
「自己資金があまり用意できないが、一棟アパートを始められないか」「2棟目は自己資金を温存してレバレッジを効かせたい」——フルローンやオーバーローンを検討する理由は人によって違います。ここでは、頭金0%と20%でDSCR(返済余力)とキャッシュフローがどこまで変わるかを、2つの物件規模で試算しながら整理します。
フルローンとオーバーローンは、どちらも自己資金の負担を抑える借り方ですが、対象とする金額が異なります。
どちらも自己資金が少なくても投資を始められる可能性がある一方、借入額が増えるほど毎月の返済額は大きくなり、金利上昇や空室が重なったときの余力は小さくなります。
金融庁は2018年度、アパートやマンションなど投資用不動産向け融資について、金融機関の審査・管理体制の実態調査を実施しました。調査では、給与所得者などが土地・建物を一体で取得するレバレッジの高い投資に対する融資は、顧客・金融機関の双方にとって相対的にリスクが高い点が指摘されています。この調査以降、特に一棟物件では、物件価格を上回るオーバーローンの審査は以前より厳しくなっている傾向があるとされます。金融機関によって基準は異なるため、検討する場合は複数の金融機関に相談し、どこまでの借入が可能かを個別に確認する必要があります。

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不動産投資ローンは住宅ローンと審査の視点が異なります。属性・物件収益性・自己資金という3つの審査基準、アパートローンとプロパーローンの違い、フルローンのリスクを整理し、単体の条件だけで判断しない考え方を解説します。
以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。実在の物件や取引を示すものではありません。自己資金をあまり用意できないが、初めて一棟アパートを検討している会社員投資家を想定し、地方の木造アパート(築8年・8戸)を条件とします。
この条件で、フルローン(借入3,000万円・自己資金は諸費用255万円のみ)と、頭金20%(借入2,400万円・自己資金855万円)を比較すると、次のようになります。
条件 | 借入額 | 自己資金 | 年間返済額 | DSCR | 年間CF |
|---|---|---|---|---|---|
フルローン | 3,000万円 | 255万円 | 約200万円 | 1.08倍 | 約16万円 |
頭金20% | 2,400万円 | 855万円 | 約160万円 | 1.35倍 | 約56万円 |
自己資金を600万円減らせる一方、DSCRは1.35倍から1.08倍まで下がります。金融機関の審査で目安とされることが多い1.2〜1.3倍を下回るため、金利がわずかに上昇するだけで返済余力を失いやすい水準です。

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DSCR(返済余力)は融資審査で重視される指標ですが、単年の数値だけでは金利上昇や空室が重なったときの危うさ、戸数によるリスクのばらつきは見えません。計算方法と、金利・空室を同時に確認する視点、戸数によるDSCR1.2割れ確率の違いを、架空の試算例とともに解説します。
ご自身の借入条件で返済額やDSCRを確認したい場合は、不動産投資ローンシミュレーション(無料)で試算できます。
次に、すでに1棟を保有し、法人で2棟目を検討している投資家を想定します。都市近郊の軽量鉄骨マンション(築10年・16戸)を条件とし、規模が大きくなることで諸費用率がやや下がる点も反映します。
オーバーローン(借入1億2,840万円・自己資金はほぼゼロ)と、頭金20%(借入9,600万円・自己資金3,240万円)を比較します。
条件 | 借入額 | 自己資金 | 年間返済額 | DSCR | 年間CF |
|---|---|---|---|---|---|
オーバーローン | 1億2,840万円 | ほぼ0円 | 約593万円 | 1.18倍 | 約109万円 |
頭金20% | 9,600万円 | 3,240万円 | 約443万円 | 1.58倍 | 約259万円 |
オーバーローンでも表面上のキャッシュフローはプラスですが、DSCRの余力は頭金20%の場合よりはるかに小さくなります。金利上昇や空室率の悪化が重なった場合、CFがマイナスに転じるまでの余地が狭いことを意味します。また、借入額が大きいほど残債の減り方も緩やかになるため、売却時に残債を下回る価格でしか売れない「残債と売却手残りが逆転する期間」が長引きやすくなります。

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自己資金を抑えられることは大きな魅力ですが、判断の前に次の点を確認しておく価値があります。
フルローン・オーバーローンが組めるかどうかは、物件そのものよりも金融機関との相性に左右される部分があります。金融機関のタイプによって自己資金への考え方や金利水準が異なる点は、別記事で詳しく比較しています。

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頭金を10%・20%・30%と増やした場合にDSCRや月々の返済額がどう変わるかは、別記事で試算しています。フルローンやオーバーローンを検討する前に、頭金を積み増した場合との差を具体的な数値で比較しておくと判断しやすくなります。

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本記事の試算はあくまで架空条件です。ご自身が検討している物件価格・金利・運営費を使ってDSCRを確認したい場合は、DSCR計算ツール(無料)で試算できます。金利上昇や空室率の悪化を同時に加味した長期的な判断が必要な場合は、RE-AIの無料診断で収益性・融資・出口までまとめて確認する方法もあります。
フルローンは物件価格の100%を、オーバーローンはさらに諸費用まで融資でまかなう借り方です。自己資金の負担を抑えられる一方、借入額が増えるほどDSCRの余力は小さくなり、金利上昇や空室に対する耐性は下がります。今回の試算では、頭金0%と20%でDSCRに0.27〜0.40倍の差が生まれました。自己資金をどこまで抑えるかは、金利上昇や空室が重なった場合にどこまで耐えられるかとあわせて判断する必要があります。フルローン・オーバーローンの可否や条件は金融機関や個人の属性によって異なるため、最終的な判断は金融機関や税理士など専門家にも確認することをおすすめします。
#不動産投資 #フルローン #オーバーローン #DSCR #融資審査 #自己資金 #キャッシュフロー
この記事を書いた人

鈴木基公
RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者
1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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