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「検査済証がない=違法建築」は本当か|収益物件の融資リスクと見分け方

「検査済証がない=違法建築」は本当か|収益物件の融資リスクと見分け方

「検査済証がありません」という一文だけで、その収益物件を違法建築だと決めつけて検討をやめていませんか。国土交通省の資料によれば、平成11年(1999年)以前に建てられた建築物は、全国で半数以上が検査済証の交付を受けていません。この記事では、検査済証がないことと違法建築の違い、融資への影響、購入前に確認すべき手順を整理します。

検査済証とは何か──確認済証との違い

建築基準法では、建物を新築・増改築する際、着工前に「建築確認申請」を行い、計画が法令に適合していることの確認を受けて交付されるのが確認済証です。工事完了後には、建築主事または指定確認検査機関による「完了検査」を受け、実際に建った建物が計画どおりで法令に適合していることが確認されて初めて、検査済証が交付されます。

つまり確認済証は「着工前の計画に対する適合証明」、検査済証は「完成した建物そのものに対する適合証明」という違いがあります。中古の収益物件を検討する際、融資の場面で問題になりやすいのは主に後者、検査済証の有無です。

「検査済証がない」=「違法建築」ではない

中古の収益物件情報に「検査済証なし」と書かれていると、違法建築物ではないかと不安になるのは自然な反応です。しかし国土交通省が平成26年にまとめた資料では、検査済証の交付を受けていない建築物は、平成11年以前では全国で半数以上を占めていたと明記されています。完了検査率(確認件数に対する検査済証交付件数の割合)は、平成10年度時点で全国平均4割に届かず、平成11年の建築基準法改正で指定確認検査機関による検査が広がった後、平成20年頃には9割前後まで上昇しました。

つまり、築30年以上の物件で検査済証がないこと自体は珍しい話ではなく、それだけで違法建築と断定することはできません。重要なのは、検査済証がない物件が、次に説明する「既存不適格」なのか「違反建築物(違法建築)」なのかを見極めることです。

既存不適格建築物とは

既存不適格建築物とは、建築した時点では適法だったものの、その後の法改正や都市計画の変更によって、現在の建築基準法には適合しなくなった建物を指します。用途地域の変更で容積率の上限が下がった、耐震基準が改正されたなどが典型例です。既存不適格であること自体は違法ではなく、建物をそのまま使い続けることは認められています。ただし増改築や建て替えの際には、現行基準への適合や緩和規定の適用が必要になります。

違反建築物(違法建築)とは

一方、違反建築物(違法建築)は、建築した時点から建築基準法などの規定に違反している建物です。無許可の増築、建蔽率・容積率のオーバー、用途変更の無届けなどが典型例です。既存不適格は「後から基準が変わった」結果ですが、違反建築物は「建てた時点で守っていなかった」結果という違いがあります。

ただし、国土交通省の資料自身も「検査済証のない建物は、既存不適格建築物であるのか違反建築物であるのかの判断が難しい」と認めており、書類だけでは区別できないケースが多いのが実情です。この判断を、専門家の調査なしに投資家自身が現況の見た目だけで下すのは危険です。既存不適格物件を購入する際の具体的な注意点は「既存不適格物件は買っても大丈夫か|自己資金が2倍に増える融資試算で検証した」、接道義務を欠く再建築不可物件については「再建築不可物件は「投資」になるか|表面利回り15%の物件を出口まで試算した」で別途整理しています。

検査済証がないと融資はどうなるか

金融機関は担保評価や資産の適法性を確認する目的で、融資審査の際に検査済証の提出を求めることが一般的です。検査済証がないと、違反建築物である可能性を否定できないという理由で、都市銀行や地方銀行、フラット35などでは融資を断られやすくなります。不動産投資ローンの審査でどのような項目が見られるかは「不動産投資ローン完全ガイド|審査基準・金利・融資期間・自己資金とDSCRの見方」で整理していますが、検査済証がない物件は、その審査の入り口で取り扱い自体を避ける金融機関が多い点に注意が必要です。金融機関ごとに融資姿勢がどう違うかは「自己資金1,000万円、価格8,000万円の一棟アパート。金融機関3タイプで審査の見られ方はここまで違いました」でも確認できます。

一方で、すべての金融機関が一律に融資を拒否するわけではありません。信用金庫など地域密着型の金融機関では、登記や現況を確認できれば融資に応じる事例もあります。ノンバンク系の融資であれば検査済証がなくても対象とする場合がありますが、一般に金利は銀行より高くなる傾向があります。

「法適合状況調査」という代替手段

検査済証を後から再発行する制度はありません。ただし国土交通省は平成26年、「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」を策定しました。このガイドラインに基づき指定確認検査機関が実施する調査(法適合状況調査)を受け、その結果をまとめた報告書を取得すれば、建物が建築時点の建築基準法令に適合していることを示す資料として金融機関へ提出できる場合があります。

