
中古の区分マンションを検討するとき、物件資料には「管理費7,000円/修繕積立金5,000円」のように現在の金額が書かれています。収支計算では、この数字をそのまま運営費に入れることがほとんどです。
しかし修繕積立金は、将来の工事費から逆算して決まる金額です。今いくらかではなく、長期修繕計画に必要な水準まで上がったときにいくらかが、投資期間全体の収支を決めます。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」では、修繕積立金の積立方式として段階増額積立方式を採用している管理組合が47.1%、そのうち2015年以降に完成したマンションでは81.2%に達しています。つまり築浅の区分ほど、「将来値上げすること」を前提に、今の金額が低く設定されている可能性が高いということです。
この記事では、国土交通省のガイドラインが示す修繕積立金の目安額を使って、次の3つを計算しました。
結論を先に書くと、月3,375円の値上げが10年間の投資結果に与えた影響は111.2万円で、値上げ額の単純累計40.5万円の2.75倍でした。そして必要な表面利回りのプレミアムは0.51ポイントです。
一般的な記事は「修繕積立金は将来上がるので注意しましょう」までは書いています。しかし、次の3点はほとんど計算されていません。
この3つに数値で答えることが、この記事の目的です。
国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23年4月策定、令和6年6月改定)は、長期修繕計画の実例366事例を集計し、専有面積1㎡あたりの月額で修繕積立金の目安を示しています。計画期間全体の平均額という定義です。
機械式駐車場がある場合は、機種ごとの1台あたり月額修繕工事費(例:3段ピット2段昇降式で5,840円/台・月)を台数分だけ総専有床面積で割り、この目安に加算します。
地上階数/建築延床面積 | 事例の3分の2が包含される幅 | 平均値 |
|---|---|---|
20階未満・5,000㎡未満 | 235〜430円/㎡・月 | 335円 |
20階未満・5,000〜10,000㎡ | 170〜320円/㎡・月 | 252円 |
20階未満・10,000〜20,000㎡ | 200〜330円/㎡・月 | 271円 |
20階未満・20,000㎡以上 | 190〜325円/㎡・月 | 255円 |
20階以上 | 240〜410円/㎡・月 | 338円 |
出典:国土交通省「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(令和6年6月改定)/情報確認日:2026年9月16日
ここで投資家が見落としやすいのが、小規模マンションほど目安が高いという点です。20階未満・延床5,000㎡未満の平均335円は、延床5,000〜10,000㎡の252円より33%高い水準です。工事量がまとまらず単価が下がりにくいためで、ガイドラインも「建物の規模が大きくまとまった工事量になるほど、施工性が向上し、修繕工事の単価が安くなる傾向」があると説明しています。
投資用ワンルームは小規模な建物に入っていることが多く、この区分では目安が最も高い側に該当します。
令和6年6月の改定で、段階増額積立方式の引上げ方について次の考え方が示されました。
この2つを並べると、段階増額方式で買った区分は、原則として初期額の最大1.83倍(1.1÷0.6)まで上がる前提で設計されていることになります。物件資料の「修繕積立金5,000円」が初期額だった場合、計画上の到達点は9,000円台という計算です。
ここから先は条件を固定したシミュレーションです。実在する物件の統計ではなく、RE-AIの診断実データでもありません。今回の検証テーマ(専有面積あたりの積立金単価が収支に与える影響)に合わせて設定した架空ケースです。
今回は物件価格を主役にしていません。ガイドラインの目安が「円/㎡・月」で示されているため、専有面積と賃料を起点に条件を組み立て、価格は表面利回りから決まる従属変数として扱っています。
項目 | 設定値 | 設定の理由 |
|---|---|---|
物件タイプ | 中古区分マンション(RC造・築15年) | 修繕積立金が投資判断に直接効くのは区分。築15年は1回目の大規模修繕を終え、2回目に向けた計画見直しが近い時期 |
専有面積 | 25㎡ | 投資用ワンルームの標準的な広さ。㎡単価の影響を見るため面積を明示 |
月額賃料 | 75,000円(年間90万円) | 25㎡で㎡単価3,000円。地方中核市〜首都圏郊外の想定 |
