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賃貸需要の調べ方完全ガイド|収益物件のエリア判断に使う公的データと読み方

賃貸需要の調べ方完全ガイド|収益物件のエリア判断に使う公的データと読み方

「このエリアは賃貸需要がありますよ」と不動産会社に言われても、何を根拠に信じればよいのか分からないまま契約に進んでしまう投資家は少なくありません。この記事では、人口動態・空室関連統計・地価という3つの公的データを使って賃貸需要を自分で確認する手順と、その数字を収支計算にどう反映するかを整理します。

「賃貸需要があります」を言葉だけで信じていいか

収益物件の営業資料や広告には、「このエリアは賃貸需要が旺盛です」「単身者に人気のエリアです」といった表現がよく登場します。こうした説明が誤りとは限りませんが、根拠となるデータが示されないまま判断材料にしてしまうと、需要の裏付けがないまま購入を決めることになります。

賃貸需要は「今、満室かどうか」だけでなく、「今後10年、20年その需要が続くか」という時間軸でも見る必要があります。特に融資期間が20年、30年に及ぶ収益物件では、購入時点の空室率だけでなく、将来の人口動態まで含めて確認しておく意味があります。

賃貸需要を確認する3つの公的データ

賃貸需要そのものをピンポイントで示す単一の統計は存在しません。そのため、性質の異なる複数のデータを組み合わせて、多角的に確認することが基本になります。

①人口動態・世帯数の推移と将来推計

まず確認したいのが、対象エリアの人口と世帯数の推移です。人口が減少していても、単身世帯や2人世帯の「世帯数」が増えていれば、賃貸需要そのものは維持されているケースもあります。逆に人口が横ばいでも世帯数の伸びが鈍化していれば、注意が必要です。

現在の人口だけでなく将来推計まで見ることも重要です。国立社会保障・人口問題研究所は「日本の地域別将来推計人口」として、市区町村単位で将来の人口を5歳階級・男女別に公表しています。また、総務省統計局の「住民基本台帳人口移動報告」では、市区町村別の転入・転出数が年齢層別に確認できるため、どの年齢層がそのエリアに流入しているかを把握する手がかりになります。

ただし、人口と世帯数は同じペースでは減りません。総人口が減少しているエリアでも、単身世帯や2人世帯が増えれば、賃貸需要はその分下支えされます。社人研の将来推計をもとに19都道府県で試算すると、2050年時点の人口減少率と世帯数減少率の差は最大15.6ポイント(茨城県)にのぼり、賃貸需要をどちらの数字で見るかによって同一物件の30年間の通算IRRが最大3.07ポイント変わるという結果も出ています。都道府県別の具体的な試算は「賃貸需要を人口で見るか世帯数で見るかで、30年IRRは最大3.07pt変わる|社人研の将来推計で19都道府県を試算」で解説しています。

②空室率・賃料相場に関する統計

賃貸需要は、実際の空室状況にも表れます。総務省統計局の「住宅・土地統計調査」では、都道府県・市区町村単位で住宅の空き家率が公表されており、その内訳として「賃貸用の住宅」の空き家数も確認できます。エリア全体の賃貸住宅ストックに対して空き家がどの程度存在するかは、需給バランスを見る一つの目安になります。

ただし「空室率」という言葉は、総数空き家率・賃貸用空き家率・ポータルの募集ベースという性質の異なる3つの数字を指していることがあり、どれを見ているかを混同するとDSCRの試算を誤ります。e-Statでの具体的な調べ方の手順と、調べた数値をDSCR・キャッシュフローにどう反映するかは「エリアの空室率の調べ方|「賃貸用空き家率」とポータル数値がズレる理由」で詳しく解説しています。

あわせて、実際に検討している物件の周辺相場を、複数の賃貸ポータルサイトで似た条件の部屋の掲載状況・掲載期間から確認すると、統計データだけでは分からない「今の肌感覚」を補うことができます。ただし、これは公的統計ではないため、判断の主軸ではなく補助情報として扱うのが妥当です。

個別の賃貸ポータルサイトを一件ずつ見る以外に、都道府県・市区町村単位で空室率を比較できる民間サービスもあります。例えばLIFULL HOME'Sの「見える!賃貸経営」では、全国の空室率を都道府県別に一覧できます。こちらも公的統計ではないため、住宅・土地統計調査の数字と突き合わせる形で、あくまで補助的に使うのが適切です。

③地価・取引価格・都市計画情報

賃貸需要が中長期的にどう変化しそうかは、地価や都市計画の動きからも読み取れます。国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、地価公示・都道府県地価調査、過去の不動産取引価格情報、用途地域などの都市計画情報、洪水浸水想定区域などの防災情報を無料で確認できます。地価が継続的に上昇しているエリアは、再開発や交通利便性の向上など、需要を押し上げる要因を伴っていることが多く、逆に長期的な下落傾向がある場合は、その背景を確認しておく必要があります。地価データを物件の価格査定に活用する方法については、「収益物件の価格査定は何を見る?収益還元法・取引事例比較法・原価法の使い分けと確認手順」で詳しく解説しています。

