
相場より2〜3割安く、表面利回りも高い。そんな物件情報が「再建築不可」だと知り、検討を続けていいのか迷っている方に向けて、この記事ではリスクの中身と、架空の条件で出口まで試算した結果を数字で整理します。
再建築不可物件とは、現在建っている建物を取り壊すと、同じ土地に新たな建物を建てられない物件を指します。原因の多くは「接道義務」を満たしていないことです。
建築基準法第42条・第43条では、都市計画区域・準都市計画区域内で建物を建てる場合、その敷地が幅員4m以上の道路に2m以上接している必要があると定めています。これが接道義務で、緊急車両が通行できるようにすることが目的の一つです。敷地が道路に接していない、接している幅員が2m未満、あるいは接道部分が建築基準法上の「道路」に該当しない場合、この基準を満たせません。
接道義務を満たさない物件が存在する理由は、建築基準法の施行(1950年)や都市計画法の施行(1968年)より前に建てられた建物が多いためです。当時は違法ではなくても、その後の法整備によって「今の基準では再建築できない」土地になりました。総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査」では、敷地が接する道路の幅員別に住宅数が公表されており、接道幅員が狭い、または道路に接していない住宅も一定数存在することが確認できます。ただし公表値は調査年・地域によって変わるため、エリアごとの正確な件数は最新の調査データで確認する必要があります。
例外として、2018年の建築基準法改正により、それまで「43条但し書き」と呼ばれていた特例規定は「43条2項2号」に位置づけが変わりました。敷地の周囲に公園などの広い空地がある場合や、避難・通行の安全上支障がないと特定行政庁が認めた場合に、建築審査会の同意を得て許可されるケースがあります。ただしこの許可は個別の建築ごとに必要になる場合があり、将来にわたって確実に再建築できると保証するものではありません。
地震や火災で建物を失った場合でも、接道義務を満たさない限り新しい建物は建てられません。土地だけが残っても、駐車場や資材置き場としての活用も、接道条件が悪いために利便性が低いケースが多くあります。リフォームで延命することはできますが、建築確認申請が不要な範囲(小規模な木造住宅など)に限られ、大規模な建て替えに相当する工事はできません。
金融機関は融資の際、物件を担保として評価します。再建築不可物件は建て替えができないため担保評価が低く、多くの金融機関で融資に消極的です。不動産投資ローンの審査でどのような視点が見られるかは「不動産投資ローン完全ガイド|審査基準・金利・融資期間・自己資金とDSCRの見方」で整理していますが、再建築不可物件はその審査以前に、取り扱い自体を避ける金融機関が多いという特殊なカテゴリーになります。金融機関によって融資姿勢がどう違うかは「自己資金1,000万円、価格8,000万円の一棟アパート。金融機関3タイプで審査の見られ方はここまで違いました」でも触れていますが、再建築不可物件の場合はそもそも比較の土俵に乗らないことが多い点に注意が必要です。
再建築不可物件を購入できるのは、現金を用意できる投資家や、隣地を接道させて資産価値を上げたい隣地所有者などに限られます。買い手候補が少ないため、表面利回りが同じでも、通常の物件より高い利回り(=低い価格)でないと売れない傾向があります。出口戦略をどう考えるかは「収益物件の出口戦略完全ガイド|売却タイミング・デッドクロス・出口利回りの考え方」で整理していますが、再建築不可物件はこの「買い手不足」という制約が出口戦略の起点になります。
以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。実在の物件や取引を示すものではありません。
項目 | 条件 |
|---|---|
物件価格 | 1,200万円(現金購入) |
満室想定年間家賃 | 180万円(表面利回り15.0%) |
想定空室率 | 20%(老朽物件のため保守的に設定) |
運営費(管理費・固定資産税・修繕費など) | 年54万円(家賃の30%、老朽化を踏まえ保守的に設定) |
実効家賃収入は180万円×80%=144万円。ここから運営費54万円を引いたNOIは90万円です。物件価格1,200万円に対する実質利回りは、90万円÷1,200万円=7.5%となり、表面利回り15.0%のちょうど半分まで下がります。
ここからが、再建築不可物件で見落とされがちな部分です。5年後に売却するケースを、「買い手が限定されるため利回り20%水準でないと売れない」という仮定と、「通常の物件同様、購入時と同じ利回り15%で売却できた」という仮定の2パターンで比較します。
項目 | 流動性ディスカウントあり(利回り20%で売却) | 流動性ディスカウントなし(利回り15%で売却) |
|---|---|---|
売却価格 | 900万円 | 1,200万円 |
売却諸経費(5%) | 45万円 | 60万円 |
売却手取り | 855万円 | 1,140万円 |
5年間の累計CF(NOI90万円×5年) | 450万円 | 450万円 |
概算IRR | 約2.0% | 約6.6% |
表面利回り15%という数字だけを見れば魅力的に映りますが、空室率と運営費を保守的に見た時点で実質利回りは7.5%まで下がり、さらに「買い手が限定されることによる売却価格の下振れ」を織り込むと、5年保有した場合の概算IRRは約2.0%にとどまります。仮に通常の物件と同じように売却できたとしても、IRRは約6.6%です。つまり同じ物件・同じ運用でも、出口の流動性だけでIRRが4ポイント以上変わる計算になります。
表面利回りや保有中のキャッシュフローだけを見て「安いから」「利回りが高いから」と判断すると、この出口の下振れを見落とすことになります。価格・融資・出口を別々に検討するのではなく、同時に見ておくことが、再建築不可物件のような制約の大きい物件では特に重要です。
複数の条件(空室率、運営費、出口利回り)を同時に変えたときにIRRやCFがどう動くかを一つずつ手計算で確認するのは負担が大きい作業です。RE-AIでは、こうした複数条件をまとめて試算できるよう設計していますが、接道状況や再建築の可否そのものは、法務局・自治体窓口や建築士による個別確認が必要です。AIによる試算はあくまで判断材料の一つとして活用してください。
情報確認日:2026年9月4日
本記事の試算は、記載した条件を前提とした簡略化した計算結果であり、特定の物件や取引を示すものではありません。接道義務・再建築の可否・融資の可否は個別の物件・金融機関によって異なり、法律・税務・融資に関する最終判断は自治体窓口や専門家にご確認ください。本記事は特定の物件の購入を推奨するものではありません。
この記事を書いた人

鈴木基公
RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者
1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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