表面利回り | 8.0%(→物件価格1,125万円) | 築15年の中古区分として無理のない水準。価格は年間賃料÷利回りで算出 |
稼働率 | 95% | 平均入居年数3〜4年、空室期間2ヶ月程度を想定 |
共用部管理費 | 月7,000円(280円/㎡・月) | 小規模ワンルームマンションの水準 |
固定資産税・都市計画税 | 年55,000円 | 区分の土地持分が小さいことを反映 |
賃貸管理委託料 | 実効収入の5% | 一般的な集金代行の水準 |
その他運営費 | 年25,000円 | 原状回復・募集費用の年割り、火災保険料等 |
項目 | 設定値 |
|---|---|
LTV(借入比率) | 80%=借入900万円 |
金利 | 2.3% |
融資期間 | 30年(元利均等) |
年間返済額 | 415,585円(月34,632円) |
取得諸費用 | 物件価格の7% |
投下自己資金 | 3,037,500円(頭金225万円+諸費用78.75万円) |
変更するのは修繕積立金の㎡単価のみです(後半の複合ストレスを除く)。現況を200円/㎡・月=月5,000円とします。これは偶然ですが、ガイドラインの段階増額ルールにおける初期額の下限(0.6×335=201円)とほぼ同じ水準です。
現況200円から、ガイドラインの各水準まで引き上げた場合の収支です。物件価格・賃料・稼働率・融資条件・その他運営費はすべて固定しています。
修繕積立金の水準 | ㎡単価 | 月額(25㎡) | 年間NOI | 実質利回り | DSCR | 年間CF | 現況比 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
現況(物件資料の金額) | 200円 | 5,000円 | 588,250円 | 5.23% | 1.42 | 172,665円 | — |
目安幅の下限 | 235円 | 5,875円 | 577,750円 | 5.14% | 1.39 | 162,165円 | ▲6.1% |
目安の平均値 | 335円 | 8,375円 | 547,750円 | 4.87% | 1.32 | 132,165円 | ▲23.5% |
段階増額の最終額(1.1D) | 368.5円 | 9,212円 | 537,700円 | 4.78% | 1.29 | 122,115円 | ▲29.3% |
目安幅の上限 | 430円 | 10,750円 | 519,250円 | 4.62% | 1.25 | 103,665円 | ▲40.0% |
読み取れることは3つあります。
1つ目。月3,375円の値上げ(200円→335円)で、年間CFは23.5%減ります。月額でいえば14,389円→11,014円です。値上げ額は賃料の4.5%にすぎませんが、CFは賃料から運営費と返済を引いた残りなので、同じ金額でも比率としては5倍以上に増幅されて効きます。
2つ目。DSCRは1.42から1.32へ低下します。一般に金融機関が意識する1.2は割りませんが、この物件は稼働率95%・金利2.3%という順調な条件です。次に見るように、条件が重なると1.2は簡単に割ります。
3つ目。実質利回りは5.23%から4.87%へ0.36ポイント下がります。表面利回りは8.0%のまま変わりません。表面利回りは修繕積立金の水準を一切反映しない指標だということが、この行の意味です。
同じ条件で、指標が閾値に到達する積立金単価を逆算しました。
到達する状態 | 必要な積立金単価 | 月額(25㎡) | 現況5,000円からの倍率 |
|---|---|---|---|
DSCR1.3を下回る | 360円/㎡・月 | 8,999円 | 1.80倍 |
DSCR1.2を下回る | 498円/㎡・月 | 12,462円 | 2.49倍 |
年間CFがゼロになる | 776円/㎡・月 | 19,389円 | 3.88倍 |
注目すべきはDSCR1.3の行です。必要な単価360円は、ガイドラインの目安平均335円をわずかに上回る程度でしかありません。この条件では、積立金がガイドラインの平均値まで是正されるだけで、DSCRは1.3割れの手前まで来るということです。
一方、CFが赤字になるのは月19,389円で、現況の3.88倍です。ここまでの水準は通常の是正では起きません。つまり修繕積立金の値上げは「赤字転落」という形ではなく、黒字のまま手残りと返済余力だけが静かに削られる形で現れます。これが気づきにくい理由です。
ここが今回の分析で最も差が出た部分です。修繕積立金の値上げを「毎月の支出が増える話」として捉えると、影響額を大きく取り違えます。
