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新築アパートは中古より約36%高い|10年IRRで比較すると有利な条件が入れ替わる理由

新築アパートは中古より約36%高い|10年IRRで比較すると有利な条件が入れ替わる理由

新築アパートの販売会社から営業を受けると、多くの人がまず「中古より高い」という印象を持ちます。しかし価格差がそのまま損得を意味するわけではありません。本記事では、延床面積・戸数をそろえた架空例を使い、融資期間や大規模修繕のタイミングまで含めた10年IRRで新築と中古を比較します。

新築アパートは中古より本当に高いのか|実データで確認する

健美家株式会社が公表している「収益物件 市場動向四半期レポート」(2026年7〜9月期、全国・登録物件の平均値)によると、一棟アパートの築年帯別の平均価格・表面利回りは次のようになっています。

築年帯

平均表面利回り

平均価格

築10年未満

5.95%

13,451万円

築10年〜20年未満

6.77%

10,989万円

築20年以上

9.30%

6,200万円

築10年未満と築20年以上では、平均価格に2倍以上の差があり、表面利回りも3.35ポイント開いています。ただしこの数字は全国の登録物件を単純平均したものであり、築年帯によって物件規模(戸数・延床面積)の分布が異なる可能性があります。つまりこの価格差には、「新築だから高い」という要因と「規模が大きい物件が多いから高い」という要因が混ざっています。新築プレミアムそのものを確かめるには、規模をそろえた比較が必要です。

なぜ新築は高くなるのか|価格の構成要素

新築アパートの販売価格は、おおまかに「建築費」「土地代」「設計・諸費用」「販売会社の利益・広告費等」を合計したものです。建築費の目安としては、国土交通省「建築着工統計調査報告」(令和7年12月分、2026年1月30日公表)の全国集計から、木造建築物の1平方メートルあたり工事費予定額が約234,100円であることが確認できます(単月集計のため、月によって変動する点に留意してください)。

一方で、販売会社がどの程度の利益・広告費を価格に乗せているかを示す公的な統計は確認できないため、本記事では推測の数字を記載しません。新築の価格を「コストの積み上げ」だけで説明しようとすると、ここで必ず根拠不明の仮定が必要になります。そこで本記事では、価格差そのものを所与として、その差が運用・融資・出口の条件の違いでどこまで埋まるのかを検証する、という順番で考えます。

延床・戸数をそろえた比較条件

以下は、新築プレミアムの効果だけを確かめやすくするために、建物規模をそろえて設定した架空例です。実在の物件ではありません。想定読者は、木造一棟アパートを初めて検討している個人投資家です。

共通の建物条件

  • 木造アパート、8戸、延床面積260平方メートル(1戸あたり専有約25平方メートル+共用部)
  • 新築の建築費は、国土交通省統計の234,100円/平方メートルを基準に算出(260平方メートル×234,100円=約6,090万円)。これに土地代・設計費・諸費用等を加え、新築の想定販売価格を8,200万円に設定
  • 中古は築22年(木造の法定耐用年数22年に達した状態)とし、健美家の築20年以上帯の表面利回り(9.30%)に近い水準で、想定販売価格を6,050万円に設定

新築ケースの前提

項目

新築

価格

8,200万円

表面利回り

6.2%

空室率

5%(新築は入居が決まりやすいと仮定)

運営費率(対実効収入)

20%

自己資金・融資

自己資金1,640万円/融資6,560万円(LTV80%)

金利・融資期間

2.0%/30年

中古ケースの前提

項目

中古(築22年)

価格

6,050万円

表面利回り

8.5%

空室率

8%

運営費率(対実効収入)

25%(築古のため上振れを仮定)

自己資金・融資

自己資金1,815万円/融資4,235万円(LTV70%)

金利・融資期間

2.6%/15年(残存耐用年数を基準に金融機関が短縮すると仮定)

大規模修繕

5年目に800万円発生(屋根・外壁等)

価格差は2,150万円、新築は中古の約1.36倍(約35.5%高い)です。融資期間を新築30年・中古15年としたのは、木造の法定耐用年数22年の残存年数を基準に融資期間の上限を決める金融機関が多いためです。この前提の妥当性は物件・金融機関ごとに異なるため、実際の検討では必ず個別に確認してください。

表面利回り・NOI・DSCRを比較する

項目

新築

中古

実効収入(EGI)

482.98万円

473.11万円

NOI

386.38万円

354.83万円

NOI率(対GPI)

