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収益性・収支

築5年・15年・25年・35年の木造アパート、同じ8,000万円ならどれが有利か|融資期間と出口利回りを連動させて10年IRRを比較

築5年・15年・25年・35年の木造アパート、同じ8,000万円ならどれが有利か|融資期間と出口利回りを連動させて10年IRRを比較

収益物件を探していると、必ずこの分岐にぶつかります。表面利回り6%台の築浅か、9%台の築古か。利回りだけを見れば築古が有利に見えますが、築年数が変わると同時に動くものがもう2つあります。金融機関が出せる融資期間と、10年後に売るときの利回り(出口利回り)です。

この記事では、総投資額8,000万円・自己資金1,000万円という同じ条件で、木造一棟アパートの築5年・築15年・築25年・築35年の4パターンを、融資期間と出口利回りを築年数に連動させたうえで10年保有・売却まで計算しました。単に「築古は利回りが高い」で終わらせず、どこで有利/不利が入れ替わるのか、その境界値を逆算しています。

結論を先に書くと、10年IRRの差の大半は利回りの差ではなく、出口利回りが何ポイント上がるか融資期間が何年取れるかで決まっていました。そして最も高いIRRを示した築35年のケースは、実際には10年間で2,294万円の持ち出しが必要で、そもそも融資が付かない水準でした。

1.この記事で分析する疑問

今回検証したのは次の3点です。

  • 同じ8,000万円を出すなら、築5年・15年・25年・35年のどれが10年後の手残りとIRRで有利になるのか
  • その差は「利回りの差」から来ているのか、それとも「融資期間」「出口利回り」から来ているのか
  • 築浅が築古に並ぶには、価格がいくらまで下がればよいのか(逆算)

指標そのものの意味は収益物件の収支計算完全ガイドで整理しています。この記事はその実測パートにあたります。

2.前提条件(何を固定し、何を変えたか)

条件を明示しないシミュレーションは比較の意味を持たないため、固定条件と変更条件を分けて記載します。

固定条件

項目

設定値

建物構造

木造一棟アパート

総投資額

8,000万円(諸費用込み)

自己資金

1,000万円

借入額

7,000万円(元利均等・金利2.0%固定)

空室・滞納損失

満室想定家賃の5%

運営費

満室想定家賃の20%(管理料・固定資産税・保険・修繕・原状回復の合計)

家賃の経年変化

年▲0.886%(総務省統計局の推計値、木造)

保有期間

10年(10年経過時点で売却)

売却諸費用

売却価格の3%

土地値の下限

2,160万円(総投資額の30%×0.9)を売却価格の下限として設定

税金

税引前で計算(法人税・所得税・譲渡税は考慮しない)

変更条件

項目

内容

築年数

築5年 / 築15年 / 築25年 / 築35年

表面利回り

築年数に応じた市場水準(後述)

融資期間

築年数に応じて2つの方針で設定(後述)

出口利回り

10年後の築年数に応じた市場水準

この数値は実際の物件統計ではなく、条件を固定したシミュレーションです。市場利回りと家賃下落率のみ公開データを使用し、それ以外はすべて設定値です。

3.使用したデータの区分と出典

本記事で使った数字は次の3種類に分かれます。混同を避けるため明記します。

【公開データ】築年数別の表面利回り

健美家「収益物件 市場動向レポート」(2026年1〜3月期)の一棟アパート全国平均は、築10年未満6.02%、築10年以上6.91%、築20年以上9.51%です。本分析ではこの3区分を代表築年(築5年・築15年・築30年)に割り当て、その間を直線補間して築年数と利回りの関係を作りました。

築年数

本分析で使用した表面利回り

根拠

築5年

6.02%

公表値(築10年未満)

築15年

6.91%

公表値(築10年以上)

築25年

8.64%

築15年と築30年の直線補間

築35年

9.51%

築30年以降は横ばいと仮定

公表区分が「築20年以上」でひとまとまりのため、築30年超も利回りが上がらないという仮定は築古に有利に働きます。この点は後半の感応度分析で検証します。

【公開データ】家賃の経年変化率

総務省統計局「民営家賃の経年変化の推計」(2021年1月)は、住宅・土地統計調査の個票約29.6万件を用いた回帰分析から、木造借家の家賃の経年変化率を年▲0.886%(非木造は年▲0.699%)と推計しています。本分析ではこの値を家賃下落率として採用しました。

