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相続前5年以内に買った収益物件は、相続税評価額が1.69倍になる|令和8年度改正「5年ルール」で圧縮効果を再計算し、節税が消える価格下落率を逆算

相続前5年以内に買った収益物件は、相続税評価額が1.69倍になる|令和8年度改正「5年ルール」で圧縮効果を再計算し、節税が消える価格下落率を逆算

収益物件を「相続税対策」として勧められたことがある方は多いはずです。現金で持つより不動産に換えたほうが相続税評価額が下がる、という説明です。この効果自体は事実ですが、2026年(令和8年)度の税制改正大綱で、その前提が大きく変わることが決まりました。相続開始前5年以内に有償で取得した貸付用不動産は、路線価・固定資産税評価額ではなく「取得価額を基に計算した価額の80%」で評価するという、いわゆる「5年ルール」です。

この記事では、現金1億円を収益物件に組み替えたケースを設定し、①現行評価での圧縮率を項目別に分解し、②改正後(5年以内取得)の評価額を計算し、③限界相続税率別の追加税額を出したうえで、④節税額が物件価格の下落で相殺される下落率と、⑤節税メリットが年率何%に相当するかを逆算します。すべて条件を明示したシミュレーションで、実際の物件統計ではありません。

結論を先に書くと、同じ物件でも取得から5年以内か5年超かで相続税評価額は約1.69倍変わり、限界税率40%なら追加の相続税は約1,006万円でした。そして取得諸費用と売却諸費用まで含めると、5年超保有でも物件価格が15.8%下がれば節税メリットは消えます。5年以内取得なら、その分岐点は4.4%です。

この記事で分析する疑問

「収益物件を買うと相続税評価が下がる」という説明は広く流通していますが、投資判断に使うには次の3つが足りません。

  • 圧縮効果の内訳——貸家建付地の約2割減や貸家の3割減がよく強調されますが、実際に効いているのはどの項目か
  • 圧縮額を年率に直すといくらか——相続がいつ起きるかで、同じ節税額の「利回り換算」は何倍も変わります
  • 節税額が何によって消えるか——取得諸費用、売却諸費用、物件価格の下落を差し引いた後に何が残るか

そこに2027年(令和9年)1月1日以後の相続から適用される「5年ルール」が加わります。本記事はこの4点を数字で埋めます。

分析の前提条件

なぜ「現金1億円の組み替え」を単位にするか

この分析の対象は「特定の価格の物件が有利か」ではなく、現金を収益物件に換えたときに評価額がどう変わるかです。したがって分析の単位は物件価格ではなく「組み替える現金の額」が適切と判断し、1億円としました。圧縮"額"は組み替え額にほぼ比例するため、読者は自分の金額に読み替えられます。

ただし節税"額"は比例しません。相続税は超過累進課税で、限界税率が30%の人と50%の人では、同じ圧縮額でも節税額が1.67倍違います。そこで限界相続税率を30%・40%・45%・50%の4水準で変えて計算しています。

固定条件

項目

設定値

設定の根拠

組み替える現金

1億円

分析の単位。結果は組み替え額に比例

取得諸費用率

8.5%

RE-AI試算の8.0〜9.2%の中位(後掲の関連記事)

物件価格

9,217万円

1億円 ÷ 1.085(諸費用込みで1億円に収まる価格)

土地:建物

50:50

木造・軽量鉄骨の一棟アパートで一般的な範囲

土地面積

300㎡

小規模宅地等の特例(200㎡上限)の適用率が67%になる規模

路線価 ÷ 実勢価格

0.80

路線価は地価公示価格等の80%程度を目途に設定(国税庁)

建物固定資産税評価額 ÷ 建物取得価額

0.50

一般に5〜7割とされる範囲の下限側。中古一棟を想定

借地権割合

60%

住宅地で標準的な水準(実際は路線価図で30〜90%)

借家権割合

30%

原則として全国一律

賃貸割合

100%(満室)

後段で空室時も検証

変更する条件

  • 取得から相続開始までの年数(5年以内/5年超)
  • 限界相続税率(30%/40%/45%/50%)
  • 保有年数(3〜25年)
  • 物件価格の下落率(逆算対象)
  • 補助分析として、土地面積・借地権割合・賃貸割合

