
長期金利の指標となる新発10年国債の利回りは、2026年9月1日に一時3.005%まで上昇して1996年9月以来約30年ぶりに3%の大台に乗った後も上昇が続き、9月25日には一時3.115%まで達しました。財務省が10月6日に決めた10月〜12月発行分の10年国債のクーポン(表面利率)も3.1%となり、1〜3月の2.1%から3四半期連続で上昇しています。このニュースが自分の収益物件やこれから検討する物件にどう関わるのか、「どの金利が」「何に」影響するのかを、DSCR・キャッシュフロー・物件価格の3つの視点から整理します(2026年10月9日時点の情報に更新)。
2026年8月18日の国内債券市場で、新発10年国債の利回りは一時2.945%まで上昇し、1996年10月以来、約30年ぶりの高水準となりました。その後も水準を切り上げる展開が続き、9月1日には一時3.005%まで上昇しています。新発30年債の利回りは4.0%台に乗せ、新発5年債は過去最高、新発2年債も31年ぶりの高さとなるなど、短期から超長期まで利回り水準全体が切り上がっているのが今回の特徴です。
背景としては、日銀の早期追加利上げ観測、政権の積極財政路線を受けた財政悪化への懸念、中東情勢の混迷を背景とした原油価格の上昇という3つの要因が重なっていると報じられています(出典:LIFULL HOME'S PRESS「長期金利3%台目前 不動産投資市況への影響は?」2026年8月18日公開)。
その後も長期金利は水準を切り上げ、9月25日には新発10年国債利回りが一時3.115%まで上昇し、30年1ヵ月ぶりの高水準を記録しました。原油価格の上昇による物価高懸念や、米国長期金利の上昇が日本にも波及したことが背景として報じられています。10月6日には財務省が10月〜12月発行分の新発10年国債のクーポン(表面利率)を3.1%に決定し、1〜3月の2.1%、4〜6月の2.4%、7〜9月の2.7%から4四半期連続の上昇となりました(出典:熊本日日新聞「長期金利上昇3・115% 30年1カ月ぶり高水準」2026年9月25日、同「10年物国債、利率3・1% 金利上昇、30年ぶり高水準」2026年10月6日)。
不動産投資への影響を考えるうえで押さえておきたいのは、今回上昇した「長期金利」と、変動金利型ローンの水準を左右する「短期金利」は、別の指標だという点です。この2つを区別せずに「金利が上がった」とだけ捉えると、自分のローンに実際どう影響するかを見誤りやすくなります。
変動金利型のローンは、多くの金融機関で短期プライムレートを基準に見直されます。この短期プライムレートは、日銀の政策金利(短期金利)の動きに連動します。日銀は2026年6月15〜16日の金融政策決定会合で政策金利を0.75%から1.00%へ引き上げました。7月30〜31日の会合では据え置かれましたが、市場で観測されていた9月18日の会合での追加利上げは実際に実施され、政策金利は1.00%から1.25%へ引き上げられました。これは1995年以来約31年ぶりの水準で、6月の利上げからわずか3ヵ月での追加利上げとなり、利上げペースが加速していることを示しています(9人の政策委員のうち2人が反対票を投じました)。日銀は今後も利上げを継続する姿勢を示しており、次回の金融政策決定会合は2026年10月29〜30日に予定されています(出典:熊本日日新聞「日銀利上げ、1・25%に ペース最短3カ月に加速」2026年9月18日、日本銀行「金融政策決定会合の開催日程」)。
民間の金利情報サービスの集計によれば、2026年9月時点の住宅ローン変動金利はメガバンク平均で年1.248%(8月は年1.082%)となっており、日銀の利上げが順次反映され始めている状況です(出典:モゲチェック「住宅ローン金利2026年9月の最新動向」2026年9月1日更新)。この数値は住宅ローンのものであり、不動産投資ローンとは商品も金利水準も異なりますが、短期金利の動きが金融機関の変動金利にどう波及していくかの参考情報として見ることができます。
一方、フラット35のような全期間固定型ローンや、金融機関の固定金利プランは、新発10年国債の利回り、つまり今回上昇した長期金利に連動して決まります。同じ集計では、2026年9月の10年固定金利(メガバンク平均)は年3.843%(8月は年3.780%)、フラット35は年3.460%(8月は年3.290%)となり、集計開始以降の最高水準を更新したとされています。
収益物件の価格形成に使われる収益還元法の還元利回り(キャップレート)も、長期金利との利回りスプレッドで語られることが多い指標です。長期金利が上昇すると、投資家が求める利回りとのスプレッドを確保するために、キャップレートにも上昇圧力がかかりやすくなります。実際、今回の局面では「収益不動産やJ-REITでキャップレートと長期金利の利回りスプレッドが一段と縮小しており、価格形成の前提そのものが変わりつつある」と指摘されています(出典:前掲LIFULL HOME'S PRESS記事)。還元利回りの決め方そのものについては「収益還元法の還元利回り(キャップレート)はどう決める?調べ方と価格への影響を試算」で解説しています。
