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リスク・契約

レントロールの見方|賃料のばらつきや入居日の偏りが意味するリスクを読み解く

レントロールの見方|賃料のばらつきや入居日の偏りが意味するリスクを読み解く

一棟アパートやマンションの購入を検討すると、仲介会社から「レントロール」という資料を渡されます。号室ごとの賃料が並んだ表を見ても、どこを確認すればリスクに気づけるのか分からないまま契約に進んでしまう投資家は少なくありません。この記事では、レントロールの基本項目とチェックすべき視点を、架空の数値例を使って具体的に解説します。

レントロールとは何か

レントロールとは、収益物件に入居している各部屋の賃料・契約状況・入居者属性などを一覧にした資料で、「家賃明細表」とも呼ばれます。法令で定められた統一様式はなく、項目や書式は仲介会社や物件によって異なります※1。

主な用途は次の2つです。1つは、広告に掲載されている「満室想定利回り」ではなく、現況の空室状況を反映した実際の収益力を確認すること。もう1つは、金融機関へ融資を申し込む際の提出資料としての役割です。DSCR(借入金償還余裕率)など融資審査の基準になる数値は、レントロールに記載された賃料を基に計算されます。DSCRの計算方法自体は「不動産投資のDSCRとは?1.2を下回ると融資が厳しくなる理由と計算例」で解説しています。

レントロールに記載される主な項目

物件によって差はありますが、一般的には次のような項目が並びます。

項目

確認する意味

号室・面積・間取り

賃料の水準が面積・間取りに見合っているか

契約状況(入居中/空室)

現況の稼働率を把握する

賃料・共益費

実際の収入額を確認する

契約開始日(更新日)

入居の時期が偏っていないか

敷金(保証金)・保証会社の有無

契約条件が他の部屋と揃っているか

賃借人属性(個人・法人)

特定の関係者への集中がないか

購入前に確認したい6つのチェックポイント

1.同じ間取りなのに賃料にばらつきがないか

同一の面積・間取りで賃料に大きな差がある場合、退去後の再契約で賃料が下がる可能性があります。表示上の「満室想定家賃」は、賃料の高い部屋がそのまま埋まり続けることを前提にしている点に注意が必要です。

2.入居日が特定の時期に偏っていないか

複数の部屋の契約開始日が同じ時期に集中している場合、大規模な入居者募集キャンペーンや、退去ラッシュの直後である可能性があります。単独の直近契約が1件だけ極端に新しい場合も、後述するように注意点になります。入居日の分布は、契約条件欄の礼金・更新料よりも収支への影響が大きいことが多く、平均入居期間が2年の物件と10年の物件では実効表面利回りが1pt以上変わることを礼金・更新料を入れても入替コストは埋まらないで試算しています。

3.特定の法人・関係者の契約が集中していないか

同一法人が複数戸を契約している場合、その法人の都合で一斉解約されるリスクがあります。売主の関係会社が名目上契約しているケースもあるため、賃借人属性は必ず確認します。

4.敷金・保証会社の有無が他の部屋と揃っているか

他の部屋は敷金1ヶ月・保証会社加入が条件になっているのに、特定の部屋だけ敷金なし・保証会社なしという場合、通常の募集条件とは異なる経緯で契約された可能性があります。

5.相場と比べて賃料が高すぎないか

周辺相場より明らかに高い賃料が設定されている部屋は、売却前に一時的な条件で契約された可能性があります。賃貸需要とエリア相場の調べ方は「賃貸需要の調べ方完全ガイド」で扱っています。賃料の差が収支にどこまで効くかを数値で確かめたい場合は、賃料ギャップを0〜20%で動かしてNOI・DSCR・10年IRR・必要な値下げ率まで試算した現況賃料が相場より10%高い満室物件は、何%値下げすれば引き合うのかの記事で確認できます。

6.レントロールと重要事項説明書・契約書の内容が一致しているか

レントロールに記載された賃料・契約条件は、あくまで売主・仲介会社が作成した資料です。契約直前には、原本となる賃貸借契約書や、宅地建物取引業法第35条に基づき交付される重要事項説明書(35条書面)と突き合わせる必要があります※2。重要事項説明書の確認ポイントは「重要事項説明書で見落とすと危ない7項目」で解説しています。