【公開データ】法定耐用年数

木造住宅用建物の法定耐用年数は22年です。中古資産の耐用年数は簡便法により、法定耐用年数内であれば「(22年−経過年数)+経過年数×20%」、法定耐用年数を超過している場合は「22年×20%=4年」となります(国税庁 No.5404)。

【シミュレーション】それ以外の数値

CF・DSCR・IRR・売却価格・残債はすべて上記の条件から計算した値です。RE-AIの診断実績データは使用していません。

4.融資期間をどう設定したか

築年数の影響が最も大きく出るのが融資期間です。金融機関によって考え方が違うため、実務で見かける2つの方針を並べて計算しました。

方針

融資期間の決め方

築5年

築15年

築25年

築35年

方針A

法定耐用年数の残存年数(22年−築年数)

17年

7年

0年

0年

方針B

築年数+融資期間≦45年、最長30年

30年

30年

20年

10年

方針Aは法定耐用年数を上限とする厳格な考え方、方針Bは建物の経済的な残存年数を長めに見る考え方を単純化したものです。いずれも特定の金融機関の実際の審査基準ではなく、比較のために設定した条件です。融資期間そのものがCFとDSCRに与える影響は融資期間25年・30年・35年で何が変わるかで単独検証していますが、今回は築年数によって選べる期間が変わる点を組み込んでいます。

5.結果1:融資期間の決め方だけで、同じ物件のDSCRが0.39〜1.34まで動く

まず方針Aで計算します。物件も家賃も同じで、融資期間だけが法定耐用年数の残存年数に縛られたケースです。

築年数

表面利回り

融資期間

年間家賃

NOI

年間返済

年間CF

DSCR

築5年

6.02%

17年

482万円

361万円

486.1万円

▲124.9万円

0.74

築15年

6.91%

7年

553万円

415万円

1,072.5万円

▲657.9万円

0.39

築25年

8.64%

0年

691万円

519万円

融資不可(残存耐用年数ゼロ)

築35年

9.51%

0年

761万円

571万円

融資不可(残存耐用年数ゼロ)

法定耐用年数の残存年数だけで融資期間を決めると、築5年・利回り6.02%の物件ですらDSCRは0.74で、年間125万円の持ち出しになります。DSCRが1.2を下回ると審査が厳しくなる理由は不動産投資のDSCRとはで説明していますが、この条件では築浅でも借入7,000万円は成立しません。

自分の融資条件でDSCRを計算する(無料ツール)

方針Bに切り替えると同じ物件が次のように変わります。

築年数

融資期間

年間返済

年間CF

DSCR

築5年

17年 → 30年

486.1万円 → 310.5万円

▲124.9万円 → +50.7万円

0.74 → 1.16

築15年

7年 → 30年

1,072.5万円 → 310.5万円

▲657.9万円 → +104.1万円

0.39 → 1.34

物件も家賃も価格も一切変えていません。変えたのは融資期間の考え方だけで、築15年物件のDSCRは0.39から1.34へ、年間CFは762万円動きます。築年数の議論を「利回りが高いか低いか」で始めると、この影響を完全に見落とすことになります。

6.結果2:方針Bで4つの築年数を10年保有・売却まで比較する

以降は融資が成立しうる方針Bで統一して比較します。

築年数

表面利回り

融資期間

年間家賃

NOI

年間返済

年間CF

DSCR

出口利回り

売却価格

10年後残債

売却手取

10年累計CF

10年IRR

築5年

6.02%

30年

482万円

361万円

310.5万円

+50.7万円

1.16

6.91%

6,376万円

5,114万円

1,070万円

+336万円

4.04%

築15年

6.91%

30年

553万円

415万円

310.5万円

+104.1万円

1.34

8.64%

5,851万円

5,114万円

561万円

+844万円

5.12%

築25年

8.64%

20年

691万円

519万円

424.9万円

+93.7万円

1.22

9.51%

6,652万円

3,849万円

2,604万円

+691万円

15.22%

築35年

9.51%

10年

761万円

571万円

772.9万円

▲202.3万円

0.74

9.51%

7,319万円

0万円

7,099万円

▲2,294万円

12.10%

※CFは税引前。IRRは自己資金1,000万円に対する税引前IRR。

数字だけ見れば築25年が最も高いIRRを示し、次いで築35年です。しかしこの2つはまったく性質が違います。次の2章で分解します。

7.結果3:築浅が不利になる理由は家賃下落ではなく「出口利回りの上昇」

売却価格が8,000万円からいくら動いたのかを、家賃下落による分出口利回り上昇による分に分解しました。

築年数

10年後の売却価格

家賃下落による影響

出口利回り上昇による影響

築5年

6,376万円

▲681万円

6.02%→6.91%:▲943万円

築15年

5,851万円

▲681万円

6.91%→8.64%:▲1,468万円

築25年

6,652万円

▲681万円

8.64%→9.51%:▲667万円

築35年

7,319万円

▲681万円

9.51%→9.51%:±0万円

家賃下落の影響は全ケースで▲681万円と同額です(同じ経年変化率を適用しているため)。差を作っているのは出口利回りの上昇分で、築15年物件では▲1,468万円と家賃下落の2.2倍に達します。

