
自宅の住宅ローンを返済しながら、収益物件の購入を検討し始めると「住宅ローンがあると不動産投資ローンは組みにくいのでは」という不安に行き当たります。この記事では、住宅ローンと不動産投資ローンで審査の視点がどう違うのか、住宅ローンの残債が投資ローンの審査にどう影響するのか、順番を間違えるとどうなるのかを、架空の試算例とともに整理します。
どちらも「不動産を買うためのローン」に見えますが、資金使途と返済原資がまったく異なります。住宅ローンは申込者本人が住むための住宅を取得する資金であり、返済原資は本人の給与収入です。一方、不動産投資ローンは家賃収入を得る目的で収益物件を取得する資金であり、返済原資には物件が生む家賃収入が組み込まれます。
この違いが、審査で見られる項目にも表れます。住宅ローンは主に申込者本人の年収・勤続年数・信用情報といった「属性」で判断されるのに対し、不動産投資ローンは属性に加えて「物件そのものが収益を生み続けられるか」という収益力も審査対象になります。
項目 | 住宅ローン | 不動産投資ローン |
|---|---|---|
資金使途 | 本人が居住する住宅の取得 | 賃貸目的の収益物件の取得 |
返済原資 | 本人の給与収入 | 物件の家賃収入(+本人属性) |
主な審査基準 | 年収・勤続年数・信用情報 | 属性に加え、物件の収益力(利回り・DSCR等) |
金利水準の傾向 | 低め | 住宅ローンより高めに設定されることが一般的 |
目的外利用 | 賃貸目的での利用は契約違反となる場合がある | ― |
この基本構造を踏まえたうえで、不動産投資ローンの種類や金融機関ごとの違いをより詳しく知りたい場合は「不動産投資ローン完全ガイド|審査基準・金利・融資期間・自己資金とDSCRの見方」で整理しています。
住宅ローンでは「年収の6〜7倍程度」が実務上の目安として語られることがあります。返済原資が給与収入という単一の柱であるため、年収を基準にした倍率で借入可能額のおおまかな見当をつけやすいという事情があります。
不動産投資ローンでは、年収倍率だけでなく「NOI(年間純収益)が年間の返済額を何倍カバーできるか」を示すDSCR(Debt Service Coverage Ratio、借入金償還余裕率)が重視されます。同じ年収・同じ借入額でも、物件の利回りや運営費率が異なればDSCRはまったく違う数字になります。この年収倍率とDSCRのズレを全国の実データで試算した内容は「DSCR1.3に必要な表面利回りは7.5%か9.4%か|全国4万件のNOI率実データで地域別に逆算」、年収別の2つの架空例で比較した内容は「不動産投資ローンは年収の何倍まで組める?DSCRで見る「借りられる額」と「返せる額」のズレ」で確認できます。
以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。実在する物件・金融機関の条件ではありません。
年収700万円のサラリーマンが、価格2,400万円の区分マンション(想定家賃月11.5万円、表面利回り5.75%)を、自己資金240万円(1割)、借入2,160万円、金利2.4%、返済期間30年で検討したとします。空室・滞納率5%を見込んだ実効収入は年130.9万円、管理費・修繕積立金・固定資産税等の運営費を年27万円とすると、NOIは年104.1万円です。このときの年間返済額は約101.1万円となり、DSCRは104.1万円÷101.1万円で約1.03倍という計算になります。
DSCR1.03倍は、金融機関が目安とすることがある1.2〜1.3倍という水準からするとギリギリの計算結果です。表面利回りが5.75%あっても、空室や運営費、融資条件次第でDSCRはこの程度まで下がり得るという点が、年収倍率だけでは見えない部分です。DSCRの読み方をより詳しく知りたい場合は「不動産投資のDSCRとは?1.2を下回ると融資が厳しくなる理由と計算例」にまとめています。自分の物件条件でDSCRを計算したい場合は、DSCRを無料で計算するツールで数値を変えながら試算できます。
制度上、住宅ローンと不動産投資ローンは種類の異なるローンであり、住宅ローンを返済中であること自体が投資ローンを組めない理由にはなりません。ただし、既存の住宅ローンの返済は「他の借入」として、投資ローン審査における与信全体の余力や返済負担率の見方に影響します。
