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7体のAIによる収益物件評価プラットフォーム

価格査定

駐車場収入は家賃と同じ利回りで評価していいのか|付帯収入比率15%なら出口価格は19.8%下がり、必要な表面利回りプレミアムは0.73ptだった

駐車場収入は家賃と同じ利回りで評価していいのか|付帯収入比率15%なら出口価格は19.8%下がり、必要な表面利回りプレミアムは0.73ptだった

収益物件の販売資料に載っている「表面利回り9.3%」。その収入の中に、駐車場使用料が月6,000円×10区画=年72万円、含まれていることがあります。地方の木造一棟アパートでは、駐車場・自販機・携帯基地局・看板などの付帯収入が総収入の1〜2割を占めることは珍しくありません。

この付帯収入は、家賃と同じように利回りに含めて計算され、同じ還元利回りで価格に換算されています。ではその付帯収入は、10年後に売るときも同じように価格に乗るのでしょうか。

本記事は、付帯収入比率を0%・8%・15%・22%と変え、さらに「出口で付帯収入がどこまで評価されるか」「保有中に駐車場が埋まり続けるか」を組み合わせて、10年IRR・DSCR・売却手残りを実際に計算した記録です。最後に、付帯収入の多い物件を買うときに必要な表面利回りプレミアムを逆算しています。

情報確認日:2026年10月14日

この記事で検証する疑問

  • 付帯収入は、購入価格のうち何%を占めているのか
  • 出口で付帯収入が評価されない場合、売却価格と10年IRRはどこまで落ちるのか
  • 保有中に駐車場が埋まらない場合、DSCRは警告を出してくれるのか
  • 付帯収入が多い物件を買うなら、表面利回りに何ptのプレミアムが必要なのか
  • そのリスクが高いエリア・低いエリアは、公開データで判別できるのか

前提の確認:付帯収入は「満室想定」で価格に乗っている

まず、実務上の扱いを確認します。収益還元法で用いる総収益は、家賃だけではありません。全日本不動産協会の鑑定実務研修資料では、総収益を「その不動産から入ってくる収入の全て」とし、構成要素として駐車場使用料、自動販売機・携帯アンテナ・看板収入を挙げています。

さらに扱いが分かれます。駐車場使用料は「満室想定で計上」、自販機・アンテナ・看板は「収入の実額を計上」。そして空室損失・貸倒損失は、家賃と付帯収入を合計した金額から一括で控除されます。還元利回りも、収入の種類ごとには分けず、純収益全体に1本の利回りを当てます。

つまり駐車場収入は、家賃とほぼ同じ扱いで価格に換算されているということです。ここが本記事の出発点になります。

この前提で、付帯収入が価格のどれだけを占めるかを計算すると次のようになります(還元利回り7.0%、空室・滞納損失率5%、満室想定総収入600万円の場合)。

付帯収入比率

付帯収入(年)

価格への寄与額

購入価格に占める割合

うち借入(LTV90%)

8%

48.0万円

651.4万円

10.1%

586.3万円

15%

90.0万円

1,221.4万円

19.0%

1,099.3万円

22%

132.0万円

1,791.4万円

27.9%

1,612.3万円

計算は「付帯収入×(1−空室損失率)÷還元利回り」です。付帯収入比率15%の物件では、購入価格の19.0%、金額で1,221万円を駐車場などの付帯収入に対して支払っていることになります。そのうち1,099万円は借入で調達した部分です。収入比率15%に対して価格比率が19.0%と大きくなるのは、価格が運営費を引いた後の純収益を還元したものだからで、収入1円の増減は価格に対してそれ以上に効きます。

月1区画あたりで見ると、月5,000円の区画は価格に81.4万円、月7,000円なら114.0万円、月10,000円なら162.9万円を乗せています。「駐車場が1区画多い」は、価格で100万円前後の話になります。

分析の前提条件

使用データの区分を明示します。本記事の物件条件は条件付きシミュレーション(架空ケース)です。RE-AIの診断実データは使用していません。エリア判定に使う自動車保有台数と、還元利回りの水準感は公開データです。

固定する条件

比較の軸をぶらさないため、物件価格ではなく収入を固定しました。価格は収入から計算した結果として出てくる数字です。

項目

設定

設定理由

満室想定総収入

600万円/年

比較の基準。家賃と付帯収入の合計をここに固定し、内訳だけを変える

運営費

120万円/年(総収入の20%)

管理委託5%+固定資産税等6%+保険0.5%+日常修繕・原状回復5%+共用光熱費等3.5%

住戸の空室・滞納損失率

5%

地方中核市の稼働良好な木造一棟を想定

取得時の還元利回り

7.0%

日本不動産研究所の第53回調査(2025年10月)で札幌・仙台・広島の賃貸住宅ワンルーム期待利回りが5.0%。木造・地方・個人投資家向け一棟はこれより高く、7.0%を置いた

算定される購入価格

6,428.6万円

(600×0.95−120)÷7.0%。結果として出た数字で、表面利回りは9.33%

融資条件

借入5,785.7万円(LTV90%)/金利2.7%/25年元利均等

政策金利が2026年9月18日の決定で1.25%程度。地方銀行の木造一棟向け変動金利としてスプレッドを乗せた水準

購入諸費用・売却費用

購入時7%/売却時4%

初期自己資金は1,092.9万円(頭金642.9万円+諸費用450.0万円)

保有期間

10年

10年後の残債は3,925.0万円

収入下落

家賃・付帯とも年1.05%(10年で約10%)

比較を歪めないため同率とした

出口の還元利回り

7.6%(取得+0.6pt)

10年分の築年数経過を反映

変更する条件

  • 付帯収入比率 P:0%/8%/15%/22%(総収入に占める駐車場等の割合)
  • 出口での付帯収入の評価率 E:100%/50%/0%(買い手・金融機関が付帯収入を価格に織り込む度合い)
  • 保有中の駐車場稼働率 pu:100%/80%/60%

1点、前提の非対称性を明示しておきます。購入価格は実務どおり「家賃+付帯収入の合計に一律5%の損失を控除」して算定しています。一方、保有中の収支では空室損失5%を家賃にのみ適用し、駐車場は稼働率puで別に動かしています。価格は一律の前提で決まるのに、実態は別のロジックで動くという構造そのものが検証対象だからです。この結果、駐車場が常に満車(pu=100%)のケースは、価格算定時の前提より少し有利になります。

税金は考慮せず、自己資金に対する税引前IRRで比較します。

検証1:出口で付帯収入が評価されないと、売却価格は何%下がるか

駐車場稼働率は100%に固定し、出口での評価率だけを動かしました。

付帯収入比率

出口評価率

売却価格

満額評価との差

売却手残り

10年IRR

0%

-

5,327.9万円

-

1,189.8万円

11.02%

8%

100%

5,356.3万円

±0%

1,217.1万円

11.38%

8%

50%

5,072.2万円

▲5.31%

944.3万円

9.81%

8%

0%

4,788.0万円

▲10.61%

671.5万円

7.94%

15%

100%

5,381.2万円

±0%

1,241.0万円

11.69%

15%

50%

4,848.4万円

▲9.90%

729.5万円

8.58%

15%

0%

4,315.6万円

▲19.80%

218.0万円

4.00%

22%

100%

5,406.1万円

±0%

1,264.9万円

12.00%

22%

50%

4,624.6万円

▲14.45%

514.7万円

7.15%

22%

0%

3,843.2万円

▲28.91%

▲235.5万円

算定不能(元本欠損)

読み取れることは3つあります。

第一に、出口でも満額評価されるなら、付帯収入が多い物件のほうが成績は良く見えます。付帯収入比率22%のIRRは12.00%で、付帯収入ゼロの11.02%より0.98pt高い。駐車場が常に満車なら、一律5%の空室損失を前提に算定された価格に対して収入が上振れするためです。販売資料の表面利回りが同じであれば、付帯収入が多い物件は「少し得に見える」ということになります。

第二に、評価率が落ちたときの打撃は、付帯収入比率にほぼ比例して拡大します。比率15%でゼロ評価なら売却価格は19.80%下落し、IRRは11.69%から4.00%へ7.69pt低下。比率22%では売却価格が28.91%下がり、売却手残りは235.5万円のマイナス。つまり自己資金1,092.9万円を失った上に、売却しても残債を返しきれません。

第三に、50%評価でも軽傷ではありません。比率15%で評価率50%なら、IRRは8.58%。満額評価の11.69%から3.11pt落ちています。「半分は評価されるだろう」という想定でも、3pt前後の差が出ます。

自分の物件条件で確かめる

上の表は満室想定総収入600万円・還元利回り7.0%という1つの条件で計算したものです。付帯収入の金額や還元利回りが変われば、価格に乗っている金額も、評価されなかったときの下落幅も変わります。RE-AIの収益還元法・収益価格シミュレーターは詳細計算モードで「年間満室想定賃料」「その他年間収入」「空室・滞納損失率」「年間運営費」を別々に入力できるため、その他年間収入に実際の駐車場収入を入れた場合と、0を入れた場合の収益価格を比べることで、検討中の物件で付帯収入がいくら価格に乗っているかを確認できます。

検証2:保有中に駐車場が埋まらない場合(DSCRは警告しない)

次に、出口は満額評価されるものとして、保有中の駐車場稼働率だけを動かしました。

付帯収入比率

駐車場稼働率

1年目NOI

DSCR

1年目CF

10年IRR

0%

-

450.0万円

1.413

131.5万円

11.02%

8%

100%

452.4万円

1.420

133.9万円

11.38%

8%

80%

442.8万円

1.390

124.3万円

9.91%

8%

60%

433.2万円

1.360

114.7万円

8.35%

15%

100%

454.5万円

1.427

136.0万円

11.69%

15%

80%

436.5万円

1.370

118.0万円

8.90%

15%

60%

418.5万円

1.314

100.0万円

5.73%

22%

100%

456.6万円

1.434

138.1万円

12.00%

22%

80%

430.2万円

1.351

111.7万円

7.84%

22%

60%

403.8万円

1.268

85.3万円

2.73%

この表でいちばん注意したいのは、DSCRがほとんど動かないことです。付帯収入比率22%で駐車場が6割しか埋まらないケースでも、DSCRは1.268。一般的な融資審査や自己診断で使われる1.2〜1.3という目安の範囲に収まっており、「問題あり」とは出ません。それでも10年IRRは12.00%から2.73%へ9.27pt落ちています。

逆算してみると、付帯収入比率22%の物件でもDSCR1.10を維持できる駐車場稼働率の下限は19.5%でした。駐車場が8割空いてもDSCRは1.10を割らない。DSCRは年間返済額に対する純収益の倍率なので、収入全体に対して1〜2割の付帯収入が減っても、倍率はなかなか1.0に近づきません。付帯収入のリスクは、DSCRでは検知できないということです。

IRRが大きく落ちる理由は、保有中のキャッシュフローと出口価格の両方に効いているためです。付帯収入比率15%・稼働率60%の場合、10年間のNOI累計は343.5万円減り、売却価格は426.2万円下がります。打撃の約55%は出口側から来ています。

検証3:複合ストレス(BASE/STRESS/SEVERE)

現実には、駐車場の稼働低下・出口評価の縮小・金利上昇・住戸空室の悪化が同時に起きることがあります。3つのシナリオで比較しました。

シナリオ

出口評価率

駐車場稼働率

収入下落

住戸空室率

出口還元利回り

金利

BASE

100%

100%

年1.05%

5%

7.6%

2.7%

STRESS

60%

85%

年1.5%

8%

8.1%

3.2%

SEVERE

30%

70%

年2.0%

11%

8.6%

3.7%

付帯収入比率

シナリオ

DSCR

1年目CF

売却価格

売却手残り

10年IRR

0%

BASE

1.413

131.5万円

5,327.9万円

1,189.8万円

11.02%

0%

STRESS

1.284

95.5万円

4,585.2万円

397.2万円

▲0.29%

0%

SEVERE

1.166

58.9万円

3,933.4万円

▲306.7万円

算定不能

8%

BASE

1.420

133.9万円

5,356.3万円

1,217.1万円

11.38%

8%

STRESS

1.274

92.1万円

4,376.3万円

196.7万円

▲4.16%

8%

SEVERE

1.140

49.8万円

3,623.2万円

▲604.4万円

算定不能

15%

BASE

1.427

136.0万円

5,381.2万円

1,241.0万円

11.69%

15%

STRESS

1.265

89.2万円

4,193.6万円

21.2万円

▲9.68%

15%

SEVERE

1.118

41.8万円

3,351.9万円

▲864.8万円

算定不能

22%

BASE

1.434

138.1万円

5,406.1万円

1,264.9万円

12.00%

22%

STRESS

1.256

86.3万円

4,010.8万円

▲154.3万円

算定不能

22%

SEVERE

1.095

33.9万円

3,080.6万円

▲1,125.3万円

算定不能

STRESSは金利が0.5pt上がり、住戸空室が8%に悪化し、出口利回りが0.5pt開く設定です。この程度でも付帯収入ゼロの物件は売却手残り397.2万円を確保できますが、付帯収入比率15%では21.2万円まで減り、22%ではマイナスに転じます。同じ表面利回り9.33%で買っても、ストレス下の耐久度は収入の構成で変わるというのがここでの結論です。

なお、BASE条件のDSCRは1.413で、付帯収入比率にかかわらず健全な水準です。これも検証2と同じで、DSCRだけ見ていると構成の差は見えません。

検証4:必要な表面利回りプレミアムを逆算する

ここまでは「同じ価格で買ったらどうなるか」でした。逆に、付帯収入のリスクを織り込むなら、いくらで買うべきかを逆算します。基準は付帯収入ゼロの物件のIRR11.02%。これと同じIRRを、出口で付帯収入が評価されない前提でも達成できる購入価格・表面利回りを求めました。

付帯収入比率

前提

必要な表面利回り

プレミアム

必要な購入価格

必要な値引率

8%

出口ゼロ評価

9.71%

+0.38pt

6,179.2万円

▲3.88%

15%

出口ゼロ評価

10.07%

+0.73pt

5,961.1万円

▲7.27%

22%

出口ゼロ評価

10.45%

+1.11pt

5,742.9万円

▲10.67%

8%

出口50%評価

9.49%

+0.16pt

6,321.0万円

▲1.67%

15%

出口50%評価

9.64%

+0.30pt

6,227.0万円

▲3.14%

22%

出口50%評価

9.78%

+0.45pt

6,132.9万円

▲4.60%

出口でゼロ評価されるリスクまで織り込むなら、付帯収入比率15%の物件は表面利回りで0.73pt、価格で7.27%の上乗せ条件が必要です。半分は評価されると見るなら0.30pt、3.14%です。

実務的には、この0.16pt〜1.11ptという幅が指値の根拠になります。「駐車場収入が総収入の2割あるので、表面利回りは1pt高くないと合いません」と言えるかどうかが、交渉の分かれ目です。

転換点

  • 出口ゼロ評価の前提では、付帯収入比率13.5%を超えると10年IRRが5%を下回る。16.3%を超えると3%も下回ります。
  • 出口50%評価なら、IRR5%を割るのは付帯収入比率30.5%から。
  • 出口満額評価なら、付帯収入比率50%でもIRR5%は維持される。

いずれも本記事の条件(還元利回り7.0%/出口7.6%/LTV90%/金利2.7%/保有10年)に限った数字です。還元利回りやLTVが変われば境界値も動きます。

エリア判定:付帯収入の耐久度は公開データで見分けられるか

ここまでの分析は「出口評価率E」と「駐車場稼働率pu」を外から与えました。では、その2つが低くなりやすいエリアを事前に判別できるでしょうか。

駐車場収入の安定性は、その駐車場を入居者が使うのか、外部に貸しているのかで大きく変わります。入居者が使う前提なら、駐車場は住戸と一体の設備で、稼働は家賃に連動します。外部貸しなら、月極駐車場という別事業を抱えていることになり、周辺の供給や解約で簡単に空きます。

これを判別する公開データとして、自動車検査登録情報協会「自家用乗用車の世帯当たり普及台数」(2025年8月25日公表、自動車は2025年3月末現在、世帯数は2025年1月1日現在、軽自動車を含む)を使いました。全国平均は1.009台です。

1戸1台の駐車場を備えたアパートを考えると、世帯当たり保有台数が1.0台を上回るエリアでは入居者需要だけで区画が埋まる計算になり、1.0台を下回るエリアでは1戸1台でも余ります。

世帯当たり保有台数

都道府県数

該当する都道府県

付帯収入の想定

1.50台以上

9

福井1.670/山形1.617/富山1.616/群馬1.558/栃木1.537/長野1.532/福島1.510/茨城1.508/岐阜1.506

2台目需要があり、1戸1台を超える区画にも内需が残る

1.20〜1.49台

23

新潟・山梨・佐賀・石川・鳥取・三重・島根・岩手・秋田・静岡・徳島・岡山・滋賀・香川・沖縄・熊本・宮崎・大分・宮城・山口・和歌山・愛知・青森

1戸1台は内需で埋まりやすい

1.00〜1.19台

7

鹿児島1.183/高知1.129/愛媛1.129/長崎1.099/広島1.086/奈良1.060/福岡1.032

1戸1台がおおむね上限

1.00台未満

8

北海道0.986/千葉0.921/埼玉0.915/兵庫0.880/京都0.784/神奈川0.664/大阪0.611/東京0.405

1戸1台でも余剰が出る。外部貸し依存の度合いが高い

1戸1台設置時の余剰区画比率(=1−世帯当たり台数)を計算すると、東京59.5%、大阪38.9%、神奈川33.6%、京都21.6%、兵庫12.0%、埼玉8.5%、千葉7.9%、北海道1.4%です。

これを本記事の変数に対応させると、次のような使い方になります。

  • 保有台数1.5台以上の9県:入居者の2台目需要まである。駐車場は住戸と一体の必須設備に近く、出口評価率E=100%、稼働率pu=100%寄りで見てよい余地が大きい。
  • 保有台数1.0台未満の8都道府県:1戸1台でも内需では埋まらない。外部貸しの比重が高いほど、E=0〜50%、pu=60〜80%のシナリオを主として見るべき。付帯収入比率15%なら必要プレミアムは0.30〜0.73pt。

ただしこの指標には大きな留保があります。世帯当たり保有台数は持ち家世帯を含む全世帯の平均であり、賃貸世帯・単身世帯の保有率はこれより低くなります。したがって上の数字は、入居者内需の「上限寄りの目安」です。また、保有台数が高い県でも駅前の単身向け物件では内需が薄く、保有台数が低い都県でも郊外のファミリー向けでは厚い。都道府県の平均台数は、物件単位の判断をそのまま代替しません。相関があることと、その物件の駐車場が埋まる理由であることは別の話です。

投資判断への使い方

結論を1つに決めるのではなく、次の4点を分けて確認するのが実務的です。

  1. レントロールで付帯収入を切り分ける。販売資料の年間収入を、家賃・駐車場・自販機・アンテナ・看板に分解し、総収入に対する比率を出します。比率が10%を超えたら、本記事の数字が効いてくる領域です。
  2. 駐車場の契約相手を確認する。入居者契約か外部契約かで、付帯収入の性質が変わります。外部契約の比率が高いほど、稼働率と出口評価率の下方シナリオを重く置く必要があります。区画数が戸数を上回っているかどうかも確認点です。
  3. 利回りを2本で見る。付帯収入を含む表面利回りと、家賃だけの表面利回りを並べます。後者が自分の最低ラインを割るなら、付帯収入に依存した利回りだということです。
  4. DSCRでは判断しない。検証2のとおり、付帯収入が大きく欠けてもDSCRはほとんど動きません。付帯収入リスクはIRRと売却手残りで見る必要があります。

出口側を自分の条件で確かめたい場合は、RE-AIの売却・出口戦略シミュレーターに年間NOIとExit Cap Rateを入れて、付帯収入を含むNOIと、家賃だけのNOIの2通りで売却価格・IRR・手残りを比較するのが近い使い方です。差額がそのまま、付帯収入が評価されなかった場合の損失幅になります。

