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法人化は家賃収入いくらから有利になるのか|8,000万円物件で個人と法人の税引後CF+売却手取りを保有10〜30年で逆算

法人化は家賃収入いくらから有利になるのか|8,000万円物件で個人と法人の税引後CF+売却手取りを保有10〜30年で逆算

「家賃収入が1,000万円を超えたら法人化」——不動産投資の情報では、法人化のタイミングが家賃収入の規模で語られることが多くあります。ですが、法人と個人で実際に差がつくのは家賃収入ではなく課税される不動産所得です。そして減価償却が回っている間、この2つは驚くほど連動しません。

今回は価格8,000万円・満室家賃640万円の一棟アパートを、個人所有と法人所有の2通りで保有中の税引後キャッシュフローと売却時の手取りまで通して試算しました。家賃規模6パターン、給与など他の課税所得4パターン、保有年数5パターン、建物構造5パターンを組み合わせ、さらに「不動産所得がいくらを超えれば法人が有利になるか」を逆算しています。

法人化のメリット・デメリットや税率構造の基本的な整理は「不動産投資の法人化 完全ガイド|税率差・コスト・出口の税金までつなげて判断する」で解説しています。本記事はその中でもよく語られる「家賃収入の規模で法人化を判断してよいか」という一点を、実際の数値シミュレーションで検証するものです。

結論を先に書くと、家賃収入1,280万円(価格1億6,000万円)まで規模を上げても、減価償却期間中は法人所有のほうが手残りが少ないという結果になりました。分岐点は規模ではなく、別のところにありました。

この記事で検証する疑問

  • 法人化の損得は、家賃収入の規模で決まるのか
  • 減価償却が回っている間、法人化のメリットはどれだけ出るのか
  • 不動産所得がいくらを超えると、法人の税率のほうが安くなるのか
  • 売却時の課税差(個人の長期譲渡20.315% vs 法人の通常所得課税)はどれだけ効くのか
  • 役員報酬で所得を分散すると結論は変わるのか。社会保険料を入れるとどうか

前提条件:何を固定し、何を変えたか

本記事の数値はすべて条件付きシミュレーションです。実在する物件の統計でも、RE-AIの診断実績データでもありません。税率は公開されている制度(国税庁の所得税速算表、中小法人の法人税率)に基づいて計算しています。

固定した条件(基準ケース)

項目

設定

物件価格

8,000万円(土地4,000万円/建物4,000万円)

構造・築年

木造・築10年(中古耐用年数14年、定額法:年285.7万円償却)

満室年間家賃

640万円(表面利回り8.0%)

空室・滞納損

満室家賃の5%

運営費(管理費・修繕・固都税等)

満室家賃の20%

借入

6,400万円(LTV80%)/金利2.0%/30年元利均等

年間返済額

283.9万円

自己資金

1,600万円(購入諸費用は除外)

家賃下落

年0.5%

出口

売却時の表面利回り9.0%で逆算/譲渡費用3%

個人側の控除

青色申告特別控除65万円(事業的規模・電子申告を想定)

法人側の固定費

設立費用25万円(初年度)/均等割7万円+税理士報酬20万円(毎年)

法人の役員報酬

ゼロ(利益は法人内に留保)※後半で報酬ありも検証

変更した条件

  • 年間満室家賃:320/480/640/800/960/1,280万円(表面8%固定なので価格は4,000万〜1億6,000万円)
  • 不動産以外の課税所得(給与など):0/600/900/2,000万円
  • 保有年数:10/15/20/25/30年
  • 建物の償却年数:7/14/22/34/47年(木造築15年〜RC新築)

使用した税率

区分

税率

個人:所得税

速算表(5〜45%)+復興特別所得税2.1%

個人:住民税

課税所得の10%(均等割は除外)

個人:長期譲渡(5年超)

20.315%

法人:所得800万円以下

実効21.4%(法人税15%+地方法人税・法人住民税・事業税の簡易実効ベース)

法人:所得800万円超

実効33.6%(法人税23.2%ベース)

法人:売却益

その期の所得に合算して上記の法人実効税率

情報確認日:2026年8月15日。中小法人の軽減税率15%は、令和7年度税制改正により令和9年3月31日開始事業年度まで延長されています。

まず押さえる:家賃640万円の物件の「不動産所得」は年68万円しかない

ここが今回の分析の出発点です。基準ケースの各年の内訳を計算すると、次のようになりました。

経過年

満室家賃

NOI

支払利息

減価償却

不動産所得

税引前CF

1年目

640万円

480万円

127万円

286万円

68万円

196万円

5年目

627万円

470万円

113万円

286万円

71万円

187万円

10年目

612万円

459万円

96万円

286万円

78万円

175万円

14年目(償却最終年)