購入直後に積立金が200円から335円へ是正され、そのまま10年保有して売却した場合を計算しました。売却価格は収益還元(11年目想定NOI÷出口利回り5.5%)、家賃下落は年0.5%、売却費用は4%としています。
項目 | A:200円のまま据置 | D:335円へ即時是正 | 差 |
|---|---|---|---|
10年間の累計税引前CF | 1,546,305円 | 1,141,305円 | ▲405,000円 |
11年目想定NOI | 548,539円 | 508,039円 | ▲40,500円 |
売却価格(Cap5.5%) | 9,973,440円 | 9,237,076円 | ▲736,364円 |
売却時の手残り(費用・残債控除後) | 2,917,216円 | 2,210,306円 | ▲706,909円 |
合計インパクト | — | — | ▲1,111,909円 |
10年税引前IRR | 4.82% | 1.19% | ▲3.63pt |
月3,375円の値上げを10年払うと、単純累計は405,000円です。多くの人はここで計算を止めます。しかし実際の影響は1,111,909円、つまり2.75倍でした。
差の内訳は、累計CFの減少が405,000円(36.4%)、売却手残りの減少が706,909円(63.6%)です。影響の3分の2は、毎月の通帳ではなく、売却したときに初めて現れます。
収益物件の価格は、収益還元法では「NOI÷還元利回り」で決まります。修繕積立金は運営費なので、値上げはそのままNOIの減少になり、割り算を通じて価格に増幅されて跳ね返ります。式にすると次のとおりです。
出口価格の低下額 = 修繕積立金の月額増加分 × 12ヶ月 ÷ 出口利回り
月1,000円の値上げが出口価格をいくら押し下げるかを、出口利回り別に計算すると次のようになります。この表は物件規模を問わず使えます。
出口利回り(還元利回り) | 月1,000円の値上げによる出口価格の低下額 |
|---|---|
4.5% | 266,667円 |
5.0% | 240,000円 |
5.5% | 218,182円 |
6.0% | 200,000円 |
7.0% | 171,429円 |
8.0% | 150,000円 |
月1,000円の値上げは、出口利回り5.5%なら売却価格を約21.8万円下げます。出口利回りが低い(=人気があり価格が高い)物件ほど、同じ値上げによる価格の下げ幅は大きくなります。都心の区分だから安心、とはいえない部分です。
なお、実際の中古区分の売買価格は収益還元だけで決まるわけではなく、実需(居住目的)の買い手がつく物件では取引事例の影響が強く出ます。ここで示したのは「収益還元で価格を組み立てた場合の理論的な感応度」であり、市場価格がこのとおりに動くという意味ではありません。
この感応度は、自分の物件のNOIと還元利回りを入れれば確認できます。RE-AIの収益還元法・収益価格シミュレーターには、NOIを±20%動かしたときの収益価格を並べた感応度表があります。値上げ後のNOIを入れ直すと、出口価格がどこまで下がるかをその場で比較できます。
ここまでは「買ったあとどうなるか」でした。投資判断に使えるようにするには、逆に「いくらの利回りなら買えるのか」を出す必要があります。
賃料75,000円・専有25㎡・稼働95%・融資期間30年を固定し、修繕積立金が現況200円のままの場合と、ガイドライン平均335円まで上がる場合のそれぞれについて、DSCR1.2を維持できる最低表面利回りを逆算しました。
LTV\金利 | 2.0% | 2.5% | 3.0% | 3.5% |
|---|---|---|---|---|
70% | 5.70→6.12% | 6.09→6.54% | 6.50→6.98% | 6.93→7.44% |
80% | 6.51→7.00% | 6.96→7.48% | 7.43→7.98% | 7.91→8.50% |
90% | 7.33→7.87% | 7.83→8.41% | 8.36→8.98% | 8.90→9.56% |
100% | 8.14→8.75% | 8.71→9.35% | 9.29→9.98% | 9.89→10.62% |
各セルは「積立金200円のままなら必要な表面利回り→335円まで上がる前提なら必要な表面利回り」です。
同じ条件で、年間CFがゼロを下回らない最低表面利回りも計算しました。
LTV\金利 | 2.0% | 2.5% | 3.0% | 3.5% |
|---|---|---|---|---|