これは条件を固定したシミュレーションであり、実際の申告事例の統計ではありません。土地の評価は個別の路線価・形状・接道で大きく変わります。

分析1:現行評価の圧縮率を項目別に分解する

まず改正前(=取得から5年超の場合、改正後も従来どおり)の評価額を計算します。

土地

  1. 自用地評価額 = 4,608万円 × 0.80 = 3,687万円
  2. 貸家建付地 = 3,687万円 ×(1 − 借地権割合0.6 × 借家権割合0.3 × 賃貸割合1.0)= 3,687万円 × 0.82 = 3,023万円
  3. 小規模宅地等の特例(貸付事業用宅地等・200㎡まで50%減)= 3,023万円 × (200㎡÷300㎡) × 50% = 1,008万円の減額 → 2,015万円

建物

  1. 固定資産税評価額 = 4,608万円 × 0.50 = 2,304万円
  2. 貸家 = 2,304万円 ×(1 − 0.3 × 1.0)= 1,613万円

合計は 3,628万円。現金1億円との差は6,372万円で、圧縮率は63.7%です。

どの項目がいくら効いているか

圧縮の要因

金額

圧縮額に占める割合

建物の固定資産税評価(取得価額の50%)

2,304万円

36.2%

小規模宅地等の特例

1,008万円

15.8%

土地の路線価評価(実勢の80%)

922万円

14.5%

取得諸費用の流出

783万円

12.3%

貸家減額(建物30%減)

691万円

10.8%

貸家建付地減額(土地約18%減)

664万円

10.4%

合計

6,372万円

100.0%

ここで2つのことが分かります。

ひとつは、圧縮の主役は「貸家建付地・貸家の減額」ではなく、評価の土台そのものだという点です。よく強調される貸家建付地減額と貸家減額を合わせても圧縮額の21.2%にすぎず、建物を固定資産税評価額で評価すること単独(36.2%)に届きません。逆に言えば、建物の固定資産税評価額が取得価額の何%になるかが、圧縮率を最も左右します。この比率は築年・構造・地域で変わるため、実際の物件では課税明細書で確認する必要があります。

もうひとつは、圧縮額の12.3%は単にお金が消えているだけという点です。取得諸費用783万円は、確かに相続税評価額を783万円下げますが、それは資産が783万円減ったからで、節税でも何でもありません。「評価が6,372万円下がった」という説明のうち、この分は投資家にとっての利益ではありません。取得諸費用の内訳については不動産投資の諸費用は本当に7%なのかで税率から積み上げて検証しています。

分析2:「5年ルール」適用後の評価額

2026年度税制改正大綱では、被相続人等が課税時期前5年以内に対価を伴う取引により取得または新築した一定の貸付用不動産について、取得価額を基に地価の変動等を考慮して計算した価額の80%で評価するとされました。適用は2027年1月1日以後に相続等により取得する財産からです。

地価変動がなかったと仮定すると、「通常の取引価額に相当する金額」は 9,217万円 × 80% = 7,373万円 となります。ここから先は、現時点で通達が発遣されておらず確定していない論点があるため、3つのケースに分けて計算します。

ケース

前提

相続税評価額

圧縮率

現行評価との比

A

小規模宅地等の特例は適用可・貸家建付地/貸家減額は不可

6,144万円

38.6%

1.69倍

B

小規模宅地等+貸家建付地/貸家減額も併用可

4,596万円

54.0%

1.27倍

C

いずれの減額も不可

7,373万円

26.3%

2.03倍

現行評価(取得から5年超)

3,628万円

63.7%

1.00倍

小規模宅地等の特例は租税特別措置法に規定があり、大綱に同法の改正に関する記載がなかったことから、適用可能とみる見解が有力です。一方、貸家建付地・貸家の減額については、賃貸中の物件(オーナーチェンジ)の取得価額には既に賃貸中であることが織り込まれているため重複適用はできない、という考え方があります。本記事ではケースA(1.69倍)を基準とし、幅として1.27〜2.03倍を示します。

