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熊本の検証物件で、家賃単価が本来の5分の1になっていました|RE-AI開発日誌 #011

熊本の検証物件で、家賃単価が本来の5分の1になっていました|RE-AI開発日誌 #011

類似物件比較の家賃単価を検証したところ、熊本の検証物件で本来の5分の1の数字が出ていました。原因を追ううちに、比較対象の抽出そのものが市区町村の再編前の地図で動いていたことも分かりました。見た目はもっともらしい数字が、実は3か所同時に壊れていた記録です。

何を変えたのか

RE-AIの類似物件比較機能について、2026年7月31日から8月3日にかけて3つの修正を行いました。家賃単価の算出方法、比較対象の抽出条件、そして比較価格の平均化方法です。それぞれ別の不具合でしたが、根っこには同じ問題がありました。数字が「それらしく」表示されていたため、誰も違和感に気づかなかったことです。

以前はどう考えていたか

類似物件比較は、国土交通省の不動産取引価格情報をもとに、本物件に近い条件の実取引事例を並べて表示する機能です。市区町村で絞り込み、家賃単価や坪単価を並べて比較できれば、それだけで十分に実用的な比較になると考えていました。実データを使っている以上、大きく外れることはないという前提でした。

何が問題だったのか

最初に気づいたのは家賃単価の異常値でした。熊本の検証物件で、家賃単価が0.81万円/坪/年と表示されていました。建物の床面積を基準に計算し直すと4.0万円/坪/年で、本来の5分の1の数字が出ていたことになります。原因は、本物件の行だけ「年間家賃÷土地の坪数」で計算しており、取引事例側は延床面積基準だったことです。土地が広い物件ほど、家賃単価が不当に低く出る計算式になっていました。

この1件をきっかけに比較対象の抽出も洗い直したところ、さらに複数の不具合が見つかりました。市区町村コードのマスタが2024年の行政区再編前のままで、たとえば浜松市中央区・浜名区が存在せず、親名の「浜松市」に部分一致していました。国土交通省のAPIは政令市の親コードでは0件を返すため、件数不足と判定されて都道府県全域からの事例に置き換わっていました。同一市内どころか、隣接しない自治体の事例まで並んでいたことになります。

築年数も、和暦表記しか解釈できないパーサがAPIの返す西暦表記(例:「1999年」)を読めず全件失敗し、欠落時に本物件自身の築年数で埋めていました。そのため類似度の判定で築年数が常に一致扱いになり、表の「築年」列も全行が本物件の値の写しになっていました。徒歩分数も同様に、取得できた事例がすべて空欄で、本物件の値で埋められていました。

比較価格の平均化にも問題がありました。浜松市山手町の事例では、坪単価の中央値が82万円のところに991万円/坪(4.5億円の物件、12倍)という事例が1件混ざり、これだけで取引事例比較価格が6,171万円(中央値ベース)から2億873万円に膨らんでいました。浜松市中央区244町名のうち118町名で、平均と中央値の差が市場推定価格を100万円以上動かす状態でした。

なぜ変更したのか

それぞれの不具合は独立していますが、共通していたのは「欠落した値を本物件の値で埋める」「件数が足りなければ広域にフォールバックする」という設計でした。エラーを出さずに何かしらの数字を表示することを優先した結果、比較として成立していないデータが、比較として成立しているように見える形で残っていました。投資判断の材料として使われる以上、それらしい数字より、正しく比較できない場合はできないと分かる表示の方が重要だと判断しました。

実際にどう改善したのか

家賃単価はcalcRentPerTsubo()という関数に一本化し、表・グラフ・国土交通省データの取得元すべてがこの関数を通るようにしました。床面積が取得できない事例は単価をnullにし、表では「—」、グラフからは除外します。国土交通省APIは物件種別によって床面積の格納先が異なる(宅地は別項目、中古マンション等は別の項目)ため、種別ごとに解決する関数も新設しました。

比較対象の抽出は、新しい行政区の対応表を追加し、絞り込み単位も市区町村から町名単位に変更しました。西暦表記の築年数パーサに対応し、取得できない項目は本物件の値で埋めずnull表示にしました。町名まで絞ると母数が減るため、データの取得期間は2年から5年に広げています。

比較価格は平均から中央値に変更し、同一町名内で中央値の1/3〜3倍から外れる事例を、表示対象を選ぶ前の段階で除外するようにしました。3倍という基準は、地域によって除外率が1.1%〜10%程度になる水準で、明らかに性質の異なる取引だけを落とし、正当な価格差は残る設計です。ただし母数が3件未満の場合は中央値自体が信用できないため、除外処理は行いません。

やってみて分かったこと

今回の一連の不具合は、どれもエラーとして表面化していませんでした。数字が出ている、表が埋まっている、グラフが描画される――その状態だけを見ていると、正しく動いているように見えてしまいます。実際に1件の異常値を手がかりに掘り下げなければ、家賃単価の計算式も、行政区の対応表も、築年数パーサも、平均値の外れ値も、そのままだったはずです。

まだ解決していないこと

坪単価(土地の値段の比較)については、今回は対象外にしています。本物件側は土地の坪数、取引事例側は延床面積の坪数を基準にしたままで、基準がそろっていません。市場推定価格の算出方針とあわせて別途判断する必要があると考えています。また、国土交通省のデータは町名までしか持っておらず、丁目単位の絞り込みはこのデータソースでは実現できません。

次に試すこと

「欠落した値を何かで埋めて表示を成立させる」という設計が他の機能にも残っていないか、今回と同じ観点で見直す予定です。坪単価の基準統一も次の課題です。

今回改善した類似物件比較は、現在の無料診断から確認できます。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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