これは「築浅は家賃が下がらないから安心」という説明が、価格側のリスクを見ていないことを意味します。築浅物件は利回り曲線の傾きが急な区間にあり、10年保有するとその区間を通過します。逆に築30年を超えると利回りの上昇余地が小さくなるため、価格の下げ止まりが起きやすくなります。保有年数と出口利回りの組み合わせは出口利回りが1%上がるとIRRはどこまで落ちるかでも検証しています。

ただしこの結論は「築30年超は利回りが横ばい」という仮定に依存しています。公表統計の区分が「築20年以上」でひとまとまりであることによる制約で、実際にはさらに上昇する可能性があります。この点は9章で感応度を確認します。

8.結果4:IRR12.10%の裏で、10年間に2,294万円の持ち出しが発生する

築35年のケースはIRR12.10%と高い数字を出しますが、内訳を見ると評価が変わります。

項目

築25年

築35年

年間CF

+93.7万円

▲202.3万円

DSCR

1.22

0.74

10年間の累計CF

+691万円

▲2,294万円

10年後残債

3,849万円

0万円(完済)

売却手取

2,604万円

7,099万円

10年IRR

15.22%

12.10%

築35年のIRRが高いのは、融資期間10年で元金を急速に返済し、売却時に無借金の物件を7,319万円で現金化するためです。しかしその原資は毎年202万円の持ち出しで、自己資金1,000万円のほかに10年で2,294万円を別途投入する必要があります。DSCRは0.74で、そもそもこの条件では融資審査を通りません。

IRRは「投入した資金がどの利回りで回ったか」を示す指標であり、その資金を継続的に投入できるかどうかは示しません。DSCRと累計CFを併せて見ないと判断を誤る典型例です。

9.逆算:条件を満たすには何が必要か

逆算1:DSCR1.20を満たすのに必要な表面利回り

築年数

市場の表面利回り

方針B(期間)で必要な利回り

方針A(期間)で必要な利回り

築5年

6.02%

6.21%(30年)

9.72%(17年)

築15年

6.91%

6.21%(30年)

21.45%(7年)

築25年

8.64%

8.50%(20年)

融資不可

築35年

9.51%

15.46%(10年)

融資不可

築5年は市場水準6.02%に対して6.21%が必要で、市場価格で買うとDSCR1.20をわずかに下回ります。築35年は15.46%が必要で、市場水準の9.51%では届きません。融資期間10年という制約下では、利回りをどれだけ積んでも現実的な水準では成立しないということです。

逆算2:市場利回りのままDSCR1.20を確保するのに必要な最短融資期間

築年数

必要な融資期間

方針Bで想定した期間

判定

築5年

31.3年以上

30年

わずかに不足

築15年

26.0年以上

30年

充足

築25年

19.6年以上

20年

ぎりぎり充足

築35年

17.5年以上

10年

7.5年不足

ここが今回の転換点です。この条件では、築25年物件は融資期間19.6年がDSCR1.20の境界線であり、20年出れば成立し、15年に短縮された時点で成立しなくなります。物件を見るときに確認すべきは築年数そのものではなく、その築年数で何年の融資が出るかだと分かります。銀行が価格・積算・DSCRのどこで融資額に天井をかけるかは売出8,000万円の一棟アパート、銀行はいくらまで貸せるのかで構造を整理しています。

逆算3:築浅が築25年のIRRに並ぶには価格がいくらであればよいか

築年数

市場の表面利回り

IRR15.22%に必要な利回り

家賃を変えない場合の必要価格

市場価格からの差

築5年

6.02%

7.06%

6,825万円

▲1,175万円(▲14.7%)

築15年

6.91%

7.78%

7,105万円

▲895万円(▲11.2%)

