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価格査定

土地の形が悪い収益物件は何%値引けば引き合うのか|かげ地45%で必要値引きは売出の15.18%、IRRで並ぶだけなら10.94%で足りた

土地の形が悪い収益物件は何%値引けば引き合うのか|かげ地45%で必要値引きは売出の15.18%、IRRで並ぶだけなら10.94%で足りた

収益物件の資料に「土地320㎡」と書かれていても、その320㎡が整形地なのか、間口7mの細長い土地なのか、かげ地の多い不整形地なのかで、銀行が出す積算評価は変わります。変わるのは評価額だけではありません。積算評価を融資の天井に使う金融機関では、評価が下がった分がそのまま必要自己資金に跳ね返ります。

では、形が悪い土地の物件は、整形地と同じ自己資金で買うために何%値引けばいいのか。この記事では、国税庁が公開している土地評価の補正率表を使って形状減価を数値化し、積算価格・融資可能額・必要自己資金・必要値引き率・IRRまでを一本の計算で追いました。結論を先に書くと、かげ地割合45%+間口8mの不整形地では、整形地と同じ自己資金に収めるのに売出価格の15.18%の値引きが必要でしたが、IRRで並ぶだけなら10.94%で足りました。さらに、融資ルールが「物件価格×85%が上限」の銀行に持ち込むと、必要値引きは6.26%まで縮みました。

検証したい疑問

一般的な記事では「不整形地は評価が下がるので融資が付きにくい」「間口が狭いと売りにくい」と説明されます。ただ、投資判断に必要なのはその先です。

  • 形状による評価減は、具体的に何%なのか
  • その評価減は、融資可能額と必要自己資金を何万円動かすのか
  • 整形地と同じ条件に戻すには、売出価格を何%値引けばいいのか
  • その「必要値引き率」は、どの銀行に持ち込むかでどれだけ変わるのか
  • 値引きを取り切れたとき、その物件は整形地より良い投資なのか悪い投資なのか

この5点を、同じ地積・同じ路線価・同じ建物・同じ家賃という条件を固定したまま、土地の形だけを変えて計算します。

前提条件|固定したものと変更したもの

形状以外の条件はすべて固定します。地方中核市にある築12年の木造一棟アパート(1K×8戸)を想定しました。この物件種別を選んだのは、積算評価が融資の天井になりやすく、かつ土地が積算の7割を占めるため、土地の形状減価がそのまま融資額に伝わる層だからです。都心の区分マンションでは土地持分が小さく、形状補正はほとんど効きません。

項目

設定値

設定の根拠

地積

320㎡(96.8坪)

普通住宅地区・地積区分A(500㎡未満)に収まる規模

相続税路線価

12.0万円/㎡

公示地価換算で約15.0万円/㎡(坪49.6万円)。地方中核市の住宅地を想定

整形地の土地評価

3,840万円

12.0万円 × 320㎡(補正なし)

建物

木造・延床224㎡・築12年

再調達単価18.0万円/㎡、法定耐用年数22年、残存10年 → 建物評価1,832.7万円

年間満室想定家賃

537.6万円

5.6万円 × 8戸 × 12ヶ月

売出価格

5,400万円

表面利回り9.96%、実質利回り7.67%。積算価格は対価格105.1%(土地値が出ている地方物件)

空室・滞納率/運営費率

5%/満室家賃の18%

NOI 413.95万円(NOI率77.0%)

融資条件

金利3.3%・20年・元利均等

短期プライムレート2.375%(2026年8月3日適用)+スプレッドを想定。築12年木造の残存耐用年数を超える期間設定

担保掛目

積算価格の90%

基準ケース。80%・100%でも検証

購入諸費用

物件価格の7%

仲介手数料・登録免許税・不動産取得税・司法書士報酬等

変更したのは、間口距離・かげ地割合・セットバックの有無(=土地の形状)、担保掛目、融資ルール、値引き幅の6つです。家賃・建物・金利・期間・運営費はすべて同一に揃えています。

