RE-AI

7体のAIによる収益物件評価プラットフォーム

収益性・収支

同じ8,000万円の中古アパートでも、木造とRCで年間減価償却費は321万円違う|耐用年数の求め方と計算例

同じ8,000万円の中古アパートでも、木造とRCで年間減価償却費は321万円違う|耐用年数の求め方と計算例

中古の収益物件を検討していて、「減価償却費は結局いくらになるのか」「木造とRCで何が違うのか」が分からないまま収支計算を進めていないでしょうか。減価償却費は現金の支出を伴わないのに税金の額を左右する経費で、計算を誤ると保有中の税引後キャッシュフローの見通しが大きくずれます。

減価償却費とは何か、なぜ収支計算に必要なのか

減価償却費とは、建物や設備など複数年にわたって使用する資産の取得費を、耐用年数に応じて毎年の経費として按分計上する仕組みです。土地は時間が経っても価値が減らないという考え方から、減価償却の対象は建物部分に限られ、土地は対象になりません。

現金の支出はローンの元金返済と同じタイミングでは発生しませんが、税務上の経費にはなります。そのため、税引前キャッシュフローだけを見ていると、減価償却費が課税所得と手取り額に与える影響を見落とします。収支計算全体の中で減価償却費がどこに位置づけられるかは、「収益物件の収支計算完全ガイド」で整理しています。

減価償却費の計算式(定額法)

現在の税制で個人が不動産を保有する場合、建物の減価償却は原則として定額法で計算します。計算式は次のとおりです。

年間の減価償却費 = 建物の取得価額 ÷ 耐用年数

取得価額を耐用年数で均等に割るため、保有期間中は毎年ほぼ同じ金額を経費計上します(会計・税務上の細かな端数処理は考慮していません)。定額法の考え方は国税庁のタックスアンサーで公開されています。

建物価格の出し方(土地建物の按分)

減価償却費を計算する前提として、物件価格のうち「建物部分がいくらか」を分ける必要があります。土地は減価償却の対象外のため、この按分を誤ると建物価格が過大・過小になり、計算全体が狂います。

按分の方法として代表的なのは、売買契約書に記載された消費税額から逆算する方法、固定資産税評価額の比率で按分する方法の2つです。個人間売買などで消費税の記載がない場合は、固定資産税評価額の比率を使う方法が一般的です。どの方法を使うかで建物価格が数百万円単位で変わることもあるため、契約書と固定資産税評価証明書の両方を確認してください。

耐用年数はどう決まるか

建物の耐用年数は、構造ごとに「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で法定耐用年数が定められています。

構造別の法定耐用年数

構造

法定耐用年数

木造

22年

軽量鉄骨造(骨格材3mm超4mm以下)

27年

重量鉄骨造(骨格材4mm超)

34年

鉄筋コンクリート造(RC)

47年

これは新築時点の耐用年数です。中古物件を購入する場合は、この法定耐用年数をそのまま使うのではなく、次の「簡便法」で見積耐用年数を計算します。

中古物件は「簡便法」で耐用年数を求める

中古資産は使用可能期間を個別に見積もることが難しいため、国税庁は簡便法という計算方法を認めています。計算式は次の2パターンです。

  • 法定耐用年数の一部を経過している場合:(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
  • 法定耐用年数の全部を経過している場合:法定耐用年数×20%

計算結果の1年未満は切り捨て、2年に満たない場合は2年とします。なお、取得後にリフォーム等の資本的支出が取得価額の50%を超える場合は簡便法を使えないなどの制限があるため、詳細は税理士に確認してください。

同じ8,000万円の中古物件で4つの構造を比較する(架空例)

以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。実在の物件ではありません。

物件価格8,000万円、土地3,500万円・建物4,500万円(固定資産税評価額による按分と仮定)、築15年の一棟アパートを、構造だけを木造・軽量鉄骨・重量鉄骨・RCに変えて比較します。

