60万円基準とのいずれか大きい方

1,000万円

100万円

100万円

1,500万円

150万円

150万円

2,000万円

200万円

200万円

3,000万円

300万円

300万円

4,500万円

450万円

450万円

同じ300万円の工事でも、建物取得価額3,000万円の物件なら10%基準の射程に入り、建物取得価額1,500万円の物件では入りません。土地建物の按分比率が、後年の修繕の税務処理にまで影響するということです。按分の考え方は建物比率を上げると税引後IRRは上がるのかで別途検証しています。

なお、一つの工事を意図的に分割して形式基準に当てはめる処理は想定していません。判定単位は「一つの修理、改良など」であり、一の計画に基づく工事を人為的に分けることは前提にしていません。

資本的支出になった場合の償却年数

国税庁タックスアンサーNo.2107によれば、平成19年4月1日以後に行った資本的支出は原則として、その資本的支出を行った減価償却資産と種類および耐用年数を同じくする資産を新たに取得したものとして償却します。

ここが投資判断上、決定的に重要です。中古で取得した建物に簡便法の耐用年数を適用している場合、その年数が資本的支出の償却年数にもなります。木造(法定耐用年数22年)を中古取得したときの簡便法年数は次のとおりです。

取得時の築年数

簡便法による耐用年数

定額法償却率

新築(築0年)

22年

0.046

築10年

14年

0.072

築15年

10年

0.100

築22年超

4年

0.250

簡便法は「法定耐用年数 − 経過年数 + 経過年数 × 0.2」、法定耐用年数を全部経過していれば「法定耐用年数 × 0.2」で、1年未満切捨て(2年未満は2年)です。構造別の耐用年数の求め方は木造とRCで年間減価償却費は321万円違うで解説しています。

固定した条件と変更した条件

本記事の試算は、実在する物件の統計ではなく条件を固定したシミュレーションです。使用したデータの区分は、判定ルールと耐用年数・税率が公開データ(国税庁)、工事費と保有年数と課税所得が設定した架空ケースです。RE-AIの診断実績データは使用していません。

区分

内容

固定した条件

工事費:300万円(一棟アパートの外壁塗装・屋根防水を想定した水準)

構造:木造(法定耐用年数22年)、償却方法は定額法

工事は期首に実施し、初年度も12か月分を償却(月割は行わない)

売却時は譲渡益が出ており、長期譲渡(所有5年超)で税率20.315%

割引率:年4%(税効果の現在価値を測るため)

課税所得は工事の有無で税率区分が変わらない水準にあるものとする

変更した条件

建物の償却年数:4年/10年/14年/22年

工事後の保有年数:5年/10年/15年

保有中の限界税率:30.42%/33.48%/43.69%/50.84%

限界税率は所得税の超過累進税率に復興特別所得税(2.1%)を乗じ、住民税10%を加えた実効的な税率です。課税所得330万円超695万円以下なら20%×1.021+10%=30.42%、900万円超1,800万円以下なら33%×1.021+10%=43.69%、1,800万円超4,000万円以下なら40%×1.021+10%=50.84%となります。

なお令和9年分以後は、復興特別所得税が1.1%に引き下げられる一方で税率1%の防衛特別所得税が新設される予定で、付加税の合計は2.1%のまま据え置かれる見込みです。本記事の税率はその前提でも変わりません。

差額はどこから生まれるのか

修繕費と資本的支出で、経費にできる総額は同じです。300万円はいずれ300万円分、経費になります。では、なぜ手残りに差が出るのか。理由は2つだけです。

  1. タイミング:修繕費なら初年度に全額、資本的支出なら償却年数にわたって分割
  2. 税率:保有中に償却しきれなかった未償却残高は、売却時に建物の取得費として譲渡所得を圧縮する。つまり限界税率ではなく譲渡税率20.315%でしか戻ってこない

2つ目が本質です。計算式にすると、名目(割引前)の差額は次のようになります。

名目の差額 = 売却時点の未償却残高 ×(保有中の限界税率 − 譲渡税率20.315%)

限界税率43.69%なら、差は23.375ポイント。この式は27通りすべての試算で厳密に一致しました。減価償却が「取得費を削る処理」であるために売却時に税金が戻ってくる構造は、減価償却で減らした税金は、売却時にいくら返すことになるのかで建物本体について検証したものと同じ仕組みです。本記事はそれを保有中に追加投下する工事費に適用しています。

結果1:工事を行った年の手元資金は最大125万円違う

まず単年の資金繰りです。工事費300万円、限界税率43.69%で、工事を行った年に発生する節税額と実質的な手出し額を計算しました。

処理

初年度に経費化できる額

初年度の節税額

実質的な手出し額

修繕費

300万円

131.1万円

168.9万円

資本的支出(償却4年)