形状減価は国税庁の公開テーブルで数値化できる

「土地の形が悪い」は感覚的に語られがちですが、定量化された公開テーブルが一つあります。国税庁の「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表」です。相続税・贈与税の財産評価に使うものですが、形状減価を数値で与えている唯一の公的資料であり、銀行の積算評価でも路線価が土地評価の出発点になるため、形状の効き方を検算する尺度として使えます。

今回使う補正率(いずれも普通住宅地区・地積区分A)は次のとおりです。

補正の種類

適用の考え方

今回使った率

奥行価格補正率

奥行が短すぎる/長すぎる土地を減価。不整形地では「地積÷間口距離」で計算上の奥行を求める

奥行20m=1.00/40m=0.91/45.7m=0.90

間口狭小補正率

間口距離が狭い土地を減価

4m未満0.90/4〜6m 0.94/6〜8m 0.97/8m以上1.00

奥行長大補正率

奥行÷間口が2倍以上の細長い土地を減価

5〜6倍0.92/6〜7倍0.90

不整形地補正率

かげ地割合(想定整形地に対する不足分の割合)と地積区分で決まる。下限0.60

かげ地30%=0.90/45%=0.82/65%=0.60

セットバック

建築基準法42条2項道路の後退部分は、その地積割合に応じて70%を控除

自用地評価額 −(評価額 × 後退地積÷総地積 × 0.7)

なお不整形地の場合、「不整形地補正率 × 間口狭小補正率」と「奥行長大補正率 × 間口狭小補正率」の低いほうを採用し、0.60を下限とします。間口狭小補正と不整形地補正を単純に重ねて使うことはできません。

結果①|土地評価は最大25.4%下がり、融資可能額は877万円縮んだ

5つの形状パターンで、土地評価から必要自己資金・DSCR・CCRまでを計算しました。繰り返しますが、地積・路線価・建物・家賃・金利・期間・売出価格はすべて同一です。

ケース

形状補正率

土地評価

積算価格

融資可能額

必要自己資金

DSCR

年間CF

CCR

A 整形地(間口16m×奥行20m)

1.0000

3,840.0万円

5,672.7万円

5,105.5万円

672.5万円

1.186

64.9万円

9.65%

B 細長地(間口7m×奥行45.7m)

0.7857

3,017.1万円

4,849.8万円

4,364.8万円

1,413.2万円

1.387

115.5万円

8.18%

C 不整形地(かげ地30%・間口16m)

0.9000

3,456.0万円

5,288.7万円

4,759.9万円

1,018.1万円

1.272

88.5万円

8.70%

D 不整形地(かげ地45%・間口8m)

0.7462

2,865.4万円

4,698.1万円

4,228.3万円

1,549.7万円

1.432

124.9万円

8.06%

E セットバック(前面道路2.7m・後退10.4㎡)

0.9772

3,752.6万円

5,585.4万円

5,026.8万円

751.2万円

1.204

70.3万円

9.36%

補正率の内訳は次のように計算しています。

  • A:奥行価格1.00 × 間口狭小1.00 = 1.0000
  • B:奥行価格0.90 ×(間口狭小0.97 × 奥行長大0.90)= 0.7857
  • C:奥行価格1.00 × 不整形地補正0.90 = 0.9000(想定整形地457.1㎡、計算上の奥行20m)
  • D:奥行価格0.91 × 不整形地補正0.82 = 0.7462(想定整形地581.8㎡、計算上の奥行40m。0.82×1.00と0.92×1.00の低いほうを採用)
  • E:1 −(10.4㎡ ÷ 320㎡)× 0.7 = 0.9772(道路幅員2.7m、中心線から2mまで後退=0.65m × 間口16m)