600万円

450万円

80万円

286万円

84万円

166万円

15年目(償却切れ)

597万円

447万円

76万円

0万円

372万円

164万円

20年目

582万円

436万円

54万円

0万円

382万円

153万円

30年目

553万円

415万円

3万円

0万円

412万円

131万円

年間家賃640万円に対して、課税対象の不動産所得は1年目でわずか68万円です。青色申告特別控除65万円を引けば、課税ベースは3万円しか残りません。減価償却286万円と支払利息127万円が、家賃のほとんどを吸収しているためです。

つまり減価償却が回っている間、個人の所得税率が何%であってもかかる税金がほとんどない。この状態では、法人の税率がいくら低くても比較する土俵がありません。逆に法人側には均等割7万円と税理士報酬20万円という固定費が毎年発生します。

そして15年目、減価償却が終わった瞬間に不動産所得は84万円から372万円へ4.4倍に跳ね上がります。税引前CFは166万円から164万円へほとんど変わらないのに、です。ここが法人化の議論が意味を持ち始める地点です。

検証1:家賃収入を4倍にしても、法人化は不利のまま

まず「規模で決まる」という通説を検証します。給与など他の課税所得900万円の人が、保有10年・売却まで含めた総手残り(累計税引後CF+売却手取り−自己資金)を個人と法人で比較しました。

年間満室家賃

物件価格

個人所有

法人所有

差(法人−個人)

320万円

4,000万円

926万円

605万円

−321万円

480万円

6,000万円

1,388万円

993万円

−395万円

640万円

8,000万円

1,820万円

1,368万円

−452万円

800万円

1億円

2,204万円

1,743万円

−461万円

960万円

1億2,000万円

2,588万円

2,118万円

−470万円

1,280万円

1億6,000万円

3,356万円

2,867万円

−489万円

家賃収入を320万円から1,280万円へ4倍にしても、法人化の不利は縮まらず、むしろわずかに拡大しました(−321万円→−489万円)。規模を4倍にしても課税所得はほぼゼロのままなので、法人の税率メリットが出ず、固定費と売却時の課税差だけが積み上がるためです。

「家賃収入1,000万円が法人化の目安」という言い方は、この条件では成立しませんでした。

検証2:分岐点は保有年数と、他の所得の高さにあった

家賃640万円で固定し、保有年数と他の課税所得を変えて差額(法人−個人)を見ます。プラスなら法人有利です。

保有年数

他の課税所得0円

600万円

900万円

2,000万円

10年

−472万円

−461万円

−452万円

−447万円

15年

−832万円

−762万円

−711万円

−679万円

20年

−1,056万円

−737万円

−518万円

−374万円

25年

−1,282万円

−699万円

−312万円

−52万円

30年

−1,504万円

−645万円

−90万円

+291万円

読み取れることが3つあります。

① 15年目までは差が広がり続ける。 償却期間中は法人の固定費だけが積み上がるため、10年→15年で差はどのケースでも拡大します。

② 償却切れ後に、他の所得が高い人だけ差が縮み始める。 他の課税所得2,000万円のケースは20年→30年で−374万円から+291万円へ665万円改善しました。一方、他の所得ゼロのケースは−1,056万円から−1,504万円へ悪化を続けます。

③ 他の所得ゼロなら、50年保有しても法人が逆転しない。 差額がゼロになる保有年数を1年刻みで逆算したところ、次の結果でした。

他の課税所得

法人が個人を上回る保有年数

0円

50年以内に逆転せず

600万円

50年以内に逆転せず

900万円

32年

1,200万円

32年

2,000万円

26年

この条件では、法人化が総手残りで勝つには「高い他の所得」と「四半世紀を超える保有」の両方が必要でした。片方だけでは足りません。

検証3:不動産所得いくらから法人の税率が安くなるか(単年度の逆算)

売却を切り離し、「1年あたりの税負担」だけで分岐点を逆算します。個人側は青色申告特別控除65万円を引いた後に累進課税、法人側は所得から固定費27万円を引いた後に法人実効税率、加えて固定費27万円そのものを負担として計上しました。

限界税率の比較

課税所得

個人の限界税率(所得税+復興+住民税)

