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築15年の一棟アパート、「売る」か「持ち続ける」かを決める7つの確認項目

築15年の一棟アパート、「売る」か「持ち続ける」かを決める7つの確認項目

家賃収入は毎月きちんと入ってくる。それでも、築年数が進むにつれて「このまま持ち続けていいのか、そろそろ売るべきか」という迷いは、多くの大家さんの頭をよぎるはずです。

利回りだけを見て買ったときと違い、売却のタイミングには「正解」が見えにくいという特徴があります。ここでは、出口戦略を考えるときに確認しておきたい7つの項目を整理します。あわせて、通算IRRの動き方まで数字で追いたい方向けに、関連するRE-AIの試算記事もご案内します。

ケース:Aさんの一棟アパート

条件を単純化した一例です。

Aさんは8年前、価格8,000万円、表面利回り8%の一棟アパート(築7年、8戸)を購入しました。自己資金1,000万円、借入7,000万円、金利2.5%、返済期間30年のフルローンに近い形です。当時の想定家賃収入は年間640万円でした。

現在、築15年。空室率は平均10%前後で推移し、年間修繕費はおよそ100万円かかるようになってきました。残債はおよそ5,400万円。周辺相場を確認すると、同条件の物件の売却価格帯はやや下がってきているようです。

このAさんが「売るか、持ち続けるか」を考えるときに見るべき項目を、一つずつ確認します。

築15年の一棟アパート、「売る」か「持ち続ける」かを決める7つの確認項目

チェック項目1:残債と売却想定価格の差

なぜ必要か:売却価格が残債を下回ると、手元資金を追加して完済する「持ち出し売却」になります。

見落とすとどうなるか:表面利回りだけで判断していると、売却時に想定外の自己資金が必要になり、次の投資に回すはずだった資金が消えます。Aさんの場合、残債5,400万円に対し、周辺相場から見た売却想定価格が6,500万円程度であれば、諸費用を差し引いても手元に資金を残せる可能性がありますが、相場が下がっていれば話は変わります。

この「売却価格の下落が最終的な手残りやIRRにどこまで響くか」は、保有年数によって耐性が大きく変わります。

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価格8,000万円・表面利回り8.0%の一棟アパートで、出口表面利回り8.0〜10.0%×保有5〜20年を試算。出口利回り+1ptによる通算IRRの低下は保有5年で11.92pt、20年で0.58ptと20倍以上の差が出ました。元本割れの転換点と、必要な購入価格までを逆算しています。

チェック項目2:築年数と融資期間の関係

なぜ必要か:買い手側が組める融資期間は、建物の構造ごとに定められた法定耐用年数を目安に短くなる傾向があります。国税庁の耐用年数表では、木造・合成樹脂造の住宅用建物は22年、重量鉄骨造(骨格材4mm超)は34年、RC造・SRC造は47年とされており、金融機関の融資期間はこの残存年数を一つの上限目安として審査することが一般的です。

構造

法定耐用年数

築15年時点の残存年数の目安

木造・軽量鉄骨造

19〜22年

約4〜7年

重量鉄骨造(4mm超)

34年

約19年

RC造・SRC造

47年

約32年

木造アパートの場合、築15年は法定耐用年数22年の3分の2を超えており、買い手が組める融資期間はかなり短くなりやすい築年数帯です。構造によって「あと何年で耐用年数を迎えるか」が大きく異なるため、自分の物件の構造と残存年数を先に確認しておくと、売却時の買い手候補の広さがイメージしやすくなります。

見落とすとどうなるか:「そのうち売ればいい」と先延ばしにするうちに、融資が付きにくい築年数帯に入り、売却価格の交渉力が下がることがあります。

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チェック項目3:大規模修繕の実施状況と今後の予定

なぜ必要か:外壁や屋上防水、給排水管などの大規模修繕は、実施済みか未実施かで、査定額も買い手の印象も大きく変わります。

見落とすとどうなるか:修繕を先延ばしにしたまま売りに出すと、買い手側の値引き交渉材料にされやすく、逆に修繕直後は「今の状態」を評価されやすくなります。修繕費は、忘れた頃に効いてくるボディーブローのようなものです。

