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残債と売却手残りが逆転するのは何年目か|フルローンの「出口が開く年」を融資期間20・25・30年で逆算

残債と売却手残りが逆転するのは何年目か|フルローンの「出口が開く年」を融資期間20・25・30年で逆算

収益物件を買ったあと、「売りたいときに売れるか」を決めるのは売却価格ではありません。売却価格から売却費用と譲渡税を引いた税引後の手残りが、その時点のローン残債を上回っているかです。上回っていなければ、売るために自己資金を持ち出す必要があります。

残債は返済が進むほど減ります。一方で売却価格は、家賃が下がり建物が古くなるほど下がります。この2本の線がいつ交差するのか——本記事ではこれを「出口が開く年」と呼び、LTV(自己資金の入れ方)・融資期間・Exit Cap Rateの上昇速度を変えながら、交差する年を逆算しました。

結論を先に書くと、同じ物件・同じ金利でも、融資期間20年なら3年目、30年なら10年目と、出口が開く年は7年ずれました。さらに、売却価格が前年より89万円下がった6年目に、かえって出口が開くという逆転も起きています。

この記事で検証した疑問

  • フルローンで買った物件は、何年目から「手出しなし」で売れるようになるのか
  • 融資期間を20年・25年・30年と変えると、その年はどれだけずれるのか
  • Exit Cap Rate(出口の還元利回り)は年何ptまでの上昇なら耐えられるのか
  • 5年目に売れるようにしておくには、自己資金をいくら入れておけばよいのか

いずれも「売却時にいくら残るか」ではなく、「いつから売れる状態になるか」という時間軸の問題です。金額の比較については 融資期間25年・30年・35年で何が変わるか で別途検証しています。本記事はその続きとして、時期の側を扱います。

売却タイミング・デッドクロス・出口利回りといった出口戦略の全体像は 収益物件の出口戦略完全ガイド に、収支計算の指標そのものは 収益物件の収支計算完全ガイド にまとめています。本記事はそのうち「残債と売却手残りの逆転」だけを取り出して数値で検証したものです。

1.分析の前提条件

1-1.なぜこの物件条件なのか

本記事が想定する読者は、自己資金を抑えて1棟目を取得し、数年後に売却も選択肢に入れたい個人投資家です。この層が現実に検討する価格帯として、地方中核市の中古木造一棟アパートを設定しました。

築10年を選んだのは、融資期間を20年・25年・30年の3通りで比較する必要があるためです。木造の法定耐用年数は22年ですが、金融機関によっては耐用年数を超える期間の融資も行われており、築浅すぎず築古すぎない築10年であれば3通りの期間がいずれも現実的な選択肢になります。

価格5,400万円は、この物件条件と表面利回り9.0%(年間満室家賃486万円)の整合から決めた金額です。1戸あたり675万円、月額家賃50,600円/戸に相当します。この金額自体に分析上の意味はなく、後述する主要な結論は購入価格に対する比率で成立します

1-2.固定した条件

項目

設定値

設定の理由

物件

地方中核市・築10年・木造一棟アパート(1K×8戸)

融資期間20〜30年が成立する築年

物件価格

5,400万円

1戸675万円。表面利回りと家賃の整合から設定

年間満室家賃

486万円(表面利回り9.0%)

地方中核市の中古木造の想定水準

購入時諸費用

378万円(価格の7%)

借入対象外・自己資金から拠出

空室・滞納損

満室家賃の5%

後述の限界あり

運営費

満室家賃の18%

管理料・固都税・保険・共用光熱・小修繕

1年目NOI

374.2万円(NOI利回り6.93%)

486万円×(1−0.05)−486万円×0.18

家賃下落

年0.5%

BASEシナリオ

借入金利

年2.3%・元利均等・全期間一定

2026年8月時点で各社が提示するアパートローン変動金利のレンジ(概ね1%台後半〜3%台)の中位

建物比率

65%(建物3,510万円)

減価償却と譲渡税の計算に使用

減価償却

年252.7万円×14年

中古木造:(22−10)+10×20%=14年、定額法償却率0.072

売却費用

売却価格×3.3%+6.6万円+その他30万円

仲介手数料上限の速算式(税込)+登記等。電子契約で印紙税ゼロを想定

譲渡税率

保有5年以下39.63%/6年目以降20.315%

個人の分離課税(後述の1月1日判定に注意)

1-3.変更した条件

変数

水準

LTV(借入比率)