法人の限界実効税率

195万円以下

15.1%

21.4%

195万〜330万円

20.2%

21.4%

330万〜695万円

30.4%

21.4%

695万〜800万円

33.5%

21.4%

800万〜900万円

33.5%

33.6%

900万〜1,800万円

43.7%

33.6%

1,800万〜4,000万円

50.8%

33.6%

税率だけを見れば、課税所得330万円を超えた時点で個人30.4%>法人21.4%となり、法人のほうが安くなります。ここが多くの解説で「法人化の分岐点は課税所得330万円(または900万円)」と説明される根拠です。

ただし固定費27万円があるため、実際の分岐点はもっと上にあります。他の課税所得900万円の人で、不動産所得別の年間税負担を比較しました。

不動産所得

個人の増分税額

法人の税額+固定費

差(法人−個人)

100万円

15.3万円

42.6万円

+27.3万円

200万円

59.0万円

64.0万円

+5.0万円

300万円

102.7万円

85.4万円

−17.3万円

500万円

190.1万円

128.2万円

−61.8万円

800万円

321.1万円

192.4万円

−128.7万円

1,000万円

411.0万円

256.3万円

−154.7万円

1,500万円

665.2万円

424.3万円

−240.9万円

他の課税所得別に、法人が単年度で有利に転じる不動産所得の水準を逆算した結果です。

他の課税所得

法人が有利になる不動産所得

0円

1,046万円超

300万円

481万円超

600万円

373万円超

900万円

223万円超

2,000万円

184万円超

他の所得が高いほど分岐点は下がり、他の所得ゼロなら不動産所得1,046万円まで法人は有利になりません。法人化の分岐点は単一の数字ではなく、他の所得との組み合わせで決まるということです。

そして基準ケースの不動産所得は、償却期間中68〜84万円、償却切れ後で372〜412万円。他の課税所得900万円の人なら、償却が切れて初めて分岐点223万円を超えるという関係になります。検証2で15年目以降に差が縮み始めたのは、これが理由です。

検証4:売却時の課税差が、保有中のメリットを打ち消す

単年度で法人が有利になっても、総手残りではなかなか逆転しませんでした。原因は出口にあります。保有20年・他の課税所得900万円のケースを分解します。

項目

個人所有

法人所有

20年間の累計税引後CF

2,602万円

2,328万円

−274万円

売却価格(表面9%)

6,433万円

譲渡益(簿価・費用控除後)

2,240万円

売却時の税額

455万円
(長期譲渡20.315%)

698万円
(法人実効税率)

−243万円

総手残り

4,216万円

3,698万円

−518万円

差額518万円のうち243万円、およそ半分が売却時の課税差です。個人は5年超保有で譲渡所得が20.315%の分離課税になりますが、法人は売却益がその期の所得に合算され、800万円超の部分に33.6%がかかります。譲渡益が大きいほど、この差は開きます。

減価償却を多く取ったぶん簿価が下がり、譲渡益が膨らむという構造も効いています。保有中の節税と出口の課税はセットで見る必要があることが、数字ではっきり出ました。

検証5:建物構造を変えると結論が変わる

償却年数が短いほど早く償却が切れ、法人化のメリットが早く立ち上がります。保有20年で構造(償却年数)を変えた差額です。

建物・償却年数

他の所得0円

900万円

2,000万円

木造築15年(償却7年)

−1,091万円

−29万円

+255万円

木造築10年(償却14年)

−1,056万円

−518万円

−374万円

木造新築(償却22年)

−1,044万円

−366万円

−197万円

重量鉄骨新築(償却34年)

−962万円

+83万円

+344万円

RC新築(償却47年)

−973万円

+238万円

+546万円

両端で法人が有利になり、真ん中(償却14〜22年)が最も不利というU字型になりました。理由が違います。

  • 築古木造(償却7年):償却が7年で切れ、8年目から不動産所得が高止まりする。法人の低税率が効く期間が13年あるため、他の所得900万円でほぼ均衡(−29万円)、2,000万円で逆転する。
  • RC新築(償却47年):毎年の償却額が小さい(年85万円)ため、最初から不動産所得が高い。20年間ずっと法人税率が効く。加えて簿価が下がりにくく譲渡益が小さいので、法人の出口課税デメリットも軽い。
  • 木造築10年(償却14年):14年間は所得ゼロ近辺、残り6年だけ高所得。法人メリットが効く期間が最も短く、譲渡益は最も大きい。