分析3:限界相続税率別の追加相続税額

ケースAを前提に、5年以内取得と5年超保有で相続税額がいくら変わるかを計算します。差額の評価額は 6,144万円 − 3,628万円 = 2,516万円です。

限界相続税率

5年超保有の節税額

5年以内取得の節税額

差(追加で払う相続税)

30%

1,912万円

1,157万円

755万円

40%

2,549万円

1,542万円

1,006万円

45%

2,867万円

1,735万円

1,132万円

50%

3,186万円

1,928万円

1,258万円

1億円の組み替えに対して、755万〜1,258万円です。組み替え額が3億円なら単純計算で3倍になりますが、その規模では限界税率も上がるため、実際の差はさらに開きます。

分析4:年率に直すと、5年目に不連続なジャンプが起きる

節税額は相続が発生した時点で一度だけ実現します。これを「保有していた期間で割った年率」に直すと、収益性の議論と同じ土俵に乗ります。限界税率40%で計算します。

取得から相続までの年数

適用される評価

節税額

組み替え額1億円に対する年率

3年

改正後(5年以内)

1,542万円

5.14%/年

4年

改正後(5年以内)

1,542万円

3.86%/年

5年

現行(5年超)

2,549万円

5.10%/年

6年

現行

2,549万円

4.25%/年

8年

現行

2,549万円

3.19%/年

10年

現行

2,549万円

2.55%/年

15年

現行

2,549万円

1.70%/年

20年

現行

2,549万円

1.27%/年

25年

現行

2,549万円

1.02%/年

2つの転換点が見えます。

転換点①:4年目と5年目の間で、年率換算が1.24pt跳ね上がる。3.86%/年から5.10%/年です。通常、同じ節税額を長い期間で割れば年率は下がるはずですが、5年を超えた瞬間に評価方法そのものが切り替わるため、ここだけ逆行します。相続の時期は選べませんから、これは「5年を待てる時間があるかどうか」という属人的な条件が、投資判断より大きく効くことを意味します。

転換点②:保有が10年を超えると、年率は2.5%/年を下回る。限界税率40%でも、20年保有なら1.27%/年です。「相続対策だから利回りは多少犠牲にしてよい」という判断は、相続までの期間が短いことが前提になっています。

取得諸費用を引いた「純メリット」で見る

前述のとおり取得諸費用783万円は消えた資産です。節税額からこれを差し引くと次のようになります。

保有年数

5年超保有(純メリット1,765万円)

5年以内取得(純メリット759万円)

3年

2.53%/年

5年

3.53%/年

1.52%/年

10年

1.77%/年

0.76%/年

15年

1.18%/年

0.51%/年

20年

0.88%/年

0.38%/年

限界税率40%・20年保有なら、純メリットは年0.88%です。この水準のために実質利回りを1pt以上犠牲にする物件を選ぶと、税引後の総額では負けます。

分析5:逆算——節税額は何%の価格下落で消えるか

相続人が物件を売却して現金化する前提で、「節税額 − 取得諸費用 − 売却諸費用(価格の4%と仮定) − 価格下落額 = 0」となる下落率を逆算します。

ケース

限界税率

節税額

取得諸費用控除後

相殺される価格下落率

5年超保有(現行評価)

30%

1,912万円

1,128万円

8.6%

40%

2,549万円

1,765万円

15.8%

50%

3,186万円

2,403万円

23.0%

5年以内取得(改正後A)

30%

1,157万円

373万円

0.1%

40%

1,542万円

759万円

4.4%

50%

1,928万円

1,145万円

8.8%

限界税率40%・5年超保有という比較的恵まれた条件でも、物件価格が15.8%下がれば節税メリットは消えます。10年から20年という保有期間で15.8%の下落は、地方や賃貸需要が縮小するエリアでは十分に起こりうる幅です。公示地価の変動を出口価格に反映させた場合の影響は公示地価の変動率をExit Cap Rateに反映すると、10年IRRはどこまで変わるかで試算しています。