100%(5,400万円)/90%(4,860万円)/80%(4,320万円)/70%(3,780万円)

融資期間

20年/25年/30年

Exit Cap Rateの上昇速度

年+5bp/年+10bp/年+15bp(1bp=0.01pt)

Exit Cap Rateの基準値は取得時のNOI利回り6.93%とし、そこから経年で毎年一定幅だけ上昇する前提を置きました。建物が古くなるほど買主はより高い利回りを求めるためです。この上昇を置かない試算は「10年後も今と同じ利回りで売れる」と仮定していることになり、出口を過大評価します。

2.計算方法

各保有年数tについて、次の順で計算しています。

  • 推定売却価格=翌年(t+1年目)のNOI ÷ Exit Cap Rate(t) ※買主は翌年以降の収益で価格を判断するため、売却年の翌年NOIを使用
  • 売却費用=売却価格×3.3%+6.6万円+30万円
  • 譲渡税=(売却価格 − 取得費 − 売却費用)×税率、取得費=5,400万円 − 建物減価償却累計額
  • 税引後手残り=売却価格 − 売却費用 − 譲渡税
  • 残債=元利均等返済を月次で計算したt年末の元本残高
  • 出口が開く年=「税引後手残り − 残債 ≧ 0」を最初に満たす年

取得費は購入時諸費用378万円を含めない簡便計算としています(実務では一部が取得費に算入されます)。この簡便化は譲渡益を大きめに、つまり税額を保守的(多め)に見積もる方向に働きます。

3.結果①:残債も売却価格も、毎年動いている

まず2本の線を別々に見ます。Exit Cap Rateの上昇速度別の推定売却価格です。

保有年数

年+5bp
Cap/売却価格

年+10bp
Cap/売却価格

年+15bp
Cap/売却価格

1年

6.98%/5,335万円

7.03%/5,297万円

7.08%/5,259万円

3年

7.08%/5,207万円

7.23%/5,099万円

7.38%/4,995万円

5年

7.18%/5,083万円

7.43%/4,912万円

7.68%/4,752万円

10年

7.43%/4,790万円

7.93%/4,488万円

8.43%/4,222万円

15年

7.68%/4,520万円

8.43%/4,118万円

9.18%/3,781万円

20年

7.93%/4,269万円

8.93%/3,791万円

9.93%/3,409万円

年+10bpという控えめな上昇でも、10年後の売却価格は4,488万円(購入価格の83.1%)まで下がります。年+15bpなら20年後は3,409万円(同63.1%)です。

次に、フルローン(5,400万円)の残債推移です。

保有年数

20年ローン

25年ローン

30年ローン

1年

5,185万円

5,238万円

5,274万円

5年

4,273万円

4,553万円

4,738万円

10年

3,009万円

3,603万円

3,994万円

15年

1,591万円

2,537万円

3,161万円

20年

0円

1,341万円

2,226万円

10年時点の残債は、20年ローンと30年ローンで985万円違います。同じ金額を同じ金利で借りていても、期間の設定だけでこれだけ元本の減り方が変わります。

4.結果②:フルローンの「出口が開く年」は3年目から15年目まで動く

2本の線を突き合わせ、「税引後手残り − 残債 ≧ 0」を最初に満たす年を求めた結果です。

Cap上昇

LTV

20年ローン

25年ローン

30年ローン

年+5bp

100%

2年目

5年目

6年目

90%

1年目

1年目

1年目

80%

1年目

1年目

1年目

70%

1年目

1年目

1年目

年+10bp

100%

3年目

6年目

10年目

90%

1年目

1年目

1年目

80%

1年目

1年目

1年目

70%

1年目

1年目

1年目

年+15bp

100%

4年目

7年目

15年目

90%

1年目

1年目

1年目

80%

1年目

1年目

1年目

70%

1年目

1年目

1年目

残債と売却手残りが逆転するのは何年目か|フルローンの「出口が開く年」を融資期間20・25・30年で逆算


読み取れることは3つあります。

第一に、フルローンかどうかで結果がまったく違います。LTV100%では出口が開くまで最短2年目・最長15年目かかりますが、自己資金を10%(540万円)入れるだけで、今回のCap上昇3水準・融資期間3種類のいずれでも1年目から出口が開きます。25年ローン1年目の「手残り − 残債」は、LTV100%で△153万円、LTV90%で+371万円。頭金540万円の差が、1年目のギャップを524万円動かしています。

