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「土地値が出ている物件」は本当に安全か|土地値比率30〜85%で税引後IRRを比較し、下支えが発動する出口利回り8.32%を逆算

「土地値が出ている物件」は本当に安全か|土地値比率30〜85%で税引後IRRを比較し、下支えが発動する出口利回り8.32%を逆算

収益物件の検討中に「この物件は土地値が出ているから安全ですよ」と言われたことがある方は多いと思います。建物はいずれ価値がなくなるが、土地は残る。だから下値が固い、という説明です。

この説明そのものは間違っていません。ただし、これまで数字で確かめられてこなかった論点が2つあります。

1つ目は、土地値の下支えが実際に発動するのは、出口利回りが何%まで悪化したときなのかということ。2つ目は、土地値比率が高い物件は建物価格が小さいため減価償却が取れず、保有中の税引後キャッシュフローを毎年削っているということです。前者が「保険金」なら、後者は「保険料」にあたります。

この記事では、価格・家賃・融資条件をすべて固定したうえで土地値比率だけを30%・50%・70%・85%の4パターンに変え、保有10年の税引後IRRと、土地値の下支えが発動する出口利回りの境界値を計算しました。最後に、同じ税引後IRRを達成するために必要な表面利回りが土地値比率でどれだけ変わるかを逆算しています。

結論を先に書くと、この条件では土地値比率が30%から85%に上がると、同じ税引後IRR5.0%を出すために必要な表面利回りは1.61ポイント高くなり、土地値が下支えとして機能し始めるのは出口利回りが8.32%を超えたときだけでした。

この記事の分析データについて

本記事の数値は、後述の条件を固定したシミュレーションです。実在の物件統計でも、RE-AIの診断実データでもありません。耐用年数・減価償却・損益通算・譲渡所得の各ルールは国税庁の公表情報を、期待利回りの水準感は日本不動産研究所の公表資料を参照しています(情報確認日:2026年8月31日)。

分析の前提条件:何を固定し、何を変えたか

土地値比率だけの影響を取り出すため、物件価格・家賃・融資条件・運営条件はすべて共通にしました。

固定した条件

項目

設定値

設定した理由

物件種別

地方中核市郊外の木造一棟アパート(2DK×8戸、築15年)

土地値比率が投資判断の争点になるのは、敷地の持分が大きい低層一棟物件のため。区分マンションでは土地持分が小さく論点にならない

満室年間家賃

556.8万円(月5.8万円×8戸×12ヶ月)

地方中核市の2DK賃料水準から積み上げ

物件価格

5,860万円(表面利回り9.50%)

家賃から逆算。地方・築15年木造の売出利回り水準として設定

空室率/運営費

空室率5%/運営費は満室家賃の20%

管理委託料・固都税・保険・共用費・小修繕の合計

NOI(初年度)

417.6万円(NOI利回り7.13%)

556.8×0.95−556.8×0.20

融資

借入4,981万円(LTV85%)・金利2.3%固定・20年元利均等

年間返済310.9万円、初年度DSCR1.34

購入諸費用

物件価格の8.5%=498万円

投下自己資金は879万円+498万円=1,377万円

家賃下落

年▲1.0%(10年で▲9.6%)

保有期間

10年

減価償却期間と揃えるため

減価償却

築15年木造・簡便法で10年(定額法)

(22年−15年)+15年×20%=10年

所得税等の限界税率

43.693%

所得税33%+復興特別所得税+住民税10%

譲渡税

長期譲渡20.315%/譲渡費用は売却価格の3.5%

取得から5年超で売却

地価

10年間横ばい

地価変動の影響は後段で別途感応度を確認

解体費

440万円

木造延床約360㎡(約109坪)×約4万円/坪

変更した条件

変えたのは土地値比率(物件価格に占める土地の割合)と出口利回り(Exit Cap Rate)の2つだけです。土地値比率は30%・50%・70%・85%の4水準を置きました。

ここでいう土地値比率は「按分の操作」ではなく物件そのものの性質として扱っています。地価が安いエリアで建物にコストがかかっている物件ほど土地値比率は低くなり、地価の高いエリアの築古物件ほど高くなります。土地建物按分は固定資産税評価額比や不動産鑑定、国税庁の「建物の標準的な建築価額表」など合理的な根拠で決めるべきもので、恣意的に建物を大きく取れば否認リスクがあります。この点は後段の「分析の限界」でも触れます。

土地値比率が変えるのは、3つの経路だけ

価格も家賃も融資も同じなら、税引前キャッシュフローは土地値比率にかかわらず106.7万円で全ケース共通です。DSCR1.34も同じ。変わるのは次の3つの経路です。