そして5年以内取得の場合、限界税率30%では分岐点が0.1%です。つまり価格がほとんど下がらなくても、諸費用を回収できずに終わります。この条件下では、相続税対策としての組み替えは成立していません。

なお、この逆算には売却時の譲渡所得税を含めていません。相続で取得した物件は被相続人の取得費・取得時期を引き継ぐため、減価償却が進んでいれば譲渡所得税が発生し、分岐点はさらに手前に来ます。相続人が売らずに保有し続けるのであれば価格下落は実現しませんが、その場合は「相続後も賃貸経営を続けられるか」という別の問題に置き換わるだけです。

補助分析:圧縮率を左右する3つの条件

土地面積——小規模宅地等の特例は200㎡で頭打ち

貸付事業用宅地等の限度面積は200㎡です。土地が広いほど適用率が下がります(現行評価・土地比率50%)。

土地面積

特例の適用率

相続税評価額

圧縮率

200㎡以下

100%

3,124万円

68.8%

250㎡

80%

3,427万円

65.7%

300㎡

67%

3,628万円

63.7%

400㎡

50%

3,880万円

61.2%

600㎡

33%

4,132万円

58.7%

200㎡以下と600㎡では圧縮率が10.1pt違います。同じ金額を投じるなら、地価が高く面積が小さい土地のほうが圧縮率は高くなります。ただし他の相続財産(自宅など)で特例枠を使う場合は限度面積の調整計算が必要で、この単純比較はそのまま使えません。

賃貸割合——空室は収益だけでなく相続税評価も悪化させる

貸家建付地・貸家の減額は、いずれも賃貸割合を掛けて計算します。相続開始時に空室があると、その分だけ減額が縮みます(現行評価・限界税率40%)。

賃貸割合

相続税評価額

満室時との差

追加の相続税

100%

3,628万円

90%

3,742万円

+113万円

+45万円

80%

3,855万円

+227万円

+91万円

70%

3,968万円

+340万円

+136万円

50%

4,195万円

+567万円

+227万円

賃貸割合70%のとき、家賃収入が3割減るのに加えて相続税が136万円増えます。空室率は収益性の問題として語られることが多いですが、相続対策として物件を保有している場合は税額にも直接効きます。一時的な空室について継続的に賃貸されていたと認められる余地はありますが、恒常的な空室は減額対象になりません。

借地権割合

借地権割合が高い(都心部に多い)ほど貸家建付地の減額幅は大きくなります。ただし影響は限定的です。

借地権割合

相続税評価額

圧縮率

30%

3,849万円

61.5%

60%

3,628万円

63.7%

90%

3,407万円

65.9%

30%と90%で圧縮率の差は4.4ptです。分析1で見たとおり、貸家建付地の減額は圧縮全体の1割程度しか占めないためです。

結果から分かること

  1. 取得から5年以内か5年超かで、相続税評価額は1.69倍変わる(ケースA)。幅としては1.27〜2.03倍。限界税率40%なら相続税は約1,006万円多くなる。
  2. 圧縮の主役は貸家建付地・貸家の減額ではない。両者を合わせても圧縮額の21.2%。最大は建物の固定資産税評価(36.2%)で、物件ごとの固定資産税評価額の水準が圧縮率を最も左右する。
  3. 圧縮額の12.3%は取得諸費用の流出。評価は下がるが投資家の利益ではない。
  4. 節税額を年率換算すると、保有10年で2.55%/年、20年で1.27%/年(税率40%)。取得諸費用を引いた純メリットでは20年0.88%/年。相続までの期間が長いほど、収益性を犠牲にする合理性は薄れる。
  5. 諸費用込みの損益分岐は、5年超保有で価格下落15.8%、5年以内取得で4.4%(税率40%)。出口価格の想定が甘いと、節税額はそのまま失われる。
  6. 空室は相続税評価も悪化させる。賃貸割合70%で追加税136万円。

投資判断への使い方

この分析は「相続対策として収益物件を買うべきか」に一つの答えを出すものではありません。使えるのは、判断を次の3つの軸に分けて考えることです。

軸1:時間の余裕があるか。5年ルールにより、直前の組み替えは効果が半減します。逆に5年超を確実に確保できるなら、現行評価が維持されます。ただし相続の時期は選べません。

