
「人口が減るエリアは家賃が下がるから危ない」——収益不動産の世界でよく聞く話です。ただ、この言い方には抜けている前提があります。人口が減っていなくても、家賃は建物が古くなるだけで下がるということです。
総務省統計局の研究では、木造の民営借家の家賃は築年数の経過だけで年率0.9%下がると推計されています。人口動向とは無関係に、全国どこでも働いている下方圧力です。
そこでこの記事では、この0.9%を「下落率の下限」として起点に置き、そこへ需給要因(人口・世帯減、供給過剰など)を上乗せしたときに、収益物件の20年間がどう変わるのかを実際に計算しました。家賃下落率5水準 × 空室率3水準(15通り)、家賃下落率3水準 × 出口利回り3水準(9通り)の合計24通りを試算し、さらに「その下落率でも成立する購入価格はいくらか」を逆算しています。
結論から書くと、表面利回り8.0%・借入7,000万円の一棟アパートでは、家賃下落率が年1.5%を超えた時点で、保有20年以内に年間キャッシュフローが赤字へ転落します。経年減価の0.9%からの余裕は、年0.6ポイントしかありません。
検証したのは次の3つです。
指標の定義そのものについては収益物件の収支計算完全ガイド|表面利回り・NOI・DSCR・IRRの計算方法と使い方で解説しています。この記事は、その指標を実際に20年分動かしたらどうなるかを見る回です。
総務省統計局『統計研究彙報』第79号に掲載された尾中裕一(2022)「消費者物価指数における民営家賃の経年減価調整」では、住宅・土地統計調査(2013年・2018年)の個票データ約111万レコードを使ったヘドニック回帰により、民営借家の経年減価率が推計されています。
推計モデル | 木造(年率) | 非木造(年率) |
|---|---|---|
基本モデル | ▲0.842% | ▲0.702% |
拡張モデル(築浅・築古の補正あり) | ▲0.898% | ▲0.747% |
この数字には、注意すべき2つの性質があります。
ひとつは、この推計値が継続家賃(すでに住んでいる入居者が払っている家賃)を含む借家全体の平均的な変化だという点です。新規募集家賃だけを見ると、下落幅はもっと大きくなる可能性があります。
もうひとつは、論文自身が「築年数変数の回帰係数にはリフォームによる品質回復による家賃上昇分がある程度含まれている」と明記している点です。つまりこの0.9%は、一定の修繕・原状回復を行ったうえでなお下がる分と読むのが妥当です。修繕をしなければ、これより悪くなります。修繕費がNOIとIRRに与える影響は修繕費「家賃の5%」で足りるのか|国交省の長期修繕計画事例4件から逆算し、CF・DSCR・IRRへの影響を検証で別途検証しました。
なお同論文によれば、消費者物価指数の民営家賃指数は1999年から2018年までの20年間、緩やかな下落が続いています。2014年以降の物価上昇局面でも上昇へ転じていません。
国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5年推計)」(2023年12月22日公表)では、2020年から2050年までの30年間について次の結果が示されています。
2050年の総人口(2020年比) | 市区町村数 | 構成比 | 年率換算 |
|---|---|---|---|
増加または横ばい | 77 | 4.5% | — |
0〜3割減 | 605 | 35.0% | 0〜▲1.18% |
3〜5割減 | 705 | 40.8% | ▲1.18〜▲2.28% |
5割以上減 | 341 | 19.7% | ▲2.28%〜 |
※政令指定都市を1市としてカウントした1,728市区町村ベース。年率換算は30年複利で筆者が算出。
3割以上減少する市区町村は合計1,046、全体の60.5%にのぼります。都道府県レベルでも、2050年の総人口が2020年比で30%以上減る県が11県あります。エリアの調べ方は賃貸需要の調べ方完全ガイド|収益物件のエリア判断に使う公的データと読み方にまとめています。
ここが最も注意すべき点です。人口が30年で3割減るからといって、家賃が3割下がるわけではありません。両者は相関しますが、間に複数の要因が挟まります。
したがってこの記事では、人口減少率を家賃下落率へ直接変換していません。「経年減価0.9%」+「需給要因α(年0〜2.0ポイント)」という形で、家賃下落率そのものをシナリオ変数として振っています。社人研のデータは、このαがどの程度の幅まで想定に値するかを考える手がかりとして参照しました。人口減少エリアの投資判断をめぐる論点整理は「人口減少エリアは危ない」は本当か。賛成派と反対派、それぞれの根拠をご覧ください。
以下はすべて条件付きシミュレーションです。実在物件の統計でも、RE-AIの診断実績データでもありません。基準となる物件条件は架空のケースとして設定しています。
