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区分マンション投資のキャッシュフローとDSCR|「空室=収入ゼロ」を試算で確認する

区分マンション投資のキャッシュフローとDSCR|「空室=収入ゼロ」を試算で確認する

区分マンション投資を検討していると、「空室になると家賃収入がゼロになる」という指摘をよく目にします。しかし、それが実際にDSCR(借入金償還余裕率)やキャッシュフローをどこまで悪化させるのかを、数字で確認できる場面は多くありません。この記事では、架空の条件で区分マンションのNOIとDSCRを計算し、空室が1回起きたときの落ち込み方と、それに耐えるために必要な自己資金の目安を試算します。

区分マンション投資でキャッシュフローが「読みにくい」と言われる理由

一棟アパートであれば、10戸のうち1戸が空室になっても、残り9戸の家賃収入がキャッシュフローを下支えします。空室率で言えば10%の悪化にとどまります。一方、区分マンションは1戸だけを保有するため、その部屋が空室になった瞬間、その物件からの家賃収入は文字どおりゼロになります。空室率という言葉で語ると同じ「1戸空室」でも、区分マンションと一棟物件では収支への影響がまったく違う構造になっている点が、区分マンション投資のキャッシュフローを読みにくくしている一番の理由です。

区分マンションの実質利回りはどう計算するか

表面利回りは「満室想定年間家賃 ÷ 物件価格」で計算され、経費や空室をまったく考慮しません。区分マンションの場合、実質利回りやNOI(年間純収益)を計算する際は、次の費用を家賃収入から差し引く必要があります。

管理費・修繕積立金は毎月確実に発生する固定費

区分マンションには、一棟物件にはない「管理費」と「修繕積立金」が毎月発生します。金額は物件の管理規約によって異なり、築年数が古いほど修繕積立金が値上げされている、あるいは将来の値上げが予定されているケースもあるため、購入前に管理規約や重要事項説明書で確認しておく必要があります。

管理委託料・固定資産税・保険料も忘れずに引く

入居者管理を委託する場合の管理委託料(家賃の数%が目安)、固定資産税・都市計画税、火災保険料も年間の経費です。これらを満室想定家賃から差し引いた金額がNOIで、NOIを物件価格(諸費用込み)で割ったものが実質利回りになります。

架空例で見る、区分マンションのNOIとDSCR

以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。実在する物件のデータではありません。

想定読者は、初めて中古の区分マンション投資を検討している会社員投資家とします。物件は地方中核都市の中古ワンルームマンション、価格1,800万円、月額家賃8.5万円(表面利回り5.67%)とします。

項目

金額(年間)

満室想定家賃

102.0万円

管理費・修繕積立金(月1.8万円)

▲25.92万円

管理委託料(家賃の5%)

▲5.1万円

固定資産税・都市計画税

▲6.0万円

火災保険料

▲1.0万円

NOI(年間純収益)

63.98万円

自己資金を価格の40%(720万円)とし、残り1,080万円を金利2.3%・融資期間30年で借り入れると、年間元利返済額は約50.2万円です。この条件でのDSCRは次のとおりです。

DSCR=NOI÷年間元利返済額=63.98万円÷50.2万円=約1.27倍

DSCRの計算式や目安の考え方そのものについては、不動産投資のDSCRとは?1.2を下回ると融資が厳しくなる理由と計算例で詳しく解説しています。

空室が1回起きると、DSCRはどこまで落ちるか

次に、入居者が退去してから次の入居者が決まるまで2ヶ月間空室になり、さらに原状回復などの入替コストとして家賃1ヶ月分がかかったケースを試算します。退去時の入替コストをより精緻に見積もりたい場合は、「空室率5%」の収支計算は年CFを46%過大に見せる|退去1回30.7万円の入替コストを試算で扱っている実測ベースの数字も参考になります。ここでは単純化のため家賃1ヶ月分と仮定します。

項目

金額

空室2ヶ月分の家賃損失

▲17.0万円

入替コスト(家賃1ヶ月分)