7.レントロールの作成日(現況確認日)が古くないか

レントロールは物件検討中の一時点で作成される資料です。作成日から数ヶ月経っている場合、その間に退去や新規契約が発生していることがあります。仲介会社に「直近の現況」に更新されたレントロールを再度依頼することも検討してください。

レントロールはいつ、誰から受け取るのか

レントロールは、物件の買付申込を検討する段階で仲介会社から提示されるのが一般的です。RE-AIのステップで言えば、家賃や空室率など概算の情報で判断する簡易診断の段階から一歩進み、契約直前に確認すべき項目を精査する段階で、レントロールや境界確定、インスペクションの結果とあわせて最終確認する位置づけになります。

架空例で見る「良く見えるレントロール」の影響

以下は仕組みを理解しやすくするために単純化した架空例です。地方都市の木造アパート(築12年・6戸、価格4,600万円)を、自己資金920万円(2割)、借入3,680万円、金利2.3%、融資期間25年で購入するケースを想定します。

号室

賃料

契約開始

敷金

保証会社

101

58,000円

2019年5月

1ヶ月

加入

102

59,000円

2020年9月

1ヶ月

加入

201

61,000円

2017年3月

1ヶ月

加入

202

60,000円

2018年11月

1ヶ月

加入

301

82,000円

2026年6月

なし

なし

302

空室(相場想定59,000円)

―

―

―

301号室だけ、周辺相場(58,000〜61,000円程度)より3〜4割高く、契約からまだ1ヶ月、敷金・保証会社もありません。この部屋を「そのまま埋まり続ける前提」で満室想定家賃を計算すると年454.8万円ですが、退去後に相場並みの60,000円で再契約すると仮定すると年428.4万円まで下がります。

運営費率を30%と仮定してNOIを比較すると、表示上のNOIは318.4万円、301号室を相場並みに引き直した後のNOIは300.0万円で、差は年18.5万円(約5.8%)です。同じ借入条件(3,680万円・金利2.3%・25年)で計算したDSCRは、表示上の1.64倍から1.55倍まで低下します。1.2を大きく上回っているため即座に危険というわけではありませんが、「表示されている数字」と「再契約後に見込める数字」の間には差があることが分かります。

レントロールを確認したら、自分の条件で試算する

レントロールの数字をそのまま信じるのではなく、301号室のような条件を相場並みに引き直した上で、自分の借入条件でキャッシュフローを試算し直すことが重要です。物件価格・実際の賃料・空室率・運営費・融資条件を入力すると、年間キャッシュフローとNOI、DSCRをまとめて確認できるキャッシュフロー計算機を無料で試すことができます。満室想定ではなく、レントロールを引き直した後の賃料を入力して試算すると、より実態に近い数字を確認できます。

レントロールだけで判断してはいけない理由

レントロールはあくまで売主・仲介会社側が作成した資料であり、現地確認や原本書類との突き合わせをしなければ、記載内容の正確性は担保されません。空室の履歴や退去時の原状回復費用まではレントロールに表れないこともあります。退去に伴う入替コストについては「「空室率5%」の収支計算は年CFを46%過大に見せる」で試算しています。また、一括借上げ(サブリース)契約が付いている物件では、レントロール上の賃料がサブリース会社からオーナーへの支払額であり、入居者から徴収する賃料と異なる場合があります。この点は「サブリース契約のリスクとは?」で解説しています。契約直前に確認すべき項目全体は「収益物件購入前のリスクチェック完全ガイド」で整理しているので、あわせて確認してください。

まとめ

レントロールは、賃料の一覧そのものよりも「ばらつき」「偏り」「不自然さ」を読み取る資料です。賃料の差、入居日の偏り、敷金・保証会社の有無といった項目を確認し、相場より高い部屋は再契約後の水準まで引き直してからキャッシュフローとDSCRを試算し直すことで、表示上の数字と実態の差を購入前に把握できます。最終的な融資条件や契約内容については、金融機関や不動産会社、必要に応じて専門家に確認しながら判断してください。

参考資料・出典

情報確認日:2026年8月21日

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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