構造

法定耐用年数

簡便法での見積耐用年数

年間減価償却費

木造

22年

10年

約450万円

軽量鉄骨

27年

15年

約300万円

重量鉄骨

34年

22年

約204.5万円

RC

47年

35年

約128.6万円

建物価格が同じ4,500万円でも、見積耐用年数が短い木造は年間の減価償却費が約450万円になるのに対し、耐用年数が長いRCは約128.6万円にとどまります。その差は年間で約321万円です。見積耐用年数が短いほど1年あたりの経費計上額は大きくなりますが、その分償却期間も短く終わるという裏返しでもあります。

築年数によって収益性がどう変わるかは、木造アパートの築5年・15年・25年・35年を比較した「築5年・15年・25年・35年の木造アパート、同じ8,000万円ならどれが有利か」でも試算しています。

減価償却費が収支・税金に与える影響

減価償却費は現金の支出を伴わないため、キャッシュフロー計算のNOIや税引前CFには含まれません。一方で、不動産所得を計算する際は経費として差し引けるため、課税所得が減り、結果として所得税・住民税の負担が軽くなります。

この節税効果は、他に給与所得など課税所得がある人ほど大きくなる一方、耐用年数が短く年間の減価償却費が大きい物件ほど、その効果も早く終わります。保有中にかかる税金全体の考え方は「不動産投資の税金 完全ガイド」で解説しています。

減価償却が終わったらどうなるか

見積耐用年数が過ぎて減価償却費が計上できなくなると、経費が急に減るため課税所得が増え、税引後キャッシュフローも減少します。これは特に見積耐用年数が短い木造や軽量鉄骨で早く訪れる論点です。

実際に減価償却が終わった年に税引後キャッシュフローがどれだけ変わるかは、木造・重量鉄骨・RCの8,000万円物件で30年分を試算した「減価償却が終わった年、税引後CFは93万円減った」で確認できます。

法人化や物件選びの判断にどうつなげるか

減価償却費の計算方法を理解すると、次の2つの判断につながります。1つは、同じ価格の物件でも構造によって節税効果の出方と持続期間が違うため、利回りだけで物件を比較すると見落としが起きるということ。もう1つは、法人化を検討する際、減価償却費は所得税と法人税のどちらで経費計上した方が有利かを左右する要素の一つになるということです。

法人化の判断軸は「不動産投資の法人化 完全ガイド」で、具体的な確認項目は「家賃収入960万円、法人化すべきタイミングはいつか」で扱っています。RE-AIでは、価格・融資・空室・出口といった条件を単独ではなく同時に動かして長期のキャッシュフローを確認する考え方を採っていますが、減価償却のように税務判断が絡む要素は、最終的に税理士への確認を前提にしてください。

まとめ

減価償却費は「建物価格÷耐用年数」で計算しますが、中古物件では法定耐用年数をそのまま使わず、簡便法で見積耐用年数を求める必要があります。構造によって見積耐用年数が大きく変わるため、同じ価格・同じ建物価格の物件でも年間の減価償却費、ひいては税引後キャッシュフローは大きく異なります。物件を比較する際は、表面利回りや税引前キャッシュフローだけでなく、構造ごとの減価償却費の違いまで確認することをおすすめします。

参考資料・出典

  • 国税庁タックスアンサー No.2100「減価償却のあらまし」
  • 国税庁タックスアンサー No.2106「定額法と定率法による減価償却」
  • 国税庁タックスアンサー No.5404「中古資産の耐用年数」
  • 国税庁タックスアンサー No.3261「建物の取得費の計算」
  • 減価償却資産の耐用年数等に関する省令(昭和40年大蔵省令第15号)

情報確認日:2026年8月21日。税制は改正される可能性があるため、実際の申告にあたっては最新の情報を国税庁サイトまたは税理士でご確認ください。

この記事をシェアする

この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

分析実績 87件(2026/08/07時点)X(旧Twitter)プロフィールと執筆記事 →