築5年物件が築25年物件と同じ10年IRRを出すには、8,000万円ではなく6,825万円で買う必要があります。逆に言えば、築浅物件を市場価格で買う判断は、この1,175万円分の差を別の理由(空室リスクの低さ、修繕発生の遅さ、金融機関の評価、管理の手間)で正当化できるかどうかの判断になります。

10.感応度分析:前提を動かすと結論は変わるか

運営費率を20%→25%→30%に変える

築古ほど修繕・原状回復の負担が重くなるという前提を織り込むため、運営費率を上げて再計算しました。

築年数

運営費20%
CF/DSCR/IRR

運営費25%
CF/DSCR/IRR

運営費30%
CF/DSCR/IRR

築5年

+51万円/1.16/4.04%

+27万円/1.09/1.76%

+3万円/1.01/▲0.52%

築15年

+104万円/1.34/5.12%

+76万円/1.25/1.82%

+49万円/1.16/▲1.57%

築25年

+94万円/1.22/15.22%

+59万円/1.14/12.80%

+25万円/1.06/10.47%

築35年

▲202万円/0.74/12.10%

▲240万円/0.69/10.74%

▲278万円/0.64/9.44%

運営費率が30%になると、築5年・築15年はIRRがマイナスに転じます。築古の運営費が5ポイント重くても、築古の優位は逆転しませんでした。修繕費の水準そのものについては修繕費「家賃の5%」で足りるのかで国交省の長期修繕計画事例から検証しています。

出口利回りを想定より1.0ポイント高くする

築年数

出口利回り

売却価格

10年IRR

築5年

6.91%→7.91%

6,376→5,570万円

4.04%→▲6.09%(▲10.13pt)

築15年

8.64%→9.64%

5,851→5,244万円

5.12%→▲3.85%(▲8.97pt)

築25年

9.51%→10.51%

6,652→6,019万円

15.22%→12.77%(▲2.45pt)

築35年

9.51%→10.51%

7,319→6,622万円

12.10%→10.57%(▲1.53pt)

出口利回りが1ポイント上振れしたときのIRRの落ち方は、築5年で▲10.13pt、築25年で▲2.45ptと4倍以上の差があります。低利回りで買うほど出口価格への感応度が高くなるためです。7章で述べた「築30年超は横ばい」という仮定を外しても、築25年の優位は維持されました。

金利を2.0%→3.0%にする

築年数

年間返済

年間CF

DSCR

10年IRR

築5年(30年)

310.5→354.1万円

+50.7→+7.1万円

1.16→1.02

4.04%→▲2.61%

築15年(30年)

310.5→354.1万円

+104.1→+60.5万円

1.34→1.17

5.12%→▲3.60%

築25年(20年)

424.9→465.9万円

+93.7→+52.7万円

1.22→1.11

15.22%→11.54%

築35年(10年)

▲202.3→▲240.5万円

0.74→0.70

12.10%→10.68%

金利1%上昇で全ケースのDSCRが1.20を下回りました。融資期間が長いほど返済額の増加幅は小さい一方で、IRRの落ち込みは築浅ほど大きくなっています。金利と空室率が同時に悪化した場合の影響は金利上昇×空室率、同時に悪化したらキャッシュフローはどこまで減るかで20パターン試算しています。

11.借入を使わない場合はどうなるか

築古で融資期間が取れないなら、現金で買うという選択肢があります。8,000万円全額を自己資金とした場合を計算しました。

築年数

年間CF

10年累計CF

売却価格

10年IRR

築5年

361万円

3,441万円

6,376万円

2.26%

築15年

415万円

3,949万円

5,851万円

2.33%

築25年

519万円

4,940万円

6,652万円

4.63%

築35年

571万円

5,435万円

7,319万円

5.97%

借入を外しても築古が優位という順序は変わりませんでした。築古の優位はレバレッジから生まれているのではなく、利回りの高さと出口利回りの安定から生まれていることが確認できます。同時に、融資を使わない場合のIRRは築25年でも4.63%にとどまり、レバレッジありの15.22%とは水準がまったく違います。

12.結果から分かること

  • 築年数の議論は、利回りの議論ではなく融資期間と出口利回りの議論である。融資期間の考え方を変えただけで、同じ築15年物件のDSCRは0.39から1.34まで動いた。
  • 築浅物件の主なリスクは家賃下落ではなく価格下落である。築15年物件の売却価格下落▲2,149万円のうち、家賃下落によるものは▲681万円、出口利回り上昇によるものは▲1,468万円だった。
  • DSCR1.20を分けるのは築年数ではなく融資期間である。この条件では築25年の境界は19.6年、築35年は17.5年で、後者は現実的な融資期間では届かない。
  • IRRの高さは実行可能性を保証しない。築35年のIRR12.10%は、10年で2,294万円の持ち出しとDSCR0.74を前提としている。
  • 低利回りで買うほど出口価格への感応度が高い。出口利回り1ポイントの上振れで、築5年はIRRが10.13pt落ち、築25年は2.45ptの低下にとどまった。