土地評価の差は、整形地3,840.0万円に対して最も悪いDケースで2,865.4万円、▲974.6万円(▲25.4%)。これに掛目90%が掛かるため、融資可能額の差は▲877.1万円になります。同じ売出価格5,400万円で買おうとすると、必要自己資金は672.5万円から1,549.7万円へ、2.3倍に膨らみます。

ここで注意したいのが、整形地AのDSCRが1.186しかない点です。積算が出ているぶん満額近く(LTV94.5%)借りられてしまうため、収益面の余裕が薄くなります。DSCR1.2を下回らない融資額の上限は5,045.6万円(対価格93.4%)、DSCR1.3なら4,657.5万円(86.2%)で、実務では積算の天井より先にDSCRの天井が効くケースです。この場合、整形地Aの融資は5,045.6万円に抑えられ、後述する必要値引きも15.18%から14.14%へ縮みます。銀行が見る3つの天井の関係は売出8,000万円の一棟アパート、銀行はいくらまで貸せるのかで整理しています。

結果②|整形地と同じ自己資金に収めるには、売出価格の15.18%の値引きが必要だった

形が悪い物件を、整形地と同じ自己資金672.5万円で買うために必要な値引き額を逆算します。融資可能額は売出価格ではなく積算価格で決まるため、値引きしても融資額は変わりません。したがって必要値引き額は「融資可能額の差 ÷(1+諸費用率7%)」で求まります。

ケース

融資可能額の差

必要値引き額

対売出価格

成立価格

そのときの表面利回り

A 整形地

-

-

-

5,400.0万円

9.96%

E セットバック

78.6万円

73.5万円

1.36%

5,326.5万円

10.09%

C 不整形地(かげ地30%)

345.6万円

323.0万円

5.98%

5,077.0万円

10.59%

B 細長地(間口7m)

740.6万円

692.2万円

12.82%

4,707.8万円

11.42%

D 不整形地(かげ地45%・間口8m)

877.1万円

819.8万円

15.18%

4,580.2万円

11.74%

注目したいのは順位です。感覚的には「かげ地だらけの不整形地」が最も厳しそうですが、間口7mの細長地(12.82%)が、かげ地30%の不整形地(5.98%)の2倍以上の値引きを必要とするという結果になりました。細長地では奥行価格補正・間口狭小補正・奥行長大補正の3つが同時に掛かるため、単一の不整形地補正より減価が深くなります。「不整形か整形か」の二分法では、この差は見えません。

この必要値引き額は、物件価格の水準にほとんど依存しません。式の分子が「土地評価の差 × 掛目」だけで構成されているためです。言い換えると、同じ土地なら、物件価格が安いほど必要値引き率は大きくなります。土地3,840万円の形状が悪く819.8万円の値引きが必要な場合、売出5,400万円なら15.18%ですが、売出8,000万円の物件なら10.25%で足ります。

今回の試算は金利3.3%・20年・掛目90%・諸費用7%に固定しています。融資額・諸費用率・目標DSCRを自分の条件に差し替えて必要自己資金を出し直したい場合は、RE-AIの無料ローンシミュレーターで融資額と必要自己資金を試算することができます。目標DSCRからの借入上限の逆算にも対応しています。

結果③|かげ地割合が45%を超えると、必要値引きは10%を上回る

かげ地割合だけを0〜65%まで動かし、他の形状要因(間口は16m、奥行価格補正は1.00)を排除して転換点を探しました。

かげ地割合

不整形地補正率

土地評価

融資可能額

必要自己資金

必要値引き額

対売出価格

0%(整形)

