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住所を1文字間違えただけで、査定価格が740万円動いていましたRE-AI開発日誌 #005

住所を1文字間違えただけで、査定価格が740万円動いていましたRE-AI開発日誌 #005

「愛甲郡」を「愛甲都」と一文字打ち間違えただけで、RE-AIが出す積算価格は3,438万円から4,178万円まで動きました。しかも割高率は35.2%から28.7%まで下がり、割高な物件のほうが割安に見える向きへずれていました。住所の誤字を、金額欄の未入力と同じ「エラーで止める」対象にした記録です。

何を変えたのか

物件の所在地欄に、都道府県と市区町村の組み合わせを検証するチェックを追加しました。実在しない組み合わせや、郡名・都道府県名の誤字が入っていると、診断へ進む前にエラーで止め、修正するまで先へ進めないようにしています。検証しているのは「都道府県+市区町村」までで、番地・丁目以降の書き方は対象にしていません。

以前はどう考えていたか

所在地欄はこれまで、空欄でないことだけを確認する必須項目チェックはあっても、表記そのものが正しいかどうかは見ていませんでした。住所の書き方には「郡を省略する」「丁目の表記が人によって違う」といった実務上の揺れが普通にあります。細かく検証すると、その揺れを誤って弾いてしまうと考え、あえてチェックを緩くしていました。

何が問題だったのか

所在地の文字列は、裏側で国土地理院のジオコーディングAPIに渡し、緯度経度から地価公示データを引いて土地単価を出しています。ここでジオコーディングが失敗すると、土地単価は都道府県平均へ無言でフォールバックする設計になっていました。フォールバック自体は、地価公示データが存在しないエリアでも診断を止めないための仕組みですが、フォールバックが起きたことを画面には出していませんでした。

実際に「神奈川県愛甲郡愛川町」を「愛甲都」と入力したケースで数字を比べると、次のようになっていました。

項目

正しい住所

「愛甲都」と誤入力

土地単価

65,400円/㎡

109,200円/㎡

積算価格

3,438万円

4,178万円

割高率

35.2%

28.7%

【開発記録】上記はテストケースとして実行した際の数値です。積算価格の差は740万円、割高率は6.5ポイント縮んでいます。厄介なのは差が出たこと自体より、ずれの向きでした。もともと35.2%割高と判定されていた物件が、誤字を入れただけで28.7%割高まで縮んで見える。つまり、本当は注意すべき物件ほど、誤字によって「そこまで割高ではない」側へ寄っていました。査定の道具としては、一番避けたいずれ方です。

なぜ「エラーで止める」ことにしたのか

誤字が残ったまま診断が進んでしまうと、利用者は自分の住所が正しく認識されなかったことに気づけません。表示される数字は他の項目と同じ体裁で出てくるため、フォールバックした値であることも分かりません。金額や築年数などの必須項目を空欄のまま進められないのと同じ扱いにして、住所も直すまで診断へ進めないようにしました。

外部APIに判定を頼らなかった理由

誤字の検出は、e-Stat由来の地域マスタ(47都道府県・1,913市区町村)との照合だけで行い、国土地理院のジオコーディングAPIは呼んでいません。ジオコーディングの成否で入力の可否を決めてしまうと、そのAPIが落ちている間は誰も診断を先へ進められなくなります。今回問題にした誤字は、マスタ側の突き合わせだけで十分に捕まえられることを確認できたため、判定用に新しい外部依存を増やさずに済みました。

実際にどう検証したか

誤検出は、正しい住所を入力した利用者が診断を進められなくなるという直接の被害につながります。そのため、マスタに含まれる1,913市区町村すべてに番地を付けた文字列を機械的に生成し、誤検出が0件であることを確認しました。加えて、誤字・都道府県名の誤り・市区町村名の誤りという3パターンで実際に診断が止まること、住所を直すとエラーが消えることを手元でも確認しています。【開発記録】このチェックを含め、698件のテストが通過しています。

やってみて分かったこと

着手する前は、住所の誤字は表記の問題だと捉えていました。実際には、査定ロジックが前提としているデータ(地価公示データ)を取得できるかどうかの分岐点でした。「データが取れない場合はそれらしい数字にフォールバックする」という設計自体は、診断を止めないために必要な判断です。ただし、フォールバックしたという事実を利用者に見せていなければ、入力ミスが「もっともらしいが実データではない数字」を静かに作ってしまう、という点が今回の学びです。

まだ解決していないこと

番地・丁目以降はまだ検証していません。大字の有無やハイフンの使い方など書き方の揺れが大きく、そこまで検証範囲を広げると正しい住所まで拒否してしまう可能性があるためです。また、今回対応したのは「都道府県+市区町村」の誤字によるフォールバックだけで、正しい市区町村名でもジオコーディングが失敗するケース(実在しない番地など)が他にどれだけあるかは、まだ確認できていません。

RE-AIの開発日誌では、入力条件によって評価が想定と違う方向へ振れてしまう問題をこれまでも扱ってきました。自己資金の入力によって融資AIの評価が崩れていた全額現金購入のケースや、サービスを公開した直後の話を書いた開発日誌 #001も、今回と同じくRE-AIの前提を見直すきっかけになった出来事です。

次に試すこと

フォールバックが発生したこと自体を、診断結果の画面上でどう示すかを検討します。あわせて、番地レベルの検証がどこまで必要かを、これまでの診断データから確認する予定です。今回変更した所在地チェックは、現在の無料診断から確認できます。

まとめ

今回の変更は、機能を追加したというより、これまで無言で起きていたフォールバックを、利用者に見えるところで止めるようにした変更です。積算価格の考え方そのものは、収益物件の価格査定は何を見る?で扱っている収益還元法・取引事例比較法・原価法の使い分けと同じ土台の上にあります。誤字ひとつで数字が動くという事実は、査定ロジックが元データにどれだけ依存しているかを、開発している側にも改めて意識させるものでした。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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