75.0万円

32.8万円

267.2万円

資本的支出(償却10年)

30.0万円

13.1万円

286.9万円

資本的支出(償却14年)

21.6万円

9.4万円

290.6万円

資本的支出(償却22年)

13.8万円

6.0万円

294.0万円

修繕費として落とせれば実質的な手出しは168.9万円ですが、償却22年の建物で資本的支出になると294.0万円。工事を行った年の手元資金は125.0万円違います。工事費の41.7%にあたります。

これは生涯の損得ではなく、あくまでその年の資金繰りの話です。しかし大規模修繕は複数の支出が重なりやすく、単年の手元資金が足りるかどうかは実務上の判断を左右します。必要な手元資金の水準は購入後の手元資金は家賃の何ヶ月分必要かで別途逆算しています。

結果2:生涯で見た差額は、償却年数でほぼ決まる

次に、売却までを通算した差額です。限界税率43.69%、割引率4%で、償却年数と工事後の保有年数を変えて計算しました。

償却年数

工事後の保有年数

売却時の未償却残高

名目の差額

現在価値の差額

工事費に対する比率

4年

5年

0円

0円

7.1万円

2.36%

10年

0円

0円

7.1万円

2.36%

15年

0円

0円

7.1万円

2.36%

10年

5年

150.0万円

35.1万円

42.6万円

14.21%

10年

0円

0円

19.7万円

6.57%

15年

0円

0円

19.7万円

6.57%

14年

5年

192.0万円

44.9万円

52.0万円

17.32%

10年

84.0万円

19.6万円

38.0万円

12.65%

15年

0円

0円

27.0万円

8.98%

22年

5年

231.0万円

54.0万円

60.6万円

20.21%

10年

162.0万円

37.9万円

54.9万円

18.30%

15年

93.0万円

21.7万円

48.5万円

16.17%

読み取れることは3つあります。

第一に、築22年超の木造(償却4年)では差がほぼ消えます。現在価値で7.1万円、工事費300万円に対して2.36%。名目では完全にゼロです。4年で償却し切ってしまうため、未償却残高が残らず、税率差が発生しないからです。残るのは4年分のタイミングのずれだけで、それが7.1万円にあたります。

第二に、新築取得の建物(償却22年)では10年保有で現在価値54.9万円、工事費の18.30%の差が出ます。償却4年のケースの約7.7倍です。同じ300万円の工事、同じ税率でも、建物の償却年数が違うだけでここまで開きます。

第三に、名目の差額は保有年数が償却年数に達した時点でゼロになります。償却10年の建物を10年以上持てば名目差はゼロ、償却14年なら14年でゼロです。売る前に償却し切れれば、損をしているのはタイミングだけということになります。

なお工事費と差額は比例するため、工事費500万円なら上表の比率をそのまま掛けて計算できます(償却22年・保有10年なら500万円 × 18.30% = 91.5万円)。価格帯を変えた表を別途用意していないのはこのためです。

結果3:課税所得が高いほど不利になる

差額の本質が「限界税率と譲渡税率20.315%の差」である以上、高所得者ほど不利になります。保有残10年で、限界税率を4水準に変えて計算しました。数値は現在価値の差額、括弧内は工事費300万円に対する比率です。

課税所得(限界税率)

償却4年

償却10年

償却14年

償却22年

償却22年の名目差

330万〜695万円(30.42%)

4.9万円
(1.64%)

13.7万円
(4.58%)

22.9万円
(7.64%)

31.5万円
(10.49%)

16.4万円

695万〜900万円(33.48%)

5.4万円
(1.81%)

15.1万円
(5.04%)

26.4万円
(8.80%)

36.9万円
(12.29%)

21.3万円

900万〜1,800万円(43.69%)

7.1万円
(2.36%)

19.7万円
(6.57%)

38.0万円
(12.65%)

54.9万円
(18.30%)

37.9万円

1,800万〜4,000万円(50.84%)

8.2万円
(2.75%)

22.9万円
(7.65%)

46.1万円
(15.35%)

67.5万円
(22.51%)

49.5万円

課税所得400万円台の投資家が新築木造で300万円の工事をした場合、資本的支出になる不利は現在価値で31.5万円(工事費の10.49%)。同じ工事を課税所得2,000万円の投資家が行うと67.5万円(22.51%)で、2.1倍になります。

一方、償却4年の建物なら課税所得2,000万円でも8.2万円(2.75%)にとどまります。「資本的支出になると損」の度合いは、税率よりも償却年数で決まるというのが、この表から読み取れる最も実用的な点です。