第二に、融資期間が長いほど出口は遠のきます。Cap年+10bpで比べると、20年ローンは3年目、30年ローンは10年目。融資期間を10年延ばした代償として、売却の自由を7年間手放していることになります。

第三に、これは保有中のキャッシュフローとのトレードオフです。同じフルローンでも1年目のDSCRは20年ローンで1.11、30年ローンで1.50。年間の税引前CFは37万円と125万円で、88万円違います。期間を延ばして毎年の手残りを厚くする判断は、同時に出口を遠ざける判断でもある——この両面を同時に見ないと、どちらが自分に合っているかは決められません。

LTV100%

年間返済額

1年目DSCR

1年目税引前CF

出口が開く年
(Cap年+10bp)

20年ローン

337万円

1.11

+37万円

3年目

25年ローン

284万円

1.32

+90万円

6年目

30年ローン

249万円

1.50

+125万円

10年目

DSCRの読み方そのものについては 不動産投資のDSCRとは?1.2を下回ると融資が厳しくなる理由と計算例 を参照してください。

5.結果③:売却価格が89万円下がった6年目に、かえって出口が開く

表の中でひとつだけ動きが不自然な箇所があります。LTV100%・25年ローン・Cap年+10bpの「手残り − 残債」を年ごとに追うと、こうなります。

保有年数

推定売却価格

譲渡税率

譲渡税

税引後手残り

残債

手残り − 残債

4年

5,004万円

39.63%

164万円

4,639万円

4,730万円

△92万円

5年

4,912万円

39.63%

229万円

4,485万円

4,553万円

△68万円

6年

4,822万円

20.315%

151万円

4,476万円

4,372万円

+104万円

7年

4,735万円

20.315%

185万円

4,357万円

4,186万円

+172万円

5年目から6年目にかけて、売却価格は89万円下がっています。にもかかわらず、ギャップは△68万円から+104万円へ、約173万円改善しました。内訳はこうです。

  • 売却価格の下落:△89.4万円(不利)
  • 売却価格が下がったことによる仲介手数料の減少:+3.0万円(有利)
  • 譲渡税率が39.63%→20.315%に切り替わり、税額が減少:+77.6万円(有利)
  • 1年分の元金返済による残債減少:+181.4万円(有利)

差し引き+172.6万円。価格が下がっても、税率の段差と元金返済がそれを上回ったわけです。「早く売ったほうが高く売れる」は正しいのですが、「早く売ったほうが手元に現金が残る」とは限りません。

ただしこの段差の位置には注意が必要です。国税庁の判定は「取得から5年」ではなく、譲渡した年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかです。2026年中に取得した場合、長期譲渡所得になるのは2032年中の売却からで、2031年中の売却は短期のままです。取得月によっては実質6年半近く待つことになります。譲渡所得税の計算全体は 収益物件を売ると税金はいくら?譲渡所得税の計算方法と短期・長期の分かれ目 で整理しています。

6.結果④:許容できるExit Cap上昇は、条件によって4倍違う

ここまでは「Cap上昇を決めて、開く年を求める」計算でした。向きを逆にして、「10年目に出口を開くには、Cap上昇は年何bpまでに収まっている必要があるか」を逆算します。

残債と売却手残りが逆転するのは何年目か|フルローンの「出口が開く年」を融資期間20・25・30年で逆算

LTV

20年ローン

25年ローン

30年ローン

100%

年+42.4bp
(10年後Cap 11.17%)

年+20.7bp
(同 9.00%)

年+10.4bp
(同 7.97%)

90%

年+56.1bp
(同 12.54%)

年+32.7bp
(同 10.20%)

年+20.9bp
(同 9.02%)

80%

年+71.5bp
(同 14.08%)

年+48.5bp
(同 11.78%)

年+34.5bp
(同 10.38%)

70%

年+91.3bp
(同 16.06%)

年+65.2bp
(同 13.45%)

年+52.2bp
(同 12.15%)

フルローン・30年ローンで許容できるのは年+10.4bpまで。つまり10年後のExit Capが7.97%を超えた瞬間、10年目でも売却時に持ち出しが発生します。取得時6.93%からわずか1.04ptの上昇で境界に達します。

一方、同じフルローンでも20年ローンなら年+42.4bpまで耐えます。融資期間の設定だけで、市況悪化への耐性が4倍違うという結果です。自己資金を30%入れて20年で組めば年+91.3bpまで耐えますが、その場合の投下自己資金は頭金1,620万円+諸費用378万円=1,998万円になります。

