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リスク・契約

収益物件の契約不適合責任とは|「満室」表示や設備不良、代金減額請求はいくらまで求められるか

収益物件の契約不適合責任とは|「満室」表示や設備不良、代金減額請求はいくらまで求められるか

引渡し後に給排水管の不具合が見つかった。「満室」と聞いていたのに、実際は8戸中2戸が空室だった。収益物件の売買でこうした食い違いに気づいたとき、買主は何を、いくらまで請求できるのか。2020年の民法改正で「瑕疵担保責任」から変わった「契約不適合責任」の仕組みと、発見した不適合を金額に換算して考える方法を整理する。

契約不適合責任とは何か

2020年4月施行の改正民法により、不動産売買における売主の責任は「瑕疵担保責任」から「契約不適合責任」に変わった。旧法の「隠れた瑕疵」という曖昧な基準に代わり、「引き渡された目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないこと」が基準になっている。ポイントは、欠陥そのものではなく「契約書・重要事項説明書で取り決めた内容と実際が合っているか」で判断される点である。

買主が行使できる権利は次の5つに整理される。

買主の権利

内容

追完請求

修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しを求める

代金減額請求

追完がされない場合に、不適合の程度に応じて代金を減らすよう求める

催告解除・無催告解除

契約を解除する

損害賠償請求

不適合によって生じた損害の賠償を求める

権利行使には期間の制限がある。不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求ができなくなる(別途、消滅時効10年の制限もある)。引渡し後に問題を発見した場合は、速やかに書面で売主へ通知することが前提になる(民法第562条〜第564条)。

収益物件特有の「3つの不適合」

収益物件の売買では、居住用物件以上に不適合の対象が広い。実務上は次の3つに分けて考えると整理しやすい。

① 建物の物理的な不適合

雨漏り、給排水管の劣化、シロアリ被害、地盤沈下など、建物そのものの欠陥。居住用物件でも問題になる、最も一般的な契約不適合である。

② 権利の不適合

抵当権が残っていた、賃借人に対抗できない権利が付いていたなど、権利関係に関する不適合。

③ 収益の不適合

収益物件に特有の論点がここにある。「満室稼働中」として売却された物件が、実際には引渡し時点で退去済み・退去予告中の部屋を含んでいた場合、それは物件の物理的な欠陥ではなく「契約の内容(賃貸収益の状況)」への不適合として扱われうる。レントロールに記載された賃料や稼働状況は、売買契約における「品質」の一部と評価される可能性があるということだ。レントロールそのものの読み方はレントロールの見方|賃料のばらつきや入居日の偏りが意味するリスクを読み解くで詳しく解説している。

なお、重要事項説明書の記載内容の確認は契約不適合責任とは別の論点になる。宅建業法上の説明義務については重要事項説明書で見落とすと危ない7項目を参照してほしい。

【架空例】発見された不適合はいくらの経済的損失に相当するか

以下は理解しやすくするために単純化した架空例である。実在の物件・取引を示すものではない。

ケースA:区分マンションの給排水管不具合

初めて収益物件を検討する個人投資家が、価格1,800万円の区分マンション(家賃8.5万円、表面利回り5.67%)を自己資金360万円(20%)・借入1,440万円・金利2.5%・期間30年で購入したとする。年間返済額は約68.3万円、経費率20%を見込むとNOIは約81.6万円、DSCRは1.195倍になる。

引渡し後、給排水管の不具合が見つかり、修繕見積りは80万円だった。実務上、代金減額請求の金額に確立した計算式はないが、「修補に要する費用相当額」が減額請求の目安になりやすいとされる。この80万円は、投下した自己資金360万円の22.2%に相当する規模であり、決して小さな金額ではない。

ケースB:一棟アパートのレントロール虚偽

木造一棟アパート(8戸、価格5,700万円)を検討するケースを考える。家賃5万円×8戸×12ヶ月で満室想定年間家賃480万円、表面利回り8.42%。自己資金1,140万円(20%)・借入4,560万円・金利2.3%・期間25年とすると、年間返済額は約240.0万円、経費率22%で満室時NOIは約374.4万円、DSCRは1.56倍となる。

ところが引渡し時点で、契約書上「満室」とされていた8戸のうち2戸(25%)が実際には空室だった。この2戸が平均3ヶ月で埋まると仮定すると、初年度の実質家賃収入は450万円、実質NOIは約351.0万円、DSCRは1.462倍まで下がる。家賃の機会損失(約30万円)に原状回復・広告費(2戸で12万円)を加えた経済的影響は約42万円、価格の0.74%にとどまる。