  1. 減価償却費:建物価格÷10年。土地値比率が高いほど小さくなり、保有中の税負担が増える
  2. 売却時の簿価と譲渡所得:償却が小さいほど簿価は高く残り、譲渡益(=譲渡税)は小さくなる
  3. 出口価格の下限:収益還元価格が土地値を下回ったとき、土地値が価格の床になる

1と2は逆方向に働くため、単純に「償却が取れるほど得」とは言えません。実際に計算して確かめます。

表1:土地値比率別の基礎数値

土地値比率

土地

建物

年間減価償却費

10年累計償却

10年後の簿価

土地値−解体費

30%

1,758万円

4,102万円

410.2万円

4,102万円

1,758万円

1,318万円

50%

2,930万円

2,930万円

293.0万円

2,930万円

2,930万円

2,490万円

70%

4,102万円

1,758万円

175.8万円

1,758万円

4,102万円

3,662万円

85%

4,981万円

879万円

87.9万円

879万円

4,981万円

4,541万円

年間の減価償却費は土地値比率30%で410.2万円、85%で87.9万円。その差は322.3万円です。限界税率43.693%なら、これは毎年141万円の税負担の差になります。

検証1:出口利回り別の税引後IRR

出口利回り(Exit Cap Rate)を7%から12%まで振り、保有10年の税引後IRRを計算しました。売却価格は「10年後NOI÷出口利回り」で求めた収益還元価格と、「土地値−解体費」のいずれか高い方としています。★印は土地値のほうが高くなり、下支えが発動しているケースです。

出口利回り

収益還元価格

土地30%

土地50%

土地70%

土地85%

7.0%

5,395万円

10.56%

8.97%

6.77%

5.28%

8.0%

4,721万円

8.12%

6.47%

4.17%

2.12%

9.0%

4,196万円

5.72%

4.02%

1.54%

1.02%★

10.0%

3,777万円

3.27%

1.53%

▲1.87%

1.02%★

11.0%

3,433万円

0.63%

▲1.12%

▲3.03%★

1.02%★

12.0%

3,147万円

▲2.40%

▲4.10%

▲3.03%★

1.02%★

10年後のNOIは377.7万円(家賃下落反映後)、10年後のローン残債は2,775万円です。

読み取れることは3つあります。

第一に、出口利回り10%までのすべての水準で、土地値比率が低いほうが税引後IRRは高い。出口利回り9%なら、土地値比率30%で5.72%、85%で1.02%と4.70ポイントの差がつきます。

第二に、土地値比率85%のIRRは出口利回り9%以降1.02%で固定される。これが下支えです。収益還元価格がいくら下がっても、売却価格は「土地値−解体費」の4,541万円で止まります。土地値比率が高い物件は確かに下値が固い。

第三に、その下支えが土地値比率30%のケースを上回るのは、出口利回りが10.86%を超えたときだけ。土地値比率50%を上回るのは10.20%以上、70%を上回るのは9.16%以上でした。購入時のNOI利回りが7.13%であることを踏まえると、10.86%は還元利回りが3.73ポイント拡大するシナリオです。ありえない水準ではありませんが、標準的な想定ではありません。

検証2:土地値の下支えが発動する出口利回りを逆算する

では、土地値の下支えは何%から効き始めるのか。「10年後NOI÷(土地値−解体費)」で境界値を逆算しました。

土地値比率

解体費を引いた場合

解体費を無視した場合

30%

28.65%超

21.48%超

7.17pt

50%

15.17%超

12.89%超

2.28pt

70%

10.31%超

9.21%超

1.11pt

85%

8.32%超

7.58%超

0.73pt

ここには2つの示唆があります。

1つ目は、土地値比率50%程度では下支えはほぼ機能しないということ。出口利回り15.17%というのは、この物件の購入時NOI利回りの2倍以上です。「土地値も半分くらい出ています」という説明は、出口価格の下限としてはほとんど意味を持ちません。

2つ目は、解体費を織り込むだけで発動条件が0.73〜7.17ポイント厳しくなることです。土地値物件の出口として「更地にして土地として売る」を想定するなら、解体費は買主側ではなく売主側の手取りから出ていきます。今回は木造8戸で440万円としましたが、アスベスト調査・除去や擁壁・地中障害があればさらに増えます。土地値を下限として語るとき、この費用が抜けている試算は少なくありません。

なお本記事は10年後の建物評価をゼロとしています。木造の法定耐用年数22年に対し10年後は築25年となり、積算評価上は建物価格が付かない前提です。金融機関によっては再調達価格の20%程度を残す運用もあり、その場合は下支え水準がやや上がります。