報告書は検査済証そのものとみなされるわけではありませんが、金融機関によってはこの報告書を代替資料として受け入れ、融資審査を進めるケースがあります。調査には確認済証や竣工図など既存の図書が必要で、図書が残っていない場合は建築士に復元図面の作成を依頼する必要があり、費用と時間がかかる点は踏まえておく必要があります。

検査済証の有無を確認する方法

検査済証の有無は、物件所在地を管轄する特定行政庁(建築指導課など)で「建築計画概要書」や「台帳記載事項証明書」を取得すれば確認できます。売買の場では重要事項説明書に検査済証の有無が記載されるのが原則ですが、契約前に自分でも確認しておくと安心です。重要事項説明書全体で見落としやすい項目は「重要事項説明書で見落とすと危ない7項目、価格6,200万円の一棟アパートで検証しました」に整理しています。

融資条件を変えて試算してみる

以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。実在の物件や取引を示すものではありません。

地方都市の木造アパート(8戸、1988年築・築38年)を、価格4,300万円で検討しているケースを考えます。満室想定年間家賃480万円(表面利回り11.2%)、空室率15%、運営費を家賃の25%(120万円)とすると、実効収入408万円からNOIは288万円、実質利回りは6.7%です。この物件を、融資条件別に3パターンで比較します。

項目

A:現金購入(融資なし)

B:報告書取得→地銀融資

C:報告書なし→ノンバンク融資

借入条件

なし

3,000万円・金利2.5%・20年

2,500万円・金利4.5%・15年

年間返済額

0円

190.8万円

229.5万円

DSCR

1.51倍

1.25倍

年間CF(税引前)

288万円

97.2万円

58.5万円

必要自己資金(諸費用込み)

約4,601万円

約1,601万円

約2,101万円

法適合状況調査の報告書を取得して地銀融資を受けられた場合(ケースB)は、自己資金を現金購入に比べて約3,000万円抑えながら、DSCR1.51倍、年間CF97.2万円を確保できます。一方、報告書を用意できずノンバンクの融資に頼らざるを得なかった場合(ケースC)は、金利上昇と融資期間の短縮が重なり、DSCRは1.25倍まで下がり、年間CFはケースBの6割程度にとどまります。現金購入(ケースA)はCFこそ最大ですが、4,600万円超の自己資金が必要になり、次の物件を検討する余力は小さくなります。どのケースも数字上は黒字ですが、融資条件によって手元に残る金額と資金の機動力は大きく変わります。

金利や融資期間を変えたときにDSCRや年間CFがどこまで動くかは、不動産投資ローンシミュレーター(無料)で、借入額・金利・融資期間を入力しながらご自身の条件で確認できます。

購入前に確認すべきこと

  1. 台帳記載事項証明書等で、検査済証の有無を管轄の特定行政庁で確認する。
  2. 検査済証がない場合、既存不適格か違反建築物かの手掛かりを重要事項説明書や現況から確認する。
  3. 融資を利用する予定なら、銀行・信用金庫・ノンバンクなど複数の金融機関に、検査済証なしでも取り扱い可能かを事前相談する。
  4. 法適合状況調査(ガイドライン調査)の要否と概算費用を、建築士や指定確認検査機関に確認する。
  5. 融資条件が変わった場合のDSCR・CFへの影響を試算し、現金購入も選択肢に含めた資金計画の幅を持たせる。

まとめ

  • 検査済証がない建築物は、平成11年以前では全国で半数以上を占めており、検査済証がないこと自体は珍しくない。
  • 検査済証がない物件は、後から基準が変わった「既存不適格」と、建築時点から違反していた「違反建築物」のどちらかだが、国交省の資料でもその判別は難しいとされている。
  • 検査済証がないと銀行融資は受けにくくなるが、信用金庫やノンバンクでは取り扱う事例もあり、法適合状況調査の報告書が代替資料になる場合がある。
  • 架空例(価格4,300万円・木造アパート)で試算すると、報告書取得で地銀融資を受けたケースはDSCR1.51倍・年間CF97.2万円、報告書なしでノンバンクを使ったケースはDSCR1.25倍・年間CF58.5万円だった。
  • 検査済証の有無だけで即断せず、既存不適格か違反建築物かの確認、融資姿勢の金融機関間の違い、法適合状況調査の要否を順に確認することが重要。

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参考資料・出典

  • 国土交通省「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(平成26年7月)https://www.mlit.go.jp/common/001046525.pdf(情報確認日:2026年9月16日)

情報確認日:2026年9月16日

本記事の試算は、記載した条件を前提とした簡略化した計算結果であり、特定の物件や取引を示すものではありません。検査済証の有無、既存不適格か違反建築物かの判断、融資の可否は個別の物件・金融機関によって異なり、法律・融資に関する最終判断は特定行政庁や建築士、金融機関、専門家にご確認ください。本記事は特定の物件の購入を推奨するものではありません。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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