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借地権付き収益物件は買いか?高利回りに見える理由と出口までの注意点

借地権付き収益物件は買いか?高利回りに見える理由と出口までの注意点

「相場より2割ほど安いのに、利回りは明らかに高い」。そんな物件が借地権付きだった、というケースは珍しくありません。借地権物件は土地の税金や取得費用がかからない分、表面利回りが高く見えます。しかし、融資の受けやすさや売却時の制約まで含めて比較すると、印象ほど有利とは限りません。本記事では、借地権物件の仕組みと、購入前に確認しておきたい実質的な収益力・出口までのリスクを整理します。

そもそも「借地権付き収益物件」とは

借地権付き物件とは、建物の所有権だけを取得し、土地は地主から借りて利用する物件です。土地の所有権を持たない代わりに、地主へ地代(借地料)を支払います。借地権は市場ではかからない持ち出し費用がない一方、契約の性質によって「普通借地権」と「定期借地権」に大きく分かれます。

区分

存続期間

更新

契約終了時

普通借地権

30年以上

できる(地主に正当事由が必要)

更新が前提となりやすく、実質的に長期保有しやすい

定期借地権(一般定期借地権)

50年以上

できない

期間満了で確定的に終了し、更地で返還するのが原則

普通借地権は、地主が更新を拒むには正当事由が必要とされているため、実務上は更新されるケースが多いとされています。一方、定期借地権は契約期間の満了とともに借地契約が終了する点が大きく異なります(出典:国土交通省「定期借地権の解説」、借地借家法)。物件がどちらの借地権に該当するかは、契約書と登記事項証明書で必ず確認する必要があります。

借地権は、購入前に確認しておきたい「物件そのものに内在するリスク」の一つでもあります。再建築不可や既存不適格とあわせて、収益物件購入前のリスクチェックの全体像は別記事で整理していますので、あわせてご確認ください。

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なぜ借地権物件は利回りが高く見えるのか

借地権物件は土地の所有権を持たないため、土地部分の固定資産税・都市計画税や、土地取得のための費用がかかりません。物件価格は建物部分(および借地権の対価)を中心に決まるため、同じ家賃収入でも物件価格が抑えられ、結果として表面利回りは所有権の物件より高く表示されやすくなります。

ただし、これは「利回りが高い」というより「価格の構成要素が違う」というのが実態に近いといえます。土地の税金がかからない代わりに、毎年の地代という別の固定費が発生するためです。価格の割安さの裏に制限が織り込まれているケースは借地権に限らず、再建築不可物件は「投資」になるかを試算した記事でも似た構造を扱っています。

【試算】表面利回りの差ほど、実質的な収益力の差は大きくない

以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。実在の物件や取引を示すものではありません。同じエリア・同規模の物件で、所有権物件Aと借地権物件Bを比較します。

  • 物件A(所有権):価格8,000万円、年間家賃収入560万円(表面利回り7.0%)、運営費(管理費・固定資産税・保険料など)年間80万円
  • 物件B(普通借地権):価格5,600万円※、年間家賃収入560万円(表面利回り10.0%)、年間地代120万円、運営費(建物分の固定資産税・保険料など)年間40万円

※借地権付き物件の取引価格には、土地の借地権割合が目安の一つとして影響することがあります。国税庁の路線価図では、借地権割合はエリアごとにA(90%)からG(30%)まで7段階で定められています。これは主に相続税・贈与税の評価に使う基準であり、実際の売買価格と直接一致するものではありませんが、借地権物件の価格水準を考える際の参考値として用いられることがあります(出典:国税庁「路線価図の説明」)。ここでは仮に借地権割合70%のエリアと想定し、価格を所有権物件の70%とした場合を試算の前提としています。

この条件でNOI(家賃収入から運営費を引いた純収益)を計算すると、次のようになります。

項目

物件A(所有権)

物件B(普通借地権)

価格

8,000万円

5,600万円

表面利回り

7.0%

10.0%

年間家賃収入

560万円

560万円

地代

-

120万円

運営費

80万円

40万円

NOI

480万円

400万円

NOI利回り(NOI÷価格)

約6.0%

約7.1%

表面利回りだけを見ると物件Bは物件Aの1.4倍以上に見えますが、地代を運営費に含めてNOI利回りで比較すると、差は6.0%と7.1%まで縮まります。借地権物件を検討する際は、表面利回りではなく、地代を差し引いた後の実質的な収益力で比較することが欠かせません。収支指標の考え方全体については、収益物件の収支計算完全ガイドでも整理しています。

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融資が難しい理由|積算評価と流動性の壁

借地権物件は、金融機関の融資審査でも所有権物件と異なる評価を受けやすい傾向があります。多くの金融機関が担保評価に使う積算法は、土地と建物それぞれの評価額を積み上げる方法ですが、借地権の場合は土地そのものを担保に取れないため、積算評価は所有権物件より低くなりやすいとされています。

そのため、借地権物件では自己資金の比率を高めに求められたり、融資期間を短く設定されたりするケースが少なくありません。金融機関ごとに融資の考え方や重視するポイントが異なる点は、日本政策金融公庫・地方銀行・ノンバンクを比較した記事でも整理しています。