検証3:10年間で支払う税金は、いくら違うのか

IRRの差が何から来ているのかを、税金の絶対額で分解します(出口利回り9%のケース)。

土地値比率

保有10年の所得税等

売却時の譲渡益

譲渡税

税負担合計

税引後IRR

30%

▲324.1万円(還付超過)

2,291万円

465.5万円

141.5万円

5.72%

50%

69.6万円

1,119万円

227.4万円

297.0万円

4.02%

70%

581.6万円

▲53万円

0円

581.6万円

1.54%

85%

965.7万円

▲599万円

0円

965.7万円

1.02%

土地値比率30%と85%の税負担の差は824.2万円。投下自己資金1,377万円の約6割にあたります。

この差が生まれる理由は、減価償却の金額そのものではなく税率の差にあります。保有中の減価償却は限界税率43.693%の所得を圧縮しますが、その分だけ簿価が下がって増える譲渡益への課税は20.315%です。23.378ポイントの税率差が、償却を多く取れる物件の実質的な利益になっています。減価償却が「税の繰延べにすぎない」という説明はよく聞きますが、繰り延べる過程で適用税率が半分以下になる点まで含めると、単なる繰延べではありません。この論点の詳細は減価償却で減らした税金は、売却時にいくら返すことになるのかで扱っています。

逆に言えば、限界税率が低い投資家ほど、この差は小さくなります。限界税率を30.42%(課税所得695万円以下の層)に置き換えると、出口利回り9%の税引後IRRは土地30%で4.86%、85%で3.06%となり、差は4.70ポイントから1.80ポイントまで縮みます。しかもこの税率帯では、土地値比率85%(3.06%)が70%(2.89%)を上回ります。土地値比率の有利・不利は、物件だけでは決まらず買主の所得税率とセットで決まるということです。

また、土地値比率70%・85%では売却時に譲渡損(▲53万円・▲599万円)が出ていますが、個人の土地建物の譲渡損は原則として給与所得など他の所得と損益通算できません。表では譲渡税を0円としていますが、この損失はそのまま切り捨てになります

検証4:赤字のうち、損益通算できない部分がある

ここまでの計算には、一般的な収支シミュレーションで省略されがちなルールを1つ入れています。不動産所得が赤字になった場合、そのうち「土地等を取得するために要した負債の利子」に相当する金額は、他の所得と損益通算できません(租税特別措置法41条の4)。

初年度の内訳です。

土地値比率

支払利息

減価償却費

不動産所得

通算できない額

所得税等

税引後CF

30%

112.5万円

410.2万円

▲105.1万円

33.7万円

▲31.2万円(還付)

137.8万円

50%

112.5万円

293.0万円

+12.1万円

5.3万円

101.4万円

70%

112.5万円

175.8万円

+129.3万円

56.5万円

50.2万円

85%

112.5万円

87.9万円

+217.2万円

94.9万円

11.7万円

税引前キャッシュフローは4ケースとも106.7万円で同じです。それが税引後では11.7万円から137.8万円まで、11.8倍の開きになります。

興味深いのは、この損益通算の制限が土地値比率の低いケースでだけ発生している点です。切り捨て額は「損失額」と「支払利息×土地値比率」の小さいほうで決まります。土地値比率が高いと利子のうち土地相当分は大きくなりますが、償却が小さいためそもそも赤字になりません。土地値比率が低いと赤字は出るものの、土地相当の利子が小さいので切り捨ても限定的です。今回の条件では土地値比率30%のケースで10年累計271.1万円が切り捨てとなりましたが、それでも税引後IRRは最も高い結果でした。

ただしこれは、金利・LTV・償却年数の組み合わせ次第で逆転しうる関係です。金利が高く償却期間が短い(築古すぎる)物件では、赤字幅と土地相当利子の両方が大きくなり、切り捨て額が無視できなくなります。

検証5:同じIRRを出すには、表面利回りが何ポイント必要か【逆算】

ここまでは価格を固定して結果を見てきました。実務で必要なのは逆方向、つまり「土地値比率がこれだけ高い物件なら、表面利回りが何%あれば同じ結果になるのか」です。

物件価格5,860万円・出口利回り9%を固定し、目標とする税引後IRRを達成するために必要な満室時表面利回りを逆算しました。

目標 税引後IRR

土地30%

土地50%

土地70%

土地85%

30%→85%の差

3.0%

8.92%

9.27%

9.84%

10.44%

+1.52pt

4.0%

9.13%

9.50%

10.10%

10.69%

+1.56pt

5.0%

9.34%

9.74%

10.37%

10.95%

+1.61pt

6.0%

9.57%

9.99%

10.66%

11.22%

+1.65pt

この表が今回の分析の中心です。

税引後IRR5.0%を目標にするなら、土地値比率30%の物件は表面利回り9.34%で足りますが、土地値比率85%の物件では10.95%必要になります。差は1.61ポイント。5,860万円の物件で言えば、満室家賃にして年間94万円分です。

