
「不動産投資を始めたいが、会社にバレるのが怖い」という会社員の方へ。バレる仕組みの中心は住民税の徴収方法にあり、黒字の年だけでなく赤字の年にも気づかれる可能性があります。仕組みと対策、公務員特有の基準までを整理します。
個人住民税の納め方には「特別徴収」と「普通徴収」の2種類があります。東京都主税局によれば、特別徴収は勤務先が給与から毎月差し引いて納める方法で、会社員の給与に係る住民税は原則としてこの方式になります。普通徴収は、市区町村から送られる納税通知書にもとづいて、年4回に分けて自分で納める方法です。
不動産投資で問題になるのは、給与以外の所得(不動産所得など)に係る住民税です。国税庁の確定申告書等作成の手引きによれば、確定申告書第二表にある「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」の欄で「自分で納付」を選択すると、不動産所得分の住民税だけを普通徴収に切り替えられます。これが「会社にバレないための代表的な対策」として広く知られている方法です。
以下は理解しやすくするための単純化した架空例です。初めて不動産投資を検討する会社員(給与所得に係る年収500万円)が、中古区分マンション(価格1,500万円、自己資金300万円・借入1,200万円、金利2.5%)を購入し、月7.5万円で貸し出すケースを想定します。
項目 | 年間金額(万円) |
|---|---|
家賃収入 | 90.0 |
管理費・修繕積立金 | 18.0 |
固定資産税 | 6.0 |
管理委託料(家賃の5%) | 4.5 |
火災保険料 | 1.2 |
借入金利相当額(初年度) | 30.0 |
ケースA(通常の黒字年):上記の経費を差し引いた不動産所得は約30.3万円の黒字です。住民税の所得割を原則10%で単純計算すると、給与所得だけの場合に比べて住民税が年間で約3.0万円増える計算になります。給与に変化がないのに住民税決定通知書の金額が思ったより多いと、特別徴収の仕組み上、勤務先の担当者が気づく典型的なパターンです。
ケースB(初年度に不動産取得税などが重なった赤字年):購入した初年度は不動産取得税や登記費用など一時的な費用がかさみ、不動産所得が約▲15万円の赤字になったとします。この赤字は給与所得と損益通算できるため、住民税は年間で約1.5万円減る計算になります。詳しい仕組みは「不動産投資の損益通算とは?」で解説しています。
「赤字なら目立たない」と考えられがちですが、給与が変わらないのに住民税だけ下がるという動きも、黒字で増える場合と同じく不自然に見える可能性があります。黒字・赤字のどちらであっても、給与以外の所得に係る住民税を特別徴収のままにしておくと、金額の変化そのものが手がかりになり得る、という点を押さえておく必要があります。
確定申告書第二表の「住民税・事業税に関する事項」欄にある「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」で、「自分で納付」のチェックボックスに丸を付けます。対象になるのは給与・公的年金等以外の所得に係る住民税のみで、給与に係る住民税は対象外です。確定申告が必要かどうかの基本的な判定は「不動産投資の確定申告のやり方と必要書類」で整理しています。
「自分で納付」を選んでも、会社が把握する給与分の住民税額は変わりません。不動産所得分を分離できるだけで、年収や勤務先そのものが変わったわけではないため、副業の存在を隠す手段としては限定的です。
所有物件が増え、所得税法上の「事業的規模」(おおむね5棟以上または10室以上が目安)に達すると、個人事業税が別途発生するなど、住民税以外の経路でも規模の大きさが可視化されやすくなります。基準の数え方は「不動産投資の事業的規模とは?」で解説しています。
普通徴収を選択しても、自治体によっては全額を特別徴収に戻す運用がとられる場合があるとされています。実際の取り扱いは自治体ごとに異なるため、不明な点は所轄の市区町村へ確認することをおすすめします。住民税以外にも、保有中の所得税や売却時の税金まで含めた全体像は「不動産投資の税金 完全ガイド」で整理しています。
国家公務員法・地方公務員法は、信用失墜行為の禁止や職務専念義務などを理由に兼業を制限しています。国家公務員については、人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)とその運用通知で、不動産賃貸が「自営」に該当するかどうかの目安が示されており、おおむね次の3条件をすべて満たす場合は承認を要しないとされています。
この基準を超える場合は、事前に所属部署への相談と承認申請が必要になります。地方公務員は自治体ごとに服務規程や運用が異なるため、同様の基準がそのまま当てはまるとは限りません。いずれの場合も、無許可で基準を超えると懲戒処分の対象になり得るため、該当しそうな規模に近づいた時点で、所属先の人事担当部署に早めに確認することが重要です。
ここまで住民税の仕組みと対策を見てきましたが、RE-AIが大切にしているのは「バレないようにする技術」よりも「その物件が長期的に成立するか」という判断です。隠すための手続きに気を取られて、金利上昇や空室率の悪化を同時に想定した収支確認を後回しにすると、副業として続けられるかどうかの土台そのものが揺らぎかねません。家賃・空室率・借入条件を入力して長期のキャッシュフローとDSCRを同時に確認したい場合は、RE-AIの不動産投資キャッシュフローシミュレーター(無料・登録不要)で試算できます。物件全体の収益性・価格・融資・リスク・出口までまとめて確認したい場合は、RE-AIの無料診断も利用できます。不動産投資をこれから始める方の全体的な流れは「不動産投資初心者完全ガイド」で確認してください。
不動産投資が会社に知られる主な経路は、給与以外の所得に係る住民税の徴収方法です。確定申告書で「自分で納付」を選べば分離できますが、給与分の住民税や事業的規模への移行などは別の経路で可視化され得るため、完全に防げる方法ではありません。公務員は人事院規則14-8などで会社員より厳しい基準が定められているため、規模が基準に近づく前に所属先へ確認することをおすすめします。隠すことよりも、その投資が長期的に成立するかどうかを数字で確認することを優先してください。
本記事の金額や税率は理解のための単純化した架空例であり、実際の税額・住民税の運用は個々の所得状況や自治体により異なります。個別の税務判断は税理士へ、兼業規定に関する判断は所属先の人事担当部署または専門家へご確認ください。本記事は特定の対策を推奨したり、効果を保証するものではありません。
出典:東京都主税局「個人住民税の特別徴収」、国税庁「確定申告書等作成の手引き」、国税庁「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」、人事院規則14-8「営利企業の役員等との兼業」(2026年10月時点の情報)。情報確認日:2026年10月28日。
この記事を書いた人

鈴木基公
RE-AI開発者・不動産投資分析サービス運営者
1件の物件を買うか判断するために、4時間。 場合によっては、答えが出るまで何日もかかる。 その間にも、良い物件は他の投資家に買われていきます。 「分析に時間を使うのではなく、判断に時間を使うべきではないか。」 この疑問から開発したのが「RE-AI」です。 数時間かかっていた分析をAIがサポートし、投資家が本来やるべき『比較・現地調査・意思決定』に時間を使える環境を目指しています。