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また、売却時の流動性が低いことも借地権物件の特徴です。買い手側も同様に融資を受けにくいため、購入希望者の層が所有権物件より限られやすくなります。

定期借地権は「残存期間」が出口価値を左右する

普通借地権は実務上更新されるケースが多い一方、定期借地権は契約期間の満了とともに借地契約が終了し、更地で返還するのが原則です。そのため、定期借地権付きの建物は、残存期間が短くなるほど建物を使用できる期間そのものが短くなり、買い手にとっての投資価値も残存期間に応じて小さくなっていく傾向があります。

この点は、所有権物件やほとんど更新が前提となる普通借地権の物件と比べて、出口戦略を考えるうえで大きく異なる部分です。定期借地権物件を検討する場合は、表面利回りだけでなく、残存期間が何年あり、その期間で投資回収が見込めるかを必ず確認する必要があります。保有期間全体を通じた出口の考え方は、収益物件の出口戦略完全ガイドでも整理しています。

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売却時に見落としやすいこと|地主の承諾と譲渡承諾料

借地権付き物件を売却する場合、原則として地主の承諾が必要です。承諾を得る際には「譲渡承諾料」を求められることが一般的で、金額は借地権価格の10%程度が一つの目安とされることがありますが、地主との合意や契約内容によって異なります。地主の承諾が得られない場合、裁判所に承諾に代わる許可を求める手続き(借地非訟)を利用できる制度もありますが、時間と費用がかかります。

更新料についても同様に、契約書に明記されているか、更新のたびにいくら発生するのかを事前に確認しておく必要があります。これらの費用は表面利回りの計算には通常含まれていないため、保有期間全体のキャッシュフローに織り込んで検討することが望まれます。

地主が変わったら借地権はどうなるか|対抗力と実務上の注意

借地権物件で見落とされやすいのが、「地主が亡くなって相続が発生した場合」や「地主が土地を第三者に売却した場合」に、自分の借地権がどうなるかという点です。借地借家法第10条は、借地権者が借地上の建物を自己名義で登記していれば、地主が変わっても新しい地主(譲受人)に対して借地権を主張できると定めています。つまり、建物の登記名義が整っていれば、地主の交代そのものによって借地権が失われることは原則としてありません。

ただし、地主が変わったタイミングで、地代の増額請求や更新条件の見直しを打診されるケースは実務上あります。特に周辺の地価が上昇している局面では、新しい地主から相場に合わせた地代改定を求められることがあり、収支計画に織り込んでおく必要があります。契約書に地代改定に関する条項がどう定められているかは、購入前に必ず確認しておきたいポイントです。

購入前に確認しておきたいポイント

  • 借地権の種類(普通借地権か定期借地権か)と、契約の残存期間
  • 地代の金額と、今後の改定条件(増額請求の有無)
  • 借地上の建物が借地権者名義で登記されているか(地主変更時に対抗するための要件)
  • 更新料・譲渡承諾料の有無と、契約書上の金額の目安
  • 地代・譲渡承諾料まで含めた実質的なNOI・DSCR
  • 金融機関がその物件をどう評価するか(積算評価・融資期間の目安)

価格・融資・出口を別々に見ない

借地権物件は、価格だけを見ると割安に見えても、地代を含めた実質収益力、融資の受けやすさ、そして出口での流動性という3つの軸を別々に見ると評価を誤りやすい物件です。RE-AIでは、こうした複数の条件を同時に確認できるように設計しており、借地権のような個別性の強い条件も、価格・融資・出口の全体像の中でどう影響するかを一次確認する材料としてご利用いただけます。

まとめ

借地権付き収益物件は、土地の税金や取得費用がかからない分、表面利回りが高く見えやすい物件です。しかし地代を含めた実質的な収益力で比較すると、その差は表面上ほど大きくないことがあります。加えて、融資の受けにくさ、売却時の地主の承諾や譲渡承諾料、定期借地権であれば残存期間による出口価値の逓減など、所有権物件にはない制約も存在します。価格の安さだけで判断せず、実質収益力・融資条件・出口までを含めて確認することが欠かせません。なお、借地権の評価や地代の妥当性、譲渡承諾料の相場は個別の契約や地域によって異なるため、最終的な判断の前には宅地建物取引士や弁護士など専門家にご確認ください。

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本記事の試算は理解しやすくするための架空例であり、実際の借地権価格・地代・融資条件は物件・地域・金融機関によって異なります。法律・税務・融資に関する最終判断は、専門家にご確認ください。

参考資料・出典(情報確認日:2026年8月18日)

  • 国土交通省「定期借地権の解説」
  • 借地借家法(普通借地権・定期借地権の存続期間に関する規定)
  • 国税庁「路線価図の説明」(借地権割合A〜Gの区分)
  • 借地借家法第10条(借地権の対抗力に関する規定)

#不動産投資 #借地権 #収益物件 #リスク管理 #出口戦略

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

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