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共有名義になった収益物件は売れるのか|全員同意の壁と、持分だけ売ると価格は2〜3割下がる理由

共有名義になった収益物件は売れるのか|全員同意の壁と、持分だけ売ると価格は2〜3割下がる理由

相続で複数の相続人が収益物件を均等な共有名義のまま持ち続けているケースは珍しくありません。「売りたいのに兄弟の一人が反対して話が進まない」「自分の持分だけ売ったらいくらになるのか分からない」——この記事では、2023年の民法改正と2024年の相続登記義務化を踏まえて、共有名義の収益物件が売却・運営でどこまで動かせるのか、動かせないのかを具体例で整理します。

収益物件が共有名義になるのはどんなときか

収益物件が共有名義になる最も多いきっかけは相続です。親が所有していたアパートを、遺産分割協議で「とりあえず均等に」と決め、兄弟姉妹2〜3人がそれぞれ1/2や1/3の共有持分を持つ形で登記する、という進め方は実務上よくあります。夫婦や親子で共同出資して購入する場合にも共有名義は生じますが、この記事では特に相続によって生じる共有に絞って解説します。

注意したいのは、共有名義のまま放置すると共有者が減ることはなく、むしろ増えていく仕組みになっていることです。共有者の一人が亡くなると、その持分がさらにその人の相続人(配偶者や子)に分かれて相続されるため、世代が進むほど共有者の数は増え、合意形成はより難しくなります。これを法務省などは「数次相続」と呼び、所有者不明土地問題の主要な原因の一つとされています。

共有名義の収益物件、売却に「全員の同意」が必要なのはなぜか

民法は共有物に対する行為を、影響の大きさに応じて3段階に分けています。日常的な修繕などの「保存行為」は各共有者が単独でできますが、賃貸借契約の締結・更新などの「管理行為」は共有者の持分の価格に従った過半数で決まり、物件の売却のような「変更・処分行為」は共有者全員の同意が必要です(民法251条・252条)。収益物件全体を売却する行為は「処分」にあたるため、持分の大きさに関わらず、共有者が1人でも反対すれば売却は成立しません。

2023年の民法改正で「管理」の範囲が広がった

令和5年(2023年)4月1日に施行された民法改正では、共有物の管理に関するルールが見直されました。従来は賃貸借契約の設定なども慎重に扱われていましたが、改正後は一定期間内の短期の賃借権などの設定は「管理行為」として過半数で決定できることが明確になっています。期間の上限は、樹木の植栽・伐採を目的とする山林の賃借権等で10年、その他の土地で5年、建物で3年、動産で6か月です。アパートの賃貸借契約(通常は建物の賃貸借)はこの範囲に収まることが多く、入居者の入れ替わりに伴う新規契約や更新は、共有者全員の同意がなくても持分の過半数で進められる場合があります。

つまり2023年の改正後は、「日々の賃貸運営」と「物件そのものの売却」は法的に別物として扱われている、と理解しておくと判断しやすくなります。日常の運営は過半数で動かせる余地が広がった一方で、売却という最終的な処分行為は、今も全員の同意という高い壁が残っています。

それでも売却には全員の同意が必要という結論は変わらない

以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。相続によって木造アパート1棟を兄弟3人(A・B・C)が各1/3の持分で共有しているとします。Aが「売却して現金化したい」と考えても、BとCのどちらか一方が反対すれば、物件全体の売却という「処分」は成立しません。持分が1/3ずつで過半数の概念が働かないことに加え、そもそも売却そのものが過半数では決められない行為だからです。

同意が得られないとき、収益物件はどうなるか

売却の同意が得られないまま共有状態が続くと、投資の観点ではいくつかのリスクが積み重なります。

  • 大規模修繕の意思決定が止まる可能性:外壁や屋根の修繕など、物件の形状や用途を大きく変える「変更」にあたる工事は、過半数では決められず全員の同意が必要になる場合があります。反対する共有者がいれば、必要な修繕が先送りされ、空室の長期化や資産価値の低下につながりかねません。
  • 固定資産税は連帯債務:固定資産税は共有者全員が連帯して納税義務を負います。実際には代表者が一括で納めて他の共有者に分担を求める形が一般的ですが、分担に応じない共有者がいるとトラブルの火種になります。
  • 賃料は収益物件を使っている(受け取っている)共有者に偏りやすい:賃料を特定の共有者だけが管理・受領している場合、他の共有者は自分の持分に応じた賃料相当額を請求できますが、金額の算定や支払いを巡って対立が生じやすい領域です。
  • 数次相続でさらに共有者が増える:前述の通り、共有者の一人が亡くなるとその持分がまた分かれて相続されます。放置すればするほど、将来の合意形成はさらに難しくなります。

2024年4月から始まった相続登記の義務化

令和6年(2024年)4月1日から、相続による不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請することが法律上の義務になりました。正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象となり得ます(2024年4月1日より前に発生していた相続にも適用され、その場合は施行日から3年の猶予期間があります)。相続登記を済ませずに放置した期間が長いほど、前述の数次相続が進んで共有者が増え、売却時の同意取得はさらに難しくなります。共有名義のアパートを持つ相続人にとって、この登記義務は「とりあえず後回し」が許されなくなったことを意味します。