13.投資判断への使い方

この分析は「築何年を買うべきか」という問いに単一の答えを出すものではありません。条件によって順位が変わるためです。実務では次の順序で確認すると判断しやすくなります。

  1. 先に融資期間を確認する。利回りを比較する前に、その築年数・構造で何年の融資が出るかを金融機関に確認する。融資期間が決まらないとCFもDSCRもIRRも確定しない。
  2. DSCR1.20を満たす最短融資期間を逆算する。提示された期間との差が、その物件の融資条件に対する余裕度になる。
  3. 出口利回りを2通り置く。市場水準と、それより1ポイント高い水準の両方でIRRを計算する。低利回り物件ほどこの差が大きい。
  4. IRRと累計CFとDSCRを必ず並べて見る。IRRだけを見ると、持ち出しが必要な案件が最良に見えることがある。
  5. 築浅を市場価格で買う理由を言語化する。本分析では築5年が築25年に並ぶには1,175万円の値引きが必要だった。その差を空室リスク・修繕リスク・融資評価のどれで回収するのかを説明できるかを確認する。

築年数・融資期間・出口利回り・運営費率を同時に動かすと、確認すべき組み合わせは急速に増えます。RE-AIはこうした複数条件を1つの物件についてまとめて確認できるよう設計していますが、実際の融資条件や建物状態の評価まで代替できるものではありません。

14.この分析で分からないこと

本分析には次の限界があります。結論を一般化する前に確認してください。

  • 実際の融資条件は反映していない。融資期間の2方針は比較のために設定した仮定であり、特定の金融機関の審査基準ではありません。金利も築年数によらず2.0%固定としていますが、実務では築古ほど金利が高くなる傾向があります。
  • 個別建物の状態を反映していない。同じ築25年でも、屋根・外壁・給排水の更新履歴によって必要な修繕費はまったく異なります。運営費率20%という一律の仮定は、その差を表現できていません。
  • 利回り曲線は全国平均の3区分からの補間である。築25年の8.64%は公表値ではなく補間値です。エリアによって曲線の形は大きく異なり、都心と地方では傾きが逆になることもあります。
  • 相関であって因果ではない。築年数が古いほど利回りが高いという関係は、築古物件が地方・駅遠に偏っていることの反映でもあります。築年数だけが利回りを決めているわけではありません。
  • 税金を考慮していない。すべて税引前の数値です。減価償却期間の違いによる税引後CFの差は減価償却が終わった年、税引後CFは93万円減ったで、売却時の譲渡税は収益物件を売ると税金はいくらかで扱っています。築古は簡便法で償却期間が4年と短くなるため、税引後で見ると本分析とは異なる結果になり得ます。
  • 売却できることを前提にしている。築45年の木造アパートに10年後の買い手がいるか、その時点の金融環境で融資が付くかは、本分析の外にあります。

15.まとめ

総投資額8,000万円・自己資金1,000万円という同じ条件で築5年・15年・25年・35年を比較した結果、この条件下では築25年(融資期間20年)が10年IRR15.22%で最も高く、築5年は4.04%にとどまりました。ただしその差は利回りの差だけで説明できるものではなく、融資期間の長短と、10年間で出口利回りが何ポイント動くかが主な要因でした。

そして最も高い数字を出した築35年(IRR12.10%)は、DSCR0.74・10年間で2,294万円の持ち出しという条件付きで、実際には融資が成立しません。収益性は維持されるが実行可能性がない、という状態はIRRだけでは見えません。

物件を比較するとき、築年数は入力ではなく結果です。築年数が決めるのは融資期間と出口利回りであり、判断すべきはその2つです。

参考資料・出典

情報確認日:2026年8月19日。市場利回り・金利・統計値は時点依存のデータです。判断に用いる際は最新値をご確認ください。

本記事の数値は、記載した固定条件・変更条件に基づくシミュレーション結果であり、特定の物件や投資成果を保証するものではありません。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

分析実績 87件(2026/08/07時点)X(旧Twitter)プロフィールと執筆記事 →