70% | 4.75→5.10%(+0.35pt) | 5.08→5.45%(+0.38pt) | 5.42→5.82%(+0.40pt) | 5.77→6.20%(+0.43pt) |
80% | 5.43→5.83%(+0.40pt) | 5.80→6.23%(+0.43pt) | 6.19→6.65%(+0.46pt) | 6.60→7.08%(+0.49pt) |
90% | 6.11→6.56%(+0.45pt) | 6.53→7.01%(+0.48pt) | 6.97→7.48%(+0.52pt) | 7.42→7.97%(+0.55pt) |
100% | 6.79→7.29%(+0.50pt) | 7.25→7.79%(+0.54pt) | 7.74→8.31%(+0.57pt) | 8.24→8.85%(+0.61pt) |
必要なプレミアムは0.35〜0.73ポイントの範囲に収まりました。そしてLTVが高いほど、金利が高いほど、必要なプレミアムは大きくなります。フルローン(LTV100%)・金利3.5%では0.73ポイント必要です。借入を厚くするほど、運営費の小さな変動が返済余力を通じて増幅されるためです。
実務での使い方はシンプルです。検討中の区分について、専有面積と建物の延床規模からガイドラインの目安額を出し、現在の積立金がそれを下回っているなら、表面利回りを0.5ポイント程度厳しく見る。それだけで、値上げリスクを価格交渉と購入判断の両方に反映できます。
現況が200円/㎡・月だった場合に、ガイドラインの平均値まで引き上げると月額でいくら増えるかを、面積と建物規模の組み合わせで整理しました。
専有面積 | 20階未満 | 20階未満 | 20階未満 | 20階以上 |
|---|---|---|---|---|
20㎡ | +2,700円 | +1,040円 | +1,420円 | +2,760円 |
25㎡ | +3,375円 | +1,300円 | +1,775円 | +3,450円 |
30㎡ | +4,050円 | +1,560円 | +2,130円 | +4,140円 |
40㎡ | +5,400円 | +2,080円 | +2,840円 | +5,520円 |
60㎡ | +8,100円 | +3,120円 | +4,260円 | +8,280円 |
同じ25㎡でも、小規模マンション(+3,375円)と中規模マンション(+1,300円)では引上げ額が2.6倍違います。建物の延床規模は、物件資料の「修繕積立金」の数字だけを見ていても分かりません。総戸数・階数・建築延床面積は、重要事項説明書や登記情報で確認する項目になります。
なお、タワーマンション(20階以上)の目安338円は小規模マンションの335円とほぼ同水準です。ただしタワーは専有面積そのものが大きくなりやすいため、戸当たりの金額としては最も重くなります。
現実には、修繕積立金の値上げが単独で起きるとは限りません。工事費が高騰している局面では建築費・人件費が上がっており、同時に金利も動きます。高経年化すれば空室期間も伸びます。
そこで、積立金・稼働率・金利を同時に動かした3ケースを計算しました。
シナリオ | 積立金 | 稼働率 | 金利 | 初年度DSCR | 初年度CF | 10年IRR | 10年後売却価格 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
BASE | 200円 | 95% | 2.3% | 1.42 | 172,665円 | 4.82% | 9,973,440円 |
STRESS | 335円 | 92% | 3.0% | 1.15 | 66,768円 | ▲4.09% | 8,793,513円 |
SEVERE | 430円 | 88% | 3.8% | 0.91 | ▲43,834円 | ▲28.79% | 7,683,914円 |
STRESSケース(積立金がガイドライン平均、稼働率が3ポイント低下、金利が0.7ポイント上昇)で、初年度DSCRは1.15となり1.2を割ります。単独では1.32を保っていたDSCRが、3つの条件が重なると金融機関の基準ラインを下回るということです。
ただしSEVEREケースは、目安幅の上限・稼働率88%・金利3.8%を同時に置いた厳しい想定であり、発生確率が高いという意味ではありません。単独条件の分析だけでは見えない複数条件が重なったときの落ち方を確認するためのものです。