共有名義を解消する3つの選択肢と、価格の違い

共有者全員の同意が得られない場合でも、収益物件を共有名義のまま一生動かせないわけではありません。主な選択肢は次の3つです。

①全員の同意で物件全体を売却する

最も手残りが大きくなりやすい方法です。収益物件としての市場価値をそのまま反映した価格で売却でき、売却代金は各共有者の持分割合に応じて分配されます。実際に売却する際は、専任媒介か一般媒介かという媒介契約の選び方によって買い手への届き方が変わり、仲介手数料や譲渡所得税など売却時の費用については収益物件を売却するときの流れと費用はいくらかで詳しく整理しています。収益物件の出口戦略全体の考え方は収益物件の出口戦略完全ガイドも参考にしてください。

②他の共有者が自分の持分を買い取る

共有者の一人が、他の共有者の持分を適正な価格で買い取り、単独所有に切り替える方法です。適正価格の目安は、収益還元法などで算出した物件全体の時価に持分割合を乗じた金額が基準になります。この基準となる物件価格の算出の考え方は収益物件の相続税評価はどう決まる?で整理している相続税評価とは異なる(相続税評価は税務上の評価、ここでの基準は市場価格ベースの時価)点に注意してください。また、相続開始から5年以内の取得では評価の仕組みが変わる場合があるため相続前5年以内に買った収益物件の評価も合わせて確認しておくと判断しやすくなります。

③自分の持分だけを売る場合、価格はどこまで下がるか

以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。前述のアパート(時価2,700万円、兄弟3人が各1/3を共有)で、Aだけがどうしても現金化したいが、BとCは売却に同意しないケースを考えます。

方法

Aが得られる金額の考え方

概算額

①全員同意で物件全体を売却

時価2,700万円の1/3

900万円

②BとCがAの持分を適正価格で買い取る

①とほぼ同額が目安

900万円前後

③共有持分だけを専門の買取業者に売却

900万円から一定の値引き(下記参照)

630万〜720万円程度

法律専門家の解説によれば、共有持分だけの売却では「共有減価」と呼ばれる価格の下落が生じ、一般的には時価の2〜3割程度の値引きになることが多いとされています(出典は本文末尾に記載)。これは、持分だけを買い取った業者が、売却や自由な使用のために残りの共有者との交渉や訴訟のコスト・期間を負うことになるためです。上記の例では、900万円の1/3の権利が630万〜720万円程度になり、同じ権利でも全員同意で売るか単独で持分だけ売るかで180万〜270万円の差が生まれる可能性がある、という点を押さえておく必要があります。値引き幅は物件の種類や共有者の状況によって変わるため、実際の取引ではこの範囲に収まらないこともあります。

④裁判所を使う方法(分割請求・不明共有者の持分取得)

共有者間の協議がまとまらない場合、裁判所に共有物分割請求訴訟を申し立てる方法があります。裁判所は、物件をそのまま分割する、共有者の一人が他の持分を取得して金銭で賠償する、あるいは物件全体を競売にかけて代金を分けるなどの方法を選択します。手続きには数十万円以上の費用と相応の期間がかかるため、最終手段と位置付けておくのが実務的です。

また、共有者の一人の所在や氏名が分からない場合には、2023年の民法改正で新設された「所在等不明共有者の持分取得制度」(民法262条の2)を使い、裁判所の決定を得て不明共有者の持分を取得できる場合があります。ただし、相続によって生じた共有については、相続開始から10年を経過し、かつ遺産分割が未了のままになっていないことなど一定の条件があり、相続直後にすぐ使える制度ではない点には注意が必要です。

共有名義のまま放置しないために今からできること

  • 相続が発生したら、遺産分割協議でできるだけ早く単独所有または売却の方向性を決める。
  • 2024年4月の相続登記義務化を踏まえ、3年の期限を待たずに登記を済ませる。
  • 共有を選ぶ場合も、将来の売却条件や賃料の分配方法をあらかじめ共有者間の合意書にしておく。
  • 生前に収益物件を所有している場合は、遺言や生前の資産管理法人化によって、共有化そのものを避ける選択肢も検討する。

RE-AIのようなAI診断サービスは、物件そのものの収益性・価格・融資・リスク・出口を数値で評価する設計になっていますが、共有名義という「権利関係」の特殊性までは診断の対象にしていません。権利関係の整理は司法書士・弁護士に相談しつつ、持分の買取価格や売却価格が物件の実力に見合っているかどうかは、RE-AIの無料診断で収益性・価格査定・融資・リスク・出口をまとめて確認する、という役割分担で進めるのが現実的です。

まとめ

共有名義の収益物件は、2023年の民法改正によって賃貸借契約の更新など日常の運営面では過半数で決められる範囲が広がりましたが、物件全体の売却には今も共有者全員の同意が必要です。同意が得られない場合は、持分の買取や共有持分専門業者への売却、裁判所を使った分割請求といった選択肢がありますが、特に持分だけの売却は時価より2〜3割程度低くなりやすいとされています。2024年4月に始まった相続登記の義務化も踏まえ、共有名義を長期化させるほど選択肢が狭まり、価格面でも不利になりやすいことを念頭に、早い段階で方向性を決めることが重要です。

本記事は一般的な情報提供を目的としています。相続・共有不動産に関する法律上の判断は、個別の事情によって結論が異なるため、司法書士・弁護士など専門家にご確認ください。

参考資料・出典(情報確認日:2026年10月19日)

  • 法務省「相続登記の申請義務化に関するお知らせ」(令和6年4月1日施行、3年以内の申請義務、10万円以下の過料)
  • 法務省「共有制度の見直し等に関する民法改正」(令和5年4月1日施行、民法251条・252条・262条の2等)
  • 共有持分の売却時の価格(共有減価)の一般的な目安については、法律専門家による解説記事を参考にしています。具体的な値引き幅は物件や状況により異なるため、実際の取引では専門家・専門業者への確認が必要です。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

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