築古木造は「短期で大きく償却して節税」と説明されることが多い戦略ですが、法人所有との相性という観点では、償却が早く切れることがむしろ法人化を正当化する方向に働くという結果でした。

検証6:役員報酬で分散すると勝てるか(社会保険料込みで見る)

ここまでは役員報酬ゼロ・法人内に留保する前提でした。実務で法人化のメリットとして語られるのは、むしろ役員報酬による所得分散です。他に所得のない配偶者へ、法人の税引前利益に相当する額を役員報酬として支給するケースを追加しました(給与所得控除を適用)。

ただし役員報酬には社会保険料が付いてきます。労使合計で報酬のおよそ30%、法人と個人の両方を同じ世帯が負担するなら実質的な世帯コストです。社会保険料を無視した場合と、30%で計上した場合の両方を並べます。家賃960万円(価格1億2,000万円)、他の課税所得900万円のケースです。

保有年数

個人所有

法人(留保)

法人+役員報酬
社保考慮なし

法人+役員報酬
社保30%

10年

2,588万円

2,118万円

2,274万円

2,054万円

20年

6,040万円

5,719万円

6,242万円

5,080万円

30年

9,319万円

9,888万円

10,819万円

8,202万円

結果は明確に分かれました。

社会保険料を無視すれば、役員報酬は法人化の最大の武器です。 保有30年で留保型9,888万円に対し10,819万円と931万円上乗せされ、個人所有も1,500万円上回ります。給与所得控除と低い税率帯を使えるためです。

社会保険料を30%で入れると、同じ戦略が最も成績の悪い選択に変わります。 保有30年で8,202万円と、個人所有を1,117万円下回りました。報酬に対して約30%のコストは、所得分散で得られる税率差をほぼ丸ごと食い潰します。

実際の負担率は報酬額・自治体・扶養状況・既に厚生年金に加入しているかで大きく変わるため、この2つの数字は上限と下限のレンジとして読んでください。社会保険料は将来の年金受給という見返りがあるため、単純なコストとも言い切れません。それでも「役員報酬で法人化が得になる」という説明を、社会保険料抜きで受け取ってはいけないことは、この幅の大きさが示しています。

検証7:市況が悪化すると結論は変わるか

保有20年・他の課税所得900万円で、3シナリオを比較しました。

シナリオ

条件

個人

法人

BASE

空室5%/金利2.0%/家賃下落0.5%/出口9%

4,216万円

3,698万円

−518万円

STRESS

空室10%/金利3.0%/家賃下落1.0%/出口10%

1,595万円

1,186万円

−409万円

SEVERE

空室20%/金利4.0%/家賃下落1.5%/出口11%

−1,362万円

−1,862万円

−501万円

総手残りはBASE 4,216万円からSEVERE −1,362万円まで5,578万円変動しました。一方、個人・法人の差は−409万〜−518万円の範囲にとどまります

これは実務的に重要な示唆です。所有形態の選択で動く金額(約500万円)より、空室・金利・出口利回りの前提で動く金額(約5,600万円)のほうが一桁大きい。法人化の検討に時間をかける前に、その物件が金利3%・空室10%に耐えるかを確認するほうが、金額的なインパクトは大きいということになります。

結果から言えること

  1. 「家賃収入いくらから法人化」という基準は、この条件では機能しなかった。 家賃を4倍にしても法人の不利は縮まらなかった。判断すべきは家賃収入ではなく、減価償却と支払利息を引いた後の不動産所得。
  2. 分岐点は「他の所得との合計」で決まる。 他の所得ゼロなら不動産所得1,046万円超、900万円なら223万円超。同じ物件でも、買う人によって答えが変わる。
  3. 減価償却期間中は法人化の効果がほぼ出ない。 基準ケースでは不動産所得が年68〜84万円しかなく、青色控除65万円でほぼ消える。この間、法人は年27万円の固定費だけを負担する。
  4. 出口の課税差が保有中のメリットの約半分を消す。 保有20年の差額518万円のうち243万円が売却時の税差。長期譲渡20.315%を使える個人の優位は大きい。
  5. 建物構造で結論が反転する。 RC新築や築古木造では法人有利、木造築10年前後が最も法人化しにくい。
  6. 役員報酬は社会保険料込みで評価しないと判断を誤る。 同じ戦略が保有30年で+1,500万円にも−1,117万円にもなった。