以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。実在する物件・金融機関の条件ではありません。DSCR(返済余力を示す指標)の基本的な考え方は「不動産投資のDSCRとは?1.2を下回ると融資が厳しくなる理由と計算例」で解説しています。
価格5,200万円の木造アパート(8戸、表面利回り8.0%)を、自己資金520万円(1割)、借入4,680万円、返済期間30年の変動金利型ローンで購入したとします。空室率5%を見込んだ実効収入は年395.2万円、管理費・修繕費・固定資産税等の運営費を年100万円とすると、NOIは年295.2万円です。
金利水準 | 年間返済額 | DSCR | 年間CF(税引前) |
|---|---|---|---|
1.3%(現状想定) | 約188.5万円 | 約1.57倍 | 約106.7万円 |
1.8%(+0.5pt) | 約202.0万円 | 約1.46倍 | 約93.2万円 |
2.3%(+1.0pt) | 約216.1万円 | 約1.37倍 | 約79.1万円 |
短期金利が0.25%刻みで数回引き上げられ、変動金利が合計1%上昇した場合、この試算例ではDSCRは1.57倍から1.37倍まで下がり、年間キャッシュフローは約27.6万円減少する計算になります。DSCRが1.2〜1.3倍を大きく下回る水準ではありませんが、空室や修繕が同時に発生した場合の余力は着実に小さくなります。ご自身の借入条件でこの影響を試算したい場合は、DSCRを無料で計算するツールで金利を変えながら確認できます。金利上昇と空室率の悪化が同時に起きた場合の影響をさらに詳しく知りたい場合は「金利上昇×空室率、同時に悪化したらキャッシュフローはどこまで減る?8,000万円物件で20パターン試算」で確認できます。
以下も同様に、理解しやすくするために単純化した架空例です。先ほどのNOI年295.2万円の物件を、還元利回り6.0%で収益価格を計算すると4,920万円になります。長期金利の上昇を受けて還元利回りが6.3%まで切り上がった場合、同じNOIでも収益価格は4,686万円まで約4.8%下がる計算です。
これは、家賃収入そのものが変わらなくても、市場が求める利回り水準が上がるだけで、収益還元法による評価額が下がり得ることを示しています。売却(出口)を検討する際は、家賃や稼働率だけでなく、その時点の市場利回り水準も価格に影響することを踏まえておく必要があります。出口利回りの変化がIRRに与える影響を保有期間別に試算した内容は「出口利回りが1%上がるとIRRはどこまで落ちるか|保有5年・10年・15年・20年で検証」、金利上昇が売却価格側にどこまで波及するかを試算した内容は「金利1%上昇でIRRは6.15pt低下、うち74%は返済額ではなく売却価格が原因だった」で確認できます。
今回のような金利上昇局面では、断定的な結論を急ぐより、自分の条件に当てはめて確認しておくことが実務的です。
固定金利と変動金利のどちらを選ぶべきかという判断は、金利上昇シナリオによって結論が変わるため、一律には決まりません。借入額や保有期間ごとの損益分岐を試算した内容は「固定金利は変動より何%まで高くていいのか|借入7,000万円・保有10〜30年で金利上昇5シナリオから逆算」で確認できます。
長期金利が30年ぶりに3%台に乗り、その後も水準を切り上げているというニュースは、収益物件にとって「固定金利型ローンの提示金利」と「収益還元法によるキャップレート」の両方に波及し得る動きです。一方、変動金利型ローンに直接効くのは短期金利(日銀の政策金利)であり、今回の長期金利上昇と機械的に同一視すべきではありません。日銀の政策金利は2026年9月18日時点で1.25%まで引き上げられましたが、長期金利を含めてどこまで上昇が続くかは、今後の日銀の判断や物価・為替動向にも左右され、確実な予測はできません。10月29〜30日の次回会合を含め、自分の借入条件・保有物件・検討中の物件について、金利が変動した場合の影響をあらかじめ数値で確認しておくことが、局面が変わっても慌てずに判断するための備えになります。
ご自身の借入条件でDSCRやキャッシュフローの変化を試算したい場合はDSCRシミュレーターや不動産投資ローンシミュレーターを、物件の収益性・価格査定・リスク・出口戦略まで含めて総合的に判断したい場合はRE-AIの無料診断もあわせてご検討ください。
この記事を書いた人

鈴木基公
RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者
1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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