
価格6,200万円、表面利回り7.2%。数字だけを見れば申し分ない物件でした。それでも、契約直前で仮の投資家Bさんが立ち止まったのは、重要事項説明書の中にある、3つの見落としがちな項目でした。ここでは、契約前に確認しておきたい7つの項目を、具体的な条件とともに整理します。
物件価格6,200万円、表面利回り7.2%、想定年間家賃収入は約446万円。自己資金600万円、借入5,600万円、金利2.3%、返済期間30年という条件で試算すると、単純化した計算では年間キャッシュフローはおよそ60万円ほどでした。数字だけを見れば、悪くない物件です。ここからは、契約に進む前にBさんが確認した(そして、確認すべきだった)7つの項目を見ていきます。

なぜ必要か: 過去の漏水、火災、事故などは、告知事項として重要事項説明書に記載される必要があります。
見落とすとどうなるか: 口頭説明のみで書面に残っていない場合、後から「知らなかった」と主張しても対抗しづらくなります。Bさんの物件では、過去に3回の漏水修繕歴があったものの、書面には1回しか記載がありませんでした。
なぜ必要か: 引き渡し後に発見された欠陥について、売主がどこまで責任を負うかを定める条項です。
見落とすとどうなるか: 期間が「引き渡しから2週間」など極端に短い場合、購入後すぐに見つかった不具合でも修繕費を自己負担することになりかねません。
なぜ必要か: 契約後に想定外の事情が判明した場合、手付放棄で解除できる期限を把握しておく必要があります。
見落とすとどうなるか: 期限を過ぎると、違約金が発生したり、解除自体ができなくなったりします。
なぜ必要か: 隣地との境界が未確定だと、将来的な建て替えや売却の際にトラブルになりやすくなります。
見落とすとどうなるか: 境界紛争が発覚し、測量費用や交渉に想定外の時間と費用がかかることがあります。
なぜ必要か: 接道義務を満たしていない土地は、将来的に同規模での再建築ができない可能性があります。
見落とすとどうなるか: 出口戦略で「更地にして売る」「建て替える」という選択肢が使えなくなります。

関連記事
築15年の一棟アパート、「売る」か「持ち続ける」かを決める7つの確認項目
家賃収入は毎月きちんと入ってくる。それでも、築年数が進むにつれて「このまま持ち続けていいのか、そろそろ売るべきか」という迷いは、多くの大家さんの頭をよぎるはずです。
なぜ必要か: 入居者との契約は、原則として売主から買主に引き継がれます。敷金の精算方法や原状回復の範囲を確認する必要があります。
見落とすとどうなるか: 引き継いだ敷金の額が想定より少なく、退去時の原状回復費用を買主が多く負担することになる場合があります。
なぜ必要か: 融資が承認されなかった場合に契約を解除できる特約です。民法557条の手付解除や宅地建物取引業法39条の手付金規制とも関わる項目で、特約が「解除条件型」か「解除権留保型」かによって、融資否決時に手付金が戻るかどうかの扱いが変わります。
見落とすとどうなるか: この特約がない、または期限が短すぎると、融資が通らなかった場合でも手付金が戻らないリスクがあります。特約の型の違いや、特約が機能しなくなる具体的な条件については、

関連記事
融資特約(ローン特約)とは?不動産投資で手付金を守る条件と契約前の確認点
融資特約(ローン特約)は、融資が下りなかったときに手付金を守るための契約条項です。特約が機能しなくなる典型的なケースと、契約前にDSCRなど返済余力を確認しておく考え方を、架空の数値例とあわせて整理しました。
で整理しています。
Bさんが最終的に契約を見送ったのは、1番の告知事項の記載が実態と食い違っていたためです。修繕履歴を売主に確認したところ、追加で2回の漏水があったことが分かりました。金額にすればおそらく数十万円の修繕費の話ですが、Bさんが気にしたのは金額そのものより、「書面と実態が違う物件を、その他の項目まで信用していいのか」という点でした。
利回りや返済シミュレーションは、物件を選ぶ入り口としては重要です。ただ、それだけで購入を決めてしまうと、契約書の中にある小さな不一致を見逃しやすくなります。7項目すべてを自分一人でチェックするのは簡単ではないため、宅地建物取引士による重要事項説明の際に、疑問点はその場で質問し、必要であれば司法書士や弁護士に契約書を確認してもらうことも検討してください。
物件の収益性については、価格査定AIや収益性AIのような仕組みで数字の妥当性を別角度から確認しておくと、契約書のチェックと合わせて判断材料が増えます。RE-AIの無料診断では、積算価格・収益価格・周辺相場を比較できるため、契約前の「数字の裏取り」の一つとして使ってみてもよいかもしれません。
契約直前まで進んだ物件ほど、「ここまで来たから」という気持ちが判断を鈍らせます。数字だけでなく、書面と実態が一致しているかどうかも、契約前の最後の確認項目に加えてください。
重要事項説明書のチェックは、物件選びから融資、収支計算、購入後の運営までの一連の流れの中の一つのステップです。自己資金の整理や収支シミュレーションなど、契約前後の全体像を先に把握しておきたい方は、不動産投資初心者向けの完全ガイドもあわせてご確認ください。

関連記事
不動産投資初心者完全ガイド|物件選び・融資・収支・購入まで
不動産投資を始めたい初心者向けに、自己資金の整理から物件選び、収支シミュレーション、融資相談、契約前のリスク確認、購入後の出口戦略までの流れを6つのステップで整理し、各テーマの詳しい記事へつなぐ完全ガイドです。
また、今回の7項目は主に重要事項説明書に関するものですが、物件そのものやエリアも含めた契約前チェックの全体像は、

関連記事
収益物件購入前のリスクチェック完全ガイド|物件・契約・エリアの3層で見落としを防ぐ
収益物件は経営リスクだけでなく、物件・契約・エリアに内在するリスクの見落としで購入判断を誤ることがあります。再建築不可・重要事項説明・サブリース・賃貸需要など購入前に確認すべきポイントを3層で整理しました。
で3層に整理していますので、あわせてご確認ください。
本記事は一般的な情報提供を目的とした事例であり、特定の物件の購入や契約を推奨するものではありません。契約書や重要事項説明の内容に関する法的な判断は、司法書士や弁護士などの専門家にご相談ください。
出典:e-Gov法令検索「民法」(第557条 手付)、e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第39条 手附の額の制限等)(情報確認日:2026年9月6日)
この記事を書いた人

鈴木基公
RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者
1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

同じ土地価格でも用途地域が違うと収益性は変わるのか|建蔽率・容積率の差を新築アパートで試算した
2026/9/5

投資用物件は駅から徒歩何分まで?賃貸需要とDSCRへの影響から許容範囲を考える
2026/9/1

収益物件の契約不適合責任とは|「満室」表示や設備不良、代金減額請求はいくらまで求められるか
2026/8/30

心理的瑕疵のある収益物件は買いか|告知義務・家賃下落率・出口までの判断基準
2026/8/30

公示地価の変動率をExit Cap Rateに反映すると、10年IRRはどこまで変わるか|地方一棟アパートで試算
2026/8/27

既存不適格物件は買っても大丈夫か|自己資金が2倍に増える融資試算で検証した
2026/8/27

収益物件の火災保険料はいくらか|木造・鉄骨・RCで変わる保険料とキャッシュフローへの影響
2026/8/24

エリアの空室率の調べ方|「賃貸用空き家率」とポータル数値がズレる理由
2026/8/24