しかし、この2戸の空室が「一時的なもの」ではなく、「そもそも満室という表示自体が実態と異なっており、この物件の実力は6戸稼働が通常だった」と評価される場合は話が変わる。収益還元法で、6戸稼働を前提としたNOI(約280.8万円)を、満室時と同じ還元利回り(NOI÷価格で計算した6.57%)で還元すると、収益価格は約4,275万円になる。満室評価額5,700万円との差は約1,425万円、価格の25%に達する。

代金減額請求額をどう考えるか|「一時的」か「恒常的」かで金額は大きく変わる

ケースBが示すのは、同じ「2戸の空室」という事実でも、それを「引渡し後たまたま生じた一時的な空室」と捉えるか、「引渡し時点で実態と異なる収益力を示されていた恒常的な問題」と捉えるかで、経済的な意味がまったく違うということだ。前者なら数十万円規模の話だが、後者なら物件評価額の4分の1が動く規模になる。

どちらの立場を取るべきかは、退去のタイミング・契約書やレントロールの記載内容・売主が把握していた事実関係によって変わり、この記事だけで一律に判断できるものではない。ただし、代金減額請求を検討する際に「修繕費用ベースの積み上げ」だけでなく「収益還元法で見た価値の差」という視点を持つことは、収益物件特有の考え方として押さえておく価値がある。自分の物件条件でこの差を確認したい場合は、収益還元法で物件価格を試算する(RE-AI無料シミュレーター)で、稼働率や家賃条件を変えながら収益価格の変化を確認できる。

免責特約があっても油断できない理由

改正民法下の契約不適合責任は任意規定であり、「契約不適合責任を負わない」とする免責特約自体は、個人間取引・個人から法人への売却などでは基本的に有効とされる。しかし、次の場合は免責特約があっても売主は責任を免れない。

  • 売主が契約内容に適合しないことを知りながら、買主に告げていなかった場合
  • 売主が宅地建物取引業者であり、引渡しから2年未満に責任期間を短縮する特約を結んでいた場合(宅地建物取引業法第40条。宅建業者が売主となり、買主が宅建業者でない取引に適用される)

つまり「現状有姿・契約不適合責任なし」という特約を見ても、それだけで買主が無防備になるわけではない。売主が把握していた事実を告知していなかったことが後から分かれば、免責特約があっても追及の余地が残る。

買主として契約前・契約後にできること

契約前にできることは、建物状況調査(ホームインスペクション)でリスクを事前に洗い出すこと、レントロールと現況(入居者の実在確認・入居日・契約条件)を突き合わせること、契約書の免責特約の範囲を確認することの3つに集約される。心理的瑕疵など告知義務そのものについては心理的瑕疵のある収益物件は買いかでも扱っているので、あわせて確認してほしい。

契約後に不適合を発見した場合は、権利行使期間(知った時から1年以内)を意識し、速やかに書面で売主へ通知する。感情的な交渉に入る前に、修繕見積りや収益還元法での試算など、金額の根拠を数値で用意しておくと、その後の追完請求・代金減額請求の交渉が具体的に進めやすくなる。契約前のリスク確認全般については収益物件購入前のリスクチェック完全ガイドで物件・契約・エリアの3層に整理しているので、あわせて参照してほしい。

まとめ

収益物件における契約不適合責任は、建物の物理的な欠陥だけでなく、レントロールや稼働状況といった「収益そのものの不適合」まで対象になりうる点が、居住用物件との大きな違いである。発見した不適合を「一時的な事象」と見るか「収益力の恒常的な過大表示」と見るかで、代金減額請求として意味を持つ金額の規模は大きく変わる。免責特約があっても、売主が知りながら告げなかった事実には効力が及ばない。契約前のインスペクションとレントロールの突き合わせ、契約後の速やかな通知という基本を押さえたうえで、金額の妥当性は収益還元法などの数値的な根拠と合わせて検討することをすすめる。税務・法律に関わる最終判断は、必要に応じて弁護士・宅地建物取引士など専門家に確認してほしい。

参考資料・出典

  • 民法第562条〜第564条(契約不適合責任)
  • 宅地建物取引業法第40条(担保責任についての特約の制限)
  • 情報確認日:2026年8月31日

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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