1.00

3,840.0万円

5,105.5万円

672.5万円

-

-

10%

0.98

3,763.2万円

5,036.3万円

741.7万円

64.6万円

1.20%

20%

0.94

3,609.6万円

4,898.1万円

879.9万円

193.8万円

3.59%

30%

0.90

3,456.0万円

4,759.9万円

1,018.1万円

323.0万円

5.98%

40%

0.85

3,264.0万円

4,587.1万円

1,190.9万円

484.5万円

8.97%

45%

0.82

3,148.8万円

4,483.4万円

1,294.6万円

581.4万円

10.77%

50%

0.79

3,033.6万円

4,379.7万円

1,398.3万円

678.3万円

12.56%

60%

0.70

2,688.0万円

4,068.7万円

1,709.3万円

969.0万円

17.94%

65%

0.60

2,304.0万円

3,723.1万円

2,054.9万円

1,292.0万円

23.93%

この条件での転換点は2つあります。

  • かげ地30%を超えると、必要値引きが売出価格の5%を上回る(=指値の範囲として交渉が必要になる水準)
  • かげ地45%を超えると、必要値引きが10%を上回る(=値引き交渉で埋めるのが現実的に難しくなる水準)

また補正率表は40%以上で刻みが大きくなり(0.88→0.85→0.82→0.79→0.75→0.70→0.60)、かげ地割合が1段階(5pt)悪化するごとの影響が加速します。かげ地20%→25%では必要自己資金が69.1万円増えるだけですが、60%→65%では345.6万円増えます。かげ地割合は線形に効かないという点は、資料から形状を読む際の実務的な注意点です。

結果④|「積算をフルに見てくれる銀行」ほど、必要値引きは大きくなる

担保掛目を80%・90%・100%で振り、必要値引き率がどう動くかを見ます。

ケース

掛目80%

掛目90%

掛目100%

E セットバック

1.21%

1.36%

1.51%

C 不整形地(かげ地30%)

5.32%

5.98%

6.65%

B 細長地(間口7m)

11.39%

12.82%

14.24%

D 不整形地(かげ地45%・間口8m)

13.49%

15.18%

16.87%

直感に反する結果かもしれません。積算評価を厳しく見る銀行(掛目80%)のほうが、必要値引きは小さくなります。掛目が低ければ整形地でも融資額が抑えられるため、形状による差額そのものが縮むからです。逆に「積算の100%まで融資する」銀行は、整形地には有利ですが、土地の形の悪さも100%反映します。

実務的な意味はこうです。積算評価を重く見る金融機関との付き合いが強い投資家は、整形地では有利に戦えますが、形の悪い土地の物件では値引き交渉のハードルが上がります。同じ物件でも、投資家の融資環境によって「引き合う価格」が違うということです。

結果⑤|融資ルールが「価格×85%」の銀行なら、かげ地30%は融資額に影響しない

ここまでは「融資額=積算価格×掛目」という融資ルールを前提にしました。実際には、物件価格に対するLTV上限が先に効く金融機関もあります。LTV上限85%(=4,590万円)を併用した場合を計算しました。

ケース

積算×90%

LTV上限85%

実際の融資額

必要値引き額

対売出価格

A 整形地

5,105.5万円

4,590.0万円

4,590.0万円

-

-

E セットバック

5,026.8万円

4,590.0万円

4,590.0万円

0万円

0.00%

C 不整形地(かげ地30%)

4,759.9万円

4,590.0万円

4,590.0万円

0万円

0.00%

B 細長地(間口7m)

4,364.8万円

4,590.0万円

4,364.8万円

210.4万円

3.90%

D 不整形地(かげ地45%・間口8m)

4,228.3万円

4,590.0万円

4,228.3万円

338.0万円

6.26%

結果は大きく変わります。かげ地30%の不整形地(C)とセットバック物件(E)は、形状減価があっても融資額が1円も減りません。積算×90%がLTV上限4,590万円を上回っているため、形状減価が天井に届いていないからです。最も悪いDケースでも必要値引きは6.26%で、積算基準の15.18%に比べて2.4分の1になります。

つまり「この物件は形が悪いから値引きが必要」という判断は、物件の属性だけでは決まりません。自分が使う融資のどの天井が先に効いているかによって、必要な値引き額が2倍以上変わります。形状減価が効くのは「積算×掛目がLTV上限を下回ったとき」からで、今回の条件ではその境界は積算価格5,100万円(対価格94.4%)付近でした。