項目 | 設定 |
|---|---|
物件 | 木造一棟アパート(購入時 築10年) |
物件価格 | 8,000万円 |
購入諸費用 | 物件価格の7%=560万円 |
満室想定年間家賃(初年度) | 640万円(購入時 表面利回り8.0%) |
借入額 | 7,000万円(頭金1,000万円) |
初期投下自己資金 | 1,560万円(頭金+諸費用) |
金利・期間 | 年2.0%固定・30年・元利均等 |
年間返済額 | 310.5万円 |
運営費 | 定額50万円(固定資産税・保険等)+ 満室想定家賃×15%(管理料・修繕・原状回復) |
保有期間 | 20年(保有後に売却) |
売却諸費用 | 売却価格の3% |
税金 | 考慮しない(税引前キャッシュフロー) |
運営費のうち固定資産税・保険相当分を定額としたのは、家賃が下がっても固都税は同じようには下がらないためです。すべてを家賃比例にすると、下落シナリオが実態より楽観的になります。
初年度の数字は次のとおりです。満室想定家賃640万円 × (1−空室率5%) = 実効収入608万円、運営費は50+640×15%=146万円、したがってNOIは462万円。年間返済310.5万円を引いた税引前CFは151.5万円、DSCRは1.49です。20年後の残債は2,811.9万円になります。
変数 | 水準 | 設定の考え方 |
|---|---|---|
家賃下落率(年・複利) | 0.9%/1.4%/1.9%/2.4%/2.9% | 0.9%=経年減価のみ。以降は需給要因を0.5ポイント刻みで上乗せ |
空室率 | 5%/10%/15% | 全期間一定と仮定 |
出口利回り(売却時の表面利回り) | 9%/11%/13% | 売却時点で築30年の木造という前提を反映 |
売却価格は「売却翌年(21年目)の満室想定年間家賃 ÷ 出口利回り」で算出しています。
出口利回りを11%に固定し、家賃下落率5水準 × 空室率3水準の15通りを計算しました。金額の単位は万円です。
下落率 | 空室率 | 20年目 | 20年目CF | 20年目 | CF赤字 | DSCR1.2 | 20年 | 売却 | 20年 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0.9% | 5% | 539 | +71 | 1.23 | — | — | +2,200 | +1,898 | +2,539 |
0.9% | 10% | 539 | +44 | 1.14 | — | 16年目 | +1,612 | +1,898 | +1,950 |
0.9% | 15% | 539 | +17 | 1.05 | — | 8年目 | +1,024 | +1,898 | +1,362 |
1.4% | 5% | 490 | +31 | 1.10 | — | 15年目 | +1,776 | +1,445 | +1,661 |
1.4% | 10% | 490 | +7 | 1.02 | — | 11年目 | +1,215 | +1,445 | +1,100 |
1.4% | 15% | 490 | −18 | 0.94 | 17年目 | 6年目 | +653 | +1,445 | +538 |
1.9% | 5% | 445 | −5 | 0.98 | 20年目 | 12年目 | +1,377 | +1,033 | +850 |
1.9% | 10% | 445 | −27 | 0.91 | 16年目 | 8年目 | +840 | +1,033 | +314 |
1.9% | 15% | 445 | −49 | 0.84 | 13年目 | 5年目 | +303 | +1,033 | −223 |
2.4% | 5% | 403 | −38 | 0.88 | 16年目 | 9年目 | +1,000 | +660 | +100 |
2.4% | 10% | 403 | −58 | 0.81 | 13年目 | 7年目 | +487 | +660 | −413 |
2.4% | 15% | 403 | −78 | 0.75 | 10年目 | 4年目 | −26 | +660 | −926 |
2.9% | 5% | 366 | −68 | 0.78 | 13年目 | 8年目 | +645 | +321 | −594 |
2.9% | 10% | 366 | −86 | 0.72 | 11年目 | 6年目 | +154 | +321 | −1,085 |
2.9% | 15% | 366 | −104 | 0.66 | 9年目 | 3年目 | −337 | +321 | −1,576 |
※「20年総手残り」=20年累計CF+売却純手取−初期投下自己資金1,560万円。税引前。