結果4:法人なら差はタイミングだけになる

個人の場合、保有中の所得は総合課税(最大55%台)、売却益は分離課税(長期20.315%)と税率が分断されます。法人にはこの分断がありません。保有中の所得も売却益も同じ法人税率で課税されるため、税率差がゼロになり、残るのはタイミングのずれだけです。

法人実効税率を33.58%(所得800万円超の中小法人の一例)として計算しました。工事費300万円、工事後の保有年数10年です。

償却年数

個人(43.69%)名目差

個人 現在価値差

法人(33.58%)名目差

法人 現在価値差

4年

0円

7.1万円 (2.36%)

0円

5.4万円 (1.82%)

10年

0円

19.7万円 (6.57%)

0円

15.2万円 (5.05%)

14年

19.6万円

38.0万円 (12.65%)

0円

19.0万円 (6.33%)

22年

37.9万円

54.9万円 (18.30%)

0円

22.5万円 (7.51%)

償却22年のケースで、個人は現在価値54.9万円の不利を負うのに対し、法人は22.5万円。不利の大きさが41%の水準まで下がります。しかも法人の22.5万円はすべてタイミングによるもので、名目の損はゼロです。

これは法人化を検討する理由そのものにはなりません。金額としては工事1回あたり数十万円の話で、法人設立・維持コストに見合う水準ではないからです。判断材料としては法人化は家賃収入いくらから有利になるのかで検証した税引後CFと売却手取りの通算のほうがはるかに大きく効きます。ここで確認できたのは、大規模修繕を繰り返す計画の物件では、法人保有のほうが修繕の税務リスクを受けにくいという副次的な性質です。

転換点と逆算

差額が工事費の5%以内に収まる償却年数

限界税率43.69%、工事後の保有年数10年、割引率4%の条件で、償却年数ごとの現在価値差額を工事費比で見ると次のようになります。

償却年数

現在価値差額 ÷ 工事費

5%以内か

4年

2.36%

6年

3.83%

10年

6.57%

×

14年

12.65%

×

18年

16.13%

×

22年

18.30%

×

この条件では、償却年数が6年以下であれば、資本的支出と判定されても実質的な負担増は工事費の5%以内に収まります。木造でいえば取得時に築20年を超えていた物件がこれに該当します。判定結果に神経を使う実益が小さい領域ということです。

実質的な工事費の割増率に換算する

見積比較の場面で使いやすいように、「修繕費として処理できる場合と同じ実質負担にするには、資本的支出の工事は何%安くなければならないか」を逆算しました。工事後の保有年数10年、割引率4%です。

限界税率

償却4年

償却10年

償却14年

償却22年

30.42%

2.32%

6.47%

10.80%

14.83%

43.69%

4.07%

11.33%

21.82%

31.55%

50.84%

5.38%

14.96%

30.03%

44.03%

課税所得2,000万円の投資家が新築取得した木造アパートで工事を行う場合、資本的支出と判定される工事は実質的な負担が44.03%割増になるという計算です。逆にいえば、同等の効果が得られる工事仕様であれば、修繕費として処理できる範囲の工事と比べて44%安くなければ引き合いません。

もっともこれは「安い工事を選べ」という結論ではありません。建物の使用可能期間を延ばす工事は、延ばした分だけ出口価格や融資期間に効きます。売却価格が買い手の融資期間に強く縛られる構造は売却価格の天井は「買い手が何年借りられるか」で決まるで検証したとおりで、資本的支出になるような工事は、そちらの側でリターンを生む可能性があります。この記事が測っているのは税務処理だけを切り出した差であって、工事そのものの投資効果ではありません。

割引率を変えるとどうなるか

現在価値の差額は割引率の設定に依存します。償却22年・保有残10年・限界税率43.69%で感応度を確認しました。

割引率

名目の差額

現在価値の差額

工事費比

0%

37.9万円

37.9万円

12.62%

2%

37.9万円

47.3万円

15.78%

4%

37.9万円

54.9万円

18.30%

6%

37.9万円

60.9万円

20.30%

名目の差額は割引率に左右されません。割引率を0%に置いても37.9万円の差は残ります。これが税率差から生じる「消えない損」で、それに上乗せされるタイミングの損が割引率次第で0〜23万円という構造です。

この結果を投資判断にどう使うか

4つに整理します。

1. 築古木造を4年償却で回している場合、修繕費か資本的支出かの判定に過度に神経を使う必要はない。名目の損はゼロ、現在価値でも工事費の2.4%程度です。ただし工事年の手元資金は減る(300万円の工事なら約98万円余分に持ち出す)ので、資金繰り側の備えは必要です。

2. 新築・築浅で取得した物件では、判定が手残りを大きく左右する。償却22年で課税所得1,800万円超なら、工事費の22.5%が実質的に目減りします。工事の仕様を決める段階で税理士に相談する価値があるのはこちらです。