以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。自宅を4,200万円・金利0.7%(変動)・返済期間35年で購入し、5年が経過しているとします。この場合の月々の返済額は約11.3万円、5年経過時点の残高は概算で約3,661万円です。ここに、先ほどの区分マンション(借入2,160万円、金利2.4%、30年)の月々返済額約8.4万円が加わると、月々の住宅ローン・投資ローンの合計返済額は約19.7万円になります。年収700万円(月収換算約58.3万円)に対する比率は約33.8%です。
この負担率の水準をどう評価するかは金融機関によって異なり、一律の基準があるわけではありません。物件側の収益力(DSCR)と、申込者側の総返済負担率は別の視点であり、投資ローン単体でDSCRが目安を満たしていても、住宅ローンを含めた全体の負債状況が審査に影響することがある、という点は押さえておく必要があります。自己資金の割合を変えるとDSCRや返済負担がどう動くかは「不動産投資の自己資金はいくら必要?頭金10%・20%・30%でDSCRと月々の返済を比較」で試算しています。ご自身の借入額・金利・融資期間を入力して確認したい場合は、不動産投資ローンの返済額とDSCRを試算するツールで、住宅ローンの返済額と合わせて手元で比較できます。
一般的には、住宅ローンより先に不動産投資ローンを検討したほうが調整しやすいと言われることがあります。理由は、住宅ローンを先に組むと、そこで確保した与信や返済余力の一部がすでに使われた状態になり、後から投資ローンを申し込む際に負担として見られやすくなるためです。反対に、投資ローンを先に組んでいる場合でも、住宅ローンの審査では投資物件の家賃収入がプラスに評価されるとは限らず、既存借入として負担側に見られる可能性がある点は変わりません。
ただし、どちらを先に組むべきかに絶対的な正解はありません。年齢、将来の住み替え予定、投資物件の規模、金融機関ごとの方針によって結論は変わります。実務的には、まず投資用物件のシミュレーションで実現可能性のおおよその見当をつけ、そのうえで自宅取得の時期を検討する、という順序で情報を整理しておくと、金融機関への相談もスムーズになりやすいという考え方があります。金融機関のタイプによって審査の見られ方がどう変わるかは「自己資金1,000万円、価格8,000万円の一棟アパート。金融機関3タイプで審査の見られ方はここまで違いました」で比較しています。
住宅ローンは、契約上「本人が居住するための住宅取得資金」に用途が限定されているのが一般的です。たとえば住宅金融支援機構の【フラット35】では、第三者に賃貸する目的の物件など投資用物件の取得資金には利用できないと明示されており、投資用住宅としての利用など目的外の利用が判明した場合は借入金全額の一括返済を求められるとされています(出典:住宅金融支援機構【フラット35】「不適正利用に巻き込まれないために」)。
これはフラット35に限った話ではなく、多くの金融機関の住宅ローンで資金使途を限定する条項が置かれているのが一般的です。「自宅として購入したが、その後賃貸に出して投資用に回す」というケースも、金融機関への届出や条件次第では契約違反にあたる可能性があるため、住宅ローンと投資ローンを混同せず、それぞれの目的に沿って利用することが前提になります。
住宅ローンと不動産投資ローンは、資金使途・返済原資・審査の視点がそれぞれ異なります。住宅ローンは年収などの属性を中心に、投資ローンは属性に加えて物件の収益力(DSCR)を中心に見られます。住宅ローンを返済中でも投資ローンを組むこと自体は可能ですが、既存の返済額は与信全体に影響するため、住宅ローンの残高・投資物件のDSCR・総返済負担率をあわせて確認しておく必要があります。どちらを先に組むかに一律の正解はなく、自身の年齢や将来設計、金融機関の方針によって適切な順序は変わります。
ご自身の住宅ローンの返済額と、検討中の投資物件の借入条件を並べて確認したい場合は、不動産投資ローンシミュレーターやDSCRシミュレーターで数値を試算したうえで、物件の収益性・価格査定・リスク・出口戦略まで含めて総合的に判断したい場合はRE-AIの無料診断もあわせてご検討ください。
この記事を書いた人

鈴木基公
RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者
1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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