結果⑥|値引きを取り切れれば、形の悪い土地の物件は整形地を上回った

ここまでは購入時の自己資金の話です。出口まで含めるとどうなるかを、10年保有・税引前IRRで比較しました。出口価格は「10年後NOI ÷ 出口利回り9.0%」から、次の買い手も同じ形状減価で融資額が縮むため、同額の値引きを要求されると考えて形状由来の値引き額を控除しています(路線価は横ばい、家賃は年0.5%下落、売却費用4%)。

ケース

購入価格

自己資金

出口価格

売却時手取

税引前IRR

A 整形地(売出どおり)

5,400.0万円

672.5万円

4,374.6万円

1,230.0万円

12.82%

E セットバック(必要値引き後)

5,326.5万円

672.5万円

4,301.1万円

1,205.2万円

13.32%

C 不整形地かげ地30%(必要値引き後)

5,077.0万円

672.5万円

4,051.6万円

1,121.0万円

15.10%

B 細長地(必要値引き後)

4,707.8万円

672.5万円

3,682.4万円

996.3万円

17.95%

D 不整形地かげ地45%(必要値引き後)

4,580.2万円

672.5万円

3,554.8万円

953.3万円

19.00%

自己資金を揃えるところまで値引きできれば、形の悪い土地の物件は整形地よりIRRが高くなりました。理由は単純で、家賃は同じまま購入価格と借入額が下がるため、DSCR(1.186→1.432)と年間CF(64.9万円→124.9万円)が改善するからです。形状減価は「投資として不利」を意味するのではなく、「価格に反映されていないときだけ不利」ということです。

では値引きを取り切れなかったらどうなるか。売出価格のまま買った場合のIRRは次のとおりです。

ケース

値引きゼロで購入したときの自己資金

税引前IRR

整形地との差

A 整形地

672.5万円

12.82%

-

E セットバック

751.2万円

11.61%

▲1.21pt

C 不整形地(かげ地30%)

1,018.1万円

8.41%

▲4.41pt

B 細長地(間口7m)

1,413.2万円

5.11%

▲7.71pt

D 不整形地(かげ地45%・間口8m)

1,549.7万円

4.20%

▲8.62pt

そして重要なのは、「自己資金で並ぶ値引き」と「IRRで並ぶ値引き」は別の水準だという点です。

ケース

IRRが整形地と並ぶ値引き率

自己資金が整形地と並ぶ値引き率

差

E セットバック

0.98%

1.36%

0.38pt

C 不整形地(かげ地30%)

4.31%

5.98%

1.67pt

B 細長地(間口7m)

9.24%

12.82%

3.58pt

D 不整形地(かげ地45%・間口8m)

10.94%

15.18%

4.24pt

IRRで並べばよいなら、Dケースの必要値引きは10.94%です。自己資金を同額に揃えるなら15.18%。どちらを基準にするかで、交渉目標が4.24pt(約229万円)違います。自己資金に余裕があるならIRR基準、手元資金が制約になっているなら自己資金基準、というのが実務的な使い分けになります。

セットバックは評価では1.4%、建替え前提では1.4倍の影響になる

5ケースのうちセットバック(E)は、評価上の影響がもっとも小さい結果でした。後退部分10.4㎡は地積の3.25%ですが、その70%控除なので評価減は2.28%(87.4万円)、融資可能額の減少は78.6万円、必要値引きは1.36%にとどまります。

ただし、セットバックには評価額には現れない別の効き方があります。後退部分は建築可能な敷地面積から外れるため、建替え時の建蔽率・容積率の分母が3.25%減るという点です。延床が3.25%減れば新築時の家賃収入も概ね同率減り、建替え事業として成立する土地価格も同率下がります。

