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共同担保で2棟目を買う前に|担保余力の計算と、合算DSCRでは見えないリスク

共同担保で2棟目を買う前に|担保余力の計算と、合算DSCRでは見えないリスク

「2棟目を買いたいが自己資金が足りない」というとき、金融機関から「共同担保でどうですか」と提案されることがあります。しかし、共同担保を使うと自己資金が減る一方で、1棟目のトラブルが2棟目にどこまで波及するのかは、言葉だけでは実感しにくいものです。この記事では、担保余力の計算方法と、架空の2棟のシミュレーションを使って、合算DSCRだけでは見えないリスクを検証します。

共同担保とは何か

共同担保とは、1つの融資に対して、購入する物件だけでなく、すでに所有している物件(自宅や1棟目など)にも担保権(抵当権)を設定する仕組みです。新しく買う物件の担保評価だけでは希望する融資額に届かない場合に、既存の物件を追加の担保として差し入れることで、不足分を補います。

不動産投資では特に、1棟目の返済が進み、物件の評価額がローン残債を上回っている状態(この差額を担保余力と呼びます)で、2棟目を検討するタイミングで提案されることが多い手法です。担保余力を新しい融資の担保に充てることで、自己資金を抑えたり、フルローンに近い条件を引き出せたりする可能性があります。

担保余力はどう計算するか

担保余力は、次の式で概算できます。

担保余力 = 金融機関が評価する物件価値 − 残債

以下は仕組みを理解するために単純化した架空例です。7年前に3,200万円(借入2,880万円、金利2.3%、融資期間25年)で購入した木造アパートを想定します。元利均等返済で7年が経過すると、残債はおよそ2,232万円まで減っています。この物件を金融機関が2,700万円と評価した場合、担保余力は次のようになります。

  • 評価額:2,700万円
  • 残債:約2,232万円
  • 担保余力:約468万円

この468万円が、2棟目の融資に上乗せできる担保価値の目安です。ただし評価額は金融機関ごとの評価方法(積算法・収益還元法のいずれを重視するか)によって変わるため、実際の担保余力は金融機関に確認しないと確定しません。

共同担保のメリット

共同担保の主なメリットは、自己資金を抑えられる可能性がある点です。新規物件の担保評価だけでは希望額に届かない場合でも、既存物件の担保余力を上乗せすることで、フルローンやオーバーローンに近い条件を引き出せることがあります。手元資金を温存できれば、その分を修繕費の積立や次の物件の頭金に回せるという考え方もできます。

共同担保のデメリット・リスク

一方で、共同担保には見過ごされやすいデメリットがあります。

  • 複数物件が同時に拘束される:共同担保に入れた物件は、新規物件のローンの担保にもなっているため、返済が滞れば担保物件も差し押さえの対象になり得ます。
  • 売却の自由度が下がる:共同担保が設定された物件を売却するには、原則として担保を抹消する手続き(多くは残債の完済や条件変更)が必要です。1棟だけを売りたいときに、金融機関との調整が必要になります。
  • 借換えの制約:共同担保を含む借入は、金融機関によっては共同担保分も含めて一括で完済しないと借換えを受け付けない場合があります。

【架空シミュレーション】担保余力を使って2棟目を買う場合

以下は仕組みを理解するために単純化した架空例です。実在の物件・金融機関の条件ではありません。

2棟目の融資条件を比較する

2棟目として、価格5,400万円・表面利回り8.8%の重量鉄骨アパート(想定NOI約370万円)を購入するケースを考えます。

通常融資(LTV85%)

共同担保を活用(LTV93%)

借入額

約4,590万円

約5,022万円

必要自己資金

約1,188万円

約756万円

年間返済額(金利2.5%・30年)

約218万円

約238万円

2棟目単体のDSCR

約1.70倍

約1.55倍

担保余力を使うことで、自己資金はおよそ432万円圧縮できる一方、2棟目単体のDSCRは1.70倍から1.55倍まで下がります。自己資金を減らせば、その分だけ返済余力も薄くなるという、レバレッジ特有のトレードオフが生じています。