この表から読み取れることを整理します。
下落率0.9%のケースでも、20年目の満室想定家賃は640万円→539万円、▲15.8%です。人口が増えているエリアでも、建物が古くなる分はこれだけ効きます。空室率10%なら16年目にDSCRが1.2を割り、空室率15%なら8年目に割ります。DSCRが融資審査でどう見られるかは不動産投資のDSCRとは?1.2を下回ると融資が厳しくなる理由と計算例を参照してください。
15通りのうち、20年以内にCFが赤字転落したのは10通りですが、DSCRが1.2を割ったのは14通りです。しかも割れる時期はCF赤字より平均して数年早い。手残りがまだプラスのうちに、金融機関から見た返済余力は先に細っています。追加融資や借り換えを前提にした戦略は、CFではなくDSCRの推移で判断すべきということになります。
空室率が5%→15%へ10ポイント悪化しても、売却純手取は変わりません(同じ1,898万円)。空室は毎年のCFだけを削ります。一方、家賃下落率が0.9%→2.9%になると、CFが削られるうえに売却純手取が1,898万円→321万円へ、1,577万円減ります。同じ「収益の悪化」でも、効き方の構造が違います。
空室率10%・出口利回り11%に固定し、家賃下落率を0.1ポイント刻みで動かして、保有20年以内に年間CFが赤字転落する境界を探しました。
家賃下落率(年) | CFが赤字転落する年 |
|---|---|
0.9%(経年減価のみ) | 20年以内には転落しない |
1.2% | 20年以内には転落しない |
1.4% | 20年以内には転落しない |
1.5% | 20年目 |
1.6% | 19年目 |
1.9% | 16年目 |
境界は年1.5%でした。経年減価の0.9%を差し引くと、需給要因に許される余裕は年0.6ポイントしかありません。
この境界値は本記事の前提条件(価格8,000万円・金利2.0%など)に固有の結果です。ご自身の物件条件では → 家賃下落率を入れて長期収支を試算する(無料ツール)
この「0.6ポイント」という数字が、この記事でいちばん実務的な意味を持つと考えています。人口減少エリアかどうかを議論するとき、多くの人は「家賃が2割下がったら」といった大きな幅を想像します。しかし表面利回り8.0%・借入7,000万円・金利2.0%という、決して無理をしていない条件でも、経年減価に年0.6ポイント上乗せされただけで20年以内にCFが赤字へ入ります。
ただしこの1.5%という値は、この記事の前提条件に固有の結果です。金利、借入額、運営費率、空室率のいずれかが変われば境界も動きます。金利側から同じ構造を見た検証は金利上昇×空室率、同時に悪化したらキャッシュフローはどこまで減る?8,000万円物件で20パターン試算にあります。
次に空室率を10%に固定し、家賃下落率3水準 × 出口利回り3水準の9通りを計算しました。
下落率 | 出口 | 21年目 | 売却価格 | 20年後 | 売却 | 20年 | 20年 | IRR |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
0.9% | 9% | 534 | 5,935 | 2,812 | +2,945 | +1,612 | +2,997 | 7.77% |
0.9% | 11% | 534 | 4,856 | 2,812 | +1,898 | +1,612 | +1,950 | 6.25% |
0.9% | 13% | 534 | 4,109 | 2,812 | +1,174 | +1,612 | +1,226 | 4.80% |
1.9% | 9% | 436 | 4,845 | 2,812 | +1,888 | +840 | +1,168 | 4.04% |
1.9% | 11% | 436 | 3,964 | 2,812 | +1,033 | +840 | +314 | 1.47% |
1.9% | 13% | 436 | 3,354 | 2,812 | +442 | +840 | −278 | −1.89% |
2.9% | 9% | 355 | 3,947 | 2,812 | +1,017 | +154 | −389 | −2.11% |
2.9% | 11% | 355 | 3,230 | 2,812 | +321 | +154 | −1,085 | 算出不能※ |
2.9% | 13% | 355 | 2,733 | 2,812 | −161 | +154 | −1,567 | 算出不能※ |
※途中でキャッシュフローの符号が複数回変わるため、IRRが一意に定まりません。この2ケースは総手残りで判断すべきものとして扱っています。