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チェック項目4:空室率の推移とエリアの賃貸需要

なぜ必要か:現在の空室率だけでなく、直近3〜5年の推移と、周辺の人口動態や賃貸需要の変化を見る必要があります。

見落とすとどうなるか:一時的に満室でも、エリア全体の賃貸需要が縮小傾向であれば、将来の家賃下落や空室長期化のリスクが売却価格に織り込まれます。

チェック項目5:金利上昇シナリオでの返済負担

なぜ必要か:変動金利で借りている場合、金利が上昇すれば返済額が増え、手元に残るキャッシュフローが減ります。

見落とすとどうなるか:金利が1%上昇した場合の返済額を試算せずに保有を続けると、キャッシュフローが赤字化してから慌てて売却を検討することになり、交渉力を失った状態での売却になりがちです。返済負担に対してどこまで余力があるかは、DSCR(借入金返済余力比率)という指標で確認できます。

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チェック項目6:売却時の税金と手残り額

なぜ必要か:所有期間が5年を超えるかどうかで、譲渡所得にかかる税率が変わります。国税庁によれば、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」として所得税・住民税合わせて39.63%、5年を超える場合は「長期譲渡所得」として20.315%の税率が適用されます(別途、復興特別所得税を含む)。減価償却が進んだ物件は、帳簿上の利益が想定より大きくなることもあります。

区分

所有期間の判定

税率(所得税+住民税)

短期譲渡所得

売却年の1月1日時点で5年以下

39.63%

長期譲渡所得

売却年の1月1日時点で5年超

20.315%

見落とすとどうなるか:売却価格だけを見て「利益が出た」と思っていても、税金を差し引いた手残り額は想定より少ないことがあります。特に所有期間が5年前後の場合、売却時期を数か月ずらすだけで税率区分が変わることもあるため、個別の税務判断は税理士へ確認することをおすすめします。

チェック項目7:次の投資先があるかどうか

なぜ必要か:売却して得た資金を、次にどう使うかが決まっていないと、「売ったけれど資金が寝たまま」という状態になりがちです。

見落とすとどうなるか:出口戦略は、売ることそのものではなく、売った後の資産全体の設計とセットで考える必要があります。表面利回りやNOI、IRRといった収支指標の計算方法を一通り確認しておきたい場合は、収支計算の基本を整理した記事もあわせてご覧ください。

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よくある質問

Q. 木造アパートは築何年くらいで売却を検討すべきですか?

明確な正解はありませんが、木造の法定耐用年数は22年のため、買い手の融資期間が短くなり始める築15〜20年あたりが、一つの検討ポイントとして意識されやすい時期です。ただし残債や修繕状況、エリアの賃貸需要によって最適なタイミングは物件ごとに異なります。

Q. 大規模修繕の直前と直後、どちらで売る方が有利ですか?

一般的には、修繕直後の方が「今の状態」を評価されやすく、査定額や買い手の印象がプラスに働きやすい傾向があります。修繕を先延ばしにしたまま売りに出すと、値引き交渉の材料にされやすくなります。ただし修繕費を回収しきれるかは保有期間や売却価格次第のため、一概にどちらが得とは言い切れません。

Q. 所有期間5年の判定はいつの時点で見ますか?

売却した年の1月1日時点の所有期間で判定されます。取得日から数えて5年を超えていても、その年の1月1日時点でまだ5年を超えていなければ短期譲渡所得として扱われる点に注意が必要です。

まとめ

7つの項目を並べましたが、共通しているのは「利回りが良かったかどうか」だけでは、売り時は判断できないということです。残債、融資環境、修繕状況、賃貸需要、金利、税金、次の投資先。これらを一つずつ確認する作業は地味ですが、後から振り返って一番効いてくる作業でもあります。

満室時の数字だけでなく、空室や修繕、金利上昇を加味した場合の数字も確認しておきたいところです。RE-AIの簡易診断では、こうした複数のリスクを一度に確認できるので、自分の試算と照らし合わせる材料の一つとして使ってみてもよいかもしれません。

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の物件の売却や保有継続を推奨するものではありません。税率や耐用年数の取り扱いは制度改正により変わる可能性があるため、実際の判断は、物件条件や融資条件、資産状況を踏まえ、必要に応じて不動産、金融、税務の専門家へ相談してください。

出典:国税庁「土地や建物を売ったとき」国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」(2026年8月時点の情報)

#不動産投資 #資産形成 #収益物件 #出口戦略 #大家業 #チェックリスト

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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