投資判断への使い方

この結果は「法人化しないほうがいい」という結論ではありません。判断軸を分けるための材料です。

  • 1棟目・木造・LTV80%・他の所得が中程度なら、法人化を急ぐ理由は税負担の面では見つかりにくい。 償却が切れる時期(本ケースでは14年目)が実質的な検討時期になる。
  • 他の課税所得が900万円を超え、かつ長期保有前提なら、初年度から法人を検討する価値がある。 ただし逆転までに26〜32年かかる計算なので、途中売却の可能性が高いなら慎重に。
  • RC・重量鉄骨で長期保有するなら、法人のほうが有利になりやすい。 償却が薄く所得が最初から出るうえ、譲渡益が膨らみにくい。
  • 複数棟を継続的に買い増す計画なら、この試算は当てはまらない。 1棟目の償却が切れる頃に2棟目の償却が始まるため所得が平準化される一方、規模拡大に伴う融資戦略や相続対策など、税負担以外の要素が判断の中心になる。
  • 所有形態より先に、物件そのもののストレス耐性を確認する。 検証7のとおり、金額インパクトは一桁違う。

今回のように、金利・空室・家賃下落・減価償却・出口価格・所有形態を同時に動かすと、表計算では確認すべき項目が急速に増えます。RE-AIでは収益性・融資・リスク・出口を横断して複数条件をまとめて確認できるよう設計していますが、税務判断そのものは扱いません。法人化の最終判断は、必ず税理士に個別の事情を含めて相談してください。

この分析で分からないこと

  1. 社会保険料の実額。報酬額・自治体・扶養状況・既存の加入状況で大きく変わります。本記事では0%と30%のレンジで示しました。
  2. 国民健康保険料への影響。個人所有では不動産所得の増加が国保料を押し上げますが、本試算には含めていません。含めれば個人側の有利さは縮みます。
  3. 個人事業税(不動産貸付が一定規模以上で課税、税率5%)を計上していません。含めれば個人側の有利さは縮みます。
  4. 相続・事業承継の観点。法人化の主要な目的の一つですが、本記事は保有〜売却までの税引後キャッシュのみを比較しています。
  5. 法人の繰越欠損金(10年)や他事業との損益通算。単一物件・単一事業を前提としているため、これらのメリットは反映されていません。
  6. 融資条件の差。個人と法人で金利・期間・審査結果が異なるケースがありますが、同一条件としています。
  7. 実際の物件の競争力。建物状態、周辺の新規供給、管理品質、入居者属性は反映していません。
  8. 税制改正リスク。保有20〜30年の試算に現行税率を適用しています。長期の試算ほど、この前提は不確実です。

また、本記事の「償却切れで法人化が有利に傾く」という関係は、あくまで税率構造から導かれた計算結果です。実際の投資家が償却切れのタイミングで法人化しているかどうかを示すデータではありません。

まとめ

価格8,000万円・家賃640万円の一棟アパートで個人所有と法人所有を保有10〜30年で比較したところ、家賃収入を1,280万円まで増やしても、減価償却期間中は法人所有のほうが手残りが少ないという結果になりました。

法人化の分岐点は家賃収入の規模ではなく、減価償却と支払利息を引いた後の不動産所得が、他の所得と合わせてどの税率帯に乗るかで決まります。他の課税所得が900万円なら不動産所得223万円超、他の所得がゼロなら1,046万円超が、この条件での目安でした。

そして保有中の税率メリットは、売却時の課税差(個人の長期譲渡20.315% vs 法人の実効33.6%)でおよそ半分が相殺されます。法人化を検討するなら、保有中の節税額だけでなく、出口までの合計で見る必要があります。

関連記事

参考資料・出典

  • 国税庁「No.2260 所得税の税率」(所得税速算表・復興特別所得税)
  • 国税庁「No.5759 法人税の税率」(中小法人の軽減税率15%、一般23.2%)
  • 国税庁「No.3208 長期譲渡所得の税額の計算」(長期譲渡20.315%)
  • 国税庁「No.2072 青色申告特別控除」(65万円控除の要件)
  • 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」および中古資産の簡便法(木造22年/重量鉄骨34年/RC47年)
  • 財務省・中小企業庁「令和7年度税制改正」(中小法人軽減税率の適用期限延長)

税率・制度の確認日:2026年8月15日。税制は改正されるため、実際の判断時点で最新情報をご確認ください。本記事は税務アドバイスではなく、条件を固定した計算結果の提示です。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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