金利を変えると、この耐性はさらに動きます。金利が高いほど返済額のうち利息の比率が上がり、元本の減りが遅くなるためです。

金利(LTV100%)

20年ローン

25年ローン

30年ローン

1.8%

年+45.6bp

年+23.0bp

年+12.4bp

2.3%

年+42.4bp

年+20.7bp

年+10.4bp

3.0%

年+38.4bp

年+17.7bp

年+7.9bp

金利3.0%・30年ローンのフルローンでは、許容できるCap上昇は年+7.9bpです。10年で0.79pt——築10年の物件が築20年になっても、買主が求める利回りが0.8pt弱しか上がらないことを前提にしないと成立しません。これを楽観的と見るか妥当と見るかが、この物件を持つかどうかの判断になります。

ちなみに同条件で「出口が開く年」を並べると、金利2.3%・30年ローンは10年目、金利3.0%・30年ローンは13年目でした。金利0.7ptの差が、出口の時期を3年動かしています。

7.結果⑤:5年目に売れる状態にしておくための自己資金を逆算する

「5年程度で売却も検討したい」という前提を先に置いた場合、必要な自己資金はいくらか。Cap年+10bpの条件で逆算しました。

融資期間

5年目に手出しゼロ

6年目に手出しゼロ

10年目に手出しゼロ

20年

自己資金0%

0%

0%

25年

1.5%(81万円)

0%

0%

30年

5.3%(288万円)

2.6%(141万円)

0%

30年ローンでも、頭金288万円(価格の5.3%)を入れておけば5年目には手出しゼロで売却できる計算です。1年待って6年目にすれば141万円で足ります。「フルローンか否か」の二択ではなく、出口の時期から必要な頭金を逆算するという考え方ができます。自己資金比率と保有中の指標の関係は 不動産投資の自己資金はいくら必要?頭金10%・20%・30%でDSCRと月々の返済を比較 で扱っています。

8.結果⑥:3シナリオでの比較

ここまではBASEシナリオ(家賃下落年0.5%・空室5%)でした。悪化条件を重ねた場合をLTV90%・25年ローンで比較します。

シナリオ

家賃下落

空室率

Cap上昇

1年目NOI

1年目DSCR

10年目の推定売却価格

10年目の手残り − 残債

出口が開く年

BASE

年0.5%

5%

年+10bp

374万円

1.46

4,488万円

+770万円

1年目

STRESS

年1.0%

10%

年+15bp

350万円

1.37

3,754万円

+205万円

4年目

SEVERE

年1.5%

15%

年+20bp

326万円

1.27

3,135万円

△272万円

15年目

注目すべきは、SEVEREでも1年目のDSCRは1.27あり、保有中のキャッシュフローは黒字だという点です。融資審査の目線では問題のない水準に見えます。それでも10年目に売ろうとすると272万円の持ち出しが必要で、出口が開くのは15年目でした。

保有中の指標が健全であることと、出口が確保されていることは別の話です。DSCRやキャッシュフローは、売却時に何が起きるかを教えてくれません。

9.結果から分かること

  • 出口が開く年を動かす最大の要因は、自己資金の有無だった。LTV90%以下では今回のどの条件でも1年目から出口が開き、LTV100%だけが2年目〜15年目に散らばった。
  • フルローンの場合、次に効くのは融資期間だった。Cap年+10bpで20年ローン3年目・30年ローン10年目。ただしこれは1年目DSCR1.11対1.50、年間CF37万円対125万円というトレードオフの裏側にある。
  • 売却価格の下落より、税率の段差と元金返済のほうが大きい年がある。5年目→6年目で価格は89万円下がったが、税額減78万円と残債減181万円が上回り、ギャップは173万円改善した。
  • Exit Cap Rateへの耐性は、借入条件で4倍以上変わる。フルローンで許容できるCap上昇は30年ローンで年+10.4bp、20年ローンで年+42.4bp。金利3.0%・30年なら年+7.9bpまで狭まる。
  • DSCRが健全でも出口が閉じていることがある。SEVEREシナリオは1年目DSCR1.27でありながら、出口が開くのは15年目だった。

いずれも「この条件なら買い/買わない」という結論ではありません。毎年のキャッシュフローを優先するのか、売却の自由度を優先するのか——同じ物件でも借入条件の設計次第でどちらにも寄せられる、というのが今回の計算から言えることです。