あわせて、駅までの距離やスーパー・病院・学校など生活利便施設へのアクセスも需要を左右する要因です。特に駅からの徒歩分数は、家賃や稼働率の前提を通じてDSCR・キャッシュフローに直接跳ね返ります。同じ物件・同じ融資条件でも徒歩8分と徒歩17分を比較すると、年間キャッシュフローで約87万円、DSCRで0.48ポイントの差が生じた試算例を「投資用物件は駅から徒歩何分まで?賃貸需要とDSCRへの影響から許容範囲を考える」で確認できます。国土交通省「不動産情報ライブラリ」の地価公示データには、周辺の用途地域や前面道路の状況も記載されているため、価格の妥当性だけでなく住環境の変化を確認する手がかりとしても活用できます。

具体例:3つのデータを組み合わせて読む(架空例)

以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。

エリアXについて調べたところ、①今後10年間の人口推計は約4%減少するが、単身世帯数はほぼ横ばいで推移する見込み、②賃貸用住宅の空き家率はエリア平均より低い水準、③直近5年間の地価は緩やかな上昇が続いている、という3つの結果が得られたとします。

この場合、人口全体は減少局面にあっても、単身世帯向けの賃貸需要はすぐには縮小しない可能性がある一方、空室率が低く地価が上昇しているという事実は、供給が追いついていないか、需要を押し上げる要因(再開発や交通利便性の向上など)が働いていると読むことができます。逆に、人口減少に加えて空き家率も高く地価が下落傾向であれば、需要の先細りを前提にシビアな空室率を収支計算に織り込む必要があります。

調べたデータを収支計算にどう反映するか

エリアの賃貸需要データを確認する目的は、「安心材料を集めること」ではなく、「収支計算に使う空室率の前提を、根拠のある数字に近づけること」です。人口動態や空き家率が弱いエリアであれば、購入時点の満室想定ではなく、空室率を高めに設定したうえでキャッシュフローやDSCRを再計算しておく必要があります。この空室率を変数として収支に織り込む具体的な計算例は、金利上昇と空室率の悪化を同時に試算した「金利上昇×空室率、同時に悪化したらキャッシュフローはどこまで減る?」で詳しく解説しています。表面利回りやNOI、DSCR、IRRといった収支計算の基本項目を体系的に確認したい場合は、「収益物件の収支計算完全ガイド」も参考になります。

RE-AIの収益性診断でも、人口動態や賃貸需要といったエリア要因を、価格や融資条件と切り離さずに評価する考え方を採っています。エリアの需要データが弱い場合、それを価格の妥当性や融資条件、出口戦略の判断とセットで見直すことで、購入判断の精度は変わってきます。エリアデータだけを個別に眺めるのではなく、収支・価格・融資・出口を一体で確認したい場合は、無料診断で物件情報を入力すると、これらの要因を組み合わせた分析結果を確認できます。

「人口減少エリアだから危ない」と単純に切り捨てられない理由

人口減少エリアは一律にリスクが高いと語られがちですが、世帯数の推移や地域内の人口移動、地価の動きまで確認すると、同じ「人口減少エリア」でも状況が大きく異なるケースがあります。人口減少と投資判断の関係については、賛成派・反対派それぞれの根拠を整理した「「人口減少エリアは危ない」は本当か。賛成派と反対派、それぞれの根拠」もあわせて確認すると、今回の3つのデータをどう解釈すべきかの判断材料が増えます。

よくある質問

公的データだけで賃貸需要を判断できますか?

公的データは需要の「土台」を確認するためのものであり、それだけで需要を断定できるわけではありません。同じ市区町村内でも、駅からの距離や学区、周辺の生活利便施設によって需要は変わります。公的データで大きな方向性を確認したうえで、検討している物件の周辺を実際に歩いて確認したり、地元の不動産会社に賃貸付けの実感をヒアリングしたりすることも有効です。

地元の不動産会社に聞き込みをする際、何を確認すればよいですか?

「このエリアは需要がありますか」という抽象的な質問だけでなく、直近の成約までの平均日数、空室が埋まりにくい間取りや条件、賃料を下げずに決まっている物件の特徴など、具体的な数字や事例を聞くことをおすすめします。感覚的な回答だけでなく、可能であれば根拠となる過去の成約データもあわせて確認すると、公的データと突き合わせやすくなります。

まとめ

賃貸需要は、不動産会社の説明を鵜呑みにするのではなく、人口動態・空室関連統計・地価という性質の異なる公的データを組み合わせて、自分で確認できる項目です。いずれのデータも単独で結論を出せるものではなく、複数のデータが同じ方向を示しているか、逆行しているかを見ることが重要になります。調べたデータは、購入するかどうかの安心材料としてではなく、収支計算に使う空室率や賃料下落の前提を根拠あるものに近づけるために使うことをおすすめします。

参考資料・出典

本記事の統計・制度情報は2026年8月20日時点で確認したものです。人口推計や統計調査は改定・更新される場合があるため、実際の投資判断にあたっては最新のデータをご確認ください。また、記事内の数値例は理解を助けるための架空例であり、実際の物件・エリアの数値ではありません。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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