注目したいのは、下落率1.9%の3行です。20年累計CFはどれも840万円で同じなのに、出口利回りが9%か13%かによって20年トータルの結果は「+1,168万円」から「−278万円」へ、1,446万円ぶれます。
さらに下落率2.9%・出口13%では、売却価格2,733万円に対して残債が2,812万円。売っても79万円足りず、諸費用込みで161万円を持ち出すことになります。20年間毎年のCFはプラスだった年も多いのに、出口で回収不能になるパターンです。
ここには2つの下落が同時に効いています。家賃が下がることで分子(売却時の家賃)が縮み、出口利回りが上がることで分母が膨らむ。売却価格は両方の悪化を掛け算で受けます。出口利回り単体の影響については出口利回りが1%上がるとIRRはどこまで落ちるか|保有5年・10年・15年・20年で検証で保有期間別に検証しました。
ここまでの変数を組み合わせ、3つのシナリオにまとめます。
項目 | BASE | STRESS | SEVERE |
|---|---|---|---|
家賃下落率 | 0.9%(経年減価のみ) | 1.9% | 2.9% |
空室率 | 5% | 10% | 15% |
出口利回り | 9% | 11% | 13% |
初年度CF | +152万円 | +120万円 | +88万円 |
10年目CF | +112万円 | +43万円 | −17万円 |
20年目CF | +71万円 | −27万円 | −104万円 |
初年度DSCR | 1.49 | 1.38 | 1.28 |
20年目DSCR | 1.23 | 0.91 | 0.66 |
CF赤字転落 | なし | 16年目 | 9年目 |
20年累計CF | +2,200万円 | +840万円 | −337万円 |
売却純手取 | +2,945万円 | +1,033万円 | −161万円 |
20年総手残り | +3,585万円 | +314万円 | −2,058万円 |
IRR | 9.48% | 1.47% | 算出不能 |
ここで重要なのは、3シナリオの初年度DSCRがすべて1.28以上だという点です。購入時点の数字だけを見れば、SEVEREでさえ「DSCR1.28、CF年88万円、表面8.0%」で、多くの金融機関の審査を通り得る水準に見えます。購入時点のDSCRとCFは、20年後の結果をほとんど説明しません。
SEVEREを「不安を煽るためのケース」として提示しているわけではありません。社人研の推計では2050年に人口が5割以上減る市区町村が341(19.7%)あり、そうしたエリアで供給過剰が重なれば年2.9%の下落は想定外の数字ではない、というのが設定の根拠です。ただし前述のとおり、人口減少率がそのまま家賃下落率になるわけではないため、SEVEREは「起きる確率が高い将来」ではなく「起きた場合に何が起きるかを見るための条件」として扱ってください。
ここからが、この記事のもうひとつの目的です。「下落率が高いエリアは買わない」ではなく、「その下落率なら、いくらまでなら買えるのか」を逆算します。
満室想定家賃640万円と頭金1,000万円を固定し、購入価格だけを動かして「20年IRRが5%になる最大購入価格」を求めました(借入額=購入価格−1,000万円、諸費用は購入価格の7%)。
シナリオ | 最大購入価格 | 必要な | そのときの | そのときの |
|---|---|---|---|---|
BASE(0.9%/5%/9%) | 9,299万円 | 6.88% | +94万円 | 1.26 |
MILD(1.4%/10%/10%) | 8,027万円 | 7.97% | +118万円 | 1.38 |
STRESS(1.9%/10%/11%) | 7,363万円 | 8.69% | +148万円 | 1.52 |
SEVERE(2.9%/15%/13%) | 5,896万円 | 10.85% | +181万円 | 1.83 |
同じ家賃640万円の物件が、想定する下落率次第で9,299万円にも5,896万円にもなります。差は3,403万円、率にして37%です。
必要な表面利回りに言い換えると、BASEの6.88%からSEVEREの10.85%まで、約4ポイントの開きがあります。「高利回り物件は危ない」という言い方をよく聞きますが、この計算から見えるのは逆の構造です。下落リスクの高いエリアで表面利回りが高いのは、リスクに対する当然の対価であり、むしろ十分に高くなければ成立しないということになります。高利回り物件の失敗要因については「高利回り物件で失敗した」は、本当に利回りのせいなのかでも扱っています。
IRRではなく「20年間一度もCFを赤字にしない」を条件にすると、上限価格はこうなります。
シナリオ | 最大購入価格 | 必要な購入時表面利回り |
|---|---|---|
BASE(0.9%/5%) | 9,594万円 | 6.67% |