管理組合で値上げの合意形成ができないと、大規模修繕の直前に一時金を徴収する、あるいは金融機関から借り入れる形になることがあります。令和5年度マンション総合調査では、長期修繕計画において将来の一時金徴収を予定していないマンションは83.3%でした。裏を返せば、一定数は一時金を織り込んでいることになります。
積立金は200円のまま据え置き、10年目に戸当たり一時金を徴収したケースです。
10年目の一時金 | 10年税引前IRR | 据置ケース(4.82%)との差 |
|---|---|---|
30万円 | 3.98% | ▲0.84pt |
60万円 | 3.06% | ▲1.76pt |
100万円 | 1.69% | ▲3.13pt |
興味深いのは、一時金100万円(▲3.13pt)より、月3,375円の恒久的な値上げ(▲3.63pt)のほうがIRRへの打撃が大きい点です。一時金は1回で終わりますが、値上げは出口価格まで引き下げるからです。「一時金を取られるのは嫌だが、月3,000円の値上げなら仕方ない」という感覚は、投資家の立場では逆になり得ます。
ここまでの計算は、運営費を変えたときに手残りがどう動くかという構造の話です。自分の検討物件の賃料・運営費・融資条件で同じ計算をしたい場合は、RE-AIのキャッシュフローシミュレーターで、運営費の欄に現在の積立金と目安水準の両方を入れて比較できます。DSCRと年間手残りの差がその場で出ます。
この分析を実際の物件検討に落とすと、確認する手順は次のようになります。
なお、現在の積立金が目安を下回っていること自体が、直ちに「危険な物件」を意味するわけではありません。段階増額方式の初期段階にあるだけかもしれませんし、機械式駐車場や充実した共用施設がなく、必要な工事費がもともと小さい建物かもしれません。ガイドライン自身も「目安の範囲に収まっていないからといって、直ちに不適切であると判断される訳ではありません」と明記しています。
判断すべきは金額の高低ではなく、長期修繕計画の内容と積立残高が、その金額を説明できているかです。金額が低いことと計画が不十分であることは別の事象で、前者から後者を断定することはできません。
そしてこの点こそが、令和5年度マンション総合調査が示したもうひとつの数字と関わります。中古でマンションを購入した区分所有者のうち、購入時に長期修繕計画を「よく確認した」のは6.4%、「ほとんど確認していない」「確認していない」の合計は47.5%でした。市場の約半数が確認していない情報だからこそ、確認した投資家には価格交渉の材料が残っているとも言えます。
今回の計算には、次の限界があります。
物件資料に書かれた修繕積立金は、その物件の将来の負担額ではなく、今この時点の徴収額です。国土交通省のガイドラインは、長期修繕計画366事例から専有面積あたりの目安を示しており、これを使えば「将来いくらになるか」を購入前に見積もれます。
今回の条件では、月3,375円の値上げが10年間の投資結果を111.2万円悪化させ、そのうち63.6%は売却価格の低下として現れました。値上げ額の単純累計40.5万円の2.75倍です。DSCR1.2を維持するために必要な表面利回りのプレミアムは0.51ポイントでした。
結論を一つに絞ることはできません。この条件では収益性そのものは黒字を維持しており、赤字転落するわけではありません。しかし返済余力と出口価格への感応度は明確に高く、「買えるかどうか」ではなく「いくらなら買えるか」を0.5ポイント厳しく見直すべき論点だと言えます。同時に、積立金が低いこと自体を欠陥と決めつけることもできず、長期修繕計画と積立残高を確認したうえでなければ、値上げの必然性は判断できません。
今回のように、修繕積立金・稼働率・金利・出口利回りを同時に動かして実質利回り・DSCR・IRR・売却価格まで追いかけると、表計算だけでは確認する項目が増えていきます。RE-AIでは、こうした複数条件を同じ物件条件でまとめて確認できるように設計しています。
情報確認日:2026年9月16日
本記事の数値は、記載した前提条件に基づくシミュレーションです。実在する物件の統計データ、RE-AIの診断実データ、市場の平均値を示すものではありません。また、本記事は投資助言ではありません。最終的な判断はご自身の責任で行い、金融機関・税理士・マンション管理士等の専門家への確認を推奨します。
この記事を書いた人

鈴木基公
RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者
1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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