
不動産投資の後悔談を読むと、多くが「利回りの高さに惹かれて買ってしまった」という書き出しから始まります。だからこそ「高利回り物件は危ない」という空気が、初心者の間にはできあがっています。
でも、少し立ち止まって考えたいことがあります。その後悔の原因は、本当に「利回りが高かったこと」なのでしょうか。それとも、別の何かだったのでしょうか。
条件を単純化した一例です。
Bさんは、表面利回り12%、価格3,500万円の木造アパート(築25年、6戸)を購入しました。自己資金300万円、残りはフルローンに近い形で借入。当初の想定家賃収入は年間420万円でした。
購入から3年後、空室率が想定の10%を大きく超えて30%台になり、さらに給排水管の修繕で200万円の出費が発生。手元のキャッシュフローは赤字に転落し、Bさんは「高利回り物件を選んだのが失敗だった」と振り返っています。
この話だけを聞くと、「やはり高利回り物件は危険」という結論に飛びつきたくなります。ここから、賛成側と反対側、両方の見方を見てみます。

高利回り物件は、多くの場合、次のいずれかの理由で価格が下がっています。
築年数が古く、大規模修繕が近い。エリアの賃貸需要が弱く、空室が埋まりにくい。再建築不可などの法的な制約がある。管理状態が悪く、入居付けに手間がかかる。

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つまり、利回りの高さそのものが「この物件には何らかのリスクがある」というシグナルだという考え方です。Bさんのケースでも、築25年という築年数と、修繕履歴が不明だった点は、購入前に確認できたはずのリスクでした。この立場に立てば、「高利回りに惹かれたこと自体が判断ミスだった」という見方は、一定の説得力があります。
「高利回り=危ない」という印象論を一歩進めて、表面利回りが相場より高く出ている物件を、RE-AIブログでこれまで個別に検証してきた内容から4つのパターンに整理すると、確認すべき場所がより具体的になります。
築年数が進んだ物件ほど、給排水管や屋根・外壁の大規模修繕が近づいている可能性が高くなります。表面利回りの計算には修繕費が含まれないため、「あと数年で数百万円単位の出費がある」という事実が利回りの数字には出てきません。空室率が想定より悪化した状態で大規模修繕が重なると、黒字だったはずの物件が赤字に転落する具体的な試算は「空室率10%なら黒字」の物件が、大規模修繕で赤字に転落した理由で確認できます。
人口や世帯数が減少しているエリアでは、同じ家賃設定でも入居者が決まるまでの期間が長引きやすく、長期化すると家賃を下げてようやく決まるという悪循環に陥ります。人口減少エリアをどこまで避けるべきかという論点そのものにも賛否両論があり、「人口減少エリアは危ない」は本当か。賛成派と反対派、それぞれの根拠で詳しく整理しています。
再建築不可物件は、建て替えができないという制約の分だけ価格が下がり、結果として表面利回りが高く表示されます。制約そのものが悪いわけではありませんが、将来の出口(売却)で買い手が限定される点を理解したうえで判断する必要があります。表面利回り15%の再建築不可物件を出口まで試算した例は再建築不可物件は「投資」になるかで確認できます。
管理状態が悪く入居付けに手間がかかる物件や、サブリース契約で保証家賃と実際の入居状況が見えにくくなっている物件も、表面上の利回りだけでは実態が判断しづらいパターンです。サブリースの保証料が何%の空室率に相当する保険なのかを逆算した記事もあわせて確認しておくと、保証家賃の数字をそのまま信じるリスクが見えてきます(サブリースの手数料15%は、空室率何%分の保険なのか)。
一方で、こう考えることもできます。利回りが高いこと自体は、悪いことではありません。問題は、その利回りの裏にあるリスクを、購入前にどれだけ検証したかです。
Bさんの場合、空室率が想定を大きく超えた原因が、エリアの構造的な賃貸需要の弱さなのか、管理会社の客付け力不足なのか、家賃設定が相場から外れていたのか、購入前には検証されていませんでした。修繕についても、給排水管の状態を事前にインスペクションしていれば、200万円の出費はある程度予測できた可能性があります。こうした確認項目を、物件・契約・エリアの3層でまとめてチェックする方法は収益物件購入前のリスクチェック完全ガイドで整理しています。
この立場に立てば、「高利回り物件を買ったこと」ではなく、「利回りの裏付けを確認しなかったこと」が本当の原因だった、ということになります。低利回りの物件を買っていたとしても、同じように検証を怠っていれば、別の形で同じ失敗をしていたかもしれません。