10.投資判断への使い方

物件を検討する段階で、次の3つを確認しておくと今回の分析を再現できます。

  • 想定する保有年数を先に決める。5年で売る可能性があるのか、20年持ち切るのかで、選ぶべき融資期間と頭金が変わります。
  • その年の残債を計算しておく。返済予定表があれば確認できます。無ければ借入額・金利・期間から算出します。
  • 出口のExit Cap Rateを、取得時より高く置く。取得時と同じ利回りで売れる前提は、建物の経年を無視しています。

今回の試算は物件価格5,400万円・金利2.3%・表面利回り9.0%という特定の組み合わせで固定しています。実際には借入額・金利・期間・NOI・Exit Cap Rateのどれが変わっても交差する年は動きます。自分の条件で「何年目にいくら残るか」を確認したい場合は、売却・出口戦略シミュレーターで保有1〜35年の手残りと残債を比較することができます。売却価格・売却費用・譲渡税・残債を分けて表示し、長期譲渡所得に切り替わる最初の年も取得日から日付で判定されます。

返済額と残債の推移だけを先に押さえたい場合は 不動産投資ローンシミュレーション、保有中の返済余力は DSCR計算ツール でも確認できます。いずれも登録不要です。

11.この分析で分からないこと

今回の計算は条件を固定したシミュレーションであり、実際の取引統計ではありません。次の点は反映していません。

  • 実際のExit Cap Rateの推移。本記事の年+5〜20bpという上昇速度は、経年を織り込むために置いた仮定です。個別の立地・築年・管理状態によって実際の利回り変化は大きく異なります。
  • 大規模修繕・設備更新。保有中の資本的支出は計算に含めていません。実際には外壁・屋根・給湯器等の更新費用が発生し、手元資金と売却時の建物評価の両方に影響します。修繕費「家賃の5%」で足りるのかで別途検証しています。
  • 空室率5%という前提の妥当性。これは平均値であり、戸数が少ないほど実際の稼働はぶれます。戸数別のDSCR1.2割れ確率、および 退去1回あたりの入替コストを併せて確認してください。
  • 金利の変動。全期間2.3%固定で計算していますが、変動金利では返済額と元本の減り方が途中で変わります。固定金利は変動より何%まで高くていいのかで扱っています。
  • 売却できるかどうか自体。手残りが残債を上回っていても、買主が現れなければ売却は成立しません。流動性は本記事の計算範囲外です。
  • 税務の個別事情。取得費への諸費用算入、消費税の課税事業者判定、法人所有の場合の課税、各種特例は反映していません。実際の税額は税理士へご確認ください。
  • 因果関係の断定はしていません。「Cap上昇が売却価格を下げる」という関係は還元法の計算上の関係であり、実際の成約価格は個別の建物競争力・周辺供給・買主の融資環境など複数要因で決まります。

12.まとめ

「いつでも売れる」と「いつか売れる」の間には、具体的な年数の差があります。今回の条件では、フルローン・30年ローン・Cap年+10bpで9年間、Cap年+15bpなら14年間、売却に自己資金の持ち出しが必要な期間が続きました。

この期間は、頭金を288万円入れる(30年ローン・5年目)、融資期間を20年にする(フルローンでも3年目)、あるいは6年目まで待って長期譲渡所得に切り替える、といった選択で短縮できます。いずれも購入時点で決まる設計であり、保有が始まってから変えるのは難しい部分です

金利・空室率・家賃下落・Exit Cap Rate・残債・譲渡税を同時に動かすと、表計算で確認すべき項目は急速に増えます。RE-AIはこうした複数条件をまとめて確認できるよう設計していますが、実際の売却価格や融資条件を保証するものではなく、最終的な判断は金融機関・税理士等への確認と併せて行ってください。

参考資料・出典

本記事の市場データ・制度情報は2026年8月22日時点で確認したものです。税制・金利・利回り水準は変動します。

借入金利2.3%は、2026年8月時点で各金融機関が公表・提示するアパートローン変動金利のレンジ(概ね1%台後半〜3%台)の中位として設定した分析用の仮定値であり、統計値ではありません。実際の適用金利は属性・物件・金融機関によって異なります。

本記事は投資助言ではありません。記載の数値はすべて上記の前提条件下での計算結果であり、特定の物件の将来価値・売却可能性を示すものではありません。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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