▲8.5万円

空室後のNOI

38.48万円

DSCR(空室後)=38.48万円÷50.2万円=約0.77倍

DSCR 1.0を下回るということは、NOIだけでは年間の元利返済額を賄えず、不足分を自己資金や他の収入から補う必要がある状態です。1.27倍あった余力が、空室1回でDSCR 1.0を大きく割り込む水準まで落ちるのは、この物件が「区分=1戸しかない」ため、空室の影響を分散する仕組みが存在しないことが原因です。

空室に耐えるには、自己資金をどこまで増やす必要があるか

同じ物件・同じ空室条件のまま、「空室が2ヶ月続いてもDSCRが1.0を下回らない」ようにするには、借入額をいくらまで抑える必要があるかを逆算すると、借入は約827万円までとなり、自己資金比率は約54%(972.7万円)まで引き上げる必要があるという計算になります。これは一般的な一棟物件で目安とされることが多い自己資金2〜3割よりかなり高い水準です。

この結果は今回設定した価格・家賃・経費・金利の条件に固有のものであり、すべての区分マンションに当てはまる基準ではありません。自己資金をどこまで積むべきかは、物件ごとの家賃水準、管理費・修繕積立金、金利、融資期間によって変わります。ご自身の物件条件でDSCRの余力を確認したい場合は、DSCRを無料で計算するで、NOIと融資条件を入力して試算できます。空室率を変えたときの年間キャッシュフローの変化まで含めて確認したい場合は、キャッシュフローを無料で試算するも利用できます。

一棟物件との違いをどう考えるか

一棟物件でも空室が収支を悪化させる点は同じですが、戸数が多いほど1戸あたりの空室が全体に与える影響は薄まります。逆に言えば、戸数が少ない一棟物件(4戸程度の小規模アパートなど)は、区分マンションに近い形でDSCRが不安定になりやすいとも言えます。戸数別にDSCRがどこまで低下しやすいかをより多くの試算パターンで確認したい場合は、「空室率5%」は平均値でしかない|4戸・8戸・12戸・20戸・30戸でDSCR1.2割れ確率を20万回試算を参考にしてください。区分マンションはこの比較軸で言えば「1戸」のケースにあたり、空室の影響を最も強く受ける構造にあります。

収支計算の基本(表面利回り・NOI・DSCR・IRRの考え方)を体系的に確認したい場合は、収益物件の収支計算完全ガイドもあわせてご覧ください。自己資金比率がDSCRや月々の返済にどう影響するかは、不動産投資の自己資金はいくら必要?頭金10%・20%・30%でDSCRと月々の返済を比較で一棟物件を例に解説しています。

購入前に確認しておきたいこと

区分マンションのキャッシュフローが不安定になりやすい構造を踏まえると、購入前には以下を確認しておくことが望ましいといえます。

  • 管理規約・重要事項説明書で、管理費・修繕積立金の現在額と将来の値上げ予定を確認する
  • 管理組合の総会議事録・長期修繕計画で、大規模修繕の実施時期と一時金の有無を確認する
  • 現在または過去のレントロールで、実際の空室期間・入居者の入れ替わりの頻度を確認する
  • 自己資金を増やした場合と現状の借入水準で、DSCRがどこまで変わるかを試算しておく

レントロールの見方については、レントロールの見方|賃料のばらつきや入居日の偏りが意味するリスクを読み解くで詳しく解説しています。購入前に確認すべき項目を物件・契約・エリアの3層で網羅的に整理したい場合は、収益物件購入前のリスクチェック完全ガイドも参考にしてください。

まとめ

区分マンション投資は、1戸しか保有しないという構造上、空室になった瞬間に家賃収入がゼロになり、DSCRやキャッシュフローが一棟物件よりも大きく振れやすい投資対象です。今回の架空例では、満室時DSCR約1.27倍の物件が、空室2ヶ月と入替コストが重なるだけでDSCR約0.77倍まで落ち込みました。区分マンション投資を検討する際は、表面利回りや管理費の金額だけでなく、空室が起きたときにDSCRがどこまで落ちるか、それに耐えられる自己資金を積めているかを、ご自身の物件条件で試算したうえで判断することをおすすめします。

本記事の計算例は2026年8月22日時点の情報・仮定にもとづく試算です。管理費・修繕積立金・金利などの条件は物件や金融機関により異なるため、実際の判断にあたっては重要事項説明書・管理規約・金融機関への確認をあわせて行ってください。本記事は投資助言ではありません。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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