以下は理解しやすくするために単純化した架空の試算です。実在する物件・取引を示すものではありません。運営費(管理費・固定資産税・保険料など、元利返済と大規模修繕を除く)は実効収入の20%と仮定します。
表面利回り:年間家賃420万円 ÷ 価格3,500万円 = 12.0%
空室率30%まで悪化した年の実効収入:420万円×70%=294万円。運営費を20%とすると、294万円×80%=235.2万円がNOI(大規模修繕を除く)です。
NOI利回り(大規模修繕を除く):235.2万円 ÷ 3,500万円 ≒ 6.7%
ここに給排水管の修繕費200万円が重なった年だけで見ると、235.2万円-200万円=35.2万円。
その年の実質利回り:35.2万円 ÷ 3,500万円 ≒ 1.0%
表面利回り12.0%という数字は、空室が想定どおり10%に収まり、修繕費も発生しない年にしか成立しません。空室と修繕が重なった年だけを切り出すと、実質的な利回りは1%程度まで落ち込みます。しかもこの数字には、まだ元利返済額を差し引いていません。返済額まで含めれば、Bさんが振り返る「キャッシュフローの赤字」は数字としても説明がつきます。表面利回りと実質利回りがどこまで乖離しうるかを、区分マンション・一棟アパートの条件別に試算した記事は表面利回りと実質利回りの違いとはで確認できます。
自分が検討している物件で、空室率や修繕費の前提を変えたときにNOIや実質利回り、キャッシュフローがどこまで動くかは、RE-AIの無料キャッシュフローシミュレーターに物件価格・家賃・空室率・修繕の想定を入力して確認できます。
賛成側の「高利回りはリスクのシグナル」という見方も、反対側の「原因は検証不足」という見方も、どちらも間違ってはいません。実務的には、この二つは両立します。
高利回り物件を検討するときほど、その利回りが成立している理由を、価格だけでなく、空室率の実績、修繕履歴、周辺の賃貸需要、管理状態まで含めて確認する必要がある、という結論に落ち着きます。表面利回りだけを見るのは、写真だけで結婚相手を決めるようなものです。高利回りが悪いのではなく、写真だけで決めてしまう判断のプロセスのほうが問題だということです。

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満室想定の数字だけでなく、空室や修繕、金利上昇を加味した場合の数字まで確認したい場面では、RE-AIのようなツールで複数のリスクをまとめて見ておく方法もあります。ただし、こうした診断ツールも、最終的な判断を代わりに下してくれるものではなく、確認すべき材料を整理する道具のひとつです。
利回りの高さだけを理由に避ける必要はありません。ただし、上の4パターンのどれに当たるのかを価格だけでなく現地確認・レントロール・修繕履歴で特定し、その要因が自分の許容できるリスクかどうかを判断することが先です。要因が分からないまま高利回りだからという理由だけで購入・除外するのは、どちらも同じくらい早計です。
優先順位としては、まずレントロール(入退去の履歴と現況賃料)とエリアの空室率、次に建物の修繕履歴・インスペクションの3点を確認するのが実務的です。これらは個別の記事でも調べ方を整理しているので、収益物件購入前のリスクチェック完全ガイドから詳細を確認してください。
そうとは限りません。低利回りの物件でも、検証を怠れば同じ失敗が起こり得ます。利回りの高さは「検証すべき対象があるかどうかのシグナル」の一つであり、安全性そのものを保証するものではありません。
高利回りだけれど、空室率や修繕履歴の情報が少ない物件があるとします。価格の魅力は大きいものの、リスクの検証には時間もお金もかかります。
あなたなら、時間をかけてでもリスクを検証しますか。それとも、利回りの高さそのものを理由に、最初から候補から外しますか。どちらが正解というより、あなた自身の投資方針によって答えが変わるテーマだと思います。よければ、コメントで考えを聞かせてください。
情報確認日:2026年10月19日。本記事の試算はすべて理解のために単純化した架空例であり、実在の物件・取引を示すものではありません。本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の物件の購入や売却を推奨するものではありません。実際の投資判断は、物件条件、融資条件、資産状況などを確認し、必要に応じて不動産、金融、税務、法律の専門家へ相談してください。
#不動産投資 #資産形成 #収益物件 #投資初心者 #利回り #失敗談
この記事を書いた人

鈴木基公
RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者
1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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