「土地値が出ている物件は安全だから、多少利回りが低くても買っていい」という説明を聞くことがありますが、保有中の税引後キャッシュフローと出口の譲渡損まで含めると、この条件では逆でした。土地値比率が高い物件のほうが、同じ投資成績を出すためにより高い利回りを必要とします。

検証6:地価変動と保有期間を変えるとどうなるか

ここまでは地価を10年間横ばいとしてきました。地価を動かすと結果は変わります(出口利回り9%固定)。

10年間の地価変動

土地30%

土地50%

土地70%

土地85%

▲20%

5.72%

4.02%

1.54%

▲1.43%

▲10%

5.72%

4.02%

1.54%

▲1.43%

横ばい

5.72%

4.02%

1.54%

1.02%★

+10%

5.72%

4.02%

1.54%

3.83%★

土地値比率30〜70%のケースでは、出口利回り9%の水準では収益還元価格が売却価格を決めているため、地価が動いてもIRRは1ミリも変わりません。反応するのは土地値比率85%のケースだけです。

これは土地値物件の二面性を示しています。地価が上がればアップサイドを取れますが、地価が10%下がると下支えが外れてIRRは1.02%から▲1.43%に落ちます。土地値比率が高い物件は「安全」というより、収益リスクの一部を地価リスクに置き換えていると理解するほうが正確です。地価変動を出口利回りに反映した分析は公示地価の変動率をExit Cap Rateに反映すると、10年IRRはどこまで変わるかで扱っています。

保有期間を変えた場合(出口利回り9%、地価横ばい)は次のとおりです。

保有期間

土地30%

土地50%

土地70%

土地85%

30%−85%

5年

▲11.75%

▲13.54%

▲20.08%

▲20.26%

8.51pt

7年

▲0.75%

▲2.13%

▲6.01%

▲6.26%

5.51pt

10年

5.72%

4.02%

1.54%

1.02%

4.70pt

13年

6.98%

5.40%

3.24%

3.10%

3.88pt

15年

7.25%

5.74%

3.77%

3.72%

3.53pt

減価償却は10年で終わるため、保有が長くなるほど差は縮みます。それでも15年時点で3.53ポイントの差が残っており、10年間で確定した税負担の差は保有を延ばしても消えません。なお保有5〜7年でIRRが大きくマイナスになるのは、購入諸費用498万円と出口利回りの拡大(7.13%→9.0%)を短期間で回収できないためです。売却時期の判定については5年目売却と6年目売却で税引後IRRは7.17pt違うを参照してください。

結果から分かること

  1. 土地値の下支えは実在するが、発動条件は厳しい。今回の条件では、土地値比率85%で出口利回り8.32%超、70%で10.31%超、50%では15.17%超。土地値比率が半分程度の物件では、出口価格の下限としてほとんど機能しない。
  2. 解体費を引くと発動条件は0.73〜7.17ポイント厳しくなる。土地値を出口の下限とみなすなら、更地化コストは売主負担として先に差し引く必要がある。
  3. 土地値比率の高さは、保有中の税引後CFで毎年支払っている。税引前CFは4ケースとも106.7万円で同一だが、税引後は11.7万〜137.8万円。10年+売却時の税負担合計で824.2万円の差。
  4. 逆転するのは出口利回り10.86%以上。土地値比率85%が30%を上回るのはこの水準から。購入時NOI利回り7.13%に対し3.73ポイントの拡大が必要。
  5. 同じIRRを出すには、土地値比率が高い物件ほど高い利回りが必要。税引後IRR5.0%の達成に必要な表面利回りは、土地30%で9.34%、85%で10.95%(+1.61pt)。
  6. この差は買主の限界税率に比例する。限界税率43.693%では4.70ポイントの差が、30.42%では1.80ポイントに縮む。

ただし、この結果は「土地値比率が低い物件を買うべき」という意味ではありません。今回の分析では測っていない要素が複数あります。次章の「投資判断への使い方」と「分析の限界」を合わせて読んでください。

投資判断への使い方

この分析は、次の3つの場面で使えます。

1. 土地値を根拠にした値付けを検証するとき。「土地値が◯◯万円出ているから割安」という説明を受けたら、その土地値から解体費を引いた金額と、想定する出口利回りでの収益還元価格を比べてください。収益還元価格のほうが高い間、土地値は価格の説明にはなっていません。

