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既存不適格物件は買っても大丈夫か|自己資金が2倍に増える融資試算で検証した

既存不適格物件は買っても大丈夫か|自己資金が2倍に増える融資試算で検証した

相場より2〜3割安く、利回りも高い一棟アパートを見つけたら「既存不適格」と言われた——検討をやめるべきか、それとも許容範囲なのか判断できずにいる方に向けて、何が制限されるのか、融資条件がどこまで変わるのかを、木造アパートの試算例で確認します。

既存不適格物件とは何か——建築時は適法だった建物

既存不適格とは、建築した当時は建築基準法や都市計画法に適合していたものの、その後の法改正や都市計画の変更によって、現行の規定に適合しなくなった建物を指します。国土交通省の資料でも、既存不適格建築物は「都市計画の決定・変更または法令の改正等により、現に存する建築物またはその敷地が規定に適合しなくなった状態」と説明されています。

典型的な発生原因は、用途地域の変更や指定容積率の引き下げです。市街地の拡大にあわせて都市計画が見直され、以前は容積率200%だったエリアが160%に引き下げられる、といった変更が行われることがあります。建築当時は適法に建てられた建物でも、この引き下げによって「現在の規定では建てられない規模の建物」になってしまうケースがあります。既存不適格そのものは違法建築ではないため、今のまま使用・賃貸することに問題はありません。ただし、増築・改築・建て替えの際には現行法令への適合が必要になる点が、投資判断上のポイントになります。

「再建築不可」とは何が違うのか

既存不適格は、しばしば「再建築不可」と混同されます。原因も影響範囲も異なるため、区別して理解しておく必要があります。再建築不可物件は、接道義務(幅員4m以上の道路に2m以上接すること)を満たさない土地が対象で、建物を取り壊すと同じ土地に新しい建物を建てられません。当サイトでは、再建築不可物件を出口戦略まで含めて試算した記事も公開しています(再建築不可物件は「投資」になるか|表面利回り15%の物件を出口まで試算した)。

項目

既存不適格

再建築不可

今の建物に住み続けること

問題なくできる

問題なくできる

主な原因

用途地域変更・容積率や斜線制限の改正

接道義務を満たしていない

建て替え・大規模増改築

現行法令に適合させれば可能な場合がある(条件により規模縮小)

原則として不可

融資

担保評価が下がり、条件が厳しくなりやすい

多くの金融機関で消極的、現金購入が前提になりやすい

なお、既存不適格建築物であっても、建築基準法第86条の7では増築・改築・大規模の修繕等について一定の緩和規定が設けられています。「既存不適格=一切手を入れられない」わけではなく、どこまでの工事が可能かは個別の規定と自治体の判断によって変わる、という点も押さえておきたいところです。

既存不適格物件が抱える3つの実務的な影響

①資産価値・担保評価が下がりやすい

金融機関が物件を担保評価する際に用いる積算価格は、再調達価格をもとに算出されます。既存不適格の建物は、現行法令どおりに建て直した場合の規模より大きいことが多く、「今の建物と同じものは再現できない」という評価上のマイナスが積算価格に織り込まれやすくなります。積算価格の計算方法そのものは「木造・鉄骨・RC、同じ8,000万円の物件で積算価格はいくら変わるか」で解説しています。

②融資条件が厳しくなりやすい

担保評価が下がる分、多くの金融機関では融資可能額(LTV)を抑える、融資期間を短くする、あるいは金利をやや高めに設定するといった対応を取る傾向があります。ただし対応の程度は金融機関や案件ごとに異なり、一律の基準があるわけではありません。不動産投資ローンの審査で見られる3つの視点については「不動産投資ローンとは?審査基準・種類・金利をまとめて理解する基礎ガイド」で整理しています。

③建て替え時に延床面積が減る可能性がある

現行の指定容積率が既存の建物より低いエリアでは、将来建て替える際に現在と同じ規模では建てられず、住戸数や延床面積を減らさざるを得ない場合があります。これは今すぐの収支には影響しませんが、老朽化や災害で建て替えが必要になった局面で、収益力そのものが縮小するリスクとして考えておく必要があります。

【試算】融資条件はどこまで変わるのか

以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。実在の物件や取引を示すものではありません。想定読者は、都市部近郊で木造の小規模一棟アパートを検討している個人投資家とします。既存不適格物件は容積率オーバーを原因とするケースが多く、対象になりやすいのも郊外〜準都市部の木造・軽量鉄骨アパートであるため、ここでは物件価格4,200万円・木造8戸・想定年間家賃収入400万円(表面利回り9.5%)の物件を設定します。相場より安く見えるのは、この既存不適格という条件が価格に織り込まれているためです。