76.0%

69.0%

年間ローン返済額

292.90万円

344.57万円

初年度DSCR

1.32倍

1.03倍

表面利回りでは中古が2.3ポイント高く見えますが、NOI率は新築の方が7.0ポイント高く、初年度DSCRは中古が1.03倍と、空室や家賃下落に対する余裕がほとんどありません。DSCRが1.2を下回ると融資の継続や次の融資に影響しやすくなる点は、別記事「不動産投資のDSCRとは?」でも解説しています。表面利回りの差だけで判断すると、この余裕の差を見落とすことになります。

10年保有・売却まで通した場合のIRR

保有10年間のキャッシュフローと、10年目の売却(出口キャップレートは、新築・中古それぞれの購入時NOIベースの利回りに、築年経過による市場の変化を見込んで新築は0.4ポイント、中古は1.5ポイント上乗せして設定)を通した結果は次のとおりです。

項目

新築

中古

保有10年間の累計CF(売却前)

849万円

▲776万円

10年目の想定売却価格

7,228万円

4,602万円

残債

4,789万円

1,596万円

売却手残り

2,077万円

2,776万円

自己資金

1,640万円

1,815万円

10年IRR

7.16%

0.82%

この架空例では、価格が35.5%安い中古の方がIRRで大きく劣る結果になりました。理由は主に3つです。

新築が有利に働いた要因

第一に、空室率の差(新築5%・中古8%)がNOIに積み重なります。第二に、融資期間が新築30年・中古15年と短く、中古の年間返済額が新築より52万円近く重くなっています。第三に、中古では5年目の大規模修繕800万円が保有中のキャッシュフローを圧迫しています。大規模修繕と資金繰りの関係は「大規模修繕の年、手元資金はいくら必要か」でも詳しく試算しています。

中古が有利に働く可能性がある要因

一方で、売却手残り自体は中古の方が277.6万円多くなっています。これは、投下した自己資金に対する比率(CCR)や出口までの期間が短く済む場合、あるいは融資期間をより長く組める金融機関を見つけられた場合には、結果が入れ替わる可能性を示しています。実際、別記事「築5年・15年・25年・35年の木造アパート、同じ8,000万円ならどれが有利か」では、価格を固定した場合に融資期間と出口利回りがIRRに与える影響を比較しており、本記事の融資期間の前提がIRRに占める比重の大きさを裏付けています。

新築プレミアムが正当化される条件・されない条件

今回の架空例が示しているのは、「新築は損」でも「中古は得」でもなく、価格差が運用条件の差で埋まるかどうかは個々の前提に強く依存するという点です。特に次の3条件は、結論を左右しやすいポイントです。

  • 融資期間の差がどこまで確保できるか(金融機関・担保評価によって新築でも短くなる場合があります)
  • 空室率の差が想定どおりか(新築でも賃貸需要の弱いエリアでは空室率が下がらない場合があります)
  • 中古物件の大規模修繕の時期と金額をどこまで正確に見積もれるか(インスペクションの有無で精度が変わります)

金利や空室率が前提より悪化した場合、DSCRに余裕の少ない中古(初年度1.03倍)の方が先に影響を受けやすい点も踏まえておく必要があります。不動産投資は条件によって結論が変わるため、「新築だから安全」「中古だから利回りが高くて得」という単純化は避けるべきです。

価格・融資・出口を同時に見る必要性

この検証からわかるのは、表面利回りや価格だけを比較しても新築と中古の優劣は決まらないということです。価格査定・収益性・融資・出口戦略を別々に見ていると、どちらが有利かという問いに答えを出せません。新築か中古かで迷っている場合は、検討している物件の価格・利回り・融資条件・想定出口を一度にまとめて試算してみることをおすすめします。RE-AIの無料診断では、物件情報を入力して収益性・価格・融資・リスク・出口戦略を総合的に確認できます。

価格そのものの妥当性をより詳しく確認したい場合は、「収益物件の価格査定完全ガイド」で収益還元法・積算法・取引事例比較法の使い分けを解説しています。積算法による建築費・価格の考え方は「木造・鉄骨・RC、同じ8,000万円の物件で積算価格はいくら変わるか」、融資の基本的な見方は「不動産投資ローン完全ガイド」も参考にしてください。

まとめ

新築アパートは中古より価格が高くなりやすい一方、融資期間の長さや空室率の低さ、大規模修繕の先送りといった運用面のメリットも持っています。今回の架空例では、価格差35.5%を融資期間と空室率、修繕費のタイミングの差が上回り、新築の10年IRRが中古を上回る結果になりました。ただしこの結果は前提条件に強く依存するため、実際の物件を検討する際は、同じ考え方で自分の条件に当てはめて試算することが重要です。

参考資料・出典

情報確認日:2026年11月4日。市況・統計データは変動するため、実際の検討時には最新の情報を確認してください。本記事の数値例は、仕組みを理解しやすくするために条件をそろえて設定した架空例であり、実在の物件・取引を示すものではありません。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

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