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2026/8/4

「空室率10%なら黒字」の物件が、大規模修繕で赤字に転落した理由

表面利回り8%、空室率10%を見込んでも黒字。そう試算して購入した物件が、5年目の大規模修繕で一気に赤字へ転落する。これは架空の設定ですが、実際の収益物件でも起こり得る典型的なパターンです。今日は、購入前に見ておきたいチェック項目を、具体的な数字とともに整理します。

架空のケースで見る「黒字のはずが赤字」の構造

仮に、以下の条件の一棟アパートを検討しているとします。数字は説明のための架空の例です。

  • 物件価格:8,000万円
  • 表面利回り:8%(満室時年間家賃収入640万円)
  • 自己資金:1,000万円
  • 借入額:7,000万円、金利2.5%、返済期間30年
  • 想定空室率:10%

単純化した試算では、実効家賃収入は640万円×0.9で576万円。年間のローン返済額はおよそ332万円前後(元利均等、簡略化した計算)。ここに管理費、固定資産税、火災保険などの固定費として年間80万円ほどを見込むと、手残りは160万円前後になります。この段階では、確かに黒字です。

「空室率10%なら黒字」の物件が、大規模修繕で赤字に転落した理由

見落とされがちな「5年目の壁」

問題は、この試算に大規模修繕費が入っていないことです。築20年前後のアパートであれば、外壁塗装や屋上防水、給排水管の更新などで、まとまった修繕費が発生する時期が来ます。仮に、5年目に外壁と屋上防水で300万円、10年目に給排水管の一部更新で200万円かかったとすると、その年のキャッシュフローは一気にマイナスへ振れます。

年間160万円の黒字が続くという前提で資金計画を立てていた場合、300万円の修繕費は単純計算で約2年分の黒字を吹き飛ばす金額です。修繕費は、忘れた頃に効いてくるボディーブローのようなものだと感じます。しかも、修繕は一度で終わるとは限りません。次は空調設備、その次は駐輪場の舗装、というように、時期をずらして続けて発生することも珍しくありません。

購入前に確認したいチェック項目

以下は、購入前に確認しておきたい項目です。それぞれ、見落とすとどうなるかも合わせて整理します。

1. 長期修繕計画の有無と金額
なぜ必要か:将来の支出を事前に織り込むためです。見落とすと、想定外の支出で資金繰りが一気に苦しくなります。

2. 築年数と主要設備の更新履歴
なぜ必要か:外壁、屋根、給排水管などは、更新済みか未更新かで今後の支出が大きく変わります。見落とすと、購入直後に高額な修繕が必要になることがあります。

3. 実質利回りとDSCR(返済余力)
なぜ必要か:表面利回りだけでは、返済と固定費を引いた後の手残りが分かりません。見落とすと、黒字だと思っていたのに実際は返済でギリギリということになりかねません。

4. 空室率の前提が周辺相場と合っているか
なぜ必要か:想定空室率が甘いと、実際の収支が試算より悪化します。見落とすと、満室想定の資料をそのまま信じてしまいます。

5. 修繕費を含めた5年後・10年後のキャッシュフロー
なぜ必要か:単年度の黒字だけでなく、複数年で見て初めて資金繰りの山が分かります。見落とすと、修繕のタイミングで資金がショートします。

このチェックを面倒に感じる方もいるかもしれませんが、一度シートを作ってしまえば、次の物件検討からは同じ形式で使い回せます。手間をかける価値がある作業だと感じています。

「空室率10%なら黒字」の物件が、大規模修繕で赤字に転落した理由

まとめ

満室想定の利回りだけを見るのは、写真だけで結婚相手を決めるようなものだと言われます。同じように、単年度の黒字だけを見るのも、旅行初日の晴天だけを見て全日程の天気を判断するようなものかもしれません。

修繕費や空室率、金利上昇まで含めた複数年のシミュレーションを自分で作るのは手間がかかります。こうした条件を一つずつ表計算に入れるのが大変な場合は、RE-AIのような診断ツールで35年間のキャッシュフローとストレステストを一度確認しておく方法もあります。

なお、金融機関や物件条件によって借入条件は異なり、修繕費の目安も築年数や地域によって差があります。個別の判断は、必要に応じて不動産会社や金融機関、税理士などの専門家にも確認してください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、特定の物件の購入を推奨するものではありません。実際の投資判断は、物件条件や資産状況を確認したうえで行ってください。

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