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木造・鉄骨・RC、同じ8,000万円の物件で積算価格はいくら変わるか|路線価と再調達価格の計算方法

木造・鉄骨・RC、同じ8,000万円の物件で積算価格はいくら変わるか|路線価と再調達価格の計算方法

「積算価格」という言葉を金融機関や不動産会社から聞いたことはあっても、実際にどう計算されているかを自分で確かめたことがある投資家は多くありません。積算価格は土地と建物を別々に計算して合計する評価方法で、融資審査の担保評価に直結します。この記事では、路線価と再調達価格を使った計算式と、木造・重量鉄骨・RCで積算価格がどれだけ変わるかを、8,000万円の架空物件で確認します。

積算価格とは何か、なぜ確認すべきなのか

積算価格は、不動産鑑定評価における原価法の考え方をもとに、土地の価格と建物の価格をそれぞれ別の方法で求めて合計した評価額です。国土交通省の不動産鑑定評価基準でも、原価法は収益還元法・取引事例比較法と並ぶ基本的な手法として位置づけられています。

収益還元法が「その物件が将来いくら稼ぐか」から価格を組み立てるのに対し、積算価格は「土地と建物を今つくり直すといくらかかるか」という原価の視点から価格を組み立てます。金融機関が融資審査の担保評価で積算価格を重視するのは、収益力が変動しても土地・建物という現物の価値は比較的読みやすいためです。ただし、積算価格が高いからといって融資が確実に通るわけではなく、審査は積算価格以外の要素も含めて総合的に行われます。

積算価格の計算式|土地と建物を分けて計算する

積算価格は、次の式で求めます。

積算価格 = 土地の積算価格 + 建物の積算価格

土地の積算価格:路線価×土地面積

土地の積算価格は、単価×土地面積で求めます。単価には、国税庁の路線価(相続税路線価)、地価公示価格、都道府県地価調査(基準地価)などが使われます。どの単価を使うかは評価目的や金融機関によって異なります。路線価は国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で、毎年7月頃に1月1日時点の価格が公表されます。なお、相続税路線価は地価公示価格のおおむね80%の水準になるよう設定する運用がとられており、公示地価から路線価のおおよその水準を逆算する目安としても使われます。

以下は理解しやすくするための単純化した架空例です。土地面積120㎡、路線価22万円/㎡と仮定すると、土地の積算価格は次のようになります。

120㎡ × 22万円/㎡ = 2,640万円

建物の積算価格:再調達価格×延床面積×残存率

建物の積算価格は、再調達価格(同じ建物を今建て直す場合の1㎡あたり単価)×延床面積×残存率で求めます。残存率は「(法定耐用年数-築年数)÷法定耐用年数」で計算し、法定耐用年数に近づくほど建物価格は小さくなります。

法定耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」で構造ごとに定められており、国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」で確認できます。主な住宅用建物の法定耐用年数は、木造22年、軽量鉄骨造(骨格材の肉厚3mm以下)19年、軽量鉄骨造(3mm超4mm以下)27年、重量鉄骨造(4mm超)34年、鉄筋コンクリート造(RC)47年です。あくまで税務上の年数であり、建物が物理的に使用できる年数とは別の概念である点に注意してください。

再調達価格(新築時の1㎡あたり単価)は評価する金融機関や機関によって置き方が異なり、全国一律の金額があるわけではありません。以下の試算では、理解のために木造15万円/㎡、重量鉄骨18万円/㎡、RC20万円/㎡という参考値を仮定して計算します。実際の再調達単価は、評価を行う金融機関や鑑定士の基準によって変わります。

ここで前提となる延床面積そのものは、土地が指定された用途地域における建蔽率・容積率の上限によって変わります。同じ土地価格でも、用途地域が第一種住居地域か近隣商業地域かで建てられる延床面積・部屋数が変わり、積算価格の計算根拠だけでなく収益還元価格の前提も変わります。用途地域の違いが部屋数・NOI・利回りにどの程度跳ね返るかを新築アパートの架空例で試算した記事を公開していますので、土地選定の段階であわせて確認してください(「同じ土地価格でも用途地域が違うと収益性は変わるのか|建蔽率・容積率の差を新築アパートで試算した」)。

木造・重量鉄骨・RCで積算価格はいくら変わるか(架空例)

以下は理解しやすくするための単純化した架空例です。売出価格8,000万円、土地面積120㎡(路線価22万円/㎡)、延床面積200㎡、築15年の一棟アパートを想定し、構造だけを木造・重量鉄骨・RCに変えて積算価格を比較します。

構造

法定耐用年数

残存率(築15年時点)

建物の積算価格

積算価格合計(土地2,640万円+建物)

木造

22年

約31.8%(残存7年)