1棟目の空室が悪化すると、合算DSCRはどう動くか

ここからが、共同担保特有の論点です。1棟目(木造アパート)の空室率が悪化した場合に、1棟目単体のDSCRと、2棟合算のDSCRがどう動くかを試算しました。

1棟目の空室率

1棟目単体のDSCR

2棟合算のDSCR

8%(通常時)

1.43倍

1.51倍

20%

1.24倍

1.43倍

35%

1.01倍

1.34倍

50%

0.78倍

1.25倍

1棟目の空室率が50%まで悪化すると、1棟目は単体では家賃収入だけで返済を賄えない状態(DSCR0.78倍)に陥ります。しかし2棟目の収益力に助けられ、2棟合算で見るとDSCR1.25倍と、一見健全な水準を保ってしまいます。

これが、共同担保・複数物件のポートフォリオで起こりやすい見落としです。合算の数値だけを追いかけていると、1棟目が実質的に債務不履行に近い状態になっていることに気づきにくくなります。そして共同担保の契約では、1棟目の返済遅延が2棟目側の期限の利益喪失条項(クロスデフォルト)に触れる可能性があり、2棟目単体の収益が健全でも、担保全体の見直しを迫られるケースがあります。契約条件は金融機関・契約書ごとに異なるため、共同担保を設定する際は、この条項の有無と内容を必ず確認してください。

合算DSCRだけで判断してはいけない理由

複数物件を保有する投資家の多くは、ポートフォリオ全体のキャッシュフローやDSCRを見て「全体としては黒字だから大丈夫」と判断しがちです。しかし共同担保が絡む場合、リスクは合算値ではなく、担保に入っている個々の物件の状態で発生します。1棟ごとのDSCRを定点観測し、合算値と乖離が広がっていないかを確認する習慣が、共同担保を使う投資家にはより強く求められます。

ご自身の物件について、空室率や金利が変化したときに1棟ごとのDSCRがどう動くかは、RE-AIのDSCRシミュレーターでNOIと融資条件を入力すると無料で確認できます。1棟ごとに条件を入れ替えて試算し、合算値だけでなく個々の数値も確認しておくと、共同担保のリスクを把握しやすくなります。

共同担保を使う前に確認すべきこと

  • 担保余力の評価方法(積算法・収益還元法のどちらを重視するか)を金融機関に確認する
  • 契約書にクロスデフォルト条項(一方の返済遅延が他方に影響する条項)があるかを確認する
  • 将来、担保物件だけを売却したい場合の抹消条件・手続きを事前に確認する
  • 共同担保を使わずに済む代替案(自己資金を増やす、日本政策金融公庫など別の融資枠を検討する)と比較する

自己資金の考え方や頭金の水準による違いはこちらの記事で、フルローン・オーバーローンによるDSCRの変化はこちらの記事で詳しく試算しています。2棟目以降の融資枠がどう決まるかについてはこの記事、DSCRの基本的な読み方はDSCRの解説記事もあわせてご覧ください。不動産投資ローン全体の審査基準や種類については不動産投資ローン完全ガイドにまとめています。

まとめ

共同担保は、自己資金を抑えて2棟目を購入する手段になり得ますが、複数の物件が1つの融資関係で結びつくことにより、1棟のトラブルが他の物件に波及するリスクを伴います。合算DSCRが健全に見えても、個々の物件のDSCRが悪化している可能性があるという点は、共同担保に限らず複数物件を保有するすべての投資家が意識しておくべき視点です。担保余力の計算方法、契約書のクロスデフォルト条項、抹消条件を確認したうえで、自己資金を厚くする選択肢とも比較しながら判断してください。

本記事の数値はすべて理解のために設定した架空条件であり、実在の物件・融資条件を示すものではありません。金融機関ごとの担保評価方法・契約条件は異なるため、実際の判断にあたっては金融機関や専門家にご確認ください。

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この記事を書いた人

鈴木基公

鈴木基公

RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者

不動産投資収益物件分析融資分析出口戦略

1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。

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