MILD(1.4%/10%) | 8,151万円 | 7.85% |
STRESS(1.9%/10%) | 7,389万円 | 8.66% |
SEVERE(2.9%/15%) | 5,647万円 | 11.33% |
STRESS条件では、IRR5%基準(8.69%)とCF黒字維持基準(8.66%)がほぼ一致しました。この条件下では、2つの異なる目的関数がほぼ同じ購入価格を指しています。
価格交渉ができない場合、調整できるのは自己資金です。物件価格8,000万円・出口利回り11%を固定し、20年間DSCR1.2を一度も割らないために必要な頭金を逆算しました。
シナリオ(下落率/空室率) | 必要な頭金 | 自己資金比率 | 頭金1,000万円との差 |
|---|---|---|---|
BASE(0.9%/5%) | 838万円 | 10.5% | −162万円 |
MILD(1.4%/10%) | 2,040万円 | 25.5% | +1,040万円 |
STRESS(1.9%/10%) | 2,676万円 | 33.4% | +1,676万円 |
SEVERE(2.9%/15%) | 4,127万円 | 51.6% | +3,127万円 |
下落率が0.9%から1.9%へ、たった1ポイント動くだけで、必要な頭金は838万円から2,676万円へ3.2倍になります。SEVEREでは価格の半分以上を自己資金で入れないと、20年間DSCR1.2を維持できません。
自己資金比率とDSCRの関係そのものは不動産投資の自己資金はいくら必要?頭金10%・20%・30%でDSCRと月々の返済を比較で扱っていますが、そこでは家賃を一定と置いていました。家賃下落を織り込むと、必要な自己資金の水準は大きく変わります。
結果を「買い/買わない」の二択には落とせません。判断軸として使えるのは、次の4点だと考えています。
この記事のケースでは1.5%でした。あなたの検討物件では違う値になります。金利・借入額・運営費率を入れて、まず「年何%の下落まで20年間CFがもつか」を計算し、それを経年減価0.9%と比べてください。差が0.5ポイントを切るなら、需給要因の余地がほとんどない物件だということになります。
SEVEREでも初年度DSCRは1.28ありました。見るべきは水準ではなく推移です。10年目・15年目・20年目のDSCRを出し、1.2を割る年を特定してください。その年が保有予定期間より手前にあるなら、借り換えや追加融資の前提が崩れます。
検証2で見たとおり、累計CFが同じでも出口利回り次第で結果は逆転します。出口利回りを購入時+1%/+3%/+5%の3通りで置いて、残債を割るケースがあるかどうかだけは確認する価値があります。売却か保有かの判断軸は築15年の一棟アパート、「売る」か「持ち続ける」かを決める7つの確認項目にまとめました。
この分析は売却価格を収益還元(家賃÷出口利回り)だけで計算しています。実際には土地値が価格の下支えになります。国土交通省の2026年(令和8年)地価公示では、全国平均で住宅地+2.1%、全用途+2.8%と5年連続の上昇でした。ただし地価公示は全国平均であり、人口が大きく減るエリアでは下落している地点もあります。収益価格と積算価格の両面から見る手順は収益物件の価格査定は何を見る?収益還元法・取引事例比較法・原価法の使い分けと確認手順で解説しています。
なお、今回のように家賃下落率・空室率・出口利回りを同時に動かすと、確認すべき組み合わせは一気に増えます。この記事の24通りも、手作業の表計算では管理が難しい量です。RE-AIの無料診断では、こうした複数条件をまとめて確認できるよう設計しています。ただしこの記事の計算と同様、前提条件を置いたシミュレーションであることに変わりはなく、個別物件の将来を保証するものではありません。
今回の試算には、次の限界があります。
「人口減少エリアだから買わない」ではなく、「想定する下落率に見合う価格と自己資金でしか買えない」。この記事の計算が示しているのは、そういう構造です。
情報確認日:2026年8月11日。地価・人口・家賃に関する数値はいずれも公表時点のものであり、以降の改定により変動する可能性があります。
本記事の試算は、記載した前提条件のもとで筆者が実際に計算したものです。RE-AIの診断実績データや実在物件の統計ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
この記事を書いた人

鈴木基公
RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者
1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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