約955万円

約3,595万円

重量鉄骨

34年

約55.9%(残存19年)

約2,012万円

約4,652万円

RC

47年

約68.1%(残存32年)

約2,723万円

約5,363万円

同じ築15年・同じ延床面積・同じ売出価格8,000万円でも、構造が違うだけで積算価格は約1,800万円の差が出ます。法定耐用年数が短い木造ほど残存率が早く下がるため、築年数が進むほど積算価格と売出価格の差が開きやすくなります。

なお、法定耐用年数を超えた築古物件では、計算上は建物の残存価格がゼロに近づきます。RE-AIの価格査定機能では、築古物件でも建物価格をゼロにせず、残存率の下限を10%に設定した上で積算価格を計算しています。これは、法定耐用年数を超えても建物が現に使用されている実態を評価へ反映させるための実務上の工夫です。ただし、これはRE-AIの査定モデル上の扱いであり、金融機関ごとの担保評価の考え方とは別のものです。

積算価格が低いと、融資にどう影響するか

積算価格は、金融機関が担保評価を行う際の参考値の一つとして使われることがあります。積算価格が売出価格を大きく下回る場合、金融機関によっては融資額や自己資金の条件に影響が出ることがあります。ただし、積算価格に対する融資額の考え方は金融機関ごと・物件ごとに異なり、一律の基準があるわけではありません。積算価格が低いことだけをもって融資が不利になると断定はできず、事前に金融機関へ確認する必要があります。

融資条件が変わると、DSCRや月々の返済額も変わります。融資額と返済余力の関係については「不動産投資のDSCRとは?1.2を下回ると融資が厳しくなる理由と計算例」で、構造・築年による融資天井の違いは「売出8,000万円の一棟アパート、銀行はいくらまで貸せるのか」で詳しく扱っています。

積算価格だけで購入判断をしてはいけない理由

積算価格は土地と建物の原価から見た評価であり、その物件が実際にいくら稼ぐか、周辺でいくらで取引されているかを直接は反映しません。購入判断では、少なくとも次の視点を積算価格とあわせて確認する必要があります。

  • 収益価格:NOIを還元利回りで割った、収益還元法による評価額
  • 取引事例比較価格:周辺で実際に成約した価格の水準
  • DSCRやキャッシュフロー:融資条件を踏まえた返済余力と手残り

収益還元法の考え方や直接還元法とDCF法の違いは「DCF法とは?直接還元法との違いと計算方法を架空例で確認する」で解説しています。実際のNOIと還元利回りを使って収益価格を試算したい場合は、RE-AIの収益還元法・収益価格計算ツールで無料・登録不要で計算できます。積算価格と収益価格を両方出したうえで差が大きい場合は、その差が土地値の高さによるものか、NOIの前提によるものかを分けて考えることが判断の助けになります。

売出価格に対して自分がいくらまで払える計算になるかは「売出8,000万円の物件、自分はいくらまで払えるのか」、価格査定全体の考え方は「収益物件の価格査定は何を見る?収益還元法・取引事例比較法・原価法の使い分けと確認手順」で整理しています。

積算価格を自分で調べる・確認する方法

土地の単価は、国税庁の路線価図・評価倍率表のほか、国土交通省の地価公示・都道府県地価調査でも確認できます。建物の法定耐用年数は、国税庁の耐用年数表で構造・用途ごとに確認できます。ただし、これらの計算で求まる積算価格はあくまで簡易的な試算であり、不動産鑑定士による正式な鑑定評価ではありません。接道状況、土地の形状、用途地域、建物の劣化状況などによって実際の評価額は変わります。

積算価格・収益価格・取引事例比較価格を同じ物件条件でまとめて確認したい場合は、RE-AIの無料診断で試すこともできます。登録不要で1件診断でき、3つの査定額を並べて確認できます。

まとめ

積算価格は、土地の積算価格(単価×面積)と建物の積算価格(再調達価格×延床面積×残存率)を合計して求めます。同じ売出価格・同じ築年数でも、構造によって法定耐用年数が異なるため、積算価格には数百万円〜数千万円単位の差が出ることがあります。積算価格は融資審査で参考にされる評価軸の一つですが、それだけで購入判断はできません。収益価格や取引事例、融資条件とあわせて確認することが、価格の妥当性を多角的に見る手がかりになります。

参考資料・出典

  • 国税庁「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」
  • 国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表(建物)」
  • 「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(e-Gov法令検索)
  • 国土交通省「不動産鑑定評価基準」
  • 都市計画法(用途地域の区分)、建築基準法第52条(容積率)・第53条(建蔽率)

情報確認日:2026年9月6日。路線価は毎年7月頃に更新されるため、実際に試算する際は国税庁の最新の路線価図でご確認ください。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

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