軸2:節税の年率と、収益性の犠牲を同じ単位で比べているか。相続対策で候補になる物件は、低利回り・高価格帯になりがちです。「節税メリットは年率何%か」を出し、「その物件の実質利回りが、対策を考えない場合の候補より何pt低いか」と直接比べてください。前者が後者を下回るなら、税務上の理由だけでは正当化できません。今回の試算では組み替え額1億円・限界税率40%を前提にしていますが、実際の節税額は限界相続税率と保有年数で2倍以上変わります。検討中の物件の年間キャッシュフローや実質利回りを自分の条件で確認したい場合は、RE-AIの無料キャッシュフローシミュレーターで年間CF・NOI利回り・実質利回りを試算することができます。

軸3:出口価格の下振れに耐えられるか。15.8%の下落で節税額が消えるということは、相続対策物件であっても出口利回りの変化がIRRに与える影響や賃貸需要の将来推計から逃れられないということです。「税金が減るから」はエリア選定を省略してよい理由になりません。

なお、金利・空室・修繕・出口価格に加えて相続時の評価まで同時に動かすと、表計算で追う条件が急増します。RE-AIでは収益性・価格査定・融資・リスク・出口を横断して確認できるよう設計していますが、相続税額そのものの計算や個別の土地評価は対象外です。実際の判断には税理士の関与が必要です。

この分析で分からないこと

  1. 改正通達が発遣されていない。大綱段階の内容にもとづく試算です。「一定の貸付用不動産」の範囲、貸家建付地・貸家減額の併用可否、地価変動の考慮方法はいずれも未確定で、2026年中にパブリックコメントが行われる見込みです。確定後に数値は変わります。
  2. 小規模宅地等の特例が適用可能かは予想。大綱に租税特別措置法の改正に関する記載がなかったことによる推定で、確定情報ではありません。
  3. 土地評価は個別性が極めて高い。路線価÷実勢価格0.80、建物固定資産税評価額÷取得価額0.50はいずれも一般的な目安で、実際の物件では形状・接道・容積率・築年・地域によって大きく異なります。
  4. 相続税の総額は計算していない。限界税率だけを使った差分計算で、基礎控除、法定相続人の数、配偶者の税額軽減、二次相続は考慮していません。
  5. 売却時の譲渡所得税を含めていない。含めれば損益分岐の下落率はさらに手前に来ます。
  6. 借入の有無を扱っていない。債務は額面で控除されるため純粋な評価圧縮額は変わりませんが、自己資金あたりの効率、DSCR、金利上昇リスクは別に検討が必要です。
  7. 相関と因果の区別。本記事は制度から演繹した計算であり、実際の申告事例で圧縮率がこの水準になることを示したものではありません。

まとめ

2026年度税制改正大綱の「5年ルール」により、相続開始前5年以内に取得した貸付用不動産の相続税評価額は、今回の前提で約1.69倍になります。限界税率40%なら追加の相続税は約1,006万円です。

ただし本質的な論点は、改正の前後どちらでも同じです。節税額を年率に直すと、保有期間が長いほど小さくなり、取得諸費用と価格下落に容易に飲み込まれるという構造です。今回の試算では、5年超保有・限界税率40%という比較的有利な条件でも、物件価格が15.8%下がれば差引ゼロでした。

相続対策を理由に収益性やエリアの検証を省略することは、この計算からは正当化できません。収益物件の相続税評価の仕組みを理解したうえで、通常の投資判断と同じ基準で物件を評価し、そのうえで税務メリットを上乗せとして測るのが、この数字が示す順序です。制度全体の整理は不動産投資の税金 完全ガイドにまとめています。また「5年」という区切りは譲渡所得税にも存在し、こちらは5年目売却と6年目売却で税引後IRRは7.17pt違うで検証しています。両者は基準日も趣旨も異なる別の制度です。

情報確認日:2026年9月6日。税制改正の内容は今後の法令・通達により変更される可能性があります。実際の判断にあたっては税理士等の専門家にご確認ください。

参考資料・出典

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

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