
半年かけて機能を作り込みました。7体のAIが物件を分析し、13以上の指標を出す。自分では、けっこう自信がありました。それでも、公開した直後の反応は、驚くほど静かでした。
「良いものを作れば、自然に人は集まる」。個人開発やスタートアップの界隈でよく聞く言葉ですが、これは半分正しくて、半分間違っていると、今なら思います。
不動産投資AI「RE-AI」を作ろうと思ったきっかけは単純です。収益物件を検討するとき、利回りやDSCR、IRRといった指標を一つずつ手計算するのが大変で、しかも見落としが怖かった。だったら、複数のAIに役割を分けて、価格査定、融資可能性、リスク、出口戦略までまとめて診断できないか。そう考えて作り始めました。
機能はひと通り揃いました。35年分のキャッシュフローシミュレーション、金利上昇や空室のストレステスト、価格査定、PDFレポート出力。開発中は「これが公開されたら、投資家の役に立つはずだ」と、正直かなり浮かれていました。
でも、公開した瞬間に世界が変わるわけではありません。当たり前のことですが、これが一番こたえました。

個人開発やスモールチームの開発でよくある壁を、仮の数字で説明します。SNSで告知した投稿を100人が見たとして、実際にサイトを訪れるのは10人程度、簡易診断まで進むのはさらにその一部、というのは、多くの個人開発サービスが経験する一般的な壁だと言われます。作り手の感覚では「見た人の多くが試してくれるはず」と思いがちですが、現実の行動はもっと慎重です。
これは決してRE-AI固有の実績を示すものではなく、個人開発のプロダクトが最初にぶつかりやすい構造として、仮に置いた数字です。それでも、開発している立場からすると、この「思ったより進んでもらえない」という感覚は、何度も味わいました。
機能の完成度と、実際に使われる人数は、まったく比例しません。

振り返って気づいたのは、次の3つです。
まず、「診断結果を信じてもらう理由」を用意していなかったこと。AIが数字を出しても、なぜその数字なのか、根拠が見えなければ、投資家は不安になります。積算価格、収益価格、周辺相場を別々に見せるようにしたのは、この反省からでした。
次に、「使う理由」と「使うきっかけ」を混同していたこと。役に立つ機能があることと、使ってみようと思うタイミングが来ることは、別の問題です。物件を検討している人が、ちょうど検討しているそのときに存在を知らなければ、意味がありません。
最後に、自分自身が「投資家がどこで迷うか」を、頭でしか理解していなかったこと。表面利回りだけを見て安心してしまう瞬間、融資の審査結果を待つ間の不安、修繕費の見積もりが想定より高かったときの動揺。こうした感情の動きは、実際に物件を検討している人と話すまで、正直、想像でしかありませんでした。
うまくいかなかった話ばかり書きましたが、やめようとは思いませんでした。理由は単純で、AIが答えを出すことより、判断の根拠をどう見せるかのほうが難しいという発見自体が、続ける動機になったからです。
投資家が本当に必要としているのは、「買うべきです」という断定ではなく、自分で判断するための材料だと思うようになりました。RE-AIも、最終判断を代行するものではなく、判断材料を整理する道具として作り直しています。
もしあなたが個人開発やスモールビジネスに取り組んでいるなら、「完成すれば伝わる」という感覚は、一度疑ってみてもいいかもしれません。逆に、これから物件購入を検討している方は、こうした診断ツールも一つの材料として、自分の判断と照らし合わせてみる使い方が向いていると思います。
気になる方は、RE-AIの簡易診断を、自分の計算と比較する材料として使ってみてもよいかもしれません。
本記事は、個人開発やAIサービス立ち上げに関する一般的な体験や課題を、分かりやすくするために簡略化・一部仮定して書いたものです。特定の事業成果を保証するものではなく、不動産投資に関する判断も、物件条件や資産状況を踏まえ、必要に応じて専門家へ相談されることをおすすめします。
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