運営経費を家賃収入の20%とすると、NOI(純営業収益)は320万円です。この物件について、「仮に既存不適格でなかった場合に想定される条件」と、「既存不適格であることを踏まえた実際の融資条件」を比較します。

項目

仮に既存不適格でなければ

既存不適格を踏まえた実際の条件

LTV(融資比率)

80%

60%

借入額

3,360万円

2,520万円

自己資金

840万円

1,680万円

金利(想定)

2.3%

2.6%

融資期間

25年

15年

年間返済額(元利均等・概算)

約176.8万円

約203.1万円

DSCR

約1.81倍

約1.58倍

年間キャッシュフロー(概算)

約143.2万円

約116.9万円

この試算では、DSCRは1.58倍と、金融機関が目安とすることが多いとされる1.2〜1.3倍を上回る水準を維持していますが、融資期間が25年から15年に短縮された影響で年間返済額は約26万円増え、自己資金は840万円から1,680万円へとちょうど2倍になっています。表面利回りだけを見ると割安な物件に見えても、実際に必要な自己資金や毎月の返済負担は、既存不適格という条件によって大きく変わることが分かります。自己資金比率を変えた場合にDSCRや返済額がどう動くかは「不動産投資の自己資金はいくら必要?頭金10%・20%・30%でDSCRと月々の返済を比較」、DSCRの計算方法そのものは「不動産投資のDSCRとは?1.2を下回ると融資が厳しくなる理由と計算例」で詳しく解説しています。

自分の物件条件でLTV・融資期間を変えて返済額とDSCRを試算する(無料ツール)

建て替えが必要になったらどうなるか(減築シミュレーション)

以下も同様に、理解を目的とした単純化した架空例です。現況の容積率が220%、現行の指定容積率が160%というエリアを想定すると、床面積の比率は160÷220=約72.7%になります。単純に比例させると、8戸の建物は建て替え後およそ5.8戸相当、年間家賃収入は400万円から約291万円まで縮小する計算です。

これはあくまで容積率だけを単純に比例させた参考値であり、実際には間取りの取り方や共用部の設計次第で減少幅は変わります。それでも、「今の収益力がそのまま将来も続くとは限らない」という点は、既存不適格物件を検討するうえで押さえておきたい前提です。老朽化や被災による建て替えは何年後に起こるか予測できないため、長期保有を前提にするほど、この減築リスクの重みは増します。

既存不適格物件を検討する際に確認すべきこと

既存不適格物件は、価格の割安さだけで判断せず、少なくとも次の点を確認しておく必要があります。

  • 建築確認済証・検査済証の有無(既存不適格か違法建築かは、この書類の有無で確認するのが基本です)
  • 現況の容積率・建ぺい率と、現行の指定容積率・建ぺい率との差
  • 過去に増改築歴があるか、あるとすれば適法に行われたか
  • 火災保険・地震保険への加入可否(既存不適格の程度によっては加入条件が厳しくなる場合があります)
  • 売却時に現金購入者や既存不適格を許容できる買い手層に限定されないか

これらは物件そのものに内在するリスクの一部です。既存不適格を含む物件・契約・エリアの3層のチェックポイントは「収益物件購入前のリスクチェック完全ガイド|物件・契約・エリアの3層で見落としを防ぐ」で整理しています。価格の割安さ、融資条件の厳しさ、将来の収益縮小リスクは別々に評価するのではなく、購入判断の中で同時に反映させる必要があります。複数の条件を横断して確認したい場合は、RE-AIの無料診断で価格・融資・リスク・出口をまとめて確認することもできます。

まとめ

既存不適格物件は、違法建築ではなく今のまま住み続けることに問題はないものの、担保評価の低下によって融資条件が厳しくなりやすく、将来の建て替え時には延床面積が減る可能性がある点で、再建築不可物件とは異なる注意が必要です。価格の割安さや表面利回りの高さだけで判断せず、自己資金の増加分や融資期間の短縮によるキャッシュフローへの影響を、自分の物件条件で試算したうえで検討することをおすすめします。融資条件は金融機関・案件ごとに個別判断となるため、実際の借入にあたっては複数の金融機関に相談し、最終的な可否は専門家にご確認ください。

参考資料・出典

  • 国土交通省「既存不適格建築物の増築等について」
  • 国土交通省「既存建築物の緩和措置に関する解説集」
  • 建築基準法第86条の7(既存不適格建築物に対する制限の緩和)

(情報確認日:2026年8月27日。法律・制度は改正される場合があるため、最新の内容は必ず一次情報でご確認ください。本記事中の数値例は理解を目的とした単純化した架空条件であり、実在する物件のデータではありません。)

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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