  • 土地評価ベースの影響:▲87.4万円(▲2.28%)
  • 建替え事業ベースの影響:▲124.8万円(▲3.25%)=評価ベースの約1.4倍

つまりセットバック物件は、現況の収益物件として売る出口では影響が小さく、土地として建替え業者に売る出口では影響が大きくなります。出口戦略によって減価の大きさが変わる、という点でほかの形状要因とは性質が違います。

ここから分かること

  1. 形状減価は「評価が下がる」話ではなく「自己資金が増える」話である。今回の条件では土地評価▲25.4%が、必要自己資金2.3倍(672.5万円→1,549.7万円)として現れた。
  2. 見た目の悪さと減価の深さは一致しない。間口7mの細長地(必要値引き12.82%)は、かげ地30%の不整形地(5.98%)の2倍以上。補正が3つ同時に掛かる形状がもっとも深く効く。
  3. 必要値引き率は物件価格に反比例する。同じ土地でも、安い物件ほど必要値引き率は大きく見える。
  4. 積算を重く見る銀行ほど、形状減価も重く効く。掛目80%→100%で必要値引きは13.49%→16.87%。
  5. LTV上限が先に効く融資ルールでは、かげ地30%程度の不整形は融資額に影響しない。必要値引きは15.18%→6.26%へ。同じ物件でも融資環境で2.4倍変わる。
  6. 必要値引きを取り切れれば、形の悪い土地の物件はDSCR・CF・IRRのすべてで整形地を上回る。取り切れないときだけ不利になる。
  7. 「自己資金で並ぶ値引き」と「IRRで並ぶ値引き」は4pt以上ずれる。交渉目標はどちらを基準にするかで決まる。

一般的な記事で語られる「不整形地は融資が付きにくいので避けるべき」という結論は、今回の計算では支持されませんでした。支持されたのは「形状減価の分が価格に反映されているかを検算すべき」という、より限定的な命題です。

投資判断への使い方

物件資料から形状リスクを検算する手順は次のようになります。

  1. 測量図・公図で間口距離と想定整形地を確認する。間口が8m未満、または奥行÷間口が2倍以上なら、間口狭小・奥行長大補正が掛かる可能性がある。
  2. かげ地割合を概算する。(想定整形地の地積 − 実際の地積)÷ 想定整形地の地積。30%を超えたら要注意、45%を超えたら値引き交渉で埋めるのは難しい。
  3. 前面道路の幅員を確認する。4m未満なら42条2項道路の可能性があり、後退量=(4m − 幅員)÷ 2。現況保有なら影響は小さいが、建替え前提の出口では1.4倍に効く。
  4. 形状補正後の土地評価で積算価格を引き直す。整形地想定との差額 × 担保掛目 ÷ 1.07 が、必要値引き額の目安になる。
  5. 自分の融資のどの天井が先に効くかを確認する。積算×掛目がLTV上限を上回っていれば、形状減価は融資額に影響しない。
  6. 値引き後の融資額でDSCRを再計算する。融資額が縮むとDSCRは改善するが、売出価格のまま買うと自己資金だけが増えてCCRが悪化する。

6のステップは、融資額が縮んだときに収益面がどうなるかを見る工程です。NOI・融資額・金利・期間を自分の物件の数字に入れ替えて確認したい場合は、RE-AIの無料DSCRシミュレーターでDSCRと返済後CFを試算することができます。金利上昇時のストレス表も同時に出ます。

なお今回のように、土地評価・積算価格・融資可能額・必要自己資金・DSCR・IRR・出口価格を同時に動かすと、表計算では条件の整合性を保つのが難しくなります。RE-AIでは収益性・価格査定・融資・リスク・出口戦略を一つの入力セットから並行して確認できるよう設計していますが、形状補正のような個別事情は資料と現地で確認する前提の情報です。