3. 売却時期と償却年数の関係を見る。名目の損は「売却時の未償却残高 × 税率差」なので、償却し切る前に売ると損が確定します。出口時期が近い物件で大きな資本的支出を行う判断は、工事の必要性だけでなく、税務上の回収可能性も含めて見る必要があります。

4. 判定に迷う工事ほど、一件あたりの金額と建物取得価額の関係を確認する。10%基準は取得価額ベースなので、建物価額が大きい物件ほど枠が広くなります。

なお、工事年の資金繰りだけを自分の物件条件で確認したい場合は、キャッシュフローシミュレーターで大規模修繕の年の収支を試算すると、修繕の年と金額を指定して年次の手残りを確認できます。ただしこのツールが表示するのは税引前のキャッシュフローなので、本記事で計算した税効果の差は別途加味してください。両者を合わせて見ることで、工事年に手元からいくら出ていくのかが把握できます。

この分析で分からないこと

次の点は本記事の試算では扱っていません。結論を一般化する前に確認が必要です。

  1. 個別の工事が修繕費になるか資本的支出になるかの判定そのもの。判定は名目ではなく実質で行われ、工事内容・仕様・従前との比較によって変わります。本記事は「どちらに転んだ場合にいくら違うか」だけを計算しています。
  2. 譲渡損が出る場合。未償却残高が譲渡所得を圧縮する効果は、譲渡益が出ていることが前提です。個人の不動産譲渡損は原則として他の所得と損益通算できないため、譲渡損のケースでは資本的支出の不利はさらに大きくなります。
  3. 短期譲渡(所有5年以下)のケース。税率39.63%で計算すると限界税率との差が縮まり、名目差は大幅に小さくなります。本記事は長期譲渡(20.315%)のみを計算しています。短期・長期の分かれ目そのものは5年目売却と6年目売却で税引後IRRは7.17pt違うで検証しています。
  4. 工事の有無で課税所得の税率区分が動く場合。300万円の一括経費算入で課税所得が下の区分に落ちるなら、実際の節税額は本記事の計算より小さくなります。
  5. 工事そのものの効果。空室率の改善、家賃水準の維持、出口価格や買い手の融資期間への影響は含めていません。税務処理の差だけを切り出した数字です。
  6. 消費税、事業税、法人の地域差。法人実効税率33.58%は一例で、資本金・所得区分・所在地によって変わります。

また、本記事は税務上の取扱いの一般的な整理であり、個別の判定・申告についての助言ではありません。実際の処理は税理士にご確認ください。

まとめ

工事費300万円を、償却年数4通り × 保有年数3通り × 限界税率4水準で計算した結果は次のとおりです。

  • 生涯の名目差額は「売却時の未償却残高 ×(限界税率 − 譲渡税率20.315%)」の1本の式で決まる。限界税率43.69%なら差は23.375pt
  • 築22年超の木造(償却4年)では名目差ゼロ、現在価値でも工事費の2.36%にとどまる
  • 新築取得(償却22年)・保有10年では現在価値で工事費の18.30%、課税所得1,800万円超なら22.51%
  • 工事を行った年の手元資金の差は最大125.0万円(工事費の41.7%)で、これは生涯の損得とは別問題
  • 法人は保有中と売却時の税率が同じため、不利はタイミングのみ。同条件で個人の41%の水準

「資本的支出になると損」は間違いではありませんが、損の大きさは物件の償却年数と投資家の限界税率で10倍近く変わります。一律に警戒する話でもなければ、一律に無視してよい話でもありません。

今回のように、修繕の税務処理・減価償却・売却時の譲渡税・保有年数を同時に動かして手残りを見ると、確認すべき項目は表計算だけではすぐに増えていきます。RE-AIでは収益性・融資・リスク・出口戦略といった複数の視点をまとめて確認できるよう設計していますが、個別の税務判定そのものを代替するものではありません。数字の全体像を把握したうえで、判定は税理士に確認するという分担が現実的です。

関連する分析として、保有中の修繕費水準そのものについては修繕費「家賃の5%」で足りるのか、区分マンションの修繕積立金については修繕積立金がガイドライン水準まで上がっても成立する表面利回りは何%かで検証しています。税金全体の整理は不動産投資の税金 完全ガイドをご覧ください。

参考資料・出典

情報確認日:2026年9月20日

本記事の数値は上記の公開資料に基づき、記載した固定条件のもとで筆者が計算したシミュレーション結果です。実在する物件の統計値ではありません。投資判断・税務判断を保証するものではなく、実際の処理は税理士、投資判断はご自身の責任でご確認ください。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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