2. 自分の限界税率を先に確認するとき。土地値比率のコストは所得税率に比例します。課税所得900万円超の層と695万円以下の層では、同じ物件でも税引後IRRの序列が変わりました。物件を比較する前に、自分がどの税率帯にいるかを確認しておく価値があります。

3. 利回りの許容ラインを決めるとき。検証5の表は、土地値比率別の「必要表面利回り」の目安として使えます。土地値比率が高い物件を検討するなら、その分だけ利回りの合格ラインを引き上げる必要があります。

今回の試算は物件価格5,860万円・金利2.3%・保有10年という一つの条件セットにすぎません。実際には借入額・金利・返済期間・取得費・減価償却費の組み合わせで結果は変わります。ご自身の物件条件で売却手残りとIRRを確認したい場合は、売却・出口戦略シミュレーターで取得費・減価償却費・Exit Cap Rateを入力すると、保有1〜35年の各年について同じ式で計算できます(登録不要・無料)。

この分析で分からないこと

今回のシミュレーションでは扱えていない要素があります。結論を一般化する前に確認してください。

  1. 融資評価への影響。土地値比率が高い物件は積算価格が出やすく、金融機関の担保評価で有利になる場合があります。融資条件(金利・期間・LTV)が変われば、この分析の結論は変わります。今回は全ケース同一条件としました。積算評価と融資枠の関係は銀行はいくらまで貸せるのか|収益還元価格・積算価格・DSCRの3つの天井で扱っています。
  2. 次の物件を買うときの与信。土地値が残る物件は含み損が出にくく、次の融資の際に評価されることがあります。ポートフォリオ全体への波及は今回測っていません。
  3. 土地建物按分の妥当性。本記事は土地値比率を物件の性質として扱いましたが、実際の按分は固定資産税評価額比・不動産鑑定・売買契約書の記載などの合理的根拠が必要です。恣意的に建物を大きく取る按分は否認リスクがあります。
  4. 建物の残存評価の置き方。10年後の建物評価をゼロとしました。再調達価格の20%を残す運用を採る金融機関・買主なら、下支え水準は上がります。
  5. 大規模修繕と資本的支出。運営費20%には小修繕を含めていますが、屋根・外壁の大規模修繕は入れていません。修繕費のIRR影響は修繕費「家賃の5%」で足りるのかで検証しています。
  6. 個別物件の競争力。間取り・設備・周辺供給・管理状態は、土地値比率とは無関係にNOIを左右します。
  7. 消費税と法人での取得。課税事業者からの購入では建物価格に消費税がかかり、法人取得では税率構造が変わります。今回は個人・非課税取引を前提としました。
  8. 相関と因果。「土地値比率が高い物件はIRRが低い」という結果は、今回固定した価格・家賃・融資条件のもとでの計算結果です。実際の市場では土地値比率が高い物件ほど立地が良く、家賃や空室率の水準そのものが違う可能性があります。土地値比率だけが原因ではありません。

まとめ

「土地値が出ているから安全」という説明は、間違いではないが不完全です。今回の条件では、土地値の下支えは出口利回りが8.32%を超えてはじめて発動し、土地値比率30%のケースを上回るには10.86%まで悪化する必要がありました。一方で、その下支えの代金として毎年の減価償却費が322.3万円失われ、10年+売却時の税負担で824.2万円の差がついています。

投資判断としては、「買い/買わない」ではなく次の3点を分けて見るのが実務的です。

  • 収益性:土地値比率が高いほど税引後CFは薄くなる。同じIRRを狙うなら表面利回りを1.5ポイント前後上乗せする必要がある
  • 下振れ耐性:土地値比率85%では出口利回り悪化に対する下限が固定される。ただし地価下落には無防備になる
  • 融資:積算評価が出やすいという別のメリットがあり、これは本分析では測っていない

この3つは同じ方向を向きません。1つの指標で結論を出せるテーマではなく、収益性・出口・融資・税率を同時に置いて比べる必要があります。RE-AIでは、収益性・価格査定・融資・リスク・出口戦略を別々のロジックで評価し、最後に統合して判断材料を提示する設計にしています。ただし、本記事の条件設定がそうであるように、どんな分析も置いた前提の範囲内でしか答えを出せません。前提を確認しながらお使いください。

参考資料・出典

情報確認日:2026年8月31日

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本記事は投資判断の参考情報であり、投資助言・税務助言ではありません。実際の按分・減価償却・損益通算・譲渡所得の取扱いは、税理士等の専門家へご確認ください。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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