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擁壁のある収益物件は買ってよいか|再構築費用520万円でDSCRは1.37倍から1.21倍まで下がった

擁壁のある収益物件は買ってよいか|再構築費用520万円でDSCRは1.37倍から1.21倍まで下がった

擁壁がある物件は「危ない」と一括りにされがちですが、投資判断を左右するのは印象ではなく、補修・再構築費用が自己資金とDSCRをどこまで圧迫するかです。木造一棟アパートの架空例で、その影響を数字で確認します。

擁壁とは何か、収益物件でなぜ論点になるのか

擁壁(ようへき)とは、宅地を造成する際に土砂の崩壊を防ぐために設置するコンクリートや石造の壁のことです。建築基準法第88条・同施行令第138条第1項第五号により、高さ2mを超える擁壁は「工作物」として扱われ、建築確認申請と完了検査(検査済証の取得)が必要になります。また同施行令第142条では、鉄筋コンクリート造や石造など腐食しにくい構造にすることや、排水のための水抜き穴を設けることが技術基準として定められています。

崖地や傾斜地を造成した分譲地・賃貸アパート用地では、この擁壁が敷地の一部として存在するケースが珍しくありません。国土交通省は「我が家の擁壁チェックシート(案)」を公開し、住民や購入検討者が擁壁の概略的な危険度を確認できるようにしています。

検査済証があっても、投資判断上のリスクが消えるわけではない

高さ2m超の擁壁で建築確認・検査済証が確認できれば、最低限の法的手続きを経ていることにはなります。ただし検査済証は、擁壁が現時点で完全に健全であることや、今後補修が不要であることまで保証するものではありません。建築後数十年が経過した擁壁では、経年劣化やひび割れ、はらみ出しが進んでいる場合があり、金融機関も融資審査で擁壁の状態を担保評価の一要素として確認します。

問題は、この「将来の補修・再構築費用」が、物件の表面利回りや現在のキャッシュフローには一切表れないことです。次章では、この費用が自己資金比率とDSCRにどこまで影響するかを試算します。

架空例で試算する|擁壁の補修・再構築費用は自己資金とDSCRをどこまで動かすか

以下は理解しやすくするために単純化した架空例です。実在の物件や取引を示すものではありません。

項目

条件

物件種別

木造一棟アパート(8戸)

物件価格

4,600万円

表面利回り

9.4%(満室想定年間家賃432万円)

想定空室率

8%

運営費率

27%(管理費・固定資産税・保険・修繕費など)

敷地内の擁壁

高さ2.5m×延長15m、検査済証は未確認、経年劣化あり

実効家賃収入は432万円×(1−8%)=397万円。ここから運営費117万円を差し引いたNOIは281万円です。自己資金15%(690万円)、借入3,910万円、金利2.3%、融資期間25年の元利均等返済で試算すると、年間返済額は206万円、DSCR(NOI÷年間返済額)は1.37倍になります。

補修で済む場合と、全面再構築が必要な場合

ケース

想定費用

内容

Case A・軽微な補修

120万円

ひび割れ補修・部分的な吹付工事などを想定

Case B・全面再構築

520万円

高さ2.5m×延長15mの擁壁を鉄筋コンクリート造で造り直す場合を想定

自己資金で吸収する場合

項目

ベース

Case A

Case B

自己資金額

690万円

810万円

1,210万円

自己資金比率

15.0%

17.6%

26.3%

全面再構築が必要になると、自己資金比率は約11.3ポイント上昇します。当初想定していた自己資金計画の4分の1以上を、擁壁の再構築だけで使うことになる計算です。

融資に組み込む場合

項目

ベース

Case A

Case B

借入額

3,910万円

4,030万円

4,430万円

年間返済額

206万円

212万円

233万円

DSCR

1.37倍

1.33倍

1.21倍

DSCRについては「不動産投資のDSCRとは?1.2を下回ると融資が厳しくなる理由と計算例」で解説していますが、全面再構築を融資でまかなうケースでは、DSCRが金融機関の警戒ラインとされる1.2倍まであと0.01ポイントに迫ります。物件そのものの収益力に変化がなくても、擁壁という一つの要因だけでDSCRが危険水域に近づく点は見落とされがちです。

いくらの値引きを求めるべきか

この試算が示すのは、「擁壁が古い」「検査済証が確認できない」という情報だけでは判断材料にならず、想定される補修・再構築費用を具体的な金額に落とし込んで初めて、値引き交渉や購入可否の判断ができるということです。

理論的には、全面再構築が濃厚な場合、その520万円相当を物件価格から差し引くことができれば、自己資金比率・DSCRとも当初の想定水準(自己資金15%、DSCR1.37倍)に戻せます。ただし実務では、擁壁の劣化度合いを正確に診断できるのは建築士や擁壁工事の専門業者に限られ、売主側がその診断費用や補修費用を価格へ織り込むとは限りません。値引きが得られない場合は、自己資金と融資条件のどちらで補修費用を負担するかを、契約前に決めておく必要があります。

物件価格の上限をどう考えるかは「売出8,000万円の物件、自分はいくらまで払えるのか」でも整理していますが、擁壁のように追加費用が発生しうる物件では、算出した上限価格からさらに補修費用相当を差し引いて検討するのが安全です。

契約前に確認しておきたいこと

RE-AIで確認できること

補修費用を自己資金で負担するか、融資に組み込むかによって、DSCRや自己資金比率がどう変わるかは、条件を変えるだけで数値が大きく動きます。実際の物件条件で試算したい場合は、RE-AIのDSCRを無料で計算するツールで、借入額やNOIを入力しながら確認できます。

まとめ

  • 高さ2mを超える擁壁は建築基準法上の「工作物」として、確認申請・検査済証の有無を確認すべき対象になる。
  • 検査済証があっても、擁壁が将来にわたり補修不要と保証されるわけではない。
  • 架空例(価格4,600万円・木造8戸)では、全面再構築費用520万円を自己資金で負担すると自己資金比率は15%→26.3%、融資に組み込むとDSCRは1.37倍→1.21倍まで下がった。
  • 値引き交渉や購入可否の判断は、想定される補修・再構築費用を具体的な金額に落とし込んでから行う必要がある。
  • 本試算は簡略化した架空例であり、個別物件の擁壁の安全性・補修要否・費用は建築士や専門業者による現地診断が必須。

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参考資料・出典

情報確認日:2026年9月8日

本記事の試算は、記載した条件を前提とした簡略化した架空例であり、特定の物件や取引を示すものではありません。擁壁の安全性・補修要否・工事費用は個別の物件により大きく異なり、建築士や擁壁工事の専門業者による現地診断が必要です。融資条件や税務については、金融機関・税理士等の専門家にご確認ください。本記事は特定物件の購入を推奨するものではありません。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

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