本記事のように、付帯収入比率・出口評価率・駐車場稼働率・金利・空室率を同時に動かすと、確認する組み合わせは短時間で数十通りに増えます。RE-AIでは、収益性・融資・リスク・出口の各条件をまとめて確認できるように設計していますが、駐車場の契約相手や周辺の月極駐車場の供給といった現地の事情は、資料と現地確認で補う必要があります。

この分析で分からないこと

  1. 実際の出口評価率。買い手や金融機関が付帯収入をどこまで価格に織り込むかは、物件・エリア・買い手の属性で変わります。本記事は100%/50%/0%の3点で感応度を測ったもので、確率の推定ではありません。
  2. 駐車場賃料の実勢と推移。本記事は家賃と付帯収入を同率で下落させましたが、駐車場賃料は建物の築年数より周辺の土地需給で決まるため、実際には家賃と異なる動きをします。この非対称性は織り込んでいません。
  3. 駐車場固有の運営費。舗装・白線・除雪・ゲート設備の費用は、運営費率20%に一括で含めており、区画数に応じた増減を分けていません。
  4. 消費税の扱い。住宅家賃は非課税ですが、駐車場収入は課税売上になる場合があります。課税売上高が増えることで生じる影響は本記事では扱っていません。
  5. 世帯当たり保有台数の限界。前述のとおり全世帯平均であり、賃貸世帯の保有率、物件の間取り、駅距離、周辺の駐車場供給は反映されていません。
  6. 税金・個別の融資条件。税引前IRRで比較しており、所有形態・減価償却・譲渡税、実際に出る融資条件は含めていません。

まとめ

  • 駐車場収入は実務上、家賃とほぼ同じ扱いで満室想定で総収益に計上され、1本の還元利回りで価格に換算される。付帯収入比率15%の物件では、購入価格の19.0%(1,221.4万円)が付帯収入に対する対価で、うち1,099.3万円は借入である。
  • 出口で付帯収入がゼロ評価された場合、売却価格は付帯収入比率8%で10.61%、15%で19.80%、22%で28.91%下がる。比率22%では売却手残りがマイナス235.5万円となり、残債を返しきれない。
  • 出口が満額評価なら、付帯収入が多い物件のIRRはむしろ高く出る(比率22%で12.00%、比率0%で11.02%)。同じ表面利回りでも「少し得に見える」構造がある。
  • 保有中に駐車場が6割しか埋まらないケース(比率22%)でも、DSCRは1.268で健全圏に収まる。DSCR1.10を割るのは稼働率19.5%から。付帯収入リスクはDSCRでは検知できない。
  • 出口ゼロ評価に耐えるために必要な表面利回りプレミアムは、付帯収入比率8%で+0.38pt、15%で+0.73pt、22%で+1.11pt。50%評価の前提なら+0.16〜0.45pt。
  • 出口ゼロ評価の前提では、付帯収入比率13.5%が10年IRR5%の境界だった。
  • 世帯当たり自家用乗用車保有台数が1.0台を下回る8都道府県(東京0.405台〜北海道0.986台)では、1戸1台でも区画が余るため外部貸し依存になりやすく、評価率・稼働率の下方シナリオを主に見るべき。ただし都道府県平均は物件単位の判断を代替しない。

本記事の数値はすべて、上記の固定条件のもとで計算した条件付きシミュレーションの結果です。還元利回り、LTV、金利、保有期間が変われば境界値も変わります。

参考資料・出典

  • 一般財団法人自動車検査登録情報協会「令和7年 自家用乗用車の世帯当たり普及台数」(2025年8月25日公表。自動車は2025年3月末現在、世帯数は2025年1月1日現在、軽自動車を含む)https://www.airia.or.jp/publish/file/kenbetsu2025.pdf
  • 一般財団法人日本不動産研究所「第53回 不動産投資家調査」(2025年10月現在、2025年11月27日公表)https://www.reinet.or.jp/
  • 公益社団法人全日本不動産協会「収益価格の算定方法〜不動産鑑定の考え方〜」(総収益の構成要素と計上方法)全日本不動産協会 研修資料
  • 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026年9月18日。無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.25%程度で推移するよう促す)https://www.boj.or.jp/mopo/mpmdeci/mpr_2026/k260918a.pdf

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鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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