この分析では分からないこと

  1. 銀行が実際に使う形状補正は公開されていない。今回は国税庁の調整率表を代用したが、金融機関の積算評価が同じ補正率を使う保証はない。路線価の何%を採用するか、形状をどう織り込むかは金融機関ごとに異なる。この不確実性は掛目80〜100%の感応度分析で一部を代替している。
  2. 形状が賃貸需要・建物配置に与える影響は織り込んでいない。細長地や不整形地では、同じ地積でも戸数や間取り、駐車場台数、日当たり、動線が不利になることがある。今回は家賃537.6万円を全ケースで同一としたため、この分の減価は含まれていない。実際には家賃面でも差が出る可能性が高い。
  3. 実際の市場価格に形状減価がどれだけ織り込まれているかは検証していない。「売出価格が形状を反映していない」という前提で必要値引きを計算したが、売主側がすでに形状を考慮して価格を決めている場合、追加の値引き余地はない。
  4. かげ地割合の算定には判断が入る。想定整形地の取り方で割合は変わるため、資料からの概算と実際の評価は一致しないことがある。
  5. 税引前のみの試算である。減価償却・土地建物比率・所有形態(個人/法人)による税負担の差は織り込んでいない。土地比率が高い物件は償却資産が小さく税引後の結果は変わる。
  6. 路線価・家賃・金利の将来推移は固定している。路線価横ばい、家賃年0.5%下落、金利3.3%固定という前提で、実際の推移は異なる。
  7. 再建築不可・無道路地・がけ地は対象外。これらは形状補正の問題ではなく建築可否の問題で、減価の構造が異なる。

まとめ

同じ320㎡・同じ路線価12.0万円/㎡の土地でも、形状によって評価は最大25.4%下がり、融資可能額は877.1万円縮みました。売出価格5,400万円のまま買えば、必要自己資金は672.5万円から1,549.7万円へ2.3倍になります。

整形地と同じ自己資金に収めるための値引きは、かげ地45%+間口8mの不整形地で売出の15.18%、間口7mの細長地で12.82%、かげ地30%の不整形地で5.98%、セットバック物件で1.36%でした。一方、IRRで並ぶだけなら必要値引きは10.94%で足り、融資ルールが「価格×85%」の銀行なら6.26%まで縮みます。

「形が悪いから買わない」でも「安いから買う」でもなく、形状減価が何万円で、それが価格に反映されているか、自分の融資ではどの天井が先に効くかを順に検算する。それがこの分析から取り出せる実務的な結論です。

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参考資料・出典

情報確認日:2026年10月21日

  • 国土交通省・国税庁「土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31年1月分以降用)」国税庁 — 奥行価格補正率表、不整形地補正率表、不整形地補正率を算定する際の地積区分表、間口狭小補正率表、奥行長大補正率表(本記事の形状補正率はすべてこの表の普通住宅地区・地積区分Aの値を使用)https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/hyoka/annai/1470-05.htm
  • 国税庁「No.4604 宅地の評価単位」「土地及び土地の上に存する権利の評価明細書」— 不整形地補正率の算定方法(不整形地補正率×間口狭小補正率と奥行長大補正率×間口狭小補正率の低いほう、下限0.60)、セットバックを必要とする宅地の評価(後退部分の70%控除)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4604_qa.htm
  • 建築基準法第42条第2項(道路の定義・道路境界線のみなし規定)
  • 日本銀行「金融政策決定会合」2026年9月18日 — 政策金利1.25%程度(金利前提の参照値)
  • 短期プライムレート(最頻値)2.375%・2026年8月3日適用 — 融資金利3.3%の前提として参照

データ区分の明示:本記事の形状補正率は国税庁が公開する【公開データ】です。物件価格・家賃・建物単価・金利・融資期間・掛目・空室率・運営費率・出口利回りは、分析目的に合わせて設定した【架空ケース】であり、実在の物件統計ではありません。土地評価・積算価格・融資可能額・必要自己資金・DSCR・CCR・IRR・必要値引き額は、それらの条件から計算した【シミュレーション】です。RE-AIの診断実データは使用